Kranteerl y io kladi'a 作:xelkener
26.狙撃者
「なるほど、そういうことだったのですか。」
目の前の少女が言う。その名はカリアホ=スカルムレイ、見た目小学生のような容姿ではあるがこれでもハタ王国の最高権力者である。私達はどこぞのりんごの値段を下げる程度のプラズマぶりっ子によってアルパに侵入しようとした連邦人として特定されていたらしい。まぁ、当然のことではあるが。そして、それを阻止しようとしたシャスティと戦闘になり途中でそれの知らせを聞いたスカルムレイが側近の制止を振り切ってこれを止めに来たらしい。スカルムレイ自身も連邦の状態と王国の治安悪化の状況を鑑みて連邦と話し合おうとしていた矢先のことだったらしく、ここで翔太の軍勢だと思われていれば真っ先に殺されていただろう。尚、当のリファーリンは至って軽症でありフェグラダ・ヴェイユファイト・ア・ネステル医療科に搬送されたらしい。
「それでどうしたらいいのでしょう。私にとっては三回目の悪夢です。貴方方が来たのもそれなりの理由があるのでしょう?」
スカルムレイが問う。この国のスカルムレイは流暢なリパライン語を話せるのだなと感心した。うちの国では全ての官公庁発表は基本リパライン語で後は言語翻訳庁がまとめて訳すためにお上の人はユーゴック語しかリパライン語以外に話せない。
「はい、実は我々は八ヶ崎翔太の軍勢がこちらに潜伏している可能性があることが分りました。」
さらっと告げるがスカルムレイの顔は全く動じない。デュイン戦争から大変肝の据わった人物である。
「そのため、我々は王国と協力して彼等を見つけ出そうと思っています。そのためにお力を少しでもお添えください。」
スカルムレイ本人少し考えて居たが側近にクラディア以外を退出させてクラディアに話しかけた。
「八ヶ崎翔太らを我々の軍で仕留めてはいけないのですか?」
「そ、それは…」
…この世界の翔太くらいはわたしだって救いたい。そう思っていた。彼もハフルテュに操られて死のうとした。
「レシェール、あなたはまだ心を決めていないようですね。まあ、いいでしょう。我々の軍の一部を自由に指揮する権力を差し上げます。しかし、あなたはいずれ彼等に対して一つ決めなくてはならないことが出来るでしょう。」
何を言っているのかは分らないがとりあえず、軍隊の一部の自由指揮権を得た。
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「同胞よ!聞け!」
声を張り上げたのはスカルムレイ軍の総司令官、デヘンネ=ネステリウ。スカルムレイ軍の一部は私達に指揮権を移行するが総司令官との相談も必要であるらしい。
「我々は我々の同胞、我々の家族を傷つけ殺し死なせた者を許さない。我等の家族を兄弟を今まで何人我々は見殺しにしてきたであろうか!」
叫びはシャスティ軍隊の奥まで透き通って通った。その闘気に満ちた声がシャスティ兵たちを高揚させた。
「今だ、奴等はのうのうとその人間の仮面を被り人間でない所業を為している!何を以ってこれを正義と呼べる!何も以ってこれへ対抗することを諦めようか!我々は奴等を抹殺しその生首をもすべて持ち帰りスカルムレイ陛下に献上するのだ!我々が正義で在ることをこうして証明するのだ!同胞よ!!!立ち上がれ!!!!」
シャスティたちが叫ぶ。冷静なシャスティに満たされていたはずの広場は闘気に満ちた獅子で満たされた戦場のようであった。クラディアたちもこれを見て戦意が高まってきた所、高く異様な音がクラディアたちの耳に聞こえた。
「ぎゃあああああああっ」
塀で囲まれた広場の角がいきなり爆発する。ロケット弾か何かか?ともかく、戦力ともなるシャスティをここで失っては困る。クラディアが前に出て指示をしようとするがシャスティ兵達の動きに流されてまともに前にいけない。そのうちに次の爆発が起きる。シャスティはネートニアー、ケートニアーに対応できる体術を持っていながらもその体が常識を逸した回復能力を持っているわけではない。
爆風で飛ばされたクラディアは壇上に辿りついた、壇上に居たはずの司令官を探すがそこには無残に四肢が散った人間ともいえない物しかなかった。マイクを掴み指示をする。全シャスティ兵を避難させることに成功した時にはもう爆発は起きていなかった。