Kranteerl y io kladi'a   作:xelkener

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25.無味無臭

「うへぁ…き゛も゛ち゛わ゛る゛い゛…」

そう喚きながら歩くリファーリンを尻目にクラディアたちはある所に向かっていた。もちろん、ネステル・アルパである。

 

「今日通れなかったら腹いせに門をぶっ壊して侵入してやるぅ~」

…などと二日酔いの林檎の値段を下げる程度の少女が言っているが気にしない。もちろん通してもらえるだろう。連邦の危機はそっくりそのまま王国の危機となる。逆もまたその通りだ。何故ならこの二つの国は正の面だけでなく負の面も隣り合わせているからである。

 

暫く歩くと、その立派な門が見えてきた。ユエスレオネでは見ることができないであろう木で出来た門である。その木は多少の凹凸はあるものの表面が滑らかでありその他外面から見ただけで他の建造物との洗練の差が分った。イェクトと共に五人は門に近づく。すると、門番がこちらを睨んで言った。

「君たちは誰だ。」

「ユエスレオネ連邦・特別警察警護部のクラディアです。スカルムレイ陛下との会談を要求します。これはサニス条約に基づいた特別申請です。」

「怪しいな、本当に特別警察か?」

クラディアは特別警察章を見せる。

「見てください、特別警察章です。私達は公式の特別警察だ。」

「そういわれても、怪しい者は通せない。」

と、そういった瞬間門が破壊される。同時に門番が吹き飛ばされた。ハフルテュの攻撃かと思って振り返るが手を伸べていたのはリファーリンだった。

 

「リファーリン…何を…」

「さ、早く先へ進まないと!」

「し、しかし、こんなのは不法侵入だ…」

イェクトが怯える。しかし、リファーリンがそれに続ける。

「…このままじゃ、連邦が全部滅ぼされる。その損害は王国も同じ。なのに殆ど被害が無いからといってここを通さずに滅ぼされるのを指をくわえて見ているのはただの馬鹿者のすることだ。」

リファーリンが硬い口調に戻った後に吹き飛ばされた門番に近づき言う。

「分からず屋の門番にはちょっとしたおしおきね。」

イェクトが静止するがリファーリンは先に進もうとした。しかし、次の瞬間、リファーリンが何かによって吹き飛ばされた。イェクトがリファーリンを見るとリファーリンの服は切り裂かれた傷があった。イェクトが前を見ると一人のシャスティが立っていた。

 

「侵入者め!連邦の威を借りてこのアルパを破壊し生きて帰れると思わないでね!」

…面倒なことになった。アルパに行ったら仲間が門を破壊してシャスティが出てきてなんか勘違いされたなど笑い話にもならない。

 

シャスティがナイフを投げる。例のハタ王国の国技、ゼースニャル・ウ・ドゥ・ミトか。イェクトは至近距離であったがそのナイフを華麗に避ける。残りのナイフもクラディアとリーサが避ける。

 

「くっ、何なのあのシャスティは!?」

リーサが叫ぶ。何処から出したのか分らない小刀を持ち直しイェクトに向かって走り小刀を振るう。

「くたばれぇ!」

がきんと剣戟が聞こえる。もちろん、イェクトは今の一瞬であのシャスティの小刀をWPで防いだわけだが元々、WPは極接近戦にはあまり向いていないため高い技術が必要である。そんなことを感心しながらもイェクトとシャスティが戦いを交えていた。そのうち、シャスティがまた一人、一人と増えて行き戦いも混迷を極めた。他方向からの剣戟と飛剣に怯えながら目標を制圧しようとするがなかなか、相手を捉えることが出来ない。アルパの前で戦闘を行っているということで野次馬が集まり、騒音と剣戟が混ざり合い、疲れと意識が混濁した所で目の前の高台の戸が開く。

 

「「「おやめなさい!!!」」」

 

高台に立つ少女の声が響くと共にシャスティ達が戦闘をやめ驚きの表情をしながらその顔を見つめる。そう、その少女の正体とは

 

「私はハタ王国のスカルムレイ、カリアホ=スカルムレイ!私の名において命ずる、戦闘を止めよ!」

 

少女の叫びによってシャスティたちが小剣を捨てた。


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