Kranteerl y io kladi'a 作:xelkener
クラディアは賑わい活気のある商店街―アンデルフィアン―に居た。
もちろん、護衛任務のためだ。
この活気溢れる商店街は、あの事件のあとに作られた。連邦の外国人招致、そのためだけにだ。社会主義国家が聞いて呆れる有様の土地だ。クラディアの目の前に、護衛対象のチャルズが歩いてくる。
"Plashe nov'd sfasim."
(本日、願ひ奉りはべり。)
護衛対象は丁寧な『古リパライン語』で喋った。ハタ王国では、リパライン語教育は現代語ではなくエスペルントからレシェールリパラインを習うそうだ。ただ、そのリパライン語は現代では特別警察や一部の特別研究機関への社会票を貰っている人物くらいしか分からない。
早速、私は護衛対象であるチャルズとともにこのフェーユ=アンデルフィアンの西商店街を歩き回っていた。チャルズは見るものすべてに興味を持ちリウスニータなどを飲み比べたり、ユエスレオネの文化を楽しんでいた。まあ、特に変わったところは無い。
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普通の観光客に扮したイヴァネはチャルズらから少し離れ襲撃などを警戒していた。普通、クラディアのようなのは囮で我々のような遠くから見届けながら警戒する。そして、私のような中間的位置の人間が指示を一番出しやすいのだ。
イヴァネは追行していたが、人ごみが多くなったので歩幅を狭め歩く速度を速めた。
"Elisti, Niuaxmol?"
(エリ、異常はないか?)
何かを直感で受け取ったイヴァネは無線を通じて遠地のスカースナ・エリ・シュカージュに呼びかける。
"Niv?"
(いいえ?)
否定が帰ってくる。
しかし、イヴァネはその胸のなかの直感が警告を伝えていることが分かっていた。
瞬間、またもやクラディアとチャルズが消える。胸が締め付けられ脳内の警告アラームが最高潮となる。イヴァネは人ごみを無理矢理掻き分ける。
―このままでは何か大変なことが起きる。
動揺を隠し切れずに人ごみを掻き分け駆ける。
切っていた無線の電源を入れて息が切れながらも大声で呼びかける。
"Elisti! Elisti Fhasfa es xorln!"
(エリ!エリ、何かがおかしい!)
"Harmie co'c mol?"
(どうしたんですか?)
エリが呆れ声で応答する。
"Kladi'a's! Hame Chalza's mol!"
(クラディア!チャルズはどうなっている!)
"La hamepe...Fgir mol farfel lot y anno n."
(どうなっているって…普通にあそこに居ますが。)
普通に?まさか。
"Co liorce."
(気にしすぎですよ。)
そうだな、私も『あの事件』以降部下について気にしすぎていたのかもしれない。
―ラヴュールを失ったからな。
彼は良い部下だった『あの事件』の時も嫌がらずにクラディアを助けに行ってくれた。最後まで正義を貫き通し八ヶ崎を殺したときに彼も自殺した。彼が死んだのは最終的には『あの事件』に関わらせた私が悪い。だから、もう最後の一人まで私の部下は死なせない。その思いを負いすぎていたのかもしれない。
"Nace, elisti...liaxu edioll liorce..."
(すまない、エリ…気にしすぎていた・・・)
立ち止まって無線に話しかける。
しかし・・・答えは無い。
"Elisti? Hame Eli mol?"
(エリ?エリ、どうした?)
"K...Kyluseser...Kladi'a ad Chalz ieseles!"
(リ…リーダー…クラディアとチャルズが消えました!)
"Ha,Hamie!?"
(な、なんだと!?)
無線機を壊しかねない大声で叫ぶ。
思い込みが現実になった。
否、もともと思い込みではなかった。
クラディアとチャルズは消えたのだ。