Kranteerl y io kladi'a   作:xelkener

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14.戦闘の記憶

「皆、良好よ。」

アレスが言った。

クラディアはヴァレスに会おうと思っていた。

そのために一回の治療室に来ていた。

「入れませんか。」

アレスが顔をしかめる。

「衛生上の理由で入れないわ。ただ、ヴァレスなら直ぐに出てこられると思うわ。」

そう言った、直後衛生保全用のプラスチックののれんのような仕切りの先からヴァレスが出てきた。

 

「ヴァレスさん、もう大丈夫ですか?」

「えぁ…まぁ…そんなぁ大怪我でもぁ無かったですしぃ」

「そうでしたか、よかったです。」

完璧に治癒している感じであった。そういえば、もう3時だ。アレスと共に研究会議室に向かった。

 

--

「今回の調査報告で分かったことが幾つかあるわ。」

アレスが地図を指し示しその場所を言う。

「エジョェクフィアンにあった八ヶ崎勢力の基地だけど消滅していたわ。よく分からないけれどもガスタンクが爆破されていたらしいわ。上空から斜め50度くらいの角度でウェールフープで破壊されていて、それに伴って供給されている建物や地面が爆発したみたい。」

「そこに連邦勢力の人が多く住んでいた、捕縛されていたなどの情報はありますか。」

アレスが首を振る。

「いいえ、あそこは八ヶ崎勢力の最前線だし、居ても多数ということは無いと思うわ。」

じゃあ、どうして。

「八ヶ崎翔太は今、エジョェクフィアンの南300kmほどの所に居るわ。元々、あの基地に居て爆発前に逃げたみたいね。とりあえず、八ヶ崎を捕まえるほかこの謎を解く方法は無いわ。」

 

謎だ。

翔太は仲間を殺したりはしない人間だ。

もし、そうでなくても最前線の基地を丸ごと焼き尽くすなど狂気の沙汰ではない将校ならしないだろう。理解できない。考えているとアレスの携帯端末が鳴った。

「はい、アレスよ…え…本当に…そう、分かったわ。」

アレスがクラディアに向きかえって言う。

「八ヶ崎翔太が…研究所方向に進撃中だそうよ。」

そんな、こんな状態では勝てるわけが無い。

「とりあえず、準備は整えておくわ。今回は敵軍勢が多く強すぎる。八ヶ崎も居るとすると通常の戦闘人員を割いても意味は無いわ。NZWPを集中砲火するわ。」

NZWP―古に使われていた核爆弾に匹敵する威力を持つ兵器―それを集中して使わなくてはならないほど翔太勢力は強いのか。だが、

「しかし、そうなると翔太を捕まえる前に殺してしまうのでは。」

そう、翔太を殺してしまっては意味が無い。

「いえ、その心配は無いわ。八ヶ崎軍勢の中の一部は対NZWP装甲を装備している車両もあるの。彼らの中核部はその車両を使ってくるはずよ。」

 

--

管制室。

ここでは、研究所全体とともに各地に設置された映像を通して戦闘指示を行う場所だ。

「八ヶ崎勢力、研究所方向にさらに進軍中。」

オペレーターが言う。翔太勢力が防衛ラインを触れた瞬間NZWP10発が降りかかる。

「防衛ライン接触まで10…9…8…7…」

カメラにNZWPミサイルの状況が映し出される。下方から白い煙を噴き発射のタイミングを待つ。

「6…5…4…3…2…1…0…」

「発射。」

研究所から10km離れた場所のカメラで10発のミサイルが発射されたことが確認された。

「着弾まで10…9…8…7…」

オペレーターが着弾までの時間を読み上げる。

すると別のオペレーターが何かを見つけて言う。

「2発撃墜。」

「6…5…4…」

「1発撃墜。」

「3…2…1…0…」

地図上の防衛ラインの中央から赤丸がじわじわと広がって表示される。

アレスがそれを確認しオペレーターたちに言う。

「敵残存車両の確認作業を急いで、それで、」

続きを言いかけたが次の瞬間それはブザーによって打ち消された。

「警報です!敵側からのWP波を感知、NZWPです!」

「何!?」

アレスの左側武器担当のオペレーターが勢い良く打鍵している。

「NZWP2発確認、迎撃開始。」

モニターに二つの赤い弾道に対して複数の青い弾道が降りかかる。

その二つの弾道が重なった瞬間、研究所は激しい揺れに襲われた。

そして、照明が落ちた。

 

 

 

――

 

 

―――

 

 

非常用電源に切り替わったのか暗闇が取り除かれる。

「ぼやぼや、してんじゃない!直撃したらこんな研究所吹っ飛んでるわ!復旧急いで!」

オペレーターが頭を上げる。

武器担当のオペレーターは前の画面に頭をぶつけた様でびくともしない。

緊張が最高潮に達した時、ファフス・ファリーアがアレスに迫った。

 

「私が出ますわ。」


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