Kranteerl y io kladi'a 作:xelkener
「敵は研究所前方から来ているぁす。先程の爆発箇所を調べて武器を特定しぁす。」
独特な訛り、ヴァレスはそう言った。ファフス・ファリーアは、もうすでに肩にWPライフルを掛けている。銃を肩に掛けるお嬢様とは、なかなか見られたものではない。各人それぞれ対WPo装甲の車両に乗って研究所を出発したがヴァレスだけは研究所からの遠隔支援を担当することになった。
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「各車両分散してください。」
クラディアが戦闘車両内で言う。
「Ok!クラディアちゃん!先陣切って突っ込むぜ!」
威勢のいい声は12班のアレス・フレンティア・イヴァネの声、イヴァネの車両が先頭に出る。
「会敵予想地点までぁ5...4...3...2...1...0、会敵ぃ」
カウントを終えたヴァレスの声が響く、そこには誰も居なかった。
「アレス・フレンティアさん、敵を視認できますか?」
クラディアがマイクを掴みながら言う。
「いいや、こっちじゃレーダーにもなんも映っていない。」
もう既に攻撃を終えて退却したのか?
いや、それでは研究所をあれだけ破壊しただけだ。攻撃の意味がない。とすると…
「クラディアちゃん、敵も居ないみたいだし一旦、研究所に戻t」
通信が切れる。
次の瞬間、巨大な爆発音が聞こえた。
「アレス・フレンティアさん!?アレスさん!?」
応答はない。外部カメラからは、爆破四散し燃え盛る戦闘車両が確認できた。レーダーからも認識信号がロストしたと表示されている。やはり、陽動か。研究所から一軍勢力を独立させて各個撃破、研究所は他部隊に当たらせているのだろうか。しかし、敵の姿は見えない。いや…
外部カメラを回転させる。レーダーはサーモグラフィモードに変換させる。
「やはり…。」
人間だ。生身の人間が車両を破壊した。
「クラディア!出て来いッ!お前も纏めて皆殺しにしてくれるわ!」
リファーリンだ。見まがうこともない。その、姿から口調まであの時のりファーリンだ。
「どうしますか、イェクト」
クラディアがイェクトに尋ねる。
「戦闘車両から降りた方がいい。さもないと奴に…」
言っている途中にまた車両が爆発した。
クラディアはマイクを握る。
「全車両に乗っている人間は車両から出て戦闘を開始してください。敵は生身の人間です。」
「こちら、ファフス・ファリーアですわ。敵を視認、交戦しますわ。」
クラディアとイェクトは車両から降りてそれを確認した。
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遅い。
遅い、遅い。
まったくもって、この女性は遅すぎる。
ファフス・ファリーアは空中を飛びながらそう感じた。
リファーリンの空中戦闘能力は私の五段階評価では二といった所かしら。
リファーリンの腕を見えない刃が切り裂く、カマイタチだ。
私のウェールフープの能力は、風と光、自由にこれを操れる。
ファフス・ファリーアの光束がリファーリンを捕らえる。
リファーリンは必死に回避行動を行うが避けられない。
体が膨張しリファーリンの体が爆発、木っ端微塵になった。
「残念ね、リファーリン、あなたが敵だとは思いませんでしたわ。」
そう言いながら、空中にとどまっていると背後に何らかの存在を感じた。
―まさか。
「残像だ。」
回避のしようも無く、巨大なエネルギーがファフス・ファリーアを地面に打ち付けた。
「ぐっ…リファーリン…」
さっきのは残像ということか。
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「さあ、死ぬがいい。6人目の犠牲だ。」
そう言って、リファーリンは手にプラズマを誘導させる。
「食らえッ」
リファーリンが手からプラズマを放った瞬間それを何かが遮った。
あたりには、氷の粒が散った。
「―どこにいる、クラディア。」
静寂、沈黙、周りには誰も居ない。
ファフス・リファーリンも消えている。
…なんだ、なんなんだ。
集中力を上げていく。
瞬間、氷塊で足を切り裂かれる。
「ぐはっ」
その場に倒れる。
「ここです。」
クラディアの声は聞こえるが、姿は見えない。
いつの間にか、周りが霧に囲まれている。
次に、シュッという音が聞こえた。
腹が切れる。
「ここですわ。」
ファフス・ファリーアの声。
やはり、姿が見えない。
しかし、これも一時の事。私もケートニアーだ。傷は直ぐに治癒した。
誘導しているプラズマを解放して霧を消し去った。
これでクラディアを殺せる。
そう、安心した瞬間であった。
「えぁ、油断したらぁ、命はなぃとぉ思えよぉ 」
瞬間、体が吹き飛ばされる。
地面に打ち付けられ身動きが取れない。
「…ウ・ドゥ・ミトか。」
小刀がちょうど造モーニ体に刺さっておりウェールフープを行うことが出来ない。クラディアが鋭い氷塊を撃つ。しかし、当たる前にリファーリンは、『消えた』
瞬間、ヴァレスの横にリファーリンが出現する。
「油断だと、それは残像だ。」
ヴァレスが吹き飛ばされる。
「ぐぇ…」
「ヴァレス!」
ファフス・ファリーアが近づく。
「お前は、自分の心配をしろ。カーナお嬢様。」
背後からプラズマでファフス・ファリーアを吹き飛ばす。
「最後は、お前だ。クラディア、直ぐに終わらせてやる。」
お互い睨み合いながら距離をとって攻撃の機会を探している。
「どうして…生きているんですか…あなたは…死んだはずでは…」
リファーリンが笑った。
「ハハッ、ケートニアーは死なないとハタ王国の古文書には書いてある。知っているだろう。」
「確かにそうですが、私たちは完全にあなたを殺したはずです。」
「そうだな、じゃぁハフールテュ様が私を復活させたと言ったら?」
ハフルテュ、夕張が復活させて刺客として送り込んだ?
「そうだ、ハフールテュ様は神と同等の存在。彼の命令は絶対だ。そして、彼の命令は、貴様クラディアとイェクト・ヴィェーナを殺すことだ。」
「そう、ですか。」
「おしゃべりは終わりだ、行くぞッ」
リファーリンが上空を舞う。急降下してプラズマを撃ってくる。クラディアは、それを氷塊で受け止める。全部を避けきった。と思った瞬間、リファーリンが地面スレスレでクラディアの頭上を通過する。瞬間、プラズマの束が足元に落ちる。反動を利用してクラディアも上空へ飛んだ。
「どうした、どうしたァ!?私と最初に戦ったときとはキレが無いじゃないか。」
「あなたは殺さなければいけないようですね。」
ラーデミンを解放する。ラーデミンは今回飛行制御を手伝ってもらう。リファーリンが急降下する。そして、クラディアの直下からプラズマを撃ってきた。
「死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、ハハハッハハハハハァ!」
氷塊を直下に落とすことは瞬時には難しい。プラズマを避けつつ攻撃方法を考える。今は、どうしてもウェールフープの特性上空戦は不利だ。かといって、地上ではリファーリンの優勢が強調されるだけだ。さて、どうするか。
避けながら考えていると、地上のファフス・ファリーアがWPライフルを手に持って何かを指示している。
…下から…撃つ…空へ…上がる。なるほど。
クラディアは自分の少し上の高度の場所に氷塊を投げてゆく。
「ハハハハッハハアハ、どうしたクラディア!血迷って力を使い果たそうとしているのかァハハ、墜落死はケートニアーにはできないぞハハハ」
クラディアは上昇してその氷塊に乗る。すると、地上のファフス・ファリーアが氷塊を下から―WPライフルで撃った。―
「何!?」
撃たれた氷塊に乗ってクラディアは一瞬でリファーリンのいる高度を超える。リファーリンはクラディアを視認できない。
「糞ッァアアアアアアアアア!」
瞬間、リファーリンに当たった氷塊の影響でリファーリンが急降下する。氷塊が巨大で身動きが出来ない。プラズマを放つことも体勢からして不可能だ。ファフス・ファリーアが走ってくる。WPライフルの標的は…私だ。
―ッタターン
WPライフルの乾いた銃声が響いた。クラディアが追撃する。
破裂音と共に粘り気のある音が鳴った。リファーリンは、潰れた。
クラディアは、コントロールを取りながら着地した。
総勢20人の特別警察官たちは、殆ど9人しか残っていなかった。他の戦闘車両は爆破四散しているか、氷塊に潰されていた。
「レシェールさんぁ…。」
ヴァレスが重症だ。
とりあえず、一度研究所に戻ろう。
クラディアたちは研究所までの道を歩き始めた。