ソードアート・ストラトス   作:剣舞士

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いや〜……長かった。

流石に一万文字超えるのは大変でした!




第8話 再会

クラス代表決定戦から翌日、朝のHRの時間。

 

 

 

「と言うわけで、一組の代表は、織斑 一夏くんに決まりました! あっ! 一つながりでいいですね♪」

 

 

このクラスの副担任である山田先生の宣言通り、この一組のクラス代表は、一夏に決まった。それもジャンケンで……。

 

 

「くそ……あんときチョキを出してたら……」

 

「もう諦めなさい、チナツ」

 

「そう言ってもなぁ……」

 

「何事もやる気と挑戦だよ? チナツくん!」

 

「アスナさん……そうですよね」

 

「まぁ、お前なら出来るって。俺は信じてるぞ……」

 

「言っときますけど、キリトさんは副代表ですからね?」

 

「なッ!? なんでそんなことになってんだよッ!」

 

 

 

っと朝からこんな調子である。クラス代表は一夏に決まり、副代表として和人が任命されたのだ。

 

 

 

「ちょ、ちょっと待て、大体セシリアは?! セシリアだっていただろう?!」

 

 

 

和人の言葉に、全員が振り向く。だが、セシリアは……。

 

 

 

「いえ、わたくしは辞退させて頂きますわ」

 

「えぇー、なんでぇ……」

 

「あなた方の実力は、代表候補生クラス、いえ、それ以上と言っても過言ではありませんわ。クラス代表は実力を兼ね備えている方がなるものだと思っておりました……ですからわたくしは自薦しました。

ですが、あなた方はわたくしに勝ちましたわ…ですから、クラス代表になる条件をもう満たしていると判断したのですわ」

 

 

 

もっともな意見に、誰も反論することはなく、みんな納得した様に頷く。

 

 

「そうだよねぇ〜! せっかくの男子がいるんだし、持ち上げないと!」

 

「いやぁ〜分かってるねぇ〜セシリア!」

 

「そうそう、それに織斑くんと桐ヶ谷くん超強いし!」

 

 

さっきからこの調子だ。

 

 

 

「キリト、チナツ……抵抗しても無駄よ?」

 

「頑張れ、二人とも♪」

 

 

 

刀奈と明日奈も促すので、もう諦めざるをえなかった。

 

 

「えぇ〜と……クラス代表として、恥ずかしくない様な試合をしたいと思いますので、よろしくお願いします!」

 

「ええっと、チナツ…じゃない、一夏をしっかりサポートしていきたいと思います……その、よ、よろしくお願いします……」

 

 

改めて、自己紹介をする二人に、クラスメイトからの暖かな拍手が迎え入れてくれた。

 

 

 

「まぁ、クラス代表は一年間変わることはない。しっかりと全うすることだな。では、これにてSHRを終了する。午前中はグランドで、ISの実習だ。すぐに着替えて、グランドに集合すること。いいな? では、解散!」

 

 

担任である千冬姉の合図と共に、チャイムがなり、SHRが終了した。そして、先ほども言った通り、今日の午前中は外でISの実習訓練があるので、急いで着替えないといけない。もしこれで一分でも遅れ様ものなら、千冬姉からの鉄拳か出席簿アタックが炸裂するので、急がなければならない。

 

 

「よし、チナツ! 早く行くぞ!」

 

「オッケーです。行きましょう!」

 

「「また後でねぇ〜!」」

 

「「おうっ!」」

 

 

 

最愛の二人にそれぞれ返事を返し、急いで更衣室へと向かう。

 

 

「早くいかないと、また千冬姉からの鉄拳制裁が……」

 

「それだけは避けたいな……ユイ! 悪いが、ナビ、頼めるか?」

 

『はい、パパ! 次を左に曲がったら、真っ直ぐ突っ切って下さい!』

 

 

 

スマートフォンから可愛らしい声が聞こえる。

 

 

 

「あぁ、そう言えば、ユイちゃんってスマートフォン越しからの会話が可能でしたね」

 

「あぁ、基本的に俺か、アスナのところを行き来してるけど、今は俺の専用機とアスナの専用機にも移動できるようになったがな」

 

『はい! これでいつでもお話し出来ます! っと、そこを今度は右です、パパ!』

 

「よし、オッケー。ありがとう、もう大丈夫だ」

 

 

 

 

和人達の娘、ユイのナビゲートのおかげで、難なく更衣室へとたどり着き、急ぎ着替えてグランドへと向かう。

 

 

 

「ふぅ、なんとか間に合ったな…」

 

「ですねぇ…よかった」

 

 

そう言って、二人して女の子達の中に入り、整列する。

こういう時、お互いソロで活動してきたツケが出てくる。なんだか慣れないのだ。

それに、自分たちも含め、周りのみんなの格好もいけない。

ISスーツ……ISを操縦する上で、効率よく運用する為に開発されたスーツだ。

一夏と和人のは、特注で作ってもらった臍上丈の半袖シャツとスパッツ型の物なのだが、女子達のは、スクール水着の様なレオタードと膝上サポートを基本とした物なので女の子独特の胸囲や腰のくびれなどが強調されているので、嫌でも目に入ってしまう。

 

 

「チナツ…」

 

「なんですか、キリトさん」

 

「お前がいてくれて、ホント助かった」

 

「俺もですよ…俺一人じゃあやばかったと思います…」

 

 

女子高に男が二人。互いの存在が支えになっているのだ。

 

 

「キリトくん、チナツくん」

 

「お待たせ…って、どうしたの?」

 

 

そう言ってる間に、ISスーツに着替えてきた明日奈と刀奈も合流する。そして、なんだかより一層親密になった二人に疑問を抱く刀奈。

 

 

「い、いや、なんでもないぞ?」

 

「なんで疑問系?」

 

「いや〜、まぁ〜なぁ?」

 

「ん?」

 

 

 

刀奈の問い詰めに、一夏も和人も言葉を濁す。不思議そうに見ていた明日奈が首を傾げたが、そこに最愛の娘からの声が入る。

 

 

『パパ、チナツさん、浮気はダメですよ?』

 

「えっ?!」

 

「う、浮気っ!?」

 

 

ユイの言葉に、明日奈と刀奈が驚く。

それは一夏達も同じで、慌てて弁解をする。

 

 

「いやいや、違うってユイ! 別に俺たちは…」

 

「そうだって…。別にそんなやましい事は何も……」

 

「「ふぅ〜〜〜ん………」」

 

「「ひっ!!!」」

 

 

 

こういう時、男とはつらいものだ……。

明日奈と刀奈の鋭い視線が、和人と一夏を貫く。

 

 

 

「ヘェ〜、キリトく〜ん? 一体何をしてたのかなぁ〜?」

 

「いや、待て待てッ! だから、何もしてないって!!!」

 

「ふんっ! どうだか……」

 

「頼むよアスナ! 信じてくれって!」

 

『パパ、ママを困らせたらダメですよ!』

 

「ちょッ、ユイまで……違うんだって!」

 

 

 

完全に拗ねた明日奈と娘のユイに誤解を解こうと必死な和人。そして、もう一方は……。

 

 

「ねぇ、チナツ。あの子達のどこを見て何をしていたのかしらぁ?」

 

「いや、違う! 違うって! 完全に誤解だって!」

 

「ふぅーん……本当かしらねぇ〜」

 

「いや、だから本当なんだってばッ!」

 

 

 

こちらもまた難航していた。そんな風景をみんな見て見ぬフリをしているのか、誰も突っ込まないし、止めようとしない。

ケンカしていても、なんだかんだで仲良くなるんだろうと誰もが分かりきっているからだろうか……。

そうこうしているうちに、ジャージ姿になった千冬と山田先生が登場し、みんな整列する。

やはりみんなとて千冬の鉄拳を喰らいたくないのだ。

 

 

 

「全員揃ってるな? それでは、まずはISの基本的な操縦を実演してもらう。専用機持ちは前に出ろ!」

 

 

 

千冬の声に従い、専用機を持つ一夏、和人、刀奈、明日奈、そして、セシリアが前に出る。

 

 

 

「まずは全員、ISを展開しろ。出来るだけ早くだ! その後、上昇し、飛翔したのち、急降下と完全停止をやってみろ……それでは、はじめ!」

 

 

千冬の合図と共に、五人が瞬時にISを展開する。白式、月光、ミステリアス・レイディ、閃華、ブルー・ティアーズ。もうこの時点で、ISが五機。一国の軍事力と張る。

 

 

「うむ、まぁ展開速度は中々と言ったところか……よし、では飛べ!!!」

 

 

 

再び千冬の号令で、全員飛翔する。

やはり国家代表である刀奈と代表候補生であるセシリアが前にでる。それを追う形で、一夏、和人、明日奈が続く形だ。

 

 

「織斑! 遅いぞ! スペック上の出力では、白式はブルー・ティアーズより上なんだぞ」

 

なぜか俺にだけ檄が飛ぶ。

 

 

「っと言われてもなぁ〜。ALOとは、飛ぶ感覚が全然違うんだよなぁ〜」

 

「イメージの仕方も全然違うしな。 “自分の前方に角錐を展開させるイメージ” だったっけ?」

 

「うーん……ALOは自分の背中の筋肉を動かすイメージだから、私も難しいかな」

 

 

一夏も和人も、そして明日奈もまだ慣れない飛行イメージだが、なんとか刀奈とセシリアの後を追う。

すると、前を飛んでいた二人が並ぶように速度を落として並列飛行をする。

 

 

「イメージは所詮イメージ。自分のやりやすい形で模索した方が建設的でしてよ」

 

「そうね。あくまでそのイメージは、目安みたいなものだから、自分のやりやすい様にするのが一番よ」

 

 

 

二人からのアドバイスで、なんとか自分に合ったイメージを固定する事は出来たが、彼女達に比べればまだまだのようだ。

そうやって、ある程度飛行をしていると、地上にいる千冬から指示が送られて来た。

 

 

『よし、それでは最後に急降下からの完全停止をやってみろ、まずはオルコット! 手本を見せてやれ、目標は地面から十センチ!』

 

「了解です! では、お先に!」

 

 

 

そう言って、どんどんスピードをあげて落ちて行くセシリア。あわや地面にぶつかるのではないかと思ったが、直前に脚部ブースターを噴かせ、見事目標から十センチの位置で完全停止を決めた。

 

 

「おお〜〜!」

 

「すごいねぇ〜セシリアちゃん!」

 

見事な飛行技術に、和人と明日奈も賞賛の声を上げた。

 

 

「さてと、それじゃあアスナちゃんは、私と一緒に行くわよ!」

 

「うん! よろしくねカタナちゃん!」

 

 

次は明日奈と刀奈が共に急降下して行く。明日奈は刀奈の指示の元、同じ動作で降りていき、十センチではなかったものの、見事着地した。

そして、最後に一夏と和人の二人。

 

 

 

「よし、俺たちも行くか!」

 

「ええ、いきなり十センチは無理でも、着地ぐらいは……!」

 

 

 

二人ともどんどん加速していく。が、一番重要な事を忘れていた…。

 

 

 

「えっと、チナツ。どのあたりでブースター噴かせばいいんだ?」

 

「…………わかりません…っ!」

 

「やっべぇッ!」

 

「ちょ、う、うわぁ!」

 

 

二人して加速し過ぎ、急いで脚部ブースターを噴かせたが間に合わず、二人して地面に衝突してしまった。

派手な轟音と共に、二人が墜落した地点からは、もくもくと土埃がたちこめる。

 

 

 

「ちょッ! チナツ!? キリト!?」

 

「キ、キリトくん!! チナツくん! 大丈夫!?」

 

 

 

これには流石に刀奈と明日奈も飛んできた。

一夏と和人が作ったクレーターの中心部。そこに二人は居た。

一夏はうつ伏せで地面に顔がめり込み、、和人は仰向けに大の字で倒れている。

そして、二人のISが解除され、生身の体が地面に触れる。

 

 

 

「んんっ! ぷぅはあぁぁ!!!! はぁ……はぁ……」

 

「痛ってぇぇぇ……っ! マジで死ぬかと思ったぜ……」

 

「俺もですよ……顔がめり込んでたし……」

 

 

意外と元気そうな二人に胸を撫で下ろす明日奈と刀奈。そして、クラスメイトのみんなと、千冬と山田先生も集まってくる。

 

 

「馬鹿者!……誰が地面に激突しろと言った……ッ! 全く、後でお前達二人で直しておけよ?」

 

「「は、はい……すみません……」」

 

 

 

千冬の説教に頭を垂れる二人。

二機で激突した割には穴は小さかったが、それでも直すのは一苦労だろう。

落胆する二人に、明日奈と刀奈は優しい微笑み、「手伝うよ?」っと言って二人の肩に手をおいた。

その後は、なんのトラブルも無く授業は進み、昼休みの時間を利用して、四人でグランドの整備を行い、昼食を取った。

 

 

 

「はぁ〜〜……疲れた…」

 

「そうですね……カタナもアスナさんもすみません……俺たちに付き合わせちゃって……」

 

「ううん、別に気にしてないよ。でも、今度はうまく出来るといいね」

 

「そうね……という事で、今日の放課後は私がみっちり指導してあげるわ!」

 

 

 

満面の笑みを浮かべ、提案してくる刀奈に一夏も和人も苦笑いしか出来なかった。

 

 

「「お、お手柔らかにお願いします……」」

 

「さぁ〜、それはあなた達の努力次第だと思うわよ?」

 

「うへぇ〜〜」

 

「マジかよ……」

 

 

刀奈のスパルタ指導は、クラス代表決定戦に向けての特訓をした時に明らかになっている。なので、二人としては、あまり快く了承し辛いところなのだ。

 

 

「じゃあ、今日の放課後。授業が終わったら第二アリーナに集合ね。アスナちゃんも感覚を固定する為に、一緒にやりましょう?」

 

「うん、わかった! よろしくお願いします」

 

「二人とも返事は?」

 

「「はぁ〜〜い……」」

 

 

 

その後、放課後の第二アリーナでは、刀奈によるスパルタ指導が火を吹き、一夏と和人がヘトヘトになったのは、言うまでも無かった。

そして、四人が放課後の特訓をしているさなか、IS学園校門前では………。

 

 

 

 

「ここがIS学園……フフッ、やっと会えるわね一夏。電話の一つも無しだったことは許してあげるわ……だけど、もう逃がさないわよ!」

 

 

 

茶髪をツインテールでくくっている少女。ボストンバッグを右肩に掛け、不敵な笑みを浮かべる。

そして、その少女は校門前で迎えてくれた職員のもとへと向かう。

 

 

「ようこそIS学園へ、凰 鈴音さん。歓迎するわ!」

 

「どうも。あの、一つ質問いいですか?」

 

「ん? 何かしら?」

 

「織斑 一夏ってこの学園でどうしてます?」

 

「あぁ、織斑くん? あの子凄いわね、いきなり代表候補生と戦って勝っちゃうし、クラス代表にもなって、今度のクラス代表対抗戦にも出場するからね」

 

「へぇー……ッ! 凄いですね。……そっか、頑張ってるわね…あいつ」

 

「ん? 何か言った?」

 

「いえ、なんでもありません……。あっ! そう言えば、私が入る二組のクラス代表って誰かわかりますか?」

 

「へ? わかるけど、それを聞いてどうするの?」

 

 

鈴音の質問の意図が分からず、職員は聞き返す。

 

 

「代わってもらおうと思って……クラス代表♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「織斑くん‼ クラス代表就任、おめでとおぉぉぉう!!!!」」」

 

 

 

一組のみんなの声が、食堂に響く。

放課後の部活動や自主練が終わり、みんなに食堂に来るように言われたので、特訓終了後、シャワーを浴び、みんなで食堂に行ってみると、一組のみんなが迎え入れてくれた。

 

 

 

「これは……凄いな…っ!」

 

「みんながお前の為に用意したのだ……感謝するんだな」

 

 

驚愕に見舞われる一夏の元に箒がやって来てそんな事を言う。

 

 

「箒も一緒にやってくれたのか?」

 

「ん、ま、まぁ…な…その、なんだ…お前の為だからな」

 

「ありがとな、箒……。みんなも、ありがとう!」

 

 

 

素直に嬉しくて、お礼を述べるとみんな笑って歓迎してくれた。

 

 

「さあさあ! 主役はコッチコッチ!」

 

「みんなぁ〜! コップ持ったぁ〜?! それじゃあっ!」

 

「「「かんぱあぁぁぁいっ!!!」」」

 

 

 

元気いっぱいな声が響く。

なんだか、オフ会してるみたいで、楽しかった。

 

 

「それにしても凄いな……」

 

「女子はみんなこんなにハイテンションなものなんですかねぇ〜」

 

 

男二人。SAOでも余り人との関わりが無く、しかも和人に至ってはコミュ障な為、いまだに女子との会話は緊張してしまうらしい。

 

 

「キリトくん大丈夫?」

 

「あなたも相変わらずのコミュ障なのね…」

 

「し、仕方ないだろう……俺は大半をソロで過ごしたんだから……」

 

「そう言う俺も一人が多かったからなぁ〜……。みんなと話す時は、やっぱり緊張するぜ?」

 

 

 

一夏はコミュ障ではないのだが、SAOでは限られた人としか会話や交流が無かった為に、全く知らない、しかもみんな年頃の女の子と来れば、話しづらくなるようだ。

 

 

 

「あの、一夏さん…」

 

「ん? おお、セシリア! どうしたんだ?」

 

「えっと、その、実は、ですね……」

 

何やらモジモジとし、何かを言おうとしているセシリア。

 

 

「わ、わたくしも、そのアミュスフィアとALOのソフトを買いまして……」

 

「えっ!? マジで?!」

 

「はい! 注文してたのがやっと届きまして……それで、よろしければいろいろとレクチャーしていただけると…」

 

「ああ、もちろん!! なぁ、カタナ?」

 

「えぇ、いいわよ」

 

「分からない事があれば、私たちがいっぱい教えてあげるから! ねぇ、キリトくん!」

 

「あぁ、まずは俺たちと一緒にスキルをあげていかなきゃな」

 

 

 

セシリアがVRMMOに興味を持ってくれた事が、みんな嬉しく、その後はセシリアに対してALOの世界について教えあった。

 

 

「スキル…ですの?」

 

「あぁ、ALOはSAOと違って、レベルの概念が無いんだ……だから、武器のスキルはもちろん、その他のスキルもあげていかなきゃいけないんだ」

 

「ちなみに、チナツとアスナちゃんは〈料理スキル〉をあげてるわ」

 

「お料理にもスキルがあるんですの?!」

 

「あぁ、まずは簡単なものから作っていって、スキル熟練度をあげていくんだ。そう言えば、キリトさんって〈釣りスキル〉あげてましたっけ?」

 

「ん? あぁ、SAOの時は、全然だったからなぁ……」

 

 

明日奈と一夏は、SAOの世界では知る人ぞ知る〈料理スキル〉をマスターしたS級料理人だったのだ。S級食材も取り扱い、普段の料理もプロのシェフ並みの腕を見せていた。

これを毎日食していた和人と刀奈は、幸せ者だ。

 

 

 

「そうなんですのねぇ……。えっとこれは始めるにはどうしたらいいんですの?」

 

「ええっと、まずアミュスフィアを頭に被って、ログインするだろ? そして、ALOでは九つの種族の妖精から自分のアバターを一つ選ぶんだ」

 

「妖精…ですの?」

 

「あぁ、火妖精族のサラマンダー、風妖精族のシルフ、水妖精族のウンディーネ、土妖精族のノーム、影妖精族のスプリガン、闇妖精族のインプ、猫妖精族のケットシー、工匠妖精族のレプラコーン、音楽妖精族のプーカ……この九つだ…」

 

「まぁっ…おとぎ話に出てくる妖精さんたちばっかりですわね」

 

「ちなみに、私とアスナちゃんはウンディーネで、チナツがシルフ、キリトがスプリガンね」

 

 

補足とばかりに刀奈が俺たちのアバターを教える。

さらに、それぞれの妖精たちにも、それぞれ得意不得意な能力がある事を教える。

流石にすぐには決められないのか、セシリアは手を頬に当てて、悩んでいる。

 

 

「うーん…悩みますわね…」

 

「じゃあ早速、ログインして俺たちといろいろやってみよう。 飛び方や魔法の使い方もいろいろレクチャーするぞ」

 

「はい! では、今日にでも教えて下さいな!」

 

「わかった。向こうでも紹介したい人達がいるし、これが終ったらみんなでログインしよう!」

 

 

 

話を進めていくにつれ、ALOの魅力を感じてくれているのか、今まで以上にワクワクした表情のセシリア。

いや、セシリア以外の全員が目を輝かせていた。

 

 

 

「いいなぁ〜セシリア。織斑くん達と一緒に遊べてぇ……」

 

「私もALO買おうかなぁ〜!」

 

「でも、アミュスフィアって結構高くなかったけ?」

 

「でも、織斑くん達と一緒にいろんな冒険が出来るんだよ? だったら私は買うね!」

 

 

 

はじめはVRMMOをやっている人間をオタクだと決めつけていたみんなも、今ではその話題で持ちきりだ。

こうやってVRMMOに興味を持って、やってくれる人達が増えてくれるととても嬉しく思う。

そうしていると、いきなりシャッターが焚かれた。そのシャッターがなった方向を見ると、一人の女生徒がこちらにカメラを向けていた。

 

 

 

「はいはぁ〜い! 新聞部でぇ〜〜す!!!! 今話題の織斑くんと桐ヶ谷くんの取材に来ましたぁ〜〜!!」

 

 

そう言って、俺とキリトさんに名刺を渡してくる女生徒。

どうやらちゃんとした名刺で、『新聞部部長 黛 薫子』と言う名前らしい……。

リボンが黄色い事から、俺たちよりも年上、二年生だと言うのがわかる。

 

 

「あら、薫子ちゃん!」

 

「ああ! たっちゃん!! 愛しの織斑くんを借りてもいいでしょうか?」

 

「そこは私に聞かないで、チナツに聞きなさい…」

 

「だってさ! どう? 織斑くん! 取材に協力してくれない?」

 

「ええっと……キリトさん、どうします?」

 

「うーん……」

 

「いいんじゃない? せっかくだから新聞に載せてもらおうよ!」

 

 

薫子のちょっかいに刀奈は頬を染め、明日奈は取材を受けるように促してくるので、二人して了承した。

 

 

「よしじゃあ、まずは……クラス代表に就任した意気込みをどうぞ!」

 

「え、えっと……が、頑張ります!」

 

「えぇー! もっといいコメントないのぉー? 例えば、「俺の剣に酔いしれなっ!」的なやつとか…」

 

「いや、すみません……そう言うのは……」

 

「じゃあじゃあ、ALOもやってるんだよね? モンスターとか、他のプレイヤーと戦ってる時って、どんな事を思いながら戦ってるの?」

 

「えっと……それは……」

 

 

いきなりの質問に戸惑う一夏。

周りのみんなもすごく期待の目で見ており、刀奈達も何を言うのか楽しみにしているかのようで、何かと気まずい。

 

 

「それは、守るため…ですかね…」

 

「ほほう…一体何から守るために?」

 

「いろんなものからですよ…。俺は、俺に関わるすべての人を守りたい。だからこそ、この剣を振っている……だと思います……」

 

「「「………………」」」

 

 

 

自分らしくないキザっぽい言葉を言ってしまったと、少し後悔したが、思いのほかみんなも間に受けてくれてるのか、顔を赤らめている子が目立つ。

 

 

「うんうん! まさに “現代に生まれし侍” って感じかな? ありがとう!」

 

「いえ、とんでもないです」

 

「よし! それじゃあ、次! 桐ヶ谷くんいってみよう!!」

 

「あ、あぁ、よろしく頼む…」

 

 

薫子のハイテンションに、ちょっと呑まれる和人だったが、すぐに立ち直り、改めて取材を受ける。

 

 

「桐ヶ谷くんはどうしてクラス代表にならなかったの? 実力は織斑くんと同じなんでしょう?」

 

「ええっと、俺自体が少しコミュ障なところがあって、それで辞退させてもらって、チナツに頼む事にしたんだ」

 

「ええっと、“チナツ” って言うのは織斑くんの事でいいんだよね?」

 

「ああ、俺たちは昔、同じゲームで出会って、共に過ごしたんだ……この名前は、その時のキャラネームで今もそう呼んでしまうんだ…」

 

「へぇーそうだったんだぁ……ああ、後、桐ヶ谷くんと結城さんは年上であり、恋人同士って言うのは本当なのかな?! 後、たっちゃん達も!」

 

 

 

みんな一度は聞きたかったことだったようで、さらにみんなの視線が集まる。

 

 

「ああ、その通りだ。俺はみんなより一個年上で、アスナは二個上。そして、俺はアスナと付き合ってるし、チナツとカタナも……」

 

「あ、はい。俺とカタナも付き合ってます! ええっと、半年ぐらい前から」

 

 

 

二人のカミングアウトに食堂は黄色い声で埋め尽くされ、同時に和人と明日奈が年上である事が驚きだったようだ。

 

 

「えっ⁉ 結城さんってじゃあ今、18?」

 

「 “桐ヶ谷くん” なんて読んでたけど、本当はさん付けの方が良かったかなぁ〜?」

 

「あぁ、いや! そこのところは気にしないでくれ。同じ学年で学ぶんだ、俺の事は好きに呼んでくれて構わないよ」

 

「私もだよ。“結城 ”さんじゃなくて、できれば “明日奈” って呼んで欲しいかなぁ〜」

 

 

驚くクラスメイトに気にしなくていいとなだめる二人。その行動や言動が、やはり似たもの夫婦なのだと改めて実感してしまう。

 

 

「あっ! そう言えば、ALOの楽しみを教えてもらおうと思ってたんだ! 何か情報ない?」

 

 

何かと情報を探る黛先輩。なんだかSAO時代の情報屋だったアルゴさんを思い出してしまう。

 

 

「そうですね……やっぱり空を飛べるのが一番ですかね…。後は、いろんなクエストや仲間との交流も出来るのがいいですね」

 

「そうね。それに何といってもゲームだからみんなで楽しく出来るところがいいわよね!」

 

「私もそれは思うなぁ〜! SAOの時の友達とかも一緒だし」

 

「そして、迫力あるモンスターとの対決や魔法とかも凄いし、プレイヤー同士のデュエルも中々熱いと思うぜ?」

 

 

一夏に続いて刀奈、明日奈、最後に和人という順で、それぞれが思うALOの魅力を話した。

周りも自分たちの想像できない物語や冒険の話を聞いて、ワクワク感が止まらないと言った感じだ。

 

 

 

「うんうん! こんだけ魅力を語ってくれたらもう大丈夫だね! ありがとう! 最後に記念写真とっていいかな? 専用機持ちみんなで集まって!」

 

 

 

この場に専用機持ちは五人。みんな一夏を中央に囲む形で左側に刀奈とセシリア、右側に和人と明日奈が立つ。

 

 

 

「それじゃあいくよー‼ はい、チーズ!」

 

 

パシャ‼ とフラッシュが焚かれた。記念すべき一枚の写真には、なぜか “全員” が写った。

 

 

「何でみんな入ってますのっ?!」

 

「いやいや、セシリアだけ抜け駆けは良くないでしょう?」

 

「そうそう、こういうのはみんな平等に、だよ!」

 

「あーまあいっか! 取材受けてくれてありがとう! クラス代表戦の時も優勝したら、取材お願いねぇー!」

 

 

 

そう言って、食堂を離れる黛先輩。

その後も、楽しいパーティーは続き、時間になる前に解散となった。

部屋に戻ってからは、約束通りセシリアのALOデビューをサポートし、装備や武器に、スキルなどのいろはを教えて、実際に低レベルモンスターの討伐をするなど、楽しくプレイした。

セシリアもなんだかんだで楽しそうで、魔法の呪文を覚えるのも早く、後方支援を専門とするウンディーネの “ティア” として、鮮烈なALOデビューを飾った。武器はメインで杖、サブでダガーを装備したが、もっぱら魔法メインのスタイルでいくようだ。

まぁ、ただでさえ一夏達のパーティーメンバーはメイジがおらず、明日奈と刀奈が回復魔法を駆使して何とかなっている状態なので、メイジ型のセシリア……もとい、ティアの存在は、重要性が増している。

今後も可能であれば、パーティーに入ってもらい、討伐クエストなどもはかどってくれる助かると思う一夏であった。

 

 

 

 

 

 

 

〜翌朝 一組教室〜

 

 

 

 

「ねぇねぇ、聞いた? 隣のクラスに転校生が来たんだって!」

 

「聞いた聞いた! 中国からの転校生なんだよね?」

 

 

 

何やら朝から騒がしく、どうしたのか訪ねてみたところ、隣のクラスに転校生がやって来た……ということらしい。

 

 

 

「転校生? この時期に?」

 

「いくらなんでも急過ぎじゃないか?」

 

 

その情報に一夏と和人が疑問を抱く。

転校生なのはいいが、時期的にも急過ぎるのだ。まだ入学して間もないのに、転校と言うのは、何かあるのではないかとSAO時代の勘がそう告げていた。

 

 

 

「今更ながら、わたくしの事を恐れての転校でしょうか?」

 

「うーん…どうなんだろう…。カタナちゃん、どう思う?」

 

「そうね…」

 

 

シャッ! と背筋を伸ばし、胸に手を当てて誇らしげに言うセシリアをスルーして、明日奈は刀奈に聞く。

 

 

「こういう権力的な物を行使出来るのは、国家代表生か、その代表候補生……だと思う。

でも、中国に私たちと同い年の国家代表生がいるなんて情報はなかったし…もしかしたら代表候補生かもしれないわね」

 

 

流石はその国家代表生にして生徒会長の楯無だと思う一同。

 

 

「でもでも、クラス対抗戦はうちがもらったも同然よね!」

 

「そうそう! なんてたって織斑くん強いし!」

 

「織斑くん! デザートフリーパス券……みんなの思いが織斑くんの剣にかかってるからね! 頑張って!」

 

「お、おう…が、頑張るよ」

 

 

今回のクラス対抗戦には、優勝したクラスにデザートフリーパス券が与えられ、食堂やカフェテリアで販売しているデザートが食べ放題と言う魅力的な賞品が付与されているので、俄然みんなの期待を背負うと同時に、他のクラスのクラス代表もやる気に満ちているのだ。

 

 

 

「そう言うことだ。だからお前には、休んでいる暇はないのだぞ! もっと特訓をして、勝たなければならないのだからな!」

 

「箒さんの言うとおりですわね。と言う事で一夏さん? 放課後はわたくしが特訓にお付き合いいたしますわ♪」

 

「待て! なんだその話は‼ ならば私も参加する!」

 

「あらぁ? 箒さんはどうやって参加いたしますの?」

 

「訓練機の使用許可を取れば問題ない! そう言う訳だ一夏、放課後は訓練するぞ!」

 

「あ、あぁ……」

 

 

鬼気迫る勢いの箒とセシリアに対して、断る事も出来ず、仕方なく頷いてしまった。

それを見て和人と明日奈はアハハ…っと苦笑いをし、刀奈に至ってはジィー…っと半目で一夏の事を睨みつけていた。

 

 

 

「まあまあ、大丈夫だよ! 今のところ専用機持ってるのって一組と四組だけだから、優勝は間違いなしだって!」

 

「その情報古いよ!」

 

「「「「んっ?」」」」

 

 

 

クラスメイトの言葉に反応する形で、第三者の声が一組内に響く。

その方向を見てみると、一人の女生徒が左手を腰に当て、仁王立ちのように立っていた。

 

 

 

「二組も専用機持ちがクラス代表になったの、そう簡単には、優勝させてあげないんだから!」

 

 

いきなりの宣戦布告に一組の教室がどよめく。そして、それを聞いていたセシリアが口を開く。

 

 

「初対面でいい度胸ですわね。しかし、その前に一つ……。あなたは…誰ですの?」

 

「ふっ……」

 

 

 

セシリアの質問に、不敵な笑みを浮かべ、答える少女。

 

 

 

「中国の代表候補生 凰 鈴音! 今日は宣戦布告に来たってわけッ!!!」

 

 

ビシッと指された右手の人差し指。

そして、その彼女を見ていた一夏が、立ち上がり、前にでる。

 

 

 

「鈴……お前、鈴かッ?!」

 

「……ぁ……」

 

 

そして、鈴もまたその少年を見つけて、目を丸くする。

何と言っても、自分が中国に帰る前から、ずっと寝たきりで、いつ死ぬかわからない状態に伏せられた少年だったからだ。

 

 

「一……夏……」

 

 

ゆっくりとした足取りで、一夏に近づく鈴。

そして、何故か一夏の体をペタペタと触る。

 

 

「お、おい、鈴?」

 

「一夏が……動いてる……生きてる…ッ! ううっ……!」

 

 

途端に目から涙がこぼれ、頬を伝って下へと流れ落ちる。

 

 

「一夏あああああッ!!!! ううっ、うわあぁぁぁぁ〜〜〜んッ!!!!」

 

 

勢いよく一夏の体に抱きつき、抱きしめる鈴。

驚き、その場でポカンッとする一夏。

そして、周りの一同は、何ごと!? っと言った感じで、目を点にしてその光景を見る事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





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