ソードアート・ストラトス   作:剣舞士

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久しぶりの更新!

仕事が忙しくて中々更新出来ませんでした…( ̄O ̄;)

今回はバトルはありません。


第7話 和解

【試合終了 勝者 織斑 一夏】

 

 

 

 

決闘が終わり、地面に仰向けで倒れていたセシリア。彼女の眼は、ジッと一夏を眺めていた。

何を言うわけでもなく、ただジッと空を飛ぶ白いサムライを目で追っている。体を起こそうにも力が入らず、何も考えてられないでいた。

この二試合、一人目の男子。桐ヶ谷 和人はとても力強く、それでいて巧みな剣技を持ち合わせた人物であった。

そして、最後に今自分を敗った男子。織斑 一夏。彼の剣は、和人の剣技とは打って変わって、素早く、その剣技の中には、洗練された何かがあった。

二人とも相当な実力者だった。自分を、国家代表候補生を敗ったのだから……。その実力は代表候補生クラス、いや国家代表クラスに匹敵してもいいと思う位であった。

 

 

 

「負けた……わたくしが…………うぅッ」

 

 

 

油断も手加減を一切無しでぶつかった。だが、負けてしまった。代表候補生の自分が、数日前にISを動かしたばかりの人達に、そして、ゲームに囚われ、二年間の時間を犠牲にするほかなかった人達に。完膚無きまでに。

その眼からは悔し涙が溢れて止まなかった。負けた事が悔しくて、自分の驕りが許せなくて……。

涙で滲んだ目の前に映る光景。上空から自分を倒した男子が地上に降り立った。

 

 

 

「…………大丈夫か? オルコット」

 

 

 

顔を覗き込む一夏の顔は、心配そうな顔だった。先ほどまでの強い意志や覚悟、はたまた信念が宿っているかの様な真っ直ぐな眼ではなかった……が、それでも何故か目を離す事ができなかった。

 

 

 

「大丈夫ですわ……これ位。……わたくしの負けですわね……」

 

「あぁ、そうだな……」

 

 

 

差し伸べられた一夏の手を握り、体を起こすセシリア。そして、ハッキリと自分の負けを認める。その瞬間、さらに涙は溢れ、彼女の頬を伝って、地面に流れる。

 

 

 

「……グスッ……ぁぁ、申し訳ありません……みっともないところを……」

 

「いや、気にしていないさ……それだけ、お前も本気でぶつかって来てくれたんだろ? なら、その涙はみっともなくはないと思うぞ」

 

「そんな事ありませんわ……。わたくしは、あなた方を罵倒した上に、この様な醜態を晒してしまいました……結城さんが言われた通り、わたくしは国家の代表でもある立場。そんなわたくしが、日本の国民を、あなた方SAOサバイバーの皆さんを否定し蔑んだ事、そして、無様に負けってしまった事……これをイギリス政府は黙ってはいませんわ……」

 

 

 

 

確かに、イギリスの代表候補生であるセシリアは、いわばイギリスの顔でもある。そんなセシリアが日本を侮辱し、さらにSAO事件の被害者たちの事も否定した。その上、一夏との勝負にも負けてしまった。この落とし前をイギリス政府は取らざるを得ないだろう。

 

 

 

「正式にイギリス政府に訴え出て頂いて構いませんわ……。わたくしは、それだけの事をあなたに、いいえあなた方にしてしまったのですから……」

 

 

そう言って、セシリアは一夏に改まって向き直ると、涙を拭き、深々と頭を下げた。

 

 

「数々の非礼、誠に申し訳ありませんでしたわ。貴族に、イギリス代表にあるまじき行為。許して下さいとは言いません。ですが、謝らせて下さい……本当に申し訳ありませんでした!!」

 

 

セシリアが深々と頭を下げるその光景をアリーナで見ていた全員が静かに見守っていた。

だが、対して一夏は……

 

 

 

「頭を上げてくれ、オルコット。別に俺はイギリスに問いただす気はない。ただ、少しは分かって欲しかった……それだけだ」

 

「…………えっ?」

 

 

 

一夏の言葉に顔を上げるセシリア。それもその筈、自分を訴える事を拒否したのだから。

 

 

 

「な、何を言ってますの? わたくしは、あなた方にーー」

 

「あぁ、確かにお前の言った言葉は許せない。あの世界での二年間を “無駄な時間” と揶揄した事は、SAOサバイバーである約六千人のプレイヤー達への冒涜だ……。たが、俺がお前のIS操縦者としての誇りや譲れない物を知らないのと同じ様に、お前もまた、あの世界の事を知らない……違うか?」

 

 

 

確かにそうだ。SAO事件発生当時、セシリアはそんな海の向こうで起きた事件の事など聞いてられない程、切羽詰まっていたのだ。

両親が早くに他界し、今までに築き上げてきたオルコット家の資産を守るため、誰にも奪わせない為に、ただひたすら勉強し、母の意志を継ぐために走り続けて来た。

ISの適性が高い事が分かり、より力をつける為に国家代表候補生になる為、様々な試験に検査を行い、操縦技術を磨いて来た。

巷では、当然未だに解放されないSAO被害者とその死亡が確認されたと言う話題が、ニュースで取り上げられていたが、セシリアにそんな事を気にする暇はなかったのだ。

 

 

 

「お前が、イギリス代表候補生としてどれほどの誇りを持っているか、そして、どれだけの覚悟を持っているのか、それを俺も知らないであそこまで感情的になってしまった。だから、俺の方こそ謝らせてくれ。……悪かったなオルコット。本当にすまない……」

 

 

 

セシリアの隣で片膝をつく様に座り、頭を下げた一夏。そんな一夏をセシリアは黙って見つめる事しか出来なかった。

 

 

 

「…………ふふっ。あなたは面白い方ですわね。憎むべき相手に頭を下げるなんて……」

 

「さっきも言ったろ? 俺はお前の事を知らないのに、お前を否定しようとしたんだ……その事は謝らなければいけないと思ってな。

俺も昔は自分の価値観だけで、剣を振るってた時があったからな……。そんな間違った剣の振るい方を叱ってくれて、正してくれた人が俺にはいたからさ……。

俺はただ単に、お前にとってそう言う仲間のように接していきたいと思っている。今こんな事を言うのはどうかと思うけどさ、俺と友達にならないか?」

 

「……ぁ……」

 

 

 

差し出された右手は、真っ直ぐセシリアに向かっていた。そして、一夏の真剣な眼差しから、本気で仲間と思いたい、繋がりたいと思う気持ちが現れ出ていた様な気がした。

だから、何も言わず、ただ黙って手を握り返した。

 

 

 

「こんなわたくしですが、どうか仲良くして下さいまし!」

 

「あぁ、よろしくな。俺の事は一夏でいいぞ!」

 

「では、わたくしの事もセシリアとお呼び下さい。これからよろしくお願いしますわ!」

 

 

 

固い握手を結ぶ二人の姿を安堵の表情で見守る和人達。

こういうところは、やはり一夏に任せて良かったと思う。

 

 

 

その後、セシリアは和人達の元へ赴き、謝罪をした。和人達もそれ程気にしておらず、快く謝罪を受け入れた。

 

 

 

 

「あっ! そう言えば、クラス代表って俺とキリトさん、どっちがなるんですか?」

 

「「「あ……」」」

 

 

 

一夏の一言に我に帰る一同。

一夏も和人もセシリアに勝っている為、当然クラス代表足り得ているのだが、問題はどっちがなるか……。

 

 

 

「キリトさん、やります? クラス代表…」

 

「いや、俺はいいや。俺、ソロだったし、こう言うのには向いて無いっていうか……」

 

「それを言ったら俺もソロですけど……」

 

 

お互い二年間の大半をソロで活動してきた身。刀奈と明日奈の様に、初めからSAO最強ギルド 血盟騎士団に所属し、二人とも副団長と言う立場にあったわけではない。

なので、二人して人の上に立って指揮すると言う経験は皆無に等しい。

 

 

 

「ここは年上のキリトさんが……」

 

「年は関係ないだろッ!? 俺も同じ一年生なんだから……」

 

「いや〜俺は無理ですよ。クラスの代表は向いてませんて……」

 

「それは俺だってずっとソロだったし……。そうだ! カタナかアスナがやればいいんじゃないか?」

 

 

 

やはりここは、副団長の経験がある二人に頼むしかなかった。だが、

 

 

 

「私は副団長って言っても、『隠密機動』の担当だったから、それと言う程の仕事はした事ないわよ? それに私は生徒会長だし……」

 

 

っとカタナが、

 

 

 

「ごめんねー。私、まだリハビリ中だから、多分クラス代表をやってる暇はないと思う……」

 

 

っとアスナが、

 

 

 

これで詰んだ。頼みの綱であった二人に断られ、再び考える一夏と和人。

 

 

 

「じゃあ、やっぱりここは……」

 

「…………剣で決着をつけるか?」

 

 

 

互いに待機状態のISへと意識を集中する。一夏は白いガントレットに、和人は黒いブレスレットに。

後は、それぞれの専用機の名前を叫ぶだけ……のはずだったが……。

 

 

 

「やめんか! 馬鹿どもがッ!!!」

 

「だあッ!」

 

「いッ!!」

 

 

バシィィィン!!!! っという強烈な音と痛みと共に、二人の頭から煙が出ていた。あまりの痛みに、その場にうずくまってしまった一夏と和人。それを見て心配そうに駆け寄ってくる明日奈と刀奈。

 

 

 

「キリトくん! 大丈夫?」

 

「あたたた……。今のは、強烈だったぜ……」

 

「全く、こうなる事ぐらいチナツならわかっていたでしょう?」

 

「いや、ここまで凄いのをもらうとは……」

 

 

そんな四人を眺めながら、千冬は先ほど二人を叩いた物……出席簿の表面を手ではたく。

 

 

 

「ここIS学園は、IS操縦者育成の為に、ISの展開や操縦が認められている。だが、不要な時と場所での展開は、例え国家代表候補生でも問題行動とみなされるぞ? それをわかった上で、堂々と私の目の前でISを展開させようとは……よほど私の特別授業が受けたいと見える……」

 

「「い、いえ……遠慮しておきますッ!!!」」

 

「そう言うな。何、お前達も大好きな “近接格闘” の特別授業だ……嬉しいだろ?」

 

 

 

ニヤリと笑う千冬に少し怯える一夏達。SAO時代のステータスの状態ならいざ知らず、今の生身で千冬とやりあうのは正直厳しすぎるので、辞退させてもらった。

その後、クラス代表については後日決める事にし、一行は明日奈のリハビリの為に、特別棟にあるトレーニングルームへと赴く。

 

 

 

「うわぁ〜〜ッ。凄いところだねぇー!」

 

「あぁ、大型のトレーニングジム並みの設備だぞ…これ……」

 

「ええ、俺が通ってたところよりも器具が多いですよ……」

 

 

三人が驚いていると、刀奈が白衣を着た女性と一緒にやってきた。

 

 

 

「どうも初めまして。結城 明日奈さんですね? 私はここでインストラクターをしている立花 千華(たちばな ちか)と言います。よろしくお願いします」

 

「は、はい! よろしくお願いします!」

 

 

 

そう言って、お互いに挨拶が済んだところで、早速二人はリハビリを開始した。

和人は明日奈に付き合うと言って、その場に残り、一夏と刀奈は簪が熱心に組んでいるという簪の専用機を組み立てる手伝いに向かう。

機体全体は出来ているとの事だったので、後は武装と稼働データの照合などなど……。

 

 

 

「じゃあ、また食堂でね!」

 

「えぇ、リハビリ頑張ってねぇ〜!」

 

 

 

明日奈と刀奈が手を振って、互いに別れた。

すると、突然一夏のスマートフォンにメッセージが入る。

差出人はクラインだった。

 

 

 

『よおッ! 入学してから一切の電話やメールがねぇーのはどういう事だッ!?

ちくしょう! 俺もそっち側に行きてぇぜ!!

あぁ、そう言えば、今度エギルの店でオフ会やるからよ! 日時は後日メールすっから、楽しみにしてろよ!!』

 

 

 

 

以上の文面であった。

 

 

 

「相変わらずなのね、クライン……」

 

「ま、まぁ、あの人らしいメールだけどな……っていうか、オフ会の事がついでみたいな文面だな。ホント、こういうところは弾と変わんないな……」

 

 

 

クライン……本名を壷井 遼太郎。SAO時代での俺とキリトさんの兄貴分だった人だ。彼も攻略組の一員で、ギルド『風林火山』のリーダーで、攻略組の中では、“絶対生還ギルド” と言われていた。それ程までに連携、チームワークが良く、メンバー同士仲がいい。

だが、女運はほぼ皆無で、可愛い女の子、綺麗なお姉さんを見つけては、プレイヤーだろうがNPCだろうが声をかけまくる程。

何というか…非常に残念な人だ。だが、本当に人としては出来た人で、俺もキリトも信頼を寄せている人物だ。

 

 

 

一方、このメールは和人にも届き……。

 

 

 

 

「パパ、クラインさんからメッセージが届いてます」

 

「ん、開いてくれるか? ユイ」

 

「はい! パパ!」

 

 

和人の持つスマートフォンから、可愛らしい声が聞こえ、和人の事をパパと呼ぶ。

言わずと知れたアスナとキリトの最愛の娘、ユイだ。

SAO時代、メンタルヘルスカウンセリングプログラム……その試作一号として存在していたユイは、公式サービス開始後、SAOの基本プログラムであるカーディナルによって行動を制限され、プレイヤー達が抱える負の感情を一人で受け持った為に、エラーを重ねていたが、22層のログハウスで生活を始めたキリトとアスナに惹かれ、彷徨い、二人はユイを保護した。

それからというものの、ユイの正体を知った後も、二人はユイを娘だといい、消滅しかけてたユイをキリトがシステムコンソールを使って、システムから切り離すという荒技でオブジェクト化し、SAO消滅後、ALOで再び巡り合った。

そんな最愛の娘が、スマートフォンのメッセージフォルダからたった今一夏も読んだメッセージを開く。

 

 

 

「キリトくん、ユイちゃん、どうしたの?」

 

「あぁいや、クラインからメールが届いててな…そのメール内容に呆れてたんだ…」

 

「へぇー。なんて書いてあるの?」

 

 

インストラクターから説明を受け、準備をするまで少し時間が空いたので、キリトとユイの元へと来たアスナ。そして、クラインからのメールを読む。

 

 

 

「あはは! クラインさん、相変わらずだね!」

 

「まぁ、あいつモテないからなぁ〜。さしずめ、女子高に入った俺とチナツが羨ましいんだろ?」

 

「もう、失礼だよ。キリトくん」

 

「でも、事実だぜ?」

 

 

 

和人の言葉も嘘ではないので、どう答えるか迷う明日奈であった。

その後は、準備を整え、明日奈はリハビリを始め、和人もユイからサポートする様に言われて、付き添った。

 

 

 

 

一方、一夏達は…

 

 

 

 

「簪、これはどこに運べばいいんだ?」

 

「あ、うん、それはコッチで、あっちのケーブルは打鉄弐式の後方…ブースターに接続するから……そこに…」

 

「はいよ」

 

「簪ちゃん、機体の稼働データはこの端末にアップロードすればいいかしら?」

 

「うん! お願い、お姉ちゃん」

 

 

ただいま絶賛、簪の専用機こと、打鉄弐式の製作に取り掛かっていた。

基本フレームと装甲は、開発元である倉持技研によって完成していたが、問題は武装と稼働データがないこと。

武装は、候補が既に決まっていた為、現在はその武装の取り付けとコアにインストールしている。後は、刀奈の持つ専用機、ミステリアス・レイディの稼働データを参照し、出力や機動などの必要はデータを打鉄弐式に呑み込ませなければいけない。

 

 

「これが完成したら、みんなで空を飛んでみたいものだな……」

 

「そうね……でも、ALOの方が、気分的には開放感があっていいわ」

 

「そうだね……でも、私も飛んでみたいな……一夏とお姉ちゃんが手伝ってくれたこの子とみんなで……」

 

「簪ちゃん……」

 

 

 

嬉しそうな表情で、簪を見る刀奈。共に空を飛ぶ。仮想世界ではなく、現実世界で、肩を並べて、一緒に……。

そう思うと、一夏も共に嬉しくなった。

 

 

 

「じゃあ、とりあえず第一目標として、稼働データを取って、みんなで空を飛ぶ。それからだな」

 

「そうね。まずはそこからね……どう? 簪ちゃん」

 

「うん! 私も賛成!」

 

「よし、決まりね!」

 

 

 

共に空を飛びたいという簪の夢、それを叶える為に、俺たちは作業に取り掛かった。

 

 

 

 

 

 





次回は鈴ちゃん登場くらいまでかな?

感想待ってまーす(^○^)

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