ソードアート・ストラトス   作:剣舞士

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ようやくExtra Edition編終了ダァーーーー!


第67話 Extra EditionXV

「よっしゃあ〜〜! 今度こそ出発だぜ〜!」

 

 

 

テンションを上げていくクラインの一言で、男性陣はその重い腰を動かした。

カタナからの説教を終えたチナツも、一旦ビーチチェアに座り込んで、しばしの休憩をした。

その間に、カタナとストレアの二人も、停戦協定を結んだ。

早々に和解まではいかなかったが、今回のクエスト中は、無事に遂行できるだろう。

 

 

 

「皆さーん! そろそろ出発しますよー!」

 

「はーい! 今行きますー!」

 

 

 

 

海で遊んでいた麗しの美少女たちに声をかけるクライン。

唯一、リズだけがクラインに疑いの目を向けていたのが気がかりだが……。

まぁ、それは置いておこう。

アスナが返事をして、みんなが海から上がってくる。

輝く海をバックに、色とりどりの水着が映える。滴り落ちる水と、濡れる髪や肌。

クラインのテンションはマックスになった。

だが、全員が一斉にウインドウを開き、ボタンを押した瞬間、全員の水着は跡形もなく消え去り、現れたのは、普段から着慣れている戦闘服になった。

 

 

 

「へっ?」

 

 

 

海の中に潜るに当たって、当然全員が水着姿だと思いますこんでいたクラインからしたら、テンションが急降下する事態だ。

 

 

 

「あ、あのぉ〜みなさん? クエスト中はずっとそのお装備で?」

 

「あったりまえでしょうー、戦闘に行くんだから。あんたも早く着替えなさいよぉ〜」

 

「…………あっ」

 

 

 

 

膝から崩れ落ちた。

しかも泣いている……。

 

 

 

「クライン、どんだけ期待していたのよ……」

 

「時折あの人の視線には、警戒してしまうな」

 

「口を開けば、キリトやチナツの愚痴だもんね」

 

「いい人物ではあるのだがな……下心丸見えでは、話にならん」

 

 

 

スズは呆れたように、カグヤは若干引き気味に、シノアは苦笑を交え、ラウラは辛辣にクラインに言葉を贈る。

ほんと、クラインには同情してしまう。

そんな中、今回のパーティーリーダーを務めるキリトから一言。

 

 

 

「みんな、今日は俺のお願いに付き合ってくれて、ありがとう。目標の大クジラが出てきた場合は、俺の指示に従ってください」

 

「「「「うん」」」」

 

「このお礼は、いつか精神的に……。そんじゃ、今日はいっちょ、頑張ろう!」

 

「「「「おおおっ!!!!」」」」

 

 

 

 

 

一致団結したところで、羽を広げ、みんなして空へと飛び立った。

たった一人、未だに泣き続けているクラインを置いていって……。

一同は、海上を悠々と飛行していき、雲の合間を切り抜け、目標座標に向かっていた。

背後に視線を移し、そこに映るALOの象徴とも呼ぶべき存在《世界樹》を確認する。

《世界樹》を中心に、山脈があり、九つの種族の領地があり、中立域の森があって、そして広大な海。

《世界樹》から最も遠い位置にいるはずなのに、その存在感は目に焼き付いている。

一度はあの樹の頂上を目指して、無茶ばかりしてきたと思うと、とても昔のように思えた。

 

 

 

「と、座標はこの辺りのはずだけど……」

 

 

 

いったん止まり、辺りを見渡してみる。

今回は海底にあるダンジョン……当然海の中なので、海面に何らかの目印があるはずだが……。

 

 

「お? あれじゃねぇーの?」

 

 

 

いつの間にか飛んできていたクラインが、ある方角を指差す。

そこには、エメラルドの光を放つポイントがあった。

キリトと無言で頷きあい、あれが今回の目的地だという事を確認した。

 

 

 

「それじゃあ、《ウォーター・ブレッシング》の魔法かけるね?」

 

「はいはーい! 私もかけるから、こっちに集合集合〜!」

 

 

 

アスナとカタナが、ともに右手を高く掲げた。

魔法の発動呪文を詠唱すると、詠唱された文字が、まるで魔法陣のように展開される。

詠唱をし終わると、パーティー全員に魔法の付加が行われた。

綺麗な光が全身を包み、自身のHPゲージの上に、小さなアイコンが表示される。

これで、魔法の付加は完了だ。

 

 

 

「よし……!」

 

「みんな、行こう……!」

 

 

 

先行してキリトとチナツが急降下していく。

それに続き、アスナたちも急降下していき、やがて大きな水柱を立てて、海中へと入っていった。

海に入ると、羽は自然と無くなり、あとは自力で泳いでいくのみ。

海中であるのに、自由に呼吸や会話ができる事に、少しの感動を覚えながら、一行はどんどん潜って行く。

そんな中、初めてプール以外の水に潜ったリーファ。

目を開けると、急に視界がぐにゃりと歪んだ。

 

 

 

「んっ?! んんっ!!!」

 

 

 

魔法の効果によって、呼吸は問題ないはずだが、どうにも慣れていないようだ。

慌てて身動きしているところに、両手が誰かに引っ張られていく。

 

 

 

「リーファちゃん」

「リーファ」

 

 

左手をアスナが、右手をカグヤが握っていた。

ウンディーネとサラマンダーの少女たちに手を引かれて、シルフの少女はともに海底を目指す。

白い流麗なドレスと、緋く勇ましい羽織がリーファを導き、そして一行は、その目的地へとたどり着いた。

 

 

 

「ぉ……!」

 

「すごい……!」

 

 

 

視線の先にあったもの……それは大きな神殿であった。

もしも現実世界で、このような神殿が発見されていたのなら、間違いなくスクープになっていたかもしれない。隆起した地形にあわせて、建っているその神殿の近くに、円形の広場があり、そこからずっと、一本道が続いている。

 

 

 

「わぁー……すごいですね……!」

 

「ん、あそこに誰かいるわよ?」

 

 

 

シリカが驚き、リズは広場にいた誰かに向かって指をさす。

その指差す方角へ、全員の視線が集まった。

確かに、そこには白いローブのようなものを羽織った人型の何かがいた。

 

 

 

 

「ん? なんかが頭の上で光ってるぞ?」

 

「おおー! 本当だぁー。あれって多分……」

 

「クエストNPCみたいだな」

 

 

 

ラウラ、ストレア、エギルという異色コンビで一言ずつ述べる。

そんな雰囲気を、またしてもこの男が打ち砕く。

 

 

 

「海の中で困っている人とくれば、人魚と相場が決まってるぜ! マーメイドのお嬢さん! 今助けに行きますよぉ〜!」

 

 

 

相変わらずぶれないというかなんというか……。

 

 

 

「たく、クラインのやつ」

 

「まぁまぁ、いいんじゃないかな?」

 

「シノアは優しいな」

 

「え? そうかな?」

 

「いや、優しいよ……ほんと……」

 

「キリト、なんでそんな可哀想な目でクラインさんを見ながら言うのかな……」

 

 

 

ここにいる天使は、シノアだけだったようだ。

そうこうしている内に、クラインは広場にいるNPCの前に着地し、これぞ紳士……と言った感じで、膝をつき、右手を伸ばす。

 

 

 

「何かお困りですか? お嬢さ……んっ?!」

 

 

 

クラインが言葉に詰まっている。

よくよく見れば、そこにあっていたNPCは、ヨボヨボの老人だった。

 

 

 

「ぶはっ!?」

「お嬢さんじゃなくて、お爺さんでしたね」

 

「キュウ……」

 

「おお、ユイ上手いねぇー!」

 

 

 

仲睦まじい姉妹の会話を聞きながら、キリトは未だに固まっているクラインの横をすり抜けて、NPCに話しかける。

 

 

「どうしました、ご老人?」

 

 

キリトの話しかけに応じて、頭上にあった?マークが!マークへと変わる。

 

 

「おおっ、妖精たちよ……この老いぼれを、助けてくれるのかい?」

 

 

なんとも定番な語り出しから始まり、ようやく今回の目的を遂行できそうだ。

そんな時に、リーファがNPCを見て、何やら不思議そうに見ていた。

 

 

 

「どうしたの、リーファちゃん?」

 

「あ、いえ……なんか、あのお爺さんの名前……どこかで見たような気がして……」

 

「名前?」

 

 

リーファの言葉に、カグヤが老人の名前をみる。

名前は《Nerakk》となっていた。

 

 

「なんだ……あの名前? ネラッ……ク? いや、そんな名前聞いたことないぞ」

 

「うーん……私の勘違いかなぁ〜?」

 

 

 

そうこうしている間にも、老人の話は進んでいく。

 

 

 

「実は、古い友人に送る土産物を、この神殿を根城にしている盗賊たちに奪われてしまってのぉ……。

すまんが、わしの代わりに取ってきてはくれんかのぉ……?」

 

「わかりました。それで、土産物ってどんなの?」

 

「おおっ、そうかそうか! 引き受けてくれるか。土産物はこれくらいの大きさの真珠なんじゃ」

 

 

 

 

と、老人が表した大きさは、およそバスケットボールと同じくらいだと思う。

 

 

 

「デカッ!」

 

「ネコババして売りに出したりしたら、ダメですからね?」

 

「キュウ……」

 

「し、しないわよ……今回は」

 

(((今回は……?)))

 

 

 

商売人として、これは売りに出したほうが得だと直感したリズ。

しかし、そんなリズの心を読んでいたシリカとピナに、釘を刺された。

しかし、今回は……?

カグヤ達IS学園組が、一様に首をひねった。

その口ぶりだと、以前にもやったことがあるような感じだが……。

 

 

 

 

「ありがとう、妖精たちよ。無事取り戻してきたあかつきには、たっぷりと礼をするでのぉ」

 

 

これにてクエスト受諾。

ようやく始められる。

クエストの名前は……《深海の略奪者》だ。

 

 

「どうやら、探しもの系クエストみたいだけど、神殿内には、もちろんモンスターが現れるだろう。

前衛は、水中だと武器の振りが遅くなることに気をつけて。後衛は、雷属性の魔法が使えないことに注意」

 

「「「はい!」」」

 

「よし、それじゃあ行こうか……!」

 

 

 

 

そう言って、一同は神殿内に足を踏み入れた。

そんな中、やはりリーファだけが、老人の名前がおかしいと疑っているのか、ずっと疑心の目を向けていたのは、誰もわからなかった。

 

 

 

 

「うわおー! 凄い凄い!」

 

「おい、ストレア……あんまりはしゃぐなよ? モンスターに見つかっちまう」

 

「大丈夫だって! そんじょそこらのモンスター程度なら、私が倒してあげるから♪」

 

 

 

まるで幼い子供のように、冒険を楽しんでいるストレア。

今回はユイのための冒険なのだが、ある意味では、ストレアだって初体験なのだ。

まだ見ぬ世界へと足を踏み入れ、いろんなものを知っていく楽しみを、今まさに感じているのかもしれない。

そんな中、先頭を歩いていたキリトに、クラインが近づいて耳打ちする。

 

 

 

「おい、キリトよぉ。リーファちゃん、水中戦闘苦手なんだろう? もう少し気ぃ使ってやったほうが良くねぇか?」

 

 

クラインの言葉に、キリトは後ろでアスナ、カグヤと話しているリーファに視線を移す。

見た感じ、二人のおかげでリーファはとてもリラックスしているように思える。こういう所を素直にできない分、アスナには助かっている。

また最近では、カグヤともよくクエストを受けたりしている面もあるようで、カグヤにもリーファの事を任せてしまっている。

 

 

「うーん……コンビの時は良いんだけど、こうやってパーティー組んでる時、接し方に迷うんだよなぁ……」

 

「そんなの自然体で良いだろ……? 兄貴なんだから、もう少しちゃんと見てやんねぇとダメだぞう?」

 

「……でもな、最初に会った時、妹だって気づかなーーーおっ?!」

「………………うおっ!?」

 

 

会話が途切れた。

何故か?

それは二人が巨大な落とし穴に落ちたからである。

そして、落ちた落とし穴には、ある仕掛けがあったようで、まるで水洗トイレに回されているように吸い込まれる、

 

 

 

「「うおおおおおおおおおーーーーッ?!!!!」」

 

 

 

急いで浮上するために、超速泳ぎで、元の場所へと戻る。

 

 

 

「「プハッ!!!!」」

 

「ったく……見えてる落とし穴に、落ちる奴があるか……」

 

「ある意味凄いですよ、二人とも」

 

 

 

絶対にないだろうということを目の前で起こした二人には、エギルとチナツからの微妙な反応が待ち構えていた。

その後、エギルとチナツによって引き上げられるクラインとキリト。

その後ろでは、初心者だってやらないだろうということをやってのけた二人に対して、リズたちは呆れた表情で見ていた。

 

 

「これが元攻略組のトッププレイヤーとはねぇー……」

 

「大丈夫ですよ! 私はどんなキリトさんだって……!」

 

「ふんっ」

 

「あうっ」

 

 

さり気ない一言が多い、このシリカ嬢ちゃん。

そんなシリカには、リズの小突きは与えられた。

 

 

「まぁ、こんな事もあるでしょう……」

 

「そうだな。猿も木から落ちるというしな」

 

「だが、ここは戦場だぞ。気を抜いていては自滅する羽目になる」

 

「ま、まぁまぁ……とりあえず無事だったんだから良いんじゃない?」

 

「「あっははは……」」

 

「っ! パパ、後ろです!」

「チナツ! なんかいるよ!」

 

 

 

 

ユイとストレアの声に、その場にいた全員が身構える。

すると、先ほどの落とし穴から、巨大な何かが現れた。

 

 

 

「うおっ?! 出たか、クジラか?!」

 

「どう見ても違うだろう……戦闘用意!」

 

 

 

目の前に現れた、シーラカンスのようなモンスター。水中では圧倒的にこちらが不利だ。

軽快な動きでこちらにやってくるモンスターに対して、キリトが剣を振り、斬り裂こうとするも、硬い感触が剣から伝わってきて、モンスターにダメージはないようだ。

 

 

 

「くっ、頭にはダメージは通らない! 俺がタゲを取るから、みんなは側面から攻撃してくれ!」

 

「おっしゃあ!」

 

「任せろ!」

 

 

 

キリトがモンスターのヘイトを稼いでいる間、エギル、クラインらが側面の体を切り刻む。

 

 

 

「私たちも行こう!」

 

「はい!」

 

「俺たちも行くぞ! シノアはカタナと一緒に、魔法で援護を!」

 

「了解!」

 

 

 

続いて、リズ、シリカたちが攻撃に加わり、その後ろからチナツ、カグヤ、スズ、ラウラ、ストレアも参戦する。

 

 

 

「なら、私も……う、うわぁ?!」

 

 

 

リーファも参戦しようとするが、水中戦闘独特の浮遊感。

水の中にいるために起きる、体の抵抗感覚……そして、水の中が苦手なリーファ自身の問題を重ねると、とても素早く動くのが難しい。

現に、踏み込んだ足が、妙に浮ついて、踏み込みが甘くなる。

 

 

 

「リーファ! アスナと一緒に、魔法で援護頼む!」

 

「っ……!」

 

 

 

即座にキリトがリーファに指示をし、リーファもそれに従って、支援魔法を発動させ、みんなの動きをサポートする。

 

 

 

「サンキュー、リーファ! ええいっ!」

 

「てやあ!」

 

 

 

リズのメイスが食い込み、シリカの短剣が切り刻む。

 

 

「ええ〜い!」

 

「はあっ!」

 

「うりゃあー!」

 

「ふん!」

 

「はっ!」

 

 

 

 

続いて、ストレアの両手剣がモンスターの体を叩くように振り下ろされ、それにつづき、カグヤの一刀とスズの一撃が振るわれ、ラウラとチナツが的確にモンスターを攻撃していき、斬られていくモンスターも、苦しそうな声を上げる。

しかし、リーファ自身が、それでは納得できないでいた。

 

 

 

(せっかくアスナさんたちに手伝ってもらって、頑張ったのにーー!!!!)

 

 

このクエストのために、現実世界では猛特訓を積んだ。

現に、泳げるようにだってなったのだ。

だからこそ……

 

 

 

(お兄ちゃんたちと、みんなとどこまでも飛ぶって決めたのにーーッ!!!!)

 

 

 

兄と交わした約束。

二人で……いや、みんなでどこまで飛んでいくと、いろんな冒険をしようと……そう決めた。

だから……!

 

 

 

 

「っ!」

 

「リーファちゃん?!」

 

「大丈夫です! 今度こそーーッ!」

 

 

 

 

剣を抜いて、しっかりと地面をつかみ、踏み込んだ。

 

 

 

「やあああああっ!」

 

 

 

剣を振りかぶって、思いっきり上段斬りを決めるつもりだった。

だが、その目標であるモンスターが、いきなり動きを変えて、キリトの拘束から抜けると、素早く泳いで回避し、今度はぐるぐると高速で泳いで、超高速で回る竜巻を作り出した。

そして、地面から飛び、こちらへとやってくるリーファに対して、その竜巻をぶつける。

 

 

「う、うわあああっ!?」

 

 

 

竜巻に飲み込まれ、自身の得物まで落としてしまった。

しかも最悪なことに、投げ出されたところには、先ほどのキリトとクラインが落ちた落とし穴が……。

トラップが発動し、リーファを落とそうと引きずり込んでいく。

 

 

 

「リーファ!」

 

「っ!」

 

 

 

だが、絶望的なリーファの手を、握る者がいた。

桜色の髪を、自分と同じポニーテール姿のサラマンダーの少女。

 

 

 

「カグヤさん!」

 

「掴まれ、リーファ! 離すなよ!」

 

 

 

落ちる瞬間に、咄嗟にリーファの手を掴んで、自分の持つ刀。地面に突き刺して、どうにか耐えているようだったが、それを見逃すほどモンスターも優しくなかった。

 

 

 

「ちっ! 小癪な……!」

 

 

 

どうやら、もっと強い竜巻を作って、カグヤもろとも引き摺り込もうという算段らしい。

そして次第に、引き込まれる力が強くなりつつあり、このままでは、カグヤとリーファは、間違いなく飲み込まれてしまう。

だが、あまりの水圧に、キリトたちも身動きができないでいた。

 

 

 

「くそっ……!」

 

「キリトさん! リーファさんが……!」

 

 

 

どうにかして、二人を助けないと……。

そう思いながら、キリトは辺りを見回す。

 

 

 

「カグヤ! 踏ん張りなさいよ!」

 

「今助けに行くぞ!」

 

 

 

スズとラウラが、少しずつ近づいていこうとするが、あまり近づき過ぎると自分たちまで危うい状況になる。

 

 

 

「っ……ふっ!」

 

 

 

そんな時、キリトが自ら竜巻の中へと入っていった。

 

 

 

「キリトくーんっ!」

「キリトォォっ!」

 

 

 

 

キリトが飛び込んですぐに、チナツがゆっくりと立ち上がった。

 

 

 

「チナツ?」

 

「何するつもりなのよ、あんた?」

 

「あの竜巻を、一瞬だけでも止める……っ!」

 

「はぁ?! 無理でしょうよ!」

 

「いや、行ける!」

 

 

 

 

刀を鞘に納めて、しっかりと足を踏ん張る。

 

 

 

「………………」

 

 

 

じっと、荒れ狂う竜巻を睨みつける。

そして、竜巻の隙間から覗く、モンスターの目を見つけた瞬間、チナツが動いた。

 

 

 

「そこだッ!!!!!」

 

 

 

振り抜く一刀。

その斬撃が、水の波動となって、竜巻に迫る。

そして、そのまま竜巻を一瞬だけ斬り裂き、中で竜巻を作っていたモンスターに直撃する。

 

 

 

「キリトさんっ‼︎」

 

 

 

竜巻の中でバランスをとりながら、天井に足をつけ、思いっきり蹴った。

 

 

 

「はあああああああーーッ!!!!!」

 

 

 

一直線に飛び込んできたキリトの剣は、ものの見事にモンスターの背中を一刺し。

その瞬間、モンスターのHPが全損し、ポリゴン粒子となって、その場から消えて無くなった。

 

 

 

「ぁ…………」

 

 

 

その光景を、リーファはふと思い出した。

かつて、こんな光景を、一度見ていなかったか……と。

そう、あれはまだ、自分も兄も、小さかった時の事だ。

庭にある池を眺めていて、その池の水面を悠々と移動するアメンボを見ていた。

手を伸ばせば届く距離だと思い、直葉は手を伸ばした。

だが、思ったよりも距離が遠く、必死に手を伸ばし続けた……結果、足を踏み外して、池の中に落ちてしまった。

沈んでいく体……冷たい感覚が、小さい直葉の体を包み込んでいく。

そんな時だった。

沈んでいく自分の手を、誰かが握り、そのまま引き上げてくれたのだ。

 

 

 

「プハッ! けほっ、けほっ……! ううっ……」

 

 

 

涙目ながらに、掴んでいる手の主を見上げる。

そこには、必死な表情で直葉を見ていた兄・和人の姿があった。

 

 

 

 

 

「リーファ!」

 

「っ!」

 

「待ってろ、今引き上げる!」

 

 

 

 

 

カグヤの声が聞こえた。

必死に手を掴んで、引き上げようとしてくれている。

しかし、支えにしていた刀が、地面からするりと抜けてしまった。

リーファを引き上げるつもりが、カグヤもろとも引き摺り込まれてしまう。

 

 

 

「「うわあああああああーー!!!!」」

 

「スグッ!」

 

「箒ッ!」

 

 

 

その時、落ちる二人の腕を掴む者達がいた。

 

 

 

「お兄ちゃん……!」

 

「一夏……!」

 

 

 

二人は必死に引き上げようとするが、またしても引き摺り込まれそうになる。

そこで、キリトをクラインとエギルが、チナツをスズとストレアが二人がかりで引き上げる。

そのおかげで、なんとか全員生還することができた。

 

 

 

「はぁ……はぁ……お兄ちゃん……」

 

「ん?」

 

「また、助けてくれたね……ふふっ♪」

 

「ぁ……」

 

 

 

リーファの笑顔に、皆が明るい表情に戻った。

 

 

 

「ありがとう……助かった、一夏」

 

「なに、気にするなよ。助けるのは当然だろう?」

 

「っ……!」

 

 

 

一夏に助けられたのは、これで三度目だ。

優しく微笑みながら、こちらを見ている。

そんな顔を見るのは……小学生の頃以来だった……。

あの時と同じように、一夏は自分を救ってくれた。

 

 

 

 

「よし、全員無事だった事だし、さっさとこのクエストを片付けますか!」

 

「「「おおっ!」」」

 

 

 

キリトの掛け声に、みんなの気合いが再び入った。

その後もさまざまなトラップなどに出くわしたが、みんな冷静に対応した。

道中さまざまな水棲型モンスターに出会うも、キリトたちの連携を駆使すれば、なんの障害にもなりえなかった。

今度の戦闘からは、リーファも前衛で戦いに参加し、今まで以上に攻略が進んだ。

そして、とうとう奥の間へとたどり着き、クエストのキーアイテムである『大きな真珠』を手に入れた。

その後は、キリトが真珠を抱え、老人の元へと思ったが、帰りの道中には、ある事を思い出した。

 

 

 

「うへぇ〜……俺もう当分エビだのカニだのは見たくねぇ……」

 

「イカとタコもな……」

 

 

 

散々水棲型モンスターと戦ったため、今はどれも見たい気分ではなかった。

この中でも長齢なエギルとクラインは、揃って神殿の階段に腰を下ろした。

 

 

 

「しっかし、結局出てこなかったなぁ……クジラ」

 

 

 

そう、今になって思い出したが、今回の目的は、ユイにクジラを見せる事だ。

しかし、その肝心のクジラは、クエスト中には一切出てこなかったのだ。

 

 

 

「でも、ユイちゃんとっても楽しそうでしたよ?」

 

「私も楽しかったぁーー!」

 

 

 

シリカが笑顔でいい、その隣で、ストレアが両腕を上げて喜びをあらわにしていた。

 

 

「うむ……水中での戦闘という貴重な体験もできたしな」

 

「うん、そうだね……。僕も今回は魔法スキルを上げる事ができたし!」

 

 

 

相も変わらず仲良しなラウラとシノア。

この二人はいいコンビだ。

 

 

 

 

「お土産、取り返してきましたよ」

 

「おおっ! これぞ正しく……っ!」

 

 

 

キリトが老人に、目的の真珠を見せる。

老人NPCは、ようやく手元に戻ってきたと、歓喜の声を上げた。

 

 

 

「そういえば、あのおじいさんから真珠を盗んだ盗賊たちも出てきてなかったわよね?」

 

「そういえば……」

 

「あのカニとか魚たちの事だったのかもよー?」

 

「だが、奴らにそんな知性があるとは思えんが……」

 

 

 

リズの言葉に、リーファは思い出したかのようにつぶやいた。

スズの意見は一理あるが、だからと言って宝を欲するようには思えないと、カグヤが疑心を持った。

確かにおかしい……。

では、おじいさんのいう盗賊たちは一体どこに?

 

 

 

「ッ! キリトくん、待って!」

 

 

 

と、アスナが急に大声で叫び、キリトの元へと走っていく。

そして、キリトの持つ真珠を、強引に奪うと、それを宮殿を照らしている光に透かしてみた。

するとどうだろう……真珠の中に、まるでヘビのような生き物が蠢いているの見えた。

 

 

「これ、真珠じゃなくて卵よ‼︎」

 

「た、卵?!」

 

 

 

そこでようやく、キリトは気がついた。

おじいさんの言う盗賊たちの姿はなかった。

出てきたのは、まるで何かを守るために、侵入者たちを倒そうと現れた魚群たち。

つまり、《深海の略奪者》というクエストというのは……。

 

 

 

「《深海の略奪者》って……俺たちのことだったのか!?」

 

 

 

そうなれば、全てが納得いく。

 

 

 

「さぁ……それを早く渡すのだ……」

 

「「っ!?」」

 

 

 

先程までと違い、何やら目の前の老人の声色が変わったような気がする。

目的のものを目の前にした悪人のように、声のトーンが一段階下がった。

キリトは卵を持つアスナをかばうようにして立ち、すぐ後ろでは、何か嫌な気配を察知したのか、チナツが急いでこちらに向かってきていた。

 

 

「渡さぬというのであれば……仕方ないのぉ……っ!」

 

「「「っ?!」」」

 

 

 

 

老人の目が、怪しげな赤色に光る。

すると、ヒゲがニュルニュルと伸びていき、やがてそのヒゲが老人を包み込んでいく。

そして、そのヒゲから現れたのは、巨大な白いタコだった。

しかも、老人の名前が、まるでモノグラムのように入れ替わっていく。

元の名前が《Nerakk》だったのが、今は入れ替わって《Kraken》に。

 

 

 

「クラーケンっ!? 北欧神話に登場する海の魔物!」

 

「なんでこんなところに!」

 

 

 

リーファとシノアがともに驚愕の声を上げた。

《クラーケン》

古代から中世、近世と、多くの船乗りや漁師たちにその存在を知られている海の怪物だ。

どんな船をも一度掴めば離さず、たとえ帆に登ろうと、甲板に隠れようと、必ず船を沈め、海に落ちた船員たちを貪り食うと言われ、その時代の人々の間では、一度出た船が帰ってこなければ、それはクラーケンによって捕食されてしまったと信じられているほどだ。

 

 

 

 

「礼を言うぞ、妖精たちよ。我を拒む結界が張られた神殿からよくも『巫女の卵』を持ち出してくれたのぉ。

さぁ、それを我に捧げよーーーーッ!!!!!」

 

「お断りよ! この卵は、私たちの手でもう一度神殿に返します!」

 

 

 

 

アスナの言葉を皮切りに、全員が戦闘準備開始。

前衛職は武器を抜き放ち、後衛職は魔法詠唱を行う。

 

 

 

 

「愚かな羽虫どもよ! ならば、深海の藻屑となるがよいぃーーーーッ!」

 

 

 

クラーケンから放たれる触手による叩きつけ攻撃。

それを、一番パワーのあるエギル、クライン、ストレア、スズの四人が受け止める。

だが、思ってた以上の力が、四人の体を襲い、踏ん張るので精一杯だった。

そこに、リーファが支援魔法で援護し、四人の動きをサポートする。

シリカとシノアも魔法を詠唱し、キリトとチナツの剣に、付加魔法をかける。

キリトの剣には炎が吹き荒れ、チナツの刀には風が包み込む。

 

 

 

 

「せえええやあッ!」

「おおおおッ!」

 

 

 

付加魔法をもらった二人は、同時にクラーケンの触手を斬り裂いた。

だが、その傷跡から、ボコボコと泡が立ち込めると、瞬時に再生してしまった。

 

 

 

「なっ!?」

 

「嘘だろっ?!」

 

 

 

HPゲージを見ても、大したダメージを与えられてるとは思えなかった。

そして、多くの触手によるさらなる叩きつけ攻撃が、キリトとチナツの二人を襲う。

 

 

 

「キリト!」

「チナツ!」

 

 

 

そこにリズ、カグヤが飛び込んで、なんとか直撃を避けるが、あまりの威力に、広場の床が砕け散り、その衝撃によって、キリトたちも大ダメージを負ってしまった。

吹き飛ばされ、床に倒れこむキリトたち。

その後ろでも、触手を受け止めていたクラインたちが倒れていた。

HPがまだ残っているとはいえ、みんな危険値であることに変わりはない。

苦しげな表情で、クラインの姿を視認したキリトの耳元に降り立つユイ。

 

 

 

「パパ! あのタコさん、ステータスが高過ぎます! 新生アインクラッドのフロアボスを、遥かに凌ぎます!」

 

 

 

今ではALOの空を飛んでいるアインクラッドだが、そのレベルは、かつてのものよりも強力になっている。

ソードスキル、魔法……システム的にプレイヤーのバトルスタンスが向上したのと同じように、各階層のフロアボスもまた、かつてのアインクラッドのフロアボスよりも強くなっていて当然なのだが、目の前にいるクラーケンは、そんなボス達をも軽く超えているとユイは言っているのだ。

フロアボスでさえ、7×7の49人からなるフルレイドで挑まなければならないのに、こっちはたったの14人。

初めから圧倒的に不利なのだ。

そうこうしている内に、クラーケンが大きな口を開いた。

円形の筒状になっている口が、不気味な音を鳴らしながら、細かく振動していた。

そして、キリトたちを全員喰らい尽くさんと、勢いよくこちらへと向かってきた。

だが…………。

 

 

 

 

ザンッーーーー!

 

 

 

「ぬっ!? こ、この槍は……っ!」

 

 

 

クラーケンの目の前に突き刺さった、三又の巨槍。

それが、まるで結界になっているかのように、波紋を広げてクラーケンを寄り付かせない。

しかし、この槍は一体どこから飛んできたのか、全員が唖然としてみている中、キリトたちの後方より、大きな巨人が降り立った、

その頭の上に表示される名前は……《Leviathan》。

読み方は……《レヴィアタン》……その別名は、《リヴァイアサン》だ。

 

 

 

「久しいな古き友よ。相変わらず悪巧みがやめられないようだな」

 

「貴様こそ、いつまで《アース神族》の手先に甘んじているつもりだ……! 海の王の名が泣くぞ!」

 

「私は王という立場で満足しているのだよ。そしてここは私の庭……そうと知りつつ戦いを挑むか? 深淵の王……」

 

 

 

 

 

両者の言葉の掛け合いは、なんとも貫禄のあるものだった。

海の王《リヴァイアサン》の言葉に、クラーケンは一歩、また一歩と後ろに下がり始める。

 

 

 

 

「今は退くとしよう……だが友よぉ……儂は諦めんぞ! いつか『巫女の卵』を手に入れ、忌々しい神々に復讐するその時までぇーーーーッ!」

 

 

 

 

クラーケンはそれだけ言い残し、光の入らない暗闇の世界へと消えていった。

 

 

 

 

「その卵はいずれ全ての空と海を支配するお方の物。新たな御室に移さねばならぬゆえ、返してもらうぞ」

 

 

 

右手を伸ばし、掌が淡い緑色に光る。

すると、アスナの持っていた卵は、その光当てられて、一瞬にして消えてしまった。

そして、キリトたちの目の前に表示された《Congratulations!》の文字。

 

 

 

「って、これでクリアかよ……一体、何が何やら……」

 

「あたし、おっさんとタコの会話何一つ理解できなかったわよ?」

 

 

 

確かに、意外な結末を迎えてのクエストクリアだったため、どこか腑に落ちないところがたくさんある。

 

 

 

「今はそれで良い」

 

「「「「えっ?」」」」

 

「さて、そなた達の国まで送り返してやろう……妖精達よ」

 

「送るって……どうやって?」

 

 

 

まさか海の王直々で送ってくれるわけではないだろう……ならば、一体何がどうやって?

と、その疑問に答える者が……王の後ろからその巨体を現した。

 

 

 

「「「「おおおおおっ!?」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クオオオオオーーーーンッ!!!!!

 

 

 

 

 

ザパーンと海面を突き破り、その姿を表す世界最大級の哺乳類《クジラ》。

キリトたちはなんと、その背中に乗って、海から出てきた。

先頭では、ピナの上に乗ったユイが、大きく両手を広げて、その感動を小さな体で存分に感じていた。

 

 

 

「クジラさん、とってもとっても大きいです!」

 

「クアァ〜!」

 

 

 

賛同するように、ピナも鳴く。

そんな姿を、キリトとアスナ……両親は優しく微笑みながら、見ていた。

そんなキリトの両肩を、クラインとチナツが置いて、何も言わずに微笑んでいた。

アスナのところにも、カタナがやってきて、「よかったね」と一言。

これで一つ、ユイの夢を叶えることができたのだ。

そんな中、リーファとカグヤは、みんないる後ろの方でじっと、キリトとチナツを見ていた。

互いに、まだ諦めきれない気持ちが残っているのか、二人はそっと自分の胸に手を置いた。

だが、これで決心がついたのも確かだ。

これからは、違う形で、キリトとチナツと、関わり合えたらそれでいい……。

そういった、いろんな想いが交錯する今回のクエストは、無事終了という事で、幕を閉じたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、カグヤさん……ちょっといいかな?」

 

「ん? なんだ、リーファ。改まって……」

 

 

 

 

クエストな終わり、全員でイグシティにあるエギルの店で祝勝会をしていた時のことだった。

不意に二人っきりになってしまった、リーファとカグヤの二人。

そんな中、リーファが面と向かって、真剣な表情でカグヤを見ていた。

 

 

 

「あの……さ。こんなことを、仮想世界でいうのは、本当はどうかと思うんだけど……」

 

「ん? なんだ?」

 

「その、篠ノ之さんの事を、“箒” って呼んでもいいかな?」

 

「っ?!」

 

「ダ、ダメ……かな?」

 

 

 

そう言えばと、カグヤはこのクエストを始める前、現実世界であった時、自分はリーファの事を『桐ヶ谷』と呼び、リーファはカグヤのことを『篠ノ之さん』と呼んでいた。

 

 

 

「ダ、ダメではないが……いきなりどうしたんだ?」

 

「うん……なんかね、ずっと、私は篠ノ之さんと、友達になりたいなぁ〜って思っててね?

あの剣道大会の時、篠ノ之さんの強さに圧倒されて、負けちゃったんだけど、今なら、あの時の篠ノ之さんの気持ちが、少しわかったような気がするだ」

 

「…………」

 

 

かつて、二人は同じ土俵で、竹刀を合わせた。

しかし、その時の箒は、自分の境遇に苛立ち、圧倒的な力で他の者を打ちのめした。

その時に言われた一言が、『あなたの剣は、剣道の剣じゃない。ただの暴力だ』という物だった。

だから、自分が強いだなんて、本当は思ってなんていない。

むしろ弱いから、強さとはなんなのだろうと模索しているのだ。

 

 

「そ、その……桐ヶ谷。私は、強くなんか、ない。それは、私自身がわかっているんだ……お前も見ただろう? あの時の、私の剣を……」

 

「うん……」

 

「ならばわかったはずだ……私の剣は、まだまだ未熟な物なんだ。今の私の剣では、何も成せないし、もしかしたら、誰かを傷つけてしまう……それが桐ヶ谷、お前だったとしても……」

 

 

 

現に、先日の臨海学校では、その所為で一夏を危険にさらしてしまった。これがもし、リーファだったなら?

だから、友達だなんて……とても恐れ多い……。

 

 

 

 

「ふふっ……やっぱり、篠ノ之さんってかっこいいよね♪」

 

「は、はあっ?」

 

「だって、本当にかっこいいんだもん。あの時だって、たった一人で、憮然として立ってて、他の誰よりも落ち着いてて、凛として……。

私、その時の篠ノ之さんをみて、すぐに悟ったんだよ? 「この人は強いなぁ〜」って。そして実際に竹刀を合わせたら、本当に強かったんだもん。もっとこの人と戦ってみたい……なんて、思っちゃたりもしてね」

 

「桐ヶ谷…………」

 

「でも、篠ノ之さんはその後、どこに行ったかもわからなくなっちゃって……また会えたらいいなぁ〜って思ってた。

そしたら、こんなところで再会できたんだもん!」

 

 

 

 

興奮した様子で、リーファは両手で、カグヤの手を握った。

 

 

 

 

「ねぇ、篠ノ之さん。私と友達になろう! 私のことは直葉でいいから! そして、もう一度、私と剣道をしよう!」

 

「っ!」

 

 

 

 

剣道での繋がりは、一夏だけのものだと思っていた……だけど、こんなにも自分の事を見てくれていた人が、こんな近くにいたなんて……。

そう思うと、とても嬉しかった。

頬を赤らめて、俯くカグヤ。

 

 

 

 

「…………で、いい」

 

「え?」

 

「わ、私も……ほ、箒で、いい……す、直、葉……」

 

「っ〜〜〜〜! うん! これからよろしくね、箒ちゃん!」

 

「う、うむ……よ、よろしく頼む……直葉」

 

 

 

 

冒険の成功を祝う会場にて、麗しき剣道少女たちの絆が、改めて深まった瞬間だった……。

 

 

 

 

 






次回からは、ISサイドに戻り、学園祭を行います!


ではまた!
感想よろしくお願いします(⌒▽⌒)


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