ソードアート・ストラトス   作:剣舞士

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今回はOVA2話目です。
お料理まではいきませんでした( ̄▽ ̄)




第47話 恋に焦がれる八重奏Ⅱ

いやはや壮観な眺めである。

それはなぜか? まず第一に、一日本人の家に、多国籍の美少女たちが集っていること。

王道の黒髪に、茶髪、金髪、銀髪。そして水色髪。

しかもそこからポニーテール、ツインテール、縦ロール、一本結び、ストレート、短髪。

ある種の展覧会の様だ。

そして第二に……それぞれの出身地。日本人が三人、残りが中国、イギリス、フランス、ドイツの出身だ。

それも、そのほとんどがISの国家代表候補生ならびに国家代表だ。

それに含まれない二人は、現在最新鋭機である第四世代型ISを所持したイレギュラーと天才の妹。

その二人プラス他の代表生たちも専用機も持ったエリート揃い。国家転覆を充分に狙える戦力だ。

 

 

 

 

「にしても、来るなら来るで、誰か連絡すればよかったのに……」

 

「そ、そうだねぇ……ごめんね、気が回らなくて……あははは……」

 

「も、申し訳ありません……その、わたくしはケーキを買いに行っていたので、気づきませんでしたわ〜……」

 

 

 

 

最初に来た金髪の少女二人が、苦笑いを浮かべながら言う。

まぁ、この二人も、まさかこんなに来るとは思っていなかったが故だろう。

 

 

 

「し、仕方ないだろう……急遽、暇になったのだから」

 

「そうよ! それとも何、急に来ちゃいけなかったの? エロいものでも隠すとか……!」

 

「そんなもんねぇって……」

 

「私はいきなり来て驚かせようと思っただけだ。しかし、そこに鈴と箒がいたのでな。丁度二人も、師匠の家に行くと言っていたし、私はそれに賛同したまでだ」

 

 

 

恐ろしく自信満々に答える銀髪少女に、幼馴染二人はジーっとジト目を向けるのだが、そんな事を気に留めず、銀髪少女はバリバリと家主の出したせんべいを食べている。

 

 

 

(やっぱり、みんな考えてる事は同じか……)

 

(せっかく一夏さんの住所を調べてきたというのに……!)

 

(全く、どいつもこいつも……)

 

(抜け駆けしようとしていた鈴を止めようと、私もきたというのに……)

 

(すでに先兵がいたとはな……それも四人!)

 

 

 

 

フランス、イギリス、中国、日本、ドイツ……各国の客人たちの脳内では、今もなお熾烈な思考戦線が開かれている。

 

 

 

「ここまで行動が一貫してると、中々素晴らしいチームワークだと思うわね」

 

「でもこれ、一夏のために動いてるから、いいチームワーク……なのかな?」

 

 

 

いや、良くはないんじゃないだろうか?

家主の隣で話している姉妹の会話に、心の中でツッコミをいれ、ようやく家主……一夏が動いた。

 

 

 

 

「まぁ、せっかく来てくれたんだし、みんな思う様にくつろいでくれ」

 

 

 

台所に行き、後から来た三人の麦茶を用意する。

箒は然程気にしていなかっただろうが、相当暑かっただろう。鈴は元々こういう暑さが苦手だったし、一応サバイバル訓練などで、暑さには慣れているだろうが、今日はより熱を込めそうな黒い服を着ているラウラも、意外に暑そうにしている。

出された麦茶を、鈴は一気に飲み干し、箒は軽く一口。ラウラは半分くらい飲んで、コップをテーブルの上に乗せる。

 

 

 

「さて、これからどうする? この暑さだし、部屋の中にいた方がいいとは思うんだが……」

 

「「「「賛成!!!!」」」」

 

 

全員がハモった。

余程外はいやらしい。

 

 

 

(当然だ……一夏と過ごすためにきたのだがら)

 

(せっかく遊びに来たってのに、わざわざこんな暑い中出かけなくても……外で五反田兄妹にでもあったらどうすんのよ、バカ)

 

(何か、何か一つでも一夏の情報を多く持ち帰りたいものですわ!)

 

(さっきはそのまま降りてきちゃったけど、もう一回、一夏の部屋を見てみたいし)

 

(織斑教官の家というのも興味がある)

 

(せっかくだし、ソードスキルについても、色々と聞いてみたい……!)

 

 

 

 

それぞれの思惑が交錯する中、何をしようか迷う一夏。

一応、遊べる様なものがないか色々と探し出してみると……

 

 

 

「うーん……トランプにジェンガ……あとは……これかな」

 

 

 

一夏が取り出したのは、『バルバロッサ』というボードゲームだ。

 

 

 

「ほう、我がドイツのゲームではないか」

 

「ああ、バルバロッサですの」

 

「これは、どうやって遊ぶのだ?」

 

「たしか、プレイヤーが作った粘土を当てるゲーム……だったよね?」

 

「うむ。簡単に言うとそうだな」

 

 

 

 

ラウラが目を輝かせ、一夏の持っていたボードゲーム『バルバロッサ』を取る。

その横から、セシリアと箒が覗き込み、バルバロッサの遊び方を知らない箒に、簪が簡単なルールだけ教える。

一応念のために、ゲーム発祥国のドイツ人であるラウラに確認を取り、一同はこれをしようと決めた。

 

 

 

「これは……最大六人までなのだな」

 

「ならば、私が一応手本として、最初は参加しよう。もちろん、師匠は強制参加だ」

 

「俺の自由意志は?」

 

「「「「ない!」」」」

 

「…………はい」

 

 

 

 

最初のメンバーは、一夏、箒、簪、ラウラ、シャル、セシリアの六人。純粋に日本人 VS 欧州人と言った選抜になってしまった。

六人はそれぞれの粘土を用いて、分かりやすくもなく、分かりにくくもない、ああ、言われてみれば……という様な具合に粘土を形作っていく。

そうやって、一番最初に問題を出題したのは、発祥国出身のラウラだった。

そしてその問題を回答するのは、箒。

 

 

 

「では、まず初めにラウラに質問するぞ?」

 

「よかろう」

 

 

 

まるで真剣と真剣のぶつかり合いのような、鋭い視線が交わされた。

箒もラウラも、刃物を持たせれば、自身もその刃の一部になったかの様な雰囲気を持つもの同士。

互いの刃を向け合えば、こうなるのは必然……。

だが、そんな雰囲気も、ラウラの出した粘土が一瞬にして消し去った。

 

 

 

「は……?」

 

「「「「ん????」」」」

 

 

 

ドカッ、とテーブルに広げたシートの上に、ひどく大きくて、鋭く尖った円錐のようなものが置かれた。

その謎の物体ーーゲーム上、分からなくするようにしてあるーーに、一同は首を捻った。

まさしく、これは……なんだ? といった具合に。

 

 

 

「これは……地上にあるものか?」

 

「Yes」

 

「人よりも大きいか?」

 

「Yes」

 

 

 

このゲームでは、質問者は回答者が『No』と言わない限り、質問をしてもいい。

もしもNoと言われれば、その場で回答することになっている。

もちろん、それ以前にわかったのならば、質問ではなく回答してもいいが、それで間違えてしまえば、その回答者のターンはなくなる。

 

 

 

「では、人の手で作った物か?」

 

「Noだ」

 

 

 

ようやくラウラの口からNoという言葉が出た。

ここで、箒はラウラの作ったものが何なのかを回答しなくてはならない。

今ある情報は、ラウラが作ったものは人よりも大きく、この地上にある物で、人が作った人工物ではなく、自然に発生した物であるという事……。

さて、箒はこの情報だけでわかったのだろうか?

 

 

 

「ああっ!」

 

 

 

閃いた!

とばかりに箒は立ち上がり、ラウラの作った謎の円錐を指差す。

 

 

 

「ズバリ、油田だ!」

 

「違う」

 

 

バッサリ切り捨てた。

しかも不正解。

そして一同は、「なぜ油田?」と言った表情で箒を見ており、当の本人は不正解だった事に納得できないのか、ソファーに座り込むと、首を捻って、ラウラの作り出した物を睨んでいる。

そしてその他にもシャル、簪が完成しているが、この二人の『馬』、『猫』はすぐに当てられてしまい、得点には入らず。

箒の作ったものは『井戸』だったらしく、これはシャルが絶妙な質問をし、正解した為、箒とシャルに得点が入った。

一夏は逆に『日本刀』をつくって、早い段階で全員に分かってしまった為、ポイントは入らなかった。

しかし、問題の人物が、二人いる。

今もなお誰も答えられないラウラの円錐と、セシリアの作った一体何なのかが全くわからない謎の細胞体のような物。

とにかくこのラウラとセシリアという二大巨頭がいる為、中々このゲームが終わらない。

 

 

 

「セシリア、それって……ひょっとして食べ物?」

 

「違いますわ」

 

「なぁ、ラウラ……それって、人より大きいんだよな? じゃあ建物……ビルよりかは小さいのか?」

 

「いや、ビルなんか比べ物にならないくらい巨大だぞ」

 

「「「うう〜〜〜ん……」」」

 

 

 

ゲームに参加している一夏はともかく、ゲームに参加していない刀奈と鈴も、一体何なのか……。

といった表情で見ている。

 

 

 

「なんだ、わからないのか?」

 

「ああ。それで、一体何なんだ、これ?」

 

「答えは……『山』だ」

 

「…………はい?」

 

「山だ」

 

 

 

だ、そうだ。

まぁ、確かにそう言い切られると、山のように見えてこなくもないが……。

 

 

 

「いやいや、山はこんなに尖ってないだろ!?」

 

「何を言う。エヴェレストなんかはこんな感じだろう」

 

「それならエヴェレストに特定しなくちゃわからねぇーって!」

 

「全く……師匠は案外頭が硬いのだなぁ」

 

「ぐうっ……なぜ俺がダメみたいな……」

 

 

あくまで自分の意見は変えないつもりでいるらしい。

そんなラウラを他所に、刀奈がもう一人の巨頭に尋ねる。

 

 

「結局ラウラちゃんも正解されなかったから減点ね。それで…………セシリアちゃんのは、一体何?」

 

「あら? 皆さん誰も分からないんですの?」

 

 

 

もったいつけるような動作の後、セシリアは自身が作った物を右手で指す。

 

 

 

「我が祖国、イギリスですわ!」

 

「「「「………………」」」」

 

 

全員が沈黙してしまった。

ちなみに、ここまで正解がなかったので、一同は一回だけ回答した。

その回答一覧が、『潰れたジャガイモ』『原初細胞体』『ぐちゃぐちゃになったピザ』『藻』『ケガをした犬』『ジャンプ中の猫』『ボロ雑巾』。

 

 

 

「全く、皆さん不勉強過ぎますわ。一日一回くらいは世界地図を見るようにした方がいいですわよ」

 

 

セシリアの言葉に、一瞬反論したい気持ちになったが、黙っている事にした。

なんせ、ラウラ同様、自信満々に造形物を見せるセシリアに、ツッコミを入れるなんて、野暮な事だと思ったからだ。

 

 

 

「それじゃあ、このゲームは終わりね。次からは私と鈴ちゃんが入るから、いいわね?」

 

 

 

ここで刀奈と簪が入れ替わり、鈴がシャルと入れ替わる形で再びゲームがスタート。

だが、再びこの二大巨頭が行く手を阻む。

 

 

 

「セシリアちゃんのは……なに?」

「トマトか?」

 

「箒さん、これがトマトに見えますの? 楯無さんはどうですか?」

 

「ごめん……私もトマトかと思っちゃった」

 

「違いますわよ! これはハートですわ!」

 

「「…………」」

 

「ラウラのは……これ人?」

 

「まぁ、人は人だな」

 

「なにしてるの、これ?」

 

「シャルロット、それを言っては正解がばれてしまうではないか」

 

「大丈夫だよ。たぶん、絶対分からないんから……」

 

「ん……隠形だ」

 

「お、おんぎょう……?」

 

「鈴、お前のそれは……なんなんだ?」

 

「はぁ? なんでわかんないのよぉー」

 

「何の形? ボール……じゃないよね?」

 

「こんなふにゃふにゃのボールなんてないでしょう……」

 

「簪、どうせ食い物だって…」

 

「え、そうなの? 鈴」

 

「正解だけど……何よ! 『どうせ』って!」

 

「いや、考えられるのがそれしかなかったからな。ならこれは……肉まんか?」

 

「違うわよ」

 

「食べ物……この形は……シュウマイ?」

 

「ちーがう!」

 

「何なんだ?」

 

「豚の角煮よ!」

 

「それ昔俺がやったやつじゃん!」

 

「だ・か・ら! 一度やったあんたが何でわかんないのよ!」

 

 

 

 

そうやって、みんなでワイワイガヤガヤと遊んでいた時、不意にリビングから廊下に出れる扉が開かれた。

 

 

 

「なんだ、賑やかだと思ったら、お前たちだったのか」

 

「「「「織斑先生!!!!」」」」

 

 

織斑 千冬その人だった。

その服装は白いワイシャツにジーンズといった行動的な人柄な彼女らしい服装だった。

その白のワイシャツの下には、黒いタンクトップを着ており、豊満な胸がギュウギュウに押し詰められていた。

 

 

「おかえり、千冬姉」

 

「ああ、ただいま」

 

「おかえりなさいませ〜、お義姉様♪」

 

「いつから私はお前の義姉になった……」

 

「ええ〜! 私はもう既になってるものかと……」

 

「気が早すぎるぞ……。お前がもし一夏と別れる様な事になったらどうする?」

 

「あっはは、それはありえません♪」

 

「…………そうか、幸せそうでなりよりだ」

 

「ウフフ♪」

 

 

ため息をつく千冬に対し、ニコニコと笑って出迎える刀奈。

そんな微妙な雰囲気に包まれたリビング内で、箒たちは苦笑したり、ジト目で睨んだりと……。

そんな中を、一夏はなんの躊躇もなく千冬の元へと向かい、千冬からカバンを受け取った。

 

 

 

「今日は早かったんだな。食事は? まだならなんかは作るけど……」

 

「いや、外で済ませてきた」

 

「そっか……。なら、お茶飲むだろ? 外は暑かったし、麦茶でいいか?」

 

「ああ、構わん。すまんな」

 

「いいって、気にすんなよ」

 

 

 

 

千冬はクローゼットの方へ行き、上着のシャツを脱ぐ。

一夏は千冬の部屋へと向かい、千冬から受け取ったカバンを直した後、再びリビングに降りてきて、冷蔵庫の中にある麦茶をより出すと、コップにそれを注ぎ始める。

 

 

 

(何なの……この雰囲気……)

 

(まるで夫婦みたいですわ……)

 

(ふむ。自宅での教官はこんな感じなのか……)

 

(一夏、嫁度、高い……)

 

 

 

自宅での一夏と千冬のやり取りを始めてみた四人は、もはや唖然としていた。

既に見ている箒と鈴に至っては、相変わらずだなぁ、と言いたそうな、呆れの表情に。

刀奈に至っては千冬と一夏の姿に頬を膨らませながら睨んでいる。もしかして、妬いているのだろうか?

 

 

 

「っ、あ、いや! 悪いがすぐにまた出る。仕事だ」

 

「はあ? 今からか?」

「教師は夏休み中でも忙しいのさ。お前たちはゆっくりしていけ……ただし、泊まりはダメだがな」

 

「なら、これだけは飲んでいけよ。一応、熱中症には気をつけろよ?」

 

「これくらいの暑さで倒れるか」

 

「油断大敵、だよ」

 

「わかったわかった。今日はおそらく帰らないと思うから、夕食もいらん」

 

「了解」

 

 

そう言うと、千冬はリビングを出ようとそそくさと準備をし、最後に一夏から麦茶をもらって、それを一気に飲み干す。

 

 

 

「ああ、そう言えば、箒」

 

「は、はい!」

 

 

 

突然名前で呼ばれたため、変に緊張してしまい、ビクッと体が震えた。

 

 

「久しぶりに実家に帰ったらどうだ? 叔母さんには、まだ顔を見せてないんだろ?」

 

「は、はい……一応、そのつもりでいます」

 

「そうか……では、私はこれで失礼する」

 

「あっ! そうだ、仕事に行くんなら、秋物のスーツ! 部屋に置いてあるから、ちゃんと持って行ってくれよ? 後で届けるのは面倒だからさ」

 

「わかっている。まったく、お前は私の母親か……」

 

「弟……だよ」

 

「ふっ、じゃあいってくる」

 

「おう、いってらっしゃい」

 

 

 

 

玄関先まで行って、わざわざ千冬を見送る主夫一夏。

刀奈達の目には、そのようにしか写っていない。

 

 

 

 

「しかし、教師ってのも大変なんだなぁ……」

 

「「「………………」」」

 

「ん? なんだ、どうしたんだよ?」

 

「一夏……なんだか織斑先生の奥さんみたいだったよ?」

 

「はぁ?」

 

「ほんと、相変わらず千冬さんにベッタリねぇー」

 

「何言ってんだよ……姉弟なんだから普通だろ?」

 

「はぁー……そう思ってるのはあんただけだよ」

 

「はぁ? なんだよそれ、どういう意味だ?」

 

 

 

 

本当によくわかっていないらしい。

そんな一夏を幼い頃から見ている鈴と箒は、一層ため息をつき、他の面々も、一夏のシスコンっぷりに若干引いてる。

刀奈にいたっては、千冬に嫉妬しているらしい。今はいない、千冬に向けて、思いっきりガンつけている。

そして、それからというものの。

面々はいろんなゲームをして遊んだ。トランプでババ抜きや大富豪、ジェンガをしたり……。

すると、あっという間に陽は傾いていて、もう夕方と言っていいほどの時刻に。

 

 

 

 

「もうこんな時間か……みんなはどうするんだ? 遅くまでいるなら、夕飯の買い出しに行くけど……」

 

 

 

一夏が立ち上がり、財布と肩掛けバッグを手にする。

すると、今まで黙っていた面々が急に立ち上がり出した。

 

 

 

「あら、それなら私が作るわよ♪」

 

「なら私も何か作ってあげる!」

 

「なら、私も!」

 

「ぼ、僕もやろうかな……」

 

「無論、私も参戦する」

 

「私も……料理は、得意だから」

 

 

 

刀奈から始まり、鈴、箒、シャル、ラウラ、簪と続く。

そして残った最後の一人……イギリス代表候補生 セシリア・オルコットさんが立ち上がり……

 

 

 

「仕方ありませんわね。それなら、わたくしもーー」

 

「「「「あんたはいい!!!!」」」」

 

「オウ?」

 

 

 

セシリアの参戦は、本当にご遠慮いただきたい……。

しかし、言い出したら聞かない本人は、絶対に作ると言い張り、テコでも意見を曲げない。

これでは埒が明かないので、とりあえず全員、近くのスーパーまでいくことになった。

 

 

 

「ふふっ、こうしてみんなで買い物してると、昔お母さんと買いに来てた頃を思い出すなぁ〜」

 

 

 

とりあえず、みんなそれぞれ作りたいものを決め、それに必要な素材を選んでいるようだ。

 

 

 

「軍ではローテーションで食事係があったからな。軍仕込みの腕を見せつけてやる!」

 

「ラウラ、軍の料理って……一般家庭の料理に合うかな?」

 

「何を言う、簪! 軍ほど栄養価を考えた料理人はいないのだぞ! ならば問題はあるまい」

 

「そ、そうかなぁ……意外と偏ってそうなイメージだけど……」

 

 

 

正直ラウラが厨房に立っているイメージがわかない為、セシリア同様作らせても大丈夫なのだろうかと不安になるが……。

 

 

 

「どうしてわたくしが料理をしてはいけませんの!? わたくしもイギリス代表として腕を振るいたいですわ!」

 

「…………あんたがイギリス代表なんて言ったら、イギリスの人たちに失礼でしょ」

 

「どういう意味ですの!?」

 

 

 

既にセシリアの料理人としてのレベルの低さを知っている鈴からすれば、今回の夕飯の仕度自体を、やらせたくない気持ちでいっぱいだ。

そんな事して、完成品を食そうものなら、死人の一人や二人が出てきてもおかしくはない。

そして一番ひどいのは、当人にその様な自覚が一切ないという事だ。

 

 

 

「はぁ……死にたくないなぁ……」

 

「だから、どういう意味ですの、それは!」

 

 

 

一方、一夏達は……

 

 

 

「お前、まだ実家に顔を出してなかったのか?」

 

「うむ……。千冬さんに言われずとも、いずれ挨拶に行くつもりでいたんだが……。

なかなか時間と、決意が定まらなくてな……」

 

「でも、ずっと住んでいた場所なんでしょう? なら、下手に考え込まない方がいいと思うけど……」

 

「そうなんですけど……何というか……」

 

 

 

一夏と箒と刀奈。

先日の告白劇から、妙にギクシャクしてはいたのだが、どうやら刀奈の方から箒に接触を試みた様だ。

持ち前の他人を自分のペースへと引き込むカリスマ的性格が、人付き合いの苦手な箒にも聞いたのだろう。

臨海学校から帰ってきて、やけに二人は行動を共にする事が多くなった。

そしてついに、一夏も含め、刀奈とも和解が成立した。

今では、刀奈と買い物に行く事すらあるとか……。

 

 

 

「ここ数年、離れっぱなしでしたから……」

 

「まぁ、そうよねぇ〜。私も二年離れていただけで、帰るのが久しぶりで、どういう顔で入ればいいのか悩んだものよ」

 

 

 

箒の場合は、それが六年間だ。

いきなり政府の人間によって、各地を転々としていたのだ。

久しぶりに会う親戚の叔母さんは、一体どう思っているだろうか……。

 

 

「大丈夫。雪子叔母さん、優しい人じゃないか……きっと箒が帰ってくるのを待っているはずさ」

 

「一夏……。うん、そうだな。まぁ、その……今週末には帰ろうと思っているんだ……なんせ、祭りがあるからな」

 

「祭り?! なになに、箒ちゃん家で祭りやるの?」

 

「ええ。毎年夏祭りをやってて……屋台も出ますし、最後には花火も上がります」

 

「へぇ〜‼︎ 行きたい! ねぇ、チナツは行ったことあるんでしょう? 今年は連れて行ってよ!」

 

「ああ、いいぜ。雪子叔母さんにも、久々に会いたいからな。箒、カタナも行くけど、いいか?」

 

「ああ、構わない。そ、それとだな一夏、今年の夏祭りは、私がーーーー」

 

「一夏ァァッ!」

 

「っ?!」

 

 

 

 

箒の話を途中からぶった切るかの様に、シャルの声が届く。

声をかけられた方をみると、何やらセシリアが暴れている様だ。それを鈴とシャルが止めており、その横でラウラが傍観し、簪があたふたしている様子がうかがえる。

 

 

 

「何やってんだよ……」

 

「セシリアが自分も料理するって聞かないのよぉ〜!」

 

「何故わたくしが料理してはいけませんの!? わたくしの英国料理に何か不具合があるというですか!」

 

「ま、まあまあ。とりあえず落ち着けって、セシリア」

 

「何が何でも味わっていただきますわよ……一夏さん!」

 

 

 

もはや死の宣告の様な感じがした。

さてさて、今晩は生きて朝を迎えられるのやら……

 

 

 

その頃、千冬はというと……

 

 

 

 

「あ、織斑先生ぇ〜!」

 

「おう、すまんな真耶。急に呼び出して」

 

「いえいえ。織斑先生のおごりと聞いたら、断るわけないじゃないですか♪」

 

「まったく、呆れるほど現金なやつだな、お前は……」

 

「何とでも……」

 

 

 

 

まだ夕方くらいの時間帯。

家には専用機持ち達が居座っていた為、自宅でゆっくり過ごすという選択肢を潰されてしまったので、千冬は真耶を電話で呼び出し、飲みのお誘いをした。

当然、ただとは言わず、千冬がおごると言う条件を出し、真耶はそれに賛同。

たった今、東京都内の御徒町の周辺を歩いていた。

 

 

 

 

「それにしても、いつものBARではないんですね?」

 

「ああ……。あそこには、もうちょっと遅い時間帯に行きたい。今晩はあいつらが居座っているだろうしな……」

 

「あいつら?」

 

「楯無を含め、一年の専用機持ち全員だよ……。もっとも、桐ヶ谷と結城は来ていなかったがな」

 

「あ、はは……戦争起こせますね、それ」

 

「冗談になってないぞ……それは」

 

「それで、ここに知り合いのお店でもあるんですか?」

 

「ああ。まぁ、もっとも、私のではなくて、一夏の知り合いだがな」

 

「はい?」

 

 

 

 

二人は閑静な場所を歩きまわり、ようやく目的地へとたどり着いた。

外装は少しアメリカンな雰囲気を持つお店。

その名も『ダイシー・カフェ』だそうだ。

 

 

 

「喫茶店……ですかね?」

 

「一夏の話によれば、昼は喫茶店として、夜はBARとして営業しているみたいだぞ」

 

「なるほど。じゃあ、入りましょうか」

 

「ああ」

 

 

 

木造の扉を開くと、来客を知らせるベルの音が鳴る。

中には円卓が並べられており、奥にはカウンターが。そしてその奥、パントリーの中では、体のゴツい色黒の外国人男性が、グラスを丁寧に拭いていた。

その背格好や顔つきに、真耶は一瞬ビクッとなったが、その店主の声によって、驚きは別の方向性へと向かった。

 

 

 

「いらっしゃい!」

 

「あっ、あ、どうも……。日本語お上手ですね」

 

「どうも。二人かい?」

 

「ああ……。えっと、“一夏” ……じゃあわからんか。えっと、“チナツ” なら、わかるか。そいつの紹介で来たんだが……」

 

「チナツ? ああっ、あんたが! チナツのお姉さんで、ISの世界チャンプか!」

 

 

 

どうやら一夏はそんなことまで話していたらしい。

こっちは店主の事をあんまり聞いていないのに、こちらの事ばかり話されては、中々いけ好かない。

そう思いながらも、二人はカウンターに座り、メニューに目をやる。

 

 

「黒ビールを一つ」

 

「じゃあ私も最初はそれを」

 

「あいよ!」

 

 

 

慣れた手つきで店主はビールをタンブラーグラスに注ぎ込んでいく。

そして二人の前に出し、二人はそれを一口飲む。

 

 

「んっ……!」

 

「んん〜! 美味しいですね」

 

「はっはっ、そりゃあよかった。お二人がいつか来るかも、って言われてたんでね。美味しいやつを仕入れてたんだよ」

 

「ん……その、店主とうちの弟とは、どういった関係で?」

 

「うん? なんだ、あいつ言ってなかったんですか? まったく……」

 

 

 

店主はその艶やかなスキンヘッドを右手握ると、ほんとまいった……と言った表情を作った。

 

 

 

「そういえば、自己紹介もしてなかったな。俺の名前は、アンドリュー・ギルバート・ミルズ。仲間内では、《エギル》って呼ばれていてね。チナツやキリト達とは、ゲームの中で会ったんだ」

 

「「っ!?」」

 

 

 

店主……エギルの発言に、二人は驚いた。

なんせチナツという一夏の別称の他に、キリトという和人の別称が出てきた事と、“ゲームの中で会った” という単語。

それを含め、考えられる事はただ一つ……。

 

 

 

「もしかして店主……」

 

「あなたも……なんですか?!」

 

「ああ、そうだよ。俺も、ネット用語では『SAO生還者』だ。こうして会えたのも何かの縁だ。今後とも、うちの店をご贔屓にお願いするよ、お二人さん」

 

 

 

これは驚いたとばかりに、開いた口が塞がらなかった。

SAOに囚われていたのは、何も学生達だけではない。様々な年齢層のゲーマー達が、こぞって買い求め、世界初のフルダイブ環境の中でのゲーム生活を謳歌すると言うフレコミに、一夏も熱中したのだから……。

だが、まさか目の前にいる店主もそうだったとは……。

 

 

 

「その驚きようからすると、ほんとにキリトとチナツは何も言ってなかったんだな……。

まったく、あの二人は……」

 

「一夏の事は、その時からご存知で?」

 

「ああ、アインクラッド攻略組で一緒でね。アスナとカタナの二人も一緒の学校にいるんだろう?」

 

「結城さんと更識さんまで?!」

 

「あの二人は有名人だったからな。キリトとチナツも有名人っちゃ有名人だったがな、あっはっはっは!」

 

 

 

どうやら意外な人物を紹介されてしまったのだと、二人は互いに顔を見合って、「ふっ」と吹き出して笑った。

ならば、この店主にも聞いてみよう。あの世界の事を……。

少しずつ、あの世界での暮らしについて、弟の事について、いろいろ聞いてみたくなってしまった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 






次回は篠ノ之神社の夏祭りまで行きたいですね。

そこからALOのクエストやったり、したいですね

感想よろしくお願いします(⌒▽⌒)


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