剣道対決までいけませんでした( ̄Д ̄)ノ
申し訳ない…
殺伐とした授業時間が終わり、今は昼休み。俺たちは全員食堂に足を運び、昼食をとっている。
「はぁー…全く、最近の代表候補生はみんな “あんなの” ばっかりなのかしら? 久しぶりにキレたわ…」
「ほんとだよ‼……何もあそこまで言わなくてもいいのに……っ!」
「なんなら、キリトやチナツの代わりに私が相手してやろうかしら……あの手の子は口で言ってもわからないわよ絶対ッ!」
自分たちの夫たるキリトとチナツの悪口を言われた為、相当怒っているカタナとアスナ。カタナなんてIS戦でボコボコにするとまで言い出した。
「やめとけよカタナ……そんな事したら、それでこそ国際問題だぞ?」
「そうだよ…別に俺もキリトさんもそこまで気にしてないし、別段あいつに負ける気がしないしな…。それに、生徒会長がそれじゃあ格好つかないぞ?」
「う〜ん。まぁ、キリトとチナツがそう言うならいいけど……」
「そう言えば、ずっと気になっていたんだけど、カタナちゃんっていつ生徒会長になったの?」
「あぁ、それは俺も思ってた…。どうやってなったんだよ?」
「入学と同時に選挙があった訳でもないんだろう?」
「あぁ、それねぇ……」
アスナさんに始まり、キリトさんも俺も気になっていた事をカタナに聞く。そう、いつ、どうやって生徒会長になったのか…。
「別に何もしてないわよ? 強いて言うなら、入試の時にあったIS戦で教官を倒した後、その時の生徒会長さんに勝負を申し込んで、私が勝ったから晴れて生徒会長になっただけ……」
「「「………………えっ???」」」
何やら突拍子もない事を普通に話しているカタナ。普通に聞いていればなんら不思議に思わないと思える程、普通に話すので、一瞬、時が止まってしまった。
「えっと、生徒会長に勝ったから生徒会長になれるの?」
「うん…そうよ?」
「えっ、選挙とかしないの?」
「選挙とかは……まぁ、するにはするわよ? でも、そんな事しなくたってここは簡単に生徒会長になれるのよ…」
「それが生徒会長を倒すって事になるのか?」
「えぇ…」
アスナさん、俺、キリトさんの順番でカタナに質問を繰り返す。それをカタナは平然と答える。
「ここIS学園の生徒会長と言う肩書きは、ある一つの事実を示しているのよ……」
「「「それは?」」」
「生徒会長……つまり、すべての生徒の長たる存在はーーーー」
「「「………存在は…」」」
「ーーー『最強であれ』ってね♪」
最後の決め台詞と共に、開かれた扇子。そこには達筆な字で、『学園最強』の文字が書かれていた。
「「「……………へ、ヘェ〜…」」」
「な、なによぉ〜ッ! なんかリアクション薄くないッ!?」
「いや、なんて言うか…そのぉ〜」
「カタナちゃんってチナツ君と一緒で、いきなり突拍子もない事をするよねぇ……」
「まぁ、いいんじゃないか? 似たもの夫婦って事で…」
俺は反応に困り、アスナさんは少し呆れ、キリトさんは勝手に結論付けた。
「さてと、そろそろ本題に入るか…」
「そうね、みんなの専用機のスペックデータがここに入ってるから確認してちょうだい」
和人の一言で刀奈が反応し、刀奈から三つのタブレット端末を俺たちは一つずつ受け取る。
「また、詳しい事は明日運搬にくる更識家の者が説明すると思うけど、とりあえず事前説明って事で……。まずはキリトのね」
そう言って、和人の手元にあるタブレットを操作し、スペックデータを映す。
「キリトの機体は、第三世代型IS 機体名『月光(げっこう)』 元々の機体はキリトが動かしたリヴァイヴを改良したもので、それにキリトの持っていたナーヴギアを搭載した機体なの…」
「ナーヴギアを搭載!? って事は……」
「えぇ、〈ソードスキル〉が使えるわ…ッ!」
ソードスキル……俺たちが二年間戦い続けた世界…SAO、アインクラッドで使っていた技術だ。それぞれの武器に応じたスキルがあり、キリトさんは片手剣スキルと二刀流スキル。アスナさんはレイピアスキル。カタナは槍スキルと二槍流スキル。そして、俺は、片手剣スキルと抜刀術スキルだ。俺の武器は刀なので、刀スキルなのではないのかと初めは思っていたが、どうやら俺の武器…『雪華楼(せっかろう)』は、クラインさんの使っていた太刀程の長さがなかった為か、刀スキルではなく、片手剣スキルが適用されたのだ。まぁ、それならそれで、俺の戦い方が出来て嬉しい誤算ではあったのだが……。
「って事は、私たちのにも?」
「ええ、もちろん! アスナちゃんとチナツの機体も、ソードスキルが使えるわ。もちろん、私の機体、『ミステリアス・レイディ』もね♪ これがアスナちゃんの機体ね…」
今度は明日奈のタブレットを操作し、画面にデータを映す。
「アスナちゃんのも、第三世代型IS 機体名『閃華(せんか)』 これは、機体自体が第三世代型で、最速を誇るイタリアのテンペスタⅡの機体を使っているから速度に申し分はないわ」
SAO時代…『閃光』の異名を持っていたアスナさんにとってこの機体は大いにその性能を発揮するだろう。故に『閃華』。
そして、最後に俺のタブレットを操作し、データが画面に表示される。
「チナツのも、第三世代型IS 機体名『白式』 元々倉持技研…簪ちゃんの専用機を作った所が廃棄する筈だった機体を回収して、作った機体だそうよ…。しかも、回収したのが、あの篠ノ之博士」
「えっ!? マジで!?」
予想外の名前に驚く俺。そして、キリトさんとアスナさんも同じなのだろう身を乗り出してカタナの話を聞いている。
「うん…どうやらそうみたいなのよねぇ…。基本的なデータだけをいじって、後はチナツが動かした打鉄の起動ログからチナツのデータをインストールしたみたいだけど……」
(束さん……四年前から会ってないし、SAOに囚われていたからどうしているのかわからなかったけど……。まぁ、あの人の事だから無事っちゃ無事なんだろうけど…)
篠ノ之 束さん……箒のお姉さんで、俺と千冬姉の幼馴染。そして、ISの産みの親である。昔からの付き合いで、よく千冬姉とは連んでいた。箒の事を溺愛している。そして、俺もその対象らしく、昔は篠ノ之道場に足を運ぶ度に抱きつかれ、千冬姉のいない所では『束姉』と呼ぶように言われていた……。今頃何をしているのやら…。
そして、午後の授業も終わり、今は放課後。クラスのみんなも思い思いに過ごす。部活の見学や残って勉強する者、寮へ帰る者。俺たちは山田先生から残るように言われていた為、未だ教室にいる。
「ふぅー。やっと一日が終わったなぁ〜!!!」
「えぇ、今日は一段と疲れましたよ…」
「だらしがないわねぇ二人とも。これからこんなのが続くんだから、死なない様にしてねー」
「「うぃー…」」
「ほんとにわかってるのかしら?」
「ウフフ…」
うなだれるキリトさんの俺。そして、叱咤激励を送るカタナ。それを見て微笑むアスナさん。
そんな事をしていると、山田先生と千冬姉が入ってきた。
「ああ、良かった! みなさんまだ残っていてくれたんですね…!?」
「えぇ、それで話って言うのは……」
「あっ、はい。実はですね、織斑君と桐ヶ谷君の寮の部屋が決まったので、お伝えしようと思っていたんですよ」
「えっ?」
「り、寮の部屋ですか?」
「はい、そうですが…?」
驚く俺とキリトさんに?マークを出す山田先生。
「えぇっと、一週間はキリトは近くのホテルから、チナツは自宅からの通学だったんじゃ…」
俺たちの代わりに、カタナが聞いてくれた。
「あぁッ! すみません…ちゃんと伝えてませんでしたね。政府からの通達でお二人とも今日から寮へと入ってもらう事になったんですよ…これが鍵です」
そう言って俺とキリトさんに部屋の鍵を渡す山田先生。
「俺は、1101室か…」
「えっ!? 俺は1025室……キリトさんとは別々の部屋なんですか?」
「あっはい…それがですねぇ…」
部屋割りはキリトさんと同じだと思っていたのだが、結構離れた離れになっていたので驚いていた。すると、今度は千冬姉が……。
「仕方ないだろう…急遽決まった事だ。桐ヶ谷は結城と同じ部屋に出来たが……織斑、お前は…」
「カタナと同じ部屋ですか?」
「いや、私は1015室よ? ……って事は…」
「あぁ、お前は別の部屋と言う事になるな」
千冬姉のその言葉に、俺とカタナは呆然としてしまった。
「えぇっと、その、千冬姉? カタナと一緒じゃなきゃ、俺は一体誰と?」
「学校では、織斑先生だ!!!」
ズゴォォン!!!
強烈な音と共に、俺の頭から煙が出る。またまた出席簿アタックが炸裂したのだ。
「はい、すみません……でも、俺は別の誰かと一緒って事ですよね?」
「えぇ〜ッ!? うそぉ〜〜ッ!!!」
「それも仕方ないことだ……。元々更識は入学が決まってたんだ…当然部屋割りもその時に出来ている。だから、織斑は部屋の調整がつくまで今渡された鍵に書かれた部屋で過ごす事。いいな?」
「は、はい…」
一応返事はしておかないと、また出席簿アタックが飛んでくるのでしておく。俺の隣では、目に見えて落ち込んでいるカタナの姿が…。
「あの、織斑先生。その部屋の調整ってどれくらいで出来るんですか?」
「ん? まぁ、こちらでも早めにしておくが、それでも時間はかかるだろうな…。まぁ、夏休み前までには大丈夫なんじゃないか?」
「だってさ、カタナ」
「『だってさ』じゃないわよぉ〜! せっかくチナツと一緒だと思ったのに……こうなったら生徒会長権限で……あたッ!?」
千冬姉による出席簿アタックがカタナに炸裂した。
「教師の前で堂々と職権乱用とは、いい度胸じゃないか…更識…」
「うぅ…ですけど…」
「はぁー。なるべくそうなる様にはしてやるから、あまり面倒な事を起こしてくれるなよ?」
「えっ!? 織斑先生いいんですか?」
千冬姉の言葉に山田先生が顔を赤くして聞き返す。
「えぇ、まぁ問題を起こす様なら変えますが、大丈夫でしょう……ただし、お前達に言っておく事がある…」
「は、はい!」
「何でしょうか?」
改まる千冬姉にキリトさんもアスナさんも真剣に耳を傾ける。
「うっうん! ……その…なんだ……いくらお前達が付き合っているからと言って、ここは学校だからな? あまりふしだらな行為をするなよ? 学校内での淫行は禁止されているわけではないが、限度と言うものがある……。その事は肝に銘じておけ…織斑達もだぞ! いいな!」
「ふぇえッ!? そ、それは…その…」
「ッ!!! えっと……その…」
千冬姉の言葉に顔を赤くして俯くアスナさんとカタナ。俺とキリトさんも気まずくなり、明後日の方向へ顔を向ける。
それを見て、「はぁー」っとため息をつく千冬姉と「あわわっ」っと慌てふためいている山田先生。
釘は刺されたが………どうなる事やら俺たちにも分からない。
とりあえずこの件については終わり、それぞれ渡された鍵に記された部屋へと行く。キリトさんとアスナさんは1101室に、俺は1025室に、カタナは1015室に…。
「うぅ〜〜……」
「泣くなよカタナ…。別に会えないわけじゃないんだからさ」
「なによぉ〜! チナツはいいの?! 私と一緒じゃなくて!!」
「そりゃあ、俺もカタナと一緒がいいけど……でも、仕方ないよ………大丈夫! すぐに一緒になれるって!」
「うん……だといいけど……はぁー…いいなぁ〜アスナちゃん…」
先程からこの調子のカタナをチナツが慰めている。それを後ろから微笑ましい目で眺めるキリト、アスナの両名。
「おっとッ! 俺たちはここみたいだ。じゃあまたなチナツ! カタナ!」
「はい! また後で!」
キリトさん達は自分たちの部屋である1101室に入って行く。その様子を二人で眺め、やっぱり一緒がいいなと思ってしまう。続いては1015室。カタナの部屋だ。
「チナツ……」
「ん? どうした?」
「…………抱きしめて…」
「は、はい?」
「『抱きしめて』って言ったの!!! 会えなくはないとはいえ、部屋は別々だし! チナツは天然フラグ製造マシーンだし! しかも同室の女の子いるし! ラッキースケベだし!」
「おいおい……なんか後半すげぇ傷つくんだけど……」
「だって、事実だし……」
少し涙目になって俯くカタナの姿はとても可愛らしく、年上のお姉さんの感じはまるでない。
そんなカタナを俺は背中から抱きしめる。
「ひゃあッ! い、いきなり、ず、ずるいわよ……」
「ごめん……なんかカタナが可愛かったから、ついな♪」
「もう……バカ…」
やはりこうしてた方が落ち着く。俺も千冬姉に進言してみようと思った。
「さてと、もうそろそろ離れてないと誰かに見られちまうな…」
「別にいいわよ! チナツは私の彼氏なんだし……」
「あぁ、そうだよ。俺の彼女はカタナだけだ…」
「〜〜〜〜〜ッ!!!! わ、わかってるならいいのよ……でも! 浮気したら赦さないからね!」
「し、しないってそんな事!」
それからもあーだこーだと話をして行くうちに、時間が経ってしまった。
「そんじゃ、また後でな」
「うん。向こうで待ってるから…」
「OK!」
『向こう』とは、当然ALOの事である。今日は別々に行動をするものの時間になるまではずっと一緒にいられる。
「えぇっと、1025……1025……あっ! あった!」
やっとお目当ての部屋へと到着し、一呼吸置く。手に持った自分の荷物。千冬姉が用意してくれたものだ。着替えに教材、携帯の充電器、そして、アミュスフィア。SAOから帰ってきて、千冬姉とはVRMMOの事で散々口論になった。当然と言えば当然だ。唯一の家族がデスゲームに囚われたのだから心配にはなる。しかし、時間を見つけては、じっくりと話し合い、和解に至った。だからこそ、今この手にアミュスフィアを持っている。千冬姉には感謝してばっかりだ。
コンコン!
そう思いながら、部屋の扉をノックする。以前ならノックをせずに入っていただろうが、カタナの教育を受け、そういう所はちゃんと出来る様になった。
「はい? どちら様ですか? ……あぁ、同室になった者か。鍵は開いているぞ」
(ん? 今の声は……)
聞き覚えのある声が部屋の中から聞こえる。まさかと思い、部屋の扉を開ける。
「箒?」
「なッ! い、一夏!?」
どうやら、部屋の同居人は箒だったみたいだ。向こうも俺だとわかると少し慌てている。どうやら風呂から上がったらしく、髪の毛がまだ若干濡れていた。そこから香るシャンプーのいい匂いが鼻腔をくすぐる。
「な、何故お前がここにいる!」
「いや、お前も言ってたじゃないか…。今日から同室になった者です」
「なッ! じゃ、じゃあお前が私と同室になったのか!?」
「あぁ、らしいぜ? ほらっ」
そう言って、俺は部屋の鍵を見せる。そこにはちゃんとここと同じ番号が刻まれていた。
「な、何を考えている! 『男女七三にして同衾せず』! 常識だ!」
「いつの時代の常識だよそれ……でもまぁ、仕方ないだろ? この部屋を用意したのは千冬姉だし…」
「な、なに? 千冬さんが?」
「あぁ、千冬姉はここの寮長らしいからな…まぁ、後々はちゃんとした部屋割りが行われるけど…」
そういいながら、部屋に私物を置いて、整理していく。箒は窓側のベットらしいので、俺は廊下側のベットに携帯とアミュスフィアを設置する。
「よし! これで完了!」
「一夏、それは確か…アミュスフィアだったか?」
「ん? あぁ、そうだ。ナーヴギアに代わる最新型。そんで、これにインストールしてるのが、ALO。アルヴヘイム・オンラインって言うゲームだ」
箒もアミュスフィアには興味があったみたいなので、色々と説明してあげた。箒はこういったゲームは全くと言っていいほどしないので、出来れば箒にもALOの楽しさを理解してもらいたい。
「ほう、では自分が妖精になって、その世界で色々と動き回る……と言う事か……だが、ゲームばかりは関心できないぞ?」
「ああ、それは千冬姉との約束で、勉強も両立させるって決めたから大丈夫だ。それに、どうしてもやめられねぇよ…あの世界にはまっちまったら…」
「ふーん…。そう言うものか…」
そう言って、顔をしかめる箒。俺はそんなのお構いなしにアミュスフィアを被る。
「さてと、そんじゃあ俺は潜るとしますかねぇ……リンクスタート!!!」
そのまま、意識をALOへと繋いだ一夏を隣で、眺める箒。その顔はどこか切なさを醸し出していた。
(ゲームなんて物はあまり好きではないし、してこなかった。一夏がそう言う物をしていたのも知らなかったし、見なかった…………。一夏がはまった世界……一体、どんな世界なんだろうな…)
少しだけ、一夏の見る世界が気になった箒だった。
次回は剣道対決まで入れると思います(*_*)
感想待ってます\(^o^)/