今回は早めに書き終えられた!
どうぞ!
第30話 夏の準備Ⅰ
シノアとラウラ……現実世界での、シャルとラウラの初めてのALO体験は、とても刺激的で、とんでもない冒険になった。
あれから二人は、ますますALOにのめり込んでいった。
ISとは違う、自分の翼で空を飛ぶ感覚に目覚めてしまった事や、現実では味わえない様々な初めて体験を欲するようになったとか……。
シャルは幼い頃から、自分の家を中心に生活していたため、あまり外の世界について、まだ知らない部分が存在し、ラウラは生まれた時から軍人として生きてきた。故に、遊ぶ……という感覚を知らなかった……。
が、そんな二人が、ALOの魅力に気づいた。そして、はまってしまうのは、必然だっただろう……。
そのきっかけとなった、プロメテウスのクエスト。その報酬品として、カンザシとフィリアが得たもの……それは一級品の装備品だった。
カンザシが受け取ったのは、すべてが金属でできた杖。カンザシの身の丈ぐらいの長さで、先端がアルファベットのCの形になっており、そのCの中の部分には、三日月の刻印が入った水晶が埋め込まれていた。
《叡智の神杖》……これがカンザシがもらった装備品。魔法によるあらゆる能力値を50もアップさせる超レアアイテムだった。
攻撃はもちろん、防御や拘束、索敵、追跡、隠蔽といった実際に戦闘面に対して関わりのない魔法であっても、効果の違いが出るようになったそうだ。
そしてもう一つ、フィリアがもらった装備品。
《盗心の手袋》……革製の黒い手袋で、この装備をつけている間、ある程度のトラップを簡単に解除出来てしまうと言うレアアイテムだった。
ある程度……と言うのは、使用者本人のトラップ解除スキルによって、その効果に違いが出てくると言う意味だ。
トレジャーハンターとして活動するフィリアにとっては、これ以上ないくらい豪華なアイテムだと言えるのではないだろうか……。
さて、ここまではつい二日前に起こった、ALOでの出来事。
そして今、現実世界でのIS学園では、ある一大イベントの説明を行っていた。
「えー、来週から諸君たちには、学園が所有する施設にて、臨海学校に参加してもらう。
今までは、学園内でのIS操縦を基本的に行い、その基本的動作を学んでもらったんだが、今回の臨海学校では、よりその操縦技術を向上させると言う目的で学園の外での活動となる。
また専用機持ち達は、一般生徒達とは別地にて稼働テストを行う。自由行動もあり、海での活動もあるから気が緩んでしまうかもしれんが、これも課外活動の一環だ。メリハリをつけ、今までと変わず気を引き締めて行動するように……いいな!」
「「「「はい!!!!!」」」」
「よろしい……これでSHRを終了する。以上だ、号令」
「起立、礼」
クラスの全員が、クラスの担任である千冬に頭を下げる。
現在午後四時過ぎ。
今日も一日の学業が終えた頃だった。先ほど千冬の話に出た通り、来週から一年生全員は、臨海学校へと赴く。
学園が所有する施設にて、より一層のIS操縦の技術習得を促す課外活動の一環。そして、専用機持ち達にとっては、各国から配備された新型装備の試験運用をする日でもある。
この時期には、施設の周囲を日本政府によって、限りなく封鎖し、IS操縦に集中できる環境に整えてもらうのだ。
「はぁー。もうそんな時期かぁ〜」
ため息とともに、過ぎる季節に憂いているのは刀奈だった。
刀奈は本来、去年この臨海学校を経験していたはずだったのだが、ご存知の通りSAOに二年間拘束されていた為、一年生として臨海学校に参加しなくてはならない。
「カタナちゃん、臨海学校で私たちってなにをするのかな?」
「うーん……私たち専用機持ちは各国から送られてきた新型装備の運用テストね。
たぶん、レクトも倉持技研と共同開発した装備なんかを送ってくるんじゃない?」
「へぇ〜」と明日奈が返事をした。
明日奈も本来ならば、この臨海学校には参加すらしなかっただろう……。SAOで和人と出会わなければ、もしくは、SAOをやっていなかったら、明日奈はすでに高校三年生になり、大学受験のことを考えていたに違いないからだ。
だから、こういったみんなで一緒に課外活動と言うのも、彼女にとっては新鮮なのかもしれない。
「じゃあ、水着買わなくちゃ!」
「あ、アスナちゃんも買いに行くの? それじゃあ一緒に行きましょうよ。私も買わなきゃって思ってたし……ねぇ、チナツ、キリト?」
「ん?」
「あ、あぁ……」
近くにいた和人と一夏に声をかけるが、何故だか反応がイマイチだった。
「なによ、どうしたの?」
「あぁ〜いや、なんでもない」
「なんでもなくないでしょう?」
「えっとだなぁ……」
顔を赤らめて口ごもる二人に、明日奈も刀奈も首を傾げる。
だが、周りの生徒達の声を聞いて、なんだか納得した。
「やばい、早く行かないといい水着なくなっちゃう!」
「私どうしよう……ねぇ、みんなは水着買った?」
「買ったけど……どうかな……ちょっと派手な奴買っちゃったし……」
などと、何故か一夏と和人の方をチラチラと見ながら言う一組の女子達。
つまり、彼女達にとっての水着選びの一つとしては、和人や一夏に変に思われないような水着を選ぶことなのだ。二人には既に恋人がいるが、それでも、普段着やファッションセンスがダサいものだと、二人から幻滅される恐れがあると思っているのだ。
それが水着ならばなおさらだ……だから、より一層気合が入る。それは一組だけでなく、他のクラスでもそうだろう。
「みんな考えることは同じなんだねぇー」
「まぁ、私の場合、サイズが合わないのよねぇ〜……昨日つけてみたら、はち切れそうだったし」
「まぁ、中学の時のだしね……仕方ないよ」
「「ぶふぅ!?」」
実は昨日、刀奈と明日奈はそれぞれの部屋で、一応持ってきておいた水着を試着してみた。
が、二人ともビキニを着たは良いものの、いろいろと体が成長してしまった為、なにやら見えてはいけない物まで見えてしまいそうだったのだ。
当然、その場には一夏も和人もいたわけで、その時の扇情的な二人の姿を直視してしまった二人は、未だにその光景が頭から離れずにいた。
「そ、そうだな。買いに行くか、水着」
「えぇ。俺もちょうど買おうと思ってましたし……いきましょう」
「「……ふふっ♪」」
何かをごまかす感じで立ち上がった二人。
その顔が赤くなっていたのを、明日奈と刀奈は見て笑っていた。
というわけで、放課後となった現在。
IS学園直通のモノレール乗り場へと移動し、都心部へと向かうためにモノレールを待つ。
一番近いショッピングモールは、レゾナンスという大型のショッピングモールがある。そこまで行けば、デザイン豊富な多種多様の水着が売られている筈だ。
「どんな水着にする?」
「そうねぇ……」
などと二人で話し合う明日奈と刀奈。
それを隣で男二人は聞いている。正直な話、二人は美人であると同時に、スタイルも抜群だ。
出てるところは出ていて、引っ込んでいるところは引っ込んでいる。
しかも二人は……一夏は現実世界でもそうだが、仮想世界でそれぞれの恋人のあられもない姿を目にしているため、二人の水着姿というものを、正直見てみたいと臨海学校の報せを聞いてから、心の内で思っていた。
「ねぇ、チナツ。何がいいと思う?」
「ええっ?! いや、そう言われてもだなぁ……」
なんでも似合いそう……。そう思うしかなかった。だって実際似合いそうなんだもの。
「え〜、じゃあキリトは? アスナちゃんにどういうの着てもらいたい?」
「は、はぁ?!」
「…………ど、どうかな、キリトくん?」
「え?! えっと……まぁ、アスナならなんでも似合うと思うぞ?」
「もうっ、キリトくんはどう言うのがいいか聞いてるの!」
「ま、まぁ、とりあえず行ってから決めようぜ。話はそれからだろう……ほ、ほら、それにちょうどモノレールもきたし……」
「そうですね。ほら、二人とも早く行こう」
先行してモノレールに乗り込む和人と一夏を後ろから見ている明日奈と刀奈という絵面。
刀奈は一つため息をして、ジト目で二人を見る。
「全く、女心のわからない二人ね……ねぇ、アスナちゃん?」
「うーん……でも、行ってからのお楽しみってことで、いいんじゃない?」
「それもそうね。それじゃ、行きましょうか!」
和人達に続いて、二人も乗車する。
周りを見てみると、当然のことながらIS学園の女生徒しか見当たらない。
まぁ、当然と言えば当然なのだが……。
モノレールは何の問題もなく運行し、最寄りの駅に到着。そこからはみんな自由行動。寮の門限があるため、指定の時間内には戻らないといけないのだが、それまでにはたくさんのお店を回れる時間はあるため、問題はないだろう。
一夏達も、目的地である大型ショッピングモール『レゾナンス』に向かって足を進めた。
「うわぁ〜! 大っきいねー。何気に私、ここに来るの初めてだよー」
レゾナンスの外観に驚く明日奈。
学園内にも売店はあるため、日用品もそこの売店で事足りる。
だからあまり外に買い物に行く事がなかったため、改めて来たショッピングモールにテンションが上がる。
「私もここには数回しか来たことなかったんだけど、この辺りの店の中じゃあ結構品揃えがいいのよ」
「そうなんだー! ほら、みんな行こう」
女性の大半は、買い物が大好きだ。
本来買う予定だったものから、買う予定ではなかったものまで、それでこそ、店内のすべてを回ってから買い物に行く。
男性でもそう言う人はいるだろうが、それはほんの一握り程度だろう。
「ほらぁー、二人とも早くぅ〜っ!」
「あはは……行きますか……」
「ああ……。待ってても怒られそうだしな……」
店内へと入っていく恋人二人の後を追いかける和人と一夏。
まずは買いたいもの。水着コーナーへといく。
案の定、水着を売っている店の店内は、女性客でいっぱいだった。その中でも男物の水着コーナーは、店の端っこにあり、女性物の水着よりも種類が少ない。
細かく分類するならば、競泳用の物か、普通の一般的なカジュアルな物、そして子供用の物だ。
それもこれも、ISの出現によって起こった『女尊男卑』と言う世間体のせいだろう。
「なぁチナツ、お前どれがいいと思う?」
「うーん……」
正直水着は何でもいいと思うしかなかった。
種類はカジュアルなやつで、あとはデザインや色だ。
だが、対してそこまで水着やデザインに対してのこだわりがないため、二人はいつものように選ぶだけだ。
「俺はこれですかねぇ……」
「やっぱりか……俺もこれにしようと思ってさ」
二人が取ったのは、極々シンプルな水着。
一夏が白。和人が黒。そこまで徹底しているわけではないが、何故かその色を選んでしまうのだ。
当の本人達もそれでいいと思っているし……。
が、それを許さない人物もいるわけで……。
「まぁ〜た二人とも黒と白だし……!」
「何でこうも同じ色に統一したがるのかしら……?」
明日奈と刀奈は、男二人の姿を見て落胆するしかなかった。
そして、きょとんとしている二人に対して、刀奈がビシッと人差し指を差した。
「いい? 二人とも。私たちがちゃんとあなた達のコーデしてあげるから、私達が選んだやつを買いなさい」
「えっ? いや、でもよーー」
「 “でも” じゃない!」
「「は、はい!」」
閃光と二槍の威圧に負ける二人。
その後、明日奈によって二人が手にしていた水着は戻され、今度は明日奈と刀奈が男物の水着を見て回る。
「うーん……この色、意外と合うんじゃない?」
「うん……そうだね! あっ、でもこんな色もあるよ?」
「それはちょっと派手じゃない? 二人は地味なやつって言いそうだけど……」
「え〜、これでも派手なのかな?」
完全にハブられた二人。
仕方ないので、少し離れて店内を見て回ることにした。
体を反転させ、女性物の水着を何となく見ていた。
(カタナって、こういうの着るのかな?)
(やっぱりアスナにはビキニか? いやでも、悪い虫が付くのは嫌だし……)
お互いに考えることは同じ、恋人に似合いそうな水着。
スタイルがいい二人には、やっぱりビキニが似合うだろう。
自然とビキニのコーナーへと向かう。
が、突然二人の目の前に、全く違う水着が現れた。
「ん?」
「え?」
その水着に視線を移す。その水着は、商品棚に飾ってあった物ではなく、横から伸びる手に握られていた物だった。
その水着を持った手を追って行くと、若い女性客が立っていた。
「えっと……」
「何でしょうか?」
女性客の意図がわからず、思わず尋ねた。
すると女性客は、何の悪びれもなく言い放った。
「はい、これあなた達のお財布で買っておいて」
「「………は?」」
「聞こえなかったの? はぁー、面倒いなぁ……この水着、買ってきてって言ってるのよ」
あまりの展開に少し唖然としてしまった。
それもそのはず、いきなり赤の他人から水着を買えと言われたのだから。
「いや、ごめんなさい……俺たち、あなたのこと知らないし、自分で買ってもらえないか?」
「はぁ? 何言ってのよ。あんたらは私の言うことだけ聞いてればいいの。私は女、あんたらは男。この意味、わかるでしょ?」
和人が下手に出て断りを入れるが、相も変わらず上から目線で二人に金を出させようとする。
その時になって、二人は気づいた。
この女性客は女尊男卑の思想に染まった『女性至上主義者』だと。
「悪いが、その意味は理解できても賛同は出ないな。第一、俺たちにはあんたの水着を買わないといけない理由も、義理もない。他を当たってくれ」
「そうですね。それに、あんたこそそんな事をして何の意味があるんだ? 俺たちがあんたの水着を買って、それをあんたはもらって……いったい何がしたいんだ?」
「は、はぁ?」
女性客もあまり想定していなかった返しに一瞬戸惑ったが、再び強気の姿勢に戻る。
「へぇ〜、そんな事言っていいんだ……いいのよ、別に。ここで大声を出して、あんたら二人を警備員に売り渡したって……!」
「へぇ……」
「ほう……」
「今のご時世、女の方が圧倒的に有利なんだからね! そうね、暴行されそうになったってだけでも、あんたらは連れてかれるだから……」
「なら、やってみろよ」
「は、はぁ?」
これも予想外の返しが来た。
あくまで強気の姿勢を崩さない一夏と和人に、女性客は焦りを覚える。
「な、何言ってんのあんたら……やってみろですって?」
「あぁ、やれるもんならやってみろ。ただし、連れてかれるのはあんたの方だけどな」
「何ですって……?!」
すると、これ見よがしに一夏が自分の制服を指差し、さらには生徒手帳を開いてみせる。
「これがなんだか、わかるよな?」
「学校の、制服に生徒手帳でしょ? それが何よ……」
「…………俺たちが着ている制服って、たった一校しか取り扱ってない物なんだよ」
「は、はぁ?」
「はぁー……それでもわからないなら、こいつにちゃんと目を通せよ」
正直、制服を見せただけで気づくかと思ったのだが、思いの外察しが悪かったのか、未だに理解できないでいる女性客に一夏は、ズイッと自分の生徒手帳を近づけてみせる。
女性客もその勢いに応じ、仕方なさげに生徒手帳に目を通した。
そして、そこに書かれている物を読んで、突如反応が変わった。
「あ……、あんたら、まさか……‼︎」
「ようやく理解してくれたようだな……。そう、俺たちはIS学園の生徒だ」
「そ、そんな…! なんで男が?!」
「はぁ? あんたニュース見てないのかよ……俺とここにいるキリ……和人さんは、世界で二人しかいない男性IS操縦者なんだ。だからこの制服を着ている」
「そして、IS学園はどの国家、組織、企業に属さない治外法権だ。だから、いくらあんたが喚こうが、警備員が俺たちを連行する事は難しい……。
俺たちを裁けるのは、IS学園の教師、学園長……もしくは国際IS委員会だけなんだよ」
「くっ……!」
「んで? あんたはどうする……IS学園はいわば国家そのものだと思ってもいい……そんな所と、一対一でやり合ってみるか?」
「〜〜〜〜ッ!?」
一夏と和人の強気の発言に女性客は怒りを露わにするも、下手に問題を起こすわけにもいかず、歯を食い縛り、拳を力一杯握っていた。
そして、そのまま後ろに反転する。
「帰る! 気分が悪いわ!」
持っていた水着を元の場所に戻し、カツカツとヒールの音を鳴らしながら、足速にその場を立ち去る女性客。
それを見ながら、一夏と和人の二人はニヤリと笑っていた。
その顔は、完全に悪役そのものだった。
「ったく、最近の女ってのは面倒だな……」
「ええ……。ISが出来て以降、女性の扱いが違って来ましたからね。それを勘違いする人も多いですね」
中には女性が主体になって作った、女性至上主義団体なるものまで作っているとか……。
未だに表立った騒ぎにはなっていないが、一夏と和人の出現によって、世界は刻々と動き始めている。
二人を我が国に迎え入れたいと思う者。研究対象として引き入れたいと思っている者。逆に邪魔だと思う者。彼らが使っている専用ISを欲している者。
いろいろと表の世界には出てこない……いや、決して出してはいけない者達が動いている。
「キリトくん」
「チナツ」
「「ん?」」
二人で話し合っていたら、いつの間にか背後に明日奈と刀奈が。
二人の両手には男物の水着が握られていた。
「どうしたの?」
「誰かと話してた?」
「いや、なんでもないよ」
「それより、それは……」
「あー、うん! こっちはキリトくんに!」
「それでぇー、チナツのがこっち!」
手渡された水着。
和人が持っている物は全体が白を基調とした物で、そこに赤いラインやポケットの縁の部分が赤い染まっている水着。
一夏のは、全体が青く、水着の裾の部分や横端の所が黒く太いラインが入っている。
「これ、血盟騎士団のカラーじゃん!?」
「俺のは……なんかミステリアス・レイディみたいだな」
二人とも思い思いの感想を述べる。
二人は相変わらずニコニコと笑っているだけだ。
「大丈夫、キリトくんが前に来ていた血盟騎士団の制服姿、とっても似合ってたし!」
「チナツのはただ単純に私の色に染めたかったから〜♪」
「「…………」」
依然ニコニコとしている二人を前に、何も言えなかった。
ただまぁ、二人のセンスは疑っていないので、これがいいと思ったのなら、似合うだろう。
「わかったよ。これにする」
「うん。それに、なんか新鮮だしな、こんな感じのやつ着るの」
「でしょう!」
「よかったぁ〜♪」
満面の笑みを浮かべる二人。
この笑顔を見ていると、とてもホッとする。
この笑顔がいつでも見られるような、そんな生活をこれからも守りたいと、二人は思うのだ。
「それじゃあ、今度はチナツたちが私たちの水着を選んでね?」
「「え?」」
「うんうん♪ 二人とも、それで女の子の水着を見てたんでしょう?」
今現在、ビキニの水着が売られているコーナーにいる四人。
まぁ、確かに……二人はビキニが似合うだろうと思い、自然とこの場まで来てしまったのは、否めない事実であるが……。
「あー……ま、まぁ、そうだな。二人は、こういうのが似合うかと思って!」
「うんうん! そうそう、これなんてーー」
咄嗟に一夏はその場にあったビキニを取った。
それを刀奈に見せる。
「カタナに似合うんじゃ……あ……」
「え……こ、これ?」
一夏が取った水着は、大人な雰囲気を漂わせる闇色の水着。胸当ての部分にフリルをあしらっているのか、大人な感じの中にも可愛らしさが見て取れる。
そして、シンプルな作りではあるが、胸当ての部分は実際の表示されているサイズよりも一回り小さいため、刀奈の豊満な胸がちゃんと覆い隠せるかどうか怪しい。
それに下の方は、いわゆる紐パンであるため、以外と布面積が少ない。
「え、っと……チナツは、こいうのが良いの?」
「へっ? あ、いやっ! 間違えた! えっと、そのーーっ!?」
刀奈も一夏からそう言う水着を見せられるとは思っていなかったためか、頬を赤らめて一夏の顔を見る。
対して一夏も、まさか自分が選んだのが、意外にもアダルティなものだったとは知らずに取ってしまったことに慌てまくる。
「えっと! そ、そうだな、これじゃなくて、こっちーー」
「良いわよ……チナツが、それが良いって言うなら……」
「えっ?」
取った水着を戻して、別の水着を取ろうと思ったが、刀奈はそれを制止した。
そして、一夏が戻した水着を手に取ると、店の端にあった試着室へと向かう。
「チナツ……その、試着してみるから……その……」
「へ……?」
「ほぉら! チナツくん、カタナちゃんのところに行ってあげて。ちゃんと感想言うだよ?」
「え、あ、はい!」
明日奈に背中を押され、急いで刀奈のところへと向かう。相変わらず顔を赤くしている二人。
それを後ろで見ていた明日奈と和人は、互いに微笑ましく笑っていたり、苦笑していたりしてたとか……。
「じゃ、じゃあ……キリトくんは? どんなのが良い……のかな?」
「うーん……」
先ほどの一夏の失態を目の当たりにしている和人。
で、あるから、和人は慎重にビキニを見つめる。
あまりハレンチなものではなく、明日奈にすごく似合っているもの……。
「ううーーん……!」
「キ、キリトくん? そんなに難しく考えなくても……」
「いや、アスナに変な奴らが絡んできたら嫌だ……! だからしっかりと、防御力の高いやつを選ばないと!」
「ぼ、防御力? 装備のステータスじゃないんだから……」
「ダメだぞアスナ。装備選びは重要なことなんだ! ここをおろそかにしたら、取り返しのつかないことになるんだぞ!?」
「キ、キリトくんは、一体何と戦ってるのよ?!」
相変わらずのゲーム思考。
なんでもステータス値に換算して考えるのが玉に瑕なのだが……。
だが、それでも自分のことを大事に思ってくれていると思うと、悪い気はしない。
「でもね、キリトくん。私たちが行くのって、IS学園の所有する施設なんだよ? なら、当然その場にいるのって、女の子しかいないと思うけど?」
「…………あ」
「えっと……今気づいたの?」
「いや、すっかり忘れてたぜ。そうだよな、男は俺とチナツの二人しかいないんだもな……!」
「うん、だからねーー」
「いや、でもあんまり攻めたような水着は避けよう」
「キリトくん!」
だが、こういう優しいところが好きなのだ。
他人のためでも、真剣に考えて、どうにか助けようとするこういう所が好きになった。
「うーん……じゃあ、これは大丈夫?」
「ん?」
そう言って取った水着。
ベースとなる色は赤と白。白い生地に、赤いボーダーのシンプルな水着。
「ん……」
シンプル。だが、逆にそれが良いと思った。
それに、刀奈が持って行った水着よりかはマシな感じがした。
「うん……これなら大丈夫か……」
「そう? なら、これにするね。私も試着室行って来る」
「あぁ……」
「ねぇ、キリトくんもついて来てよ……」
「えっ、あ、あぁ……そうだな」
若干頬が赤く染めながら、ともに試着室へと向かう。
ひとまず先に入っていた刀奈がカーテンを開け、一夏にその水着姿を見せる。
「ぁ……!」
「ど、どうかしら……?」
一夏の選んだ水着を着る刀奈。
元々のスタイルの良さも相まって、とても大人っぽく見えるし、何より黒っぽい色の水着によって色っぽく見える。
豊満なバストは、水着の胸当てに寄せて包まれているのか、より強調されているようで、下の紐パンも限られた布面積しかないためか、すらっと伸びた脚が、とても綺麗に見える。
「ん……」
「チ、チナツ?」
「へっ?!」
「ど、どう……?」
「あ……す、凄く似合ってるぞ……って言うか、似合い過ぎっていうか……」
「え?」
「あ、いや! とても良いと思う! うん」
「そ、そっか……!」
変な空気に包まれつつ、刀奈はもう一度カーテンを閉めて水着を脱ぐ。
その間に、明日奈の方が着替え終わり、カーテンを開けて、その姿を和人に表した。
「ど、どうかな? キリトくん」
「おぉ……!」
シンプルだがとても破壊力のある光景だった。
刀奈に負けじとスタイルの良さと、長い髪に落ち着いた雰囲気。シンプルな水着でも、とても綺麗だった。
「良いと思う……!」
「ほんと?! じゃあ、これにするね」
にんまりと笑う明日奈。カーテンを閉めて、制服に着替える。
その間に刀奈が試着室から出てきて、その後に明日奈が出てくる。
そして、それぞれが持つ水着を一夏と和人が受け取り、レジへと向かう。
「あ、私もお金出すよ?」
「そうよ、私たちが着るものなんだもん……」
「良いんだよ……ここは俺たちに払わせてくれよ」
「そうそう。ここはカッコつけさせてくれ……!」
二人とも、一応レクトのテストパイロットとしての立場もあるため、それなりの支給金をもらっている。
だからお財布に余裕はあるが、それよりも、一夏と和人自身、そういうことをやりたいのだ。男としての心意気というか、心情みたいなものだ。
その後二人は水着のお金を払い、四人は店を出る。
「よし、これで目的の物を買ったな……」
「そうですね。なら、帰ーー」
「何言ってるのよ。せっかく来たのに……」
「帰るなんてもったいないよ!」
刀奈と明日奈はそれぞれの彼氏の腕を掴み、モール内を歩く。
帰ろうとした矢先に、帰させない二人。
この後、二人はいろんな洋服店を、半ば強制的に歩くはめになった。
とりあえず、今回は四人のダブルデート風にしました……(デートっぽくなったかどうかわからないけど……(−_−;))
そんで、次は、ISヒロインズたちも交えた話をしようと思います!
もちろん、千冬や蘭に弾たちとの絡みも入れたいし、それからの臨海学校本番です!
感想よろしくお願いします(^ ^)