ソードアート・ストラトス   作:剣舞士

3 / 118

今回は、決闘宣言までいきます


第2話 衝突

四月某日…IS学園の入学式。新年度を迎え、また新たな新入生が入り、学園は盛り上がりを迎えていた。

そして、何より今年はまた一味違う異例の一年。たった数ヶ月で国家代表にまで上り詰めた更識の当主に、大手会社の令嬢にして、企業代表のテストパイロット。そして、異例中の異例、二人の男性IS操縦者が今年になって入学して来たのだ。学園が盛り上がらないわけがない。

 

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 

ここは一年一組の教室。まだ担任の先生が来ていない。そして、教室内の生徒達の視線は自然と最前列の二人の生徒に向けられる。

 

 

 

「なぁ、チナツ…」

 

「何ですか? キリトさん…」

 

「これ…想像以上にキツイんだけど…」

 

「大丈夫です…俺もですから…」

 

 

 

 

しかも、席の場所が悪い。何故一番前の真ん中付近に俺たちを持って来たのか…。何か悪意を感じる。アスナさんとカタナも同じクラスなのだが、俺たちの後ろの席なので助けをこうにも出来ない。

すると、教室の扉が開き、一人の女性が入ってくる。緑色の髪を肩の辺りまで伸ばし、胸以外は迷い込んだ中学生の様な容姿をした女性。そのまま教壇に立った。

 

 

 

「皆さん、入学おめでとう! 私はこのクラスの副担任の山田 真耶です! これから一年間よろしくお願いしますね」

 

「「……………………」」

 

「あ、あれ?」

 

 

 

 

もっともスタンダードな自己紹介。しかし、誰も反応しない。俺だけでも反応してやろうかと思ったが、今この状況でそれは無理だ。とりあえず、副担任が山田 真耶と言う事が分かった。回文にしても『やまだまや』と呼べる。実に覚えやすい名前だ。

しかし、当の本人は涙目になりながら自己紹介をする様に指示する。

生徒達が自己紹介をする中、一人だけ俺に視線を送る女生徒が…

 

 

(ん?……あれは…箒か?)

 

「……斑君! 織斑君!」

 

「は、はい!?」

 

「あ、あのぉ〜今自己紹介が『あ』の人から始まって今『お』なんだよねぇ〜自己紹介してくれるかな? ダメかな?」

 

「いや、そんなに畏まらなくても…ッ! 自己紹介しますから…」

 

 

 

突然俺の目の前に現れた山田先生に驚き、思わず声が裏返ってしまう。その事に周りのみんなからはクスクスと微笑が漏れ、山田先生はおどおどして俺を見る。

これでは一行に進まないので、とりあえず全生徒に見える様に振り返る。

 

 

「うっ…」

 

 

突き刺さる様な視線を受けて逃げ出したくなったが、後ろの席にいたアスナさんとカタナからの「頑張れ!」の一言で何とか持ちこたえ、自己紹介をする。

 

 

 

「えぇ〜と、織斑 一夏です。 趣味はALOで、家事全般が得意です。一年間よろしくお願いします!」

 

 

自己紹介が終わり、一夏に拍手が贈られる。元々イケメンな一夏。そんな一夏にうっとりする者もいる。だが、中には…

 

 

「えっ? ALOって今話題のオンラインゲームの事だよね?」

 

「まさか…織斑君って…オタクなの?」

 

「えぇ〜、イケメンがオタクって…何だか残念…」

 

 

 

ALOをやってるからオタクだと思われるのは侵害だが、こんな事で怒る程子供のままではない為、スルーした。そんな時、再び教室の扉が開き、またまた女性が入ってくる。その女性は…。

 

 

「お前にしたら、中々良くで来た自己紹介だったな」

 

「なっ!? 千冬姉! 何で…あたっ‼‼」

 

「織斑先生だ! 馬鹿者!」

 

 

そう、俺の姉。織斑 千冬だった。今の仕事は公務員だと言っていたが、ここの先生をしているとは聞いていなかった為、驚きを隠せない。チラッとカタナの方を見ると、ニヤニヤしている事から、この事を知っていたのだろう。彼氏なんだから教えてくれてもいいのに…。おかげで俺は出席簿の角で、脳天を叩かれる始末だ。ホント痛てぇ!

 

 

 

「諸君! 私がこのクラスの担任の織斑 千冬だ! 君たち生徒を一人前にするのが仕事だ」

 

 

黒のカジュアルスーツに身を包んだ千冬姉の挨拶に、クラス中のボルテージは上がりまくりだった。

 

 

「「「「きゃあぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」」」」

 

「千冬様! 本物の千冬様よ!」

 

「私、ずっとお姉様に憧れてました!!」

 

「お姉様の為なら死ねます!」

 

「私、お姉様に会う為に来ました! 北九州から!」

 

 

これには流石の俺たちも引き気味になってしまった。対して千冬姉は頭を抑えている。

 

 

「はぁー…何だ? 今年も馬鹿ばかりが来たのか? それとも私の所だけに集中させているのか?」

 

 

なんて言う始末。だか、女生徒達は…

 

 

「お姉様ぁぁ〜〜ッ! もっと叱って罵ってぇぇ!!!」

 

「そして、付け上がらない様に躾してぇぇ!!!」

 

「でも、時には優しくしてぇぇ!」

 

「「「「……………………」」」」

 

 

何と言うか…みんな個性的な人達が多いんだな…このクラスは…。そう言う事にしておこう。

そして、続いてあいうえお順でキリトさんの番だ。

 

 

 

「えぇ…桐ヶ谷 和人です……趣味はチナツ…じゃない! 一夏と同じでALOが趣味です。機械いじりが好きで、ジャンクパーツから自作のPCを作るのが得意です。……その…よろしくお願いします」

 

 

 

一夏とまた違い、女性顔でイケメンな和人に黄色い声をあげようかと思ったが、再び出た『ALO』の言葉に一気に沈黙するクラス。続いてカタナの番だ。

 

 

 

「更識 楯無よ! 趣味ALO。最近は料理も趣味かしら? 一応先に言っておこうと思うとだけれど、この学園の生徒会長もやってるから何か困ったことがあれば、どんどん相談してね? 以上!」

 

 

生徒会長と言う言葉に驚くみんなをよそに、席に座る刀奈。そういえば、ここでは楯無で通ってるんだっけ…

そして、またまた出ましたALO。人を引き寄せるオーラが出ている刀奈に目を奪われた子達もいたが、やはり、また沈黙してしまった。

続いてアスナさんの番。

 

 

「結城 明日奈です! 趣味はALOで、オリジナル料理レシピを考えて、作るのが得意です! ちょっと事情があって走る事が出来ませんが、次第に走れる様になるので、気にしないで下さい。よろしくお願いします!」

 

 

やはり出ましたALO。四人のALO趣味にクラスの女子達はお腹いっぱいだった。上品な笑顔と気品溢れる立ち姿に羨望していた子達も自然と落胆する様子が見てとれる。

 

 

その後も自己紹介は進み、丁度最後の人が終わった頃にチャイムがなり、千冬姉達は授業の準備の為、一旦退する。休み時間となり、みんな思い思いに過ごす。

俺たち四人も席が近かった上に、俺とキリトさんの視線地獄からの解放後のケアをする為に集まる。

 

 

 

「あぁー、しんどかった…」

「もうキリト君、何だかおじさんっぽいよ?」

 

「まぁ、今ので五年分の体力は使ったかな…。でも、チナツのお姉さんが先生なのはびっくりしたぞ」

 

「俺もですよ…。カタナは知ってたんだろ? なんで教えてくれなかったんだよ」

 

「ごめんね。サプライズがあった方が面白いと思って…てヘペロ♪」

 

「全く…勘弁してくれ…」

 

 

SAOの世界では、カタナのイタズラは日常茶飯事だった。主な被害を受けていたのは、俺にキリトさん、クラインさんに、リズさんだ。理由としては、「この四人は比較的に反応が面白いから♪」……だそうだ。最近では、ALOで出会ったリーファ…キリトさんの妹の桐ヶ谷 直葉とSAOクリア後、共にALOを始めたケットシーのシリカもカタナの標的になっている。

 

 

 

「ちょっといいか…」

 

「えっ?」

 

 

 

その場に第三者の声が聞こえた。その声の主は…。

 

 

「箒?」

 

「すまないが、一夏を借りてもいいだろうか…」

 

「えっと…」

 

「行ってきなさいチナツ…」

 

「カタナ…いいのか?」

 

「えぇ、行ってきなさい」

 

「分かった。箒、屋上でいいか?」

 

「あ、あぁ。構わん」

 

 

 

そう言って、俺は箒と共に教室を出る。唯一気になったのが俺がカタナと話している時に箒から殺気混じりの威圧感が出ていた事だが…別に何事もなかったので気にはしていなかったが……

 

 

 

「あの子、誰なの?」

 

「ん? チナツの幼馴染で、ISの産みの親、篠ノ之 束の妹 篠ノ之 箒ちゃんよ…」

 

「マジでッ!?」

 

「あれ? キリト君も知ってたの?」

 

「あぁ、チナツ達ってスグと同じ学年だろ? 剣道の全国大会でスグが負けた相手が篠ノ之って名字だったからさ…」

 

「そっかぁ…。でも、あの子何だかカタナちゃんの事、すごく睨んでたけど…大丈夫なの…?」

 

「えぇ、気づいていたけど、今すぐどうこうしようってわけでも無いみたいだから大丈夫よ…。はぁー、全くチナツのあの体質も直して欲しいんだけどねぇ〜」

 

「アッハハハ………」

 

 

 

カタナの溜息にアスナが苦笑を漏らす。キリトはもちろんチナツもまた女の子のフラグを作る事に長けているので、それの対処に双方の妻達は、苦労させられているのだ。

 

 

一方、屋上では……。

 

 

 

 

「よぉ、久しぶりだな…」

 

「うむ…その…久しぶりだな一夏…」

 

「そう言えば…ッ!」

 

「な、何だ!?」

 

「剣道の全国大会で優勝したらしいな…ッ! おめでとう!」

 

「な、なんでそんな事知っているだ!」

 

「へっ? いや、新聞にも載ってたしネットニュースにもなってたからな…」

 

「そ、そうか………」

 

 

ざっと六年ぶり…箒と最後に会ったのは小学四年生の時だったか…随分の雰囲気が変わり、綺麗になったと言うのが第一印象だった。

 

 

「そう言えば一夏、お前と話していたあの女は何なんだ?」

 

「えっ? あぁ、カタナの事か? 何なんだって言うなら、カタナは俺の彼女だ」

 

「なっ、なにぃッ‼ か、かか彼女ぉぉッ!!!?」

 

「あ、あぁ、大体半年前ぐらいから付き合ってる」

 

「あ、あぁ……そ、そうか……ううぅ……」

 

 

 

俺とカタナの事を話すと箒は途端に黙り込み、しまいには涙を流してしまった。

 

 

「お、おいッ! 大丈夫か? 箒…」

 

「だ、大丈夫だ! 何でも無いッ!!!」

 

「何でも無いことはないだろ……」

 

「大丈夫だ!! 気にするな!!!」

 

「あっ! おい、箒ぃ!!!」

 

 

 

俺の声を無視し、箒は校舎の中に戻っていった。俺はその背中を追うことが出来ず、箒が消えてった入口を見つめる事しか出来なかった。

すると、その入口からキリトさんが現れた。

 

 

「あれ? キリトさんどうしたんですか?」

 

「ん? いや、もうすぐ授業が始まるから呼びに来たんだよ……篠ノ之さんと何かあったのか?」

 

 

 

恐らく、階段で鉢合わせたのだろう。しかし、これは俺と箒の問題だ…。こればかりは俺たちで解決しないといけない。

 

 

 

「いえ、その…カタナとの関係を話したら……」

 

「そうか…。なるほどねぇ〜カタナとアスナが言っていた通りになったって訳か……」

 

「えっ? 何ですか?」

 

「いや、何でもねぇ〜よ…。それより、早く行こうぜ…あの教室で男一人はキツすぎるぞ……」

 

「えっと…すみません……」

 

 

 

その後、一時間目の授業が開始された。教科書を開き、正直絶句した。ほぼ文字…挿絵なんかも所々あるが、文字列の方が圧倒的に多い。内容は事前に参考書を読み、カタナのスパルタ教育のおかげで何とかなっているが、それでも気が滅入る。隣のキリトさんを見ると機械やPCなどに出てくる用語のオンパレードに興味深々と言ったところだろうか……。アスナさんはこう言うのは苦手かと思っていたのだが、思いの外、飲み込みが早かった。元々統一模試の学区内で一位、高校入試なんて朝飯前と言うほどの学力だからなのか、凄すぎる。

 

 

 

「ここまでで分からない人はいませんか? 織斑君と桐ヶ谷君は大丈夫ですか?」

 

「はい、問題ありません」

 

「俺もです」

 

「そうですか…ッ! なら、良かったです!」

 

 

 

そう言って気分上々に授業を進める山田先生。次はISそのものについての内容だ。つまり、コアについてだ。

 

 

 

「ISのコアには、意識に似たようなものがあり、操縦者の操縦時間に比例して、操縦者の特性を理解していきます。ですので、ISは機械と言うより、パートナーとして扱って下さいね?」

 

「しつもーん!!! パートナーって彼氏彼女みたいな感じですか?」

 

「うえぇっ!!!? そ、それはそうですねぇ〜私はそう言う経験が無いので分かりませんが……あぁ、でもそれはそれで……」

 

 

 

生徒……確か、『谷本 癒子』さん…だったかな? の質問に山田先生は赤くなり、体をくねくねさせている。そんな姿を見て、生徒達も「先生赤くなってるぅ〜♪」とか、「先生可愛いぃ!」とか……これがいわゆる女子高のノリと言う奴なのだろうか…。

でも、パートナーが彼氏彼女のような関係って言うのは、理解出来なくも無い。あの世界でカタナと出会い、絆を育んで、愛し合い、結婚した。仮想世界のデータだったのに、またこうして現実世界で出会い、同じように愛している。ISともそんな絆を結べたらいいなと、俺は思う。隣を見ると、目を閉じ、思い思いにふけっているキリトさん。どうやら、俺と同じ事を考えているみたいだ。

 

 

 

そこで授業が終わり、再び山田先生は教室をあとにする。俺たちも四人で集まり、談笑を始めた。

 

 

 

「いや〜、ISってほんと興味深いなぁ…ッ!」

 

「そうだね。自分のパートナーに真摯に向き合って分かり合う……とても素敵な事だと思う…」

 

 

元々、機械いじりが好きなキリトさんはISに対して興味深々と言ったところで、アスナはISのコアについて感心しているようだ。

 

 

「ねぇ、チナツ。さっきの休み時間、篠ノ之さんが涙目で帰って来たけど……」

 

「うぅッ! え、ええっと…そのぉ…」

 

 

カタナの問い詰めるような視線に押され、屋上での出来事を話す。

 

 

 

「そう、やっぱりそうなったのね……。これは、私にも関係している事だから、私の方でも何か対応しておくわ」

 

「いや、でもーー」

 

「『でも』じゃない! 私も関係者なんだから…私にもやらせて…チナツは、私と簪ちゃんの事を気にかけてくれて、その事を解決してくれたんだから……今度は私がするわ…ッ!」

 

「カタナ……ありがとう…なら、一緒に行ってくれるか?」

 

「えぇ、もちろん♪」

 

 

 

カタナの協力も得たので、この話は後日また話し合う事した。そして、次はALO内のクエストへと移る。

 

 

 

「今日はどうします? めぼしいクエストはなかったと思いますけど…」

 

「う〜ん…俺は、エギルに頼まれて店の手伝いをしようかと思ってるけど…アスナは?」

 

「私はユイちゃんとお出かけ。この間、可愛い洋服屋さんがあったから一緒に行こうって約束してたの♪」

 

「私はリズちゃんと一緒に鉱物採取のクエストに付き合ってほしいって言われてる…」

 

「う〜ん…じゃあ俺はどうしようかな…」

 

「あれ? そう言えば、チナツ君はリーファちゃんと討伐クエストの約束があったんじゃ……」

 

「あぁっ!!! そうだった! あぶねぇ!」

 

「はぁー、ダメよチナツ。女の子の約束を忘れるなんて…」

 

「アッハハハ……もう、いろんな事があり過ぎてすっかり忘れていたよ……面目ない…」

 

 

 

 

そうやって談笑にひたっていると……

 

 

 

「ちょっとよろしくて…?」

 

「「ん?」」

 

 

振り返ると、そこには金髪の少女が立っていた。

 

 

「まぁッ! 何ですのそのお返事! このわたくしに声をかけられたのですから、それ相応の対応があるのではなくて?」

 

「……キリト君」

 

「チナツ……」

 

 

 

 

いきなり呼ばれて、自分の最愛の夫に対するこの態度だ。アスナとカタナは、抑えてはいたが、内心では怒りの炎を燃やしていた。

 

 

 

「待て、アスナ…」

 

「カタナも…落ち着けって」

 

「それで? 入試主席のセシリア・オルコットさんが俺たちに何の用なんだ?」

 

 

 

ここは代弁者として、キリトが話す。すると、セシリアは…

 

 

「ふんっ! 別に、世界で始めてISを動かした男性方と聞いておりましたけど…とんだ期待はずれですわね…」

 

「俺たちに一体何を期待してたんだよ…」

 

「それに、オタクなどと言う下賤な存在だったとは……全くもって話になりませんわ…ッ!」

 

「「ッ!!!」」

 

 

 

この言葉には、流石にアスナもカタナも我慢出来なかったのか、立ち上がって睨みつけていたが、直ぐにキリトとチナツに止められた。

だが、それでもセシリアの口は止まらない。

 

 

 

 

「まぁ、私はエリートですから? あなた方のような方達にも優しくして差し上げますわ。そうですわねぇ…泣いて頼むのであれば、ISの事について教えて差し上げなくもなくてよ…? 何せわたくし、入試でそこの生徒会長さんと同じように教官を倒したエリート中のエリートですから!!!」

 

 

大きく胸を張って自慢げに話すセシリア。ちなみに、彼女が言った通り、カタナも入試の時には、試験官の先生を倒している。何でも秒殺だったそうだ。

っと、話を戻して…。

 

 

 

「あれ? 俺も倒したぞ? 教官…」

 

「はぁ?」

 

「あぁ、俺も倒したが?」

 

「な、なな何ですって!?」

 

 

チナツとキリトの言葉にセシリアは驚愕した。なんせ教官を倒したのは、カタナと自分だけだと聞いていたからだろう。

 

 

「あなた方も教官を倒したって言うのッ!?」

 

「「うん…」」

 

 

 

声を揃えて頷く二人にセシリアの体はプルプル震えていた。そして、何かを言おうとしてチャイムがなり、「また来ますわ!!!」っと言って自分の席に戻って行った。

そして、授業が始まった。次の授業は織斑先生が教壇にたった。どうやら重要な授業らしく、山田先生までノートを開いている。

 

 

 

「えぇ〜、この時間はISの近接格闘における諸動作と各武装についてだ…! っとその前に、今度行われるクラス代表戦のクラス代表を決めないとな…。クラス代表とは、クラスを仕切るリーダー…まぁ〜その名の通りクラス長と考えていい、委員会の出席などもクラス代表が行なう。自薦他薦は問わない…誰かいないか?」

 

 

 

要するに学級委員長と言う事だ。正直、俺もキリトさんもSAOではソロとして動いていたので、あまりこう言うのは向かない。だから、やらないでおこうと思ったのだが……。

 

 

 

「はい! 織斑君がいいと思います!」

 

「えっ!?」

 

「私も賛成です!」

 

「じゃあ、私は桐ヶ谷君で!」

 

「えぇッ!?」

 

「私も私も!!」

 

 

 

当然の如く、俺とキリトさんを指名するみんな。

 

 

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!! 俺たちはそんなの無理だって!!」

 

「推薦された者に拒否権があると思っているのか?」

 

「「ええぇぇ……」」

 

「他にはいないのか? いないなら、織斑と桐ヶ谷で投票する事になるぞ?」

 

「納得いきませんわ!!」

 

「「ッ?!」」

 

 

 

突然、後ろの席に座っていたセシリアが立ち上がり、怒りを露わにしていた。

 

 

 

「その様な選出は認められません! 男だからと言ってクラス代表だなんていい恥さらしですわッ!! 代表ならこのわたくし、セシリア・オルコットが一番の適任者でしてよ!」

 

「あら、じゃあそう思う理由を聞いていいかしら?」

 

 

 

セシリアの言葉に刀奈が反応し、セシリアに問いかける。

 

 

「ふんっ! そんなの当然ですわ……わたくしはイギリスの代表候補生セシリア・オルコット。こんな文化的にも後進的でイギリスよりも劣っている様な極東の猿よりもずっと適任でしてよ?」

 

「それは聞き捨てならないな……。大体、ISもVR技術も世界で初めて作ったのは日本人なんだぜ? それなのに、たかが代表候補生のあんたが侮辱するのはおかしいんじゃないのか?」

 

「それに、イギリスだって大してお国自慢なんかないだろ…世界一マズイ料理で何年覇者だよ…」

 

 

 

遂には和人も一夏も我慢が出来なくなり、セシリアとの言い合いに。そして、一夏の言葉にセシリアがキレた。

 

 

 

「なっ‼ イギリスにだって美味しい料理はいっぱいありますわ! あなた方、わたくしの祖国を侮辱いたしますの!」

 

「セシリアさん……気づいてない様だから言っておくけど、セシリアさんは今、日本とそこに住む人たち、そして、私たちの事を侮辱した事になっているんだよ…」

 

「ッ!?」

 

 

明日奈に言われ、我に返るセシリア。そう、ここは日本。そして、ここにいるのは自分以外全員が日本人だ…そして、彼女はイギリスの “代表候補生” …つまり、日本に対するイギリスの侮辱でもあるのだ。

 

 

 

「なっ!? くうぅ……よくもわたくしに恥をかかせてくださいましたわね!!!」

 

 

 

独りよがりの怒りを露わにし、一夏と和人を指差す。

 

 

 

 

「決闘ですわ!!!」

 

「…………キリトさん、どうします?」

 

「ん? いいじゃないか? 俺もIS戦闘をやってみたいと思ってたし…」

 

「はぁー、キリト君の悪いクセが出ちゃったなぁ〜」

 

「ウフフっ♪ いいじゃないアスナちゃん…それでこそキリトなんだし」

 

「それで? 俺たちはどれだけハンデをつければいい?」

 

「はぁ? 早速お願いかしら?」

 

「いや、俺たちがどれ位ハンデをつけたらいいかって聞いているんだよ」

 

 

 

 

俺の言葉に、千冬姉、アスナさん、カタナ以外の全員が笑っていた。だが、俺もキリトさんも動じない。

 

 

 

「織斑君、それほんとに言ってるの?」

 

「男が女より強かったのって、ISが出来る前の話だよ…」

 

「もし、世界が男と女で戦争したら、男は三日も保たないらしいよ」

 

「今からでも遅くないよ二人とも! 謝ってハンデつけてもらえば?」

 

「「断る!!!」」

 

 

 

女子達の提案を二人して断る。それを見てセシリアが再び口を開く。

 

 

 

「あら? 良かったんですの? わたくしの方がハンデをつけようと思っていましたのに……日本の殿方はジョークセンスをお持ちみたいですわね」

 

「心配する事はないさ…同じくISを動かせる身、これだけ対等なら、あとは実戦経験のある俺とチナツの方に分がある…」

 

「えぇー、だって実戦って言っても、桐ヶ谷君たちのはゲームの中での話でしょう? ISでの実戦とはまた別の話だよ…」

 

 

 

キリトさんの言葉に反応した女子の言葉を聞いて、俺はもう、打ち明ける事にした。俺たちの共通する秘密、俺たちと言う存在を。

 

 

 

「言おうかどうか迷っていたけど、この際だ。はっきり言っておくよ……。俺とキリトさん、アスナさんとカタナはSAO生還者なんだ……だから、命がけの実戦なら二年間経験している……。これでもダメか?」

 

 

一瞬で、教室内が凍りつく。SAO…………フルダイブ型のMMORPGで世界で初めて出されたゲーム。正式名称を『ソードアート・オンライン』もちろん世界ではこの快挙をニュースで発表し、一躍有名になった。が、その翌日には、ゲームオーバーが現実の『死』を意味すると言うあり得ない事件が起きた。それは、日本だけでなく世界も震撼させた大事件だった。当然、ここにいる皆が知らないわけがない。

 

 

 

「ふんっ! それがなんだと言うのですか? そんなものは所詮ゲーム。そんなくだらないものに二年間を費やして、人生を無駄にしたあなた方にわたくしが負ける道理はありませんわ!!!」

 

「「「「ッ!!!!」」」」

 

 

 

この言葉には、流石にキレた。自分で抑えていた殺気がジワジワと体から出ているのを感じる。俺たちの殺気に気づいたのか、セシリアはもとより周りにいるみんなまでもが怯え、体を震わせている。

 

 

 

「お前…今、何て言った…」

 

「は、はぁっ? な、なんですの…」

 

「所詮ゲーム? くだらない? ふざけた事言ってんじゃねぇぞ!!!」

 

「ッ!!!」

 

 

 

俺の怒号に、セシリアがピクリと体を震わせる。

 

 

 

パチィィン!!!

 

 

 

扇子を閉じる音がし、その方向をみるとカタナが妖艶な笑みを浮かべていた。しかし、その目は全然笑っておらず、さらに増した殺気に隣に座っていた生徒が気絶した。

 

 

 

「セシリアちゃん……私ね、結構気は短くない方なんだけど……流石に、今のを聞いたらねぇ……たかが “代表候補生” の分際で、よくもここまで喋れたわね…。少しは身の程ってやつを覚えた方がいいんじゃないかしら?」

 

 

ずっとセシリアに背を向けていたカタナが初めてセシリアの方を向いた。その目はまさに、SAO ユニークスキル持ちの〈ニ槍流のカタナ〉の戦闘時の睨みそのものだった。

 

 

「オルコット…」

 

「ッ!?」

 

 

俺に呼ばれ、こちら見るセシリア。その目は若干涙目になっていた。だかしかし、それでも俺は、姉譲りの睨みをやめない。

 

 

「な、何ですの…」

 

「お前が俺の事をどう言おうと勝手だが、死んでいった人たちやあの世界を一生懸命生きた人達、キリトさんやアスナさん、カタナの事を愚弄する事は絶対許さねぇ!! ……いいぜ、剣で語れと言うのなら望むところだ…デュエルで決着をつけてやる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして決定したクラス代表決定戦。俺たちの専用機が届くのと同時期になる。決して引けは取らない。そして、再び復活する黒の剣士と白の抜刀斎の実力。決戦は一週間後の放課後。それを聞いたのち、俺たち全員は席に座り、授業を再開するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





どうでしたか?

次回は専用機の説明と箒との剣道対決に行こうかと思います。



感想待ってまーす^o^

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。