ソードアート・ストラトス   作:剣舞士

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お待たせしました!

ファントム・バレット編の方が結構筆が進んでしまい、本編の方に時間がかかってしまいました!

それでは、どうぞ!





第28話 亡霊の王

「つまりメテスさんは、このダンジョンの最奥部にいるボスの持っている物を奪い取りたいと……」

 

「おう。まぁ、そう言うことなるな!」

 

 

 

えっへんと言わんばかりに胸を張り、腕を組んで仁王立ち。

この男、メテスは意外にも子供の様な性格をしているのかもしれない。

 

 

「それって……泥棒なんじゃ……」

 

「まぁ、そうとも言うな」

 

「それダメじゃん!?」

 

 

 

 

シノアが心配そうに言い、リーファがツッコむ。

何故こうなったのか……。

それは全員がメテスと出会ってからの事だった……。

 

 

 

 

 

「えっと、メテスさんはなんでここに?」

 

「いやぁ〜それがねぇ〜……」

 

 

 

キリトが代表としてメテスから情報を引き出す。

 

 

 

「俺は冒険者として、今までいろんなところを旅してきたんだけどねぇー、その中で最も熱くなれる瞬間があるんだよ!」

 

「「「熱くなる瞬間……?」」」

 

「それは…………宝探しだぁぁぁ!!!!」

 

「「「…………」」」

 

「だよね! そうだよね!」

 

「おおぉ〜〜っ! わかってくれるのかお嬢さんっ!」

 

 

 

メンバーが硬直している中、唯一トレジャーハンターと言う特徴が合うフィリアだけが、メテスと手を取り合って熱く会話を交わす。

 

 

「はいはい、まずはなんでここにいるのかを聞くのが先でしょうー?」

 

「あっ、ちょっと待ってよリズっ! 最も詳しく話をぉ〜〜っ!」

 

「はいはい、また後でねぇ〜〜」

 

「えええぇぇ〜〜!」

 

 

 

 

フィリアの上着を引っ張って後ろへと移動する。

さて、ハイテンションであるフィリアがいなくなったところで、さらに詳しく話を聞いていく。

 

 

 

「それで、その目指している宝ってのはなんなんだ?」

 

「それはな、俺の好きな人類が、これから進化していくかどうか……それが見られる至宝の物なんだ」

 

「人類の……進化……ですか?」

 

 

何やら大きな話になってきて、不審になる一同。

 

 

「人類の進化って……」

 

「いくらなんでも……」

 

「大袈裟な物言いだな……」

 

 

スズ、ティア、ラウラがジト目で見ながら言う。

 

 

「そもそもあなたは……?」

 

「そうですよね……好きな人類って……あなたは人類じゃないんですか?」

 

 

カンザシとシリカがおずおずと尋ねる。

 

 

「ん? 俺か? 俺様は神だぜ!」

 

「「「…………神……」」」

 

「なぁ、ユイ。ほんとのところ……メテスは何者なんだ?」

 

「NPCである事は、間違いないです。ただ……一般のNPCのように、固定用応答ルーチンで話しているのではなく、システム中枢に近い、言語エンジンモジュールに接続されていますね」

 

「つまり、AI化されてるってことか?」

 

「それって、ユイちゃんと同じってこと?」

 

「そうです、ママ」

 

 

いまいち信用出来ないメテスの発言に、メンバーはだんだんと疑いの様子でメテスを見る。

だが、同じAIとして機能しているユイには、メテスが何者なのか、はっきりと見て取れる。

 

 

 

「まぁ、とりあえず外に出てみないことには、始まらないよな」

 

「そうね……どの道、私たちも最終目標はクエストボスなんだから……」

 

 

 

チナツとカタナの言葉には、全員賛成した。

だが、問題の上層階に向かうための通路がない……そして……。

 

 

 

「でもさぁ〜、問題のクエストフラグはどこで立つのかな?」

 

「あ、そうだよ……! どっちにしてもフラグ立てないとクエスト進められないよ」

 

 

 

そこでフィリアが気づき、リーファも思い出したかのように言う。

 

 

 

「とりあえず、上に行くしかないよね? ユイちゃんが道を知ってるけど……どうする、キリトくん?」

 

「そうだな……なぁ、メテスさん」

 

「ん? なんだ? スプリガンの少年」

 

「俺たちも、今回は最奥部へ行こうと思ってるんだけど、あんたはどうする?」

 

「そうなのか? それはいいなぁ!」

 

「え? それはどういう……」

 

「君たちは見たところ、妖精の中でも、相当な腕を持っているんだろ?」

 

「ええ、まぁ……それなりには」

 

「なら、その腕を見込んで、頼みたいことがあるんだが……聞いてもらえないか?」

 

「まぁ、とりあえず……話を聞かせてもらえませんか?」

 

「おう……実はな……」

 

 

 

 

そこから、メテスがここにきた目的、今現在、ここにいる理由。

そして、今後の行動のことについて、キリト達に話した。

メテスがここにきた理由は、先ほども言った通り、この地下ダンジョンの最奥部にいるボスから、宝を盗むことだ。

ならば、なぜここにいるのか?

理由は簡単。メテスは最奥部のモンスターとの対決になり、敗北してしまったのだ。そこで、命さながらここまで逃げてきたと言う……。

 

 

 

「正直、宝を奪うと言う行為に他人を巻き込まないというのが、俺の心情だったんだが……今回ばかりは、一人では無理っぽい」

 

「それで、俺たちにもその宝を奪う手助けをして欲しいと?」

 

「ああ……その通りだ。もちろん、タダでとは言わん! 協力して、目的である宝を手に入れた暁には、ちゃんと報酬を払う……!

どうか、引き受けてはくれないだろうかーーーー!」

 

 

 

 

そう言って、軽くお辞儀程度に頭を下げたメテス。

正直どうしたものか迷っていると、メテスの頭上に何やらアイコンが出てきた。

 

 

 

「ちょ、これって……!」

 

「ん? このアイコンはなんだ、スズ」

 

「それはクエストフラグのアイコンですわ、ラウラさん」

 

「じゃあ、この人がクエストを提示するNPCだったんだね……!」

 

 

 

そう、クエストを開始するためのキーパーソンは、このメテスであったのだ。

ならば、迷うことはなくなった。

 

 

 

「オーケー、メテスさん。俺たちはその依頼、受けるよ」

 

「本当か!? いやぁ〜助かるよ!」

 

「そんなことよりよ、メテスの旦那。ちゃんと報酬は弾んでくれよお?」

 

「もちろんだ、サラマンダーの剣士よ! ともに宝を奪ってやろうかっ!」

 

「おうよっ!」

 

 

 

 

何気に息ピッタリなクラインとメテスの尻目に、メンバーは装備品やアイテムの整理をし、これから戦闘を行う為の準備を行う。

 

 

 

「それじゃあ、いよいよフィールドボスだ……みんな、準備はいいか!」

 

「「「「おおおお〜〜ッ!!!!!」」」」

 

 

 

 

こうして始まった、地下遺跡のクエスト。その名も『異界の簒奪者』……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと……とりあえずボス部屋の前まで来たんだが……」

 

 

 

あれから全員、ユイの指示の下、上の階層へと上がる道なりを進んでいき、ようやく元いた場所へと出られた。

そこから再び回廊を進んでいき、発見できなかった扉は、下層で出会ったメテスによって、トラップを解除してもらい、ボス部屋へと通じる回廊を発見。

途中で出会ったモンスター達に遭遇する事も無く、無事全員ボス部屋へとたどり着いた。

 

 

「ここからは、どっちにしろ直接ぶつかってみないことにはわからない。全員、再度アイテムの確認やフォーメーションを頭に入れておいてくれ」

 

「「「「「了解っ!」」」」」

 

「ここにいるメンバーで、また二つのパーティーに分かれる。第一班のリーダーはキリトさん。第二班は、俺がリーダーを務める。

各班はそれぞれのリーダーの指示を聞いて動いてくれ」

 

「「「「「了解っ!」」」」」

 

 

 

 

キリト、チナツの両名が指揮を取り、今回は戦闘を行う。

第一班、第二班に分かれたメンバーと、その後ろについていくメテス。

各員が準備を整えた所でキリトとチナツの二人が、左右の扉を開ける。

中は薄暗く、うっすら灯る灯火だけが、扉の内側……ボス部屋を写していた。

 

 

 

 

「モンスター……いる?」

 

「いや、気配は感じないな……」

 

「メテスさんは後方から魔法支援をお願いします」

 

「オーケーだ! ウンディーネのお嬢さん」

 

「お、お嬢さんって……!」

 

 

 

 

薙刀をしまい、ティアと同じ様に魔法支援用の杖を手にしていたカンザシ。

メテスの言葉に顔を紅くしながら、メテスの前を歩く。

そして今度はウインドウを操作し、アイテム画面をタップする。

すると、カンザシの顔に、赤い縁の長方形レンズの眼鏡が装備され、その鼻緒の部分をクイっと人差し指と中指の二本であげる。

 

 

 

「あれ? カンザシちゃん眼鏡かけちゃうの?」

 

「うん。やっぱり戦闘の時は、こっちの方が落ち着くから……」

 

「うーん……眼鏡がなくても充分可愛いけど、やっぱりカンザシは眼鏡が似合うよな」

 

「え、ええっ?! そ、そうかな? か、可愛いかな……!」

 

 

 

 

 

こんな時でもチナツワールドは健在。

ふとした事ですら、乙女心スイッチが入る様な言葉を言うのである。

その後ろでは、複数の女性陣達の殺気が放たれているとも知らずに。

 

 

 

 

ーーーー!!!!

 

 

 

 

突如、ボス部屋の雰囲気が一変した。

灯りがついていた燭台の焔が橙炎から青白い焔へと変わり、その場には妙な寒気が走った。

 

 

 

「なんだ、ラグッたか!?」

 

「っ! キリトくん、上!」

 

 

 

アスナが指さした先には、天井から舞い降りてくる黒装束の何か。

その何かの周りを、踊る様にして飛んでいる燈籠。

 

 

 

「ようやくお出ましみたいね」

 

「あれは……一体何なんだろう……?」

 

「何者だろうと、斬り進むしかあるまい」

 

「シノアとラウラは初めてのボス戦だからな、あまり無理はするなよ? 基本的にはシノアはティアやカンザシ達と後方支援、ラウラは中衛からのサポートだ。スズ、ラウラのサポート、頼んだぞ」

 

「はいよー」

 

「オッケー、わかってるよチナツ!」

 

「了解だ、師匠」

 

「ここで師匠はやめてくれ……!」

 

 

 

 

IS学園組のメンバーも気合充分の様子。

全員が陣形を整えたところで、天井から降りてきたその何かが、黒い外套を翻し、その姿をあらわにした。

 

 

 

「あー……これは……」

 

「アスナちゃんが一番嫌いな……」

 

「うう〜〜っ……」

 

「お化ーーーー」

 

「言わないでよ‼︎ キリトくんっ‼︎」

 

 

 

アスナと一番付き合いの長いチナツ、カタナ、キリトの三名が呆れた様に口ずさみ、当のアスナは陣形の一番後ろに位置する後衛の、カンザシの背中に隠れて怯えていた。

 

 

 

「もう〜っ、何でお化けなのぉ〜〜!?」

 

 

 

 

黒い外套が、風に舞って、身につけている本体の全ての姿を晒す。

と言っても、これと言って特徴があるわけでもないのだ。

全身は骨。人間の骨格と同じ造りであり、それが通常の人間の二倍近く大きいと言うだけで、特に変わりはない。だがその代わり、そのモンスターの頭には、王族を示す黄金の王冠が乗っており、その手には存在感をあらわにした大きな大鎌。

その刃筋が、紫色に光りっている為か、より不気味に見えてしまう。

 

 

 

 

「ンオオオオオォォォーーーー!!!!」

 

 

 

大鎌を振り回し、この世の者とは思えない奇声を発するボスモンスター。

その頭上にアイコンが表示され、HPゲージが三本現れる。

その姿から察しはついていたが、モンスターの名は、亡霊の王……『ゴースト・ザ・ファントムロード』

 

 

 

「来るぞ! 目標の得物は鎌だ、範囲攻撃に注意しろ!」

 

「「「「了解!!!!」」」」

 

「中衛はいつでもスイッチの用意を! 後衛、支援魔法の準備!」

 

「了解ですわ!」

 

「準備万端!」

 

 

 

キリトが飛び出し、それに続く形でリーファとクラインが出る。チナツは中衛、後衛に指示を出した後、左側面からスズ、カタナと一緒に回り込む。

 

 

 

「ンオオオオオッ!!!!!」

 

 

 

大鎌を頭の上で振り回し、勢いそのままに振り下ろす。

その振り下ろされた先には、キリトたちの姿があり、大鎌は迫り来るキリトたち三本を刈るつもりでいる様だ。

 

 

「回避!」

 

「「っ!」」

 

 

 

左右に分かれて回避する。

その攻撃は、キリトたちがいたところを根こそぎ破壊し、その場に残ったのは巨大な斬痕。

もしもそれを受け止めようものなら、武器ごと斬り捨てられていただろう。

 

 

「うっへぇ〜……!」

 

「攻撃一つ一つが危険ですね……っ!」

 

「動き回って回避しないと、一瞬でお陀仏だね」

 

 

 

キリトたちの後続から続くリズ達も、その破壊力に肝を冷やす。

 

 

 

「スズ、俺と先行して迎え打つぞ!」

 

「オーライ!」

 

「私も続くわ!」

 

 

 

その隙に左から回って来たチナツたちが、ボスの間合いに入る。

 

 

 

「うりゃあぁぁぁッ!!!」

「うおおおおッ!!!」

 

 

 

まずはチナツとスズが同時に斬り込む。

スズは跳躍して、ボスの胸部付近を青竜刀で二連撃。その斬痕が “X” の様な形で残り、チナツは下から回り込んで瞬間五連撃を打ち込む。両脚の脛部分に深々と斬り傷が浮き出た。

 

 

 

「はあっ!!!!」

 

 

 

そのチナツの後ろからは、高速で放たれた槍による三連突き。

ボスの左脚にまっすぐ縦に三つの刺し傷が刻まれた。

 

 

 

「ンオオオオオッ!?」

 

 

 

三人で計十連撃。モンスターのヘイト値が一気にチナツ達に向く。

が、それも計算通り。

その隙に直進してきたキリト達が斬り込む。

 

 

「ティア、アスナさん、エンチャントお願い!」

 

「了解ですわ!」

「うん!」

 

「行くぜ! 俺様の超必殺ウルトラ上段斬り‼︎」

 

「「名前ダサッ!?」」

 

 

先行するクライン、キリト、リーファの武器から焔や水、風が生まれる。

ティアとアスナ、カンザシが攻撃力増加の付与魔法をかける。

物理攻撃に加え、付与魔法による魔法攻撃も追加された攻撃を、三人が連続して放つ。

 

 

 

「うおぉりやあぁぁぁッ!」

 

「せえぇぇぇぇやあッ!」

 

「ええぇぇいッ!」

 

 

 

クラインの超跳躍からの斬りおろし、キリトの素早い四連撃、リーファもそれに続いて三連撃。計八連撃を叩き込む。

 

 

 

「ンオオオオオッ!?」

 

 

 

十八にも及ぶ斬撃は、微量ながらもボスのHPゲージを削り、ボスもかなりのダメージを負っていると思われた。

その反撃か、大鎌を頭の上で振り回し、横薙ぎに一閃。自分の周りにいたキリト達の首を刈り取ろうとするも、キリト達はそれを見越して、後ろへと飛び退がったり、身をかがめて斬撃を躱す。

そして追撃として一閃した後に、再び頭上に大鎌を持って行って、振り被る。

 

 

 

「させない!」

 

「私たちをーー!」

 

「ーー忘れないで下さいッ!」

 

「僕たちも‼︎」

 

「続くぞ!」

 

 

 

 

突如、キリト達の前に巨大な煙幕が張られる。

フィリアの出した魔法。以前キリトも、サラマンダーの剣士。ユージーン将軍と対戦した時に使った魔法。

同じ種族のスプリガンであるフィリアも、同じ魔法を出せるのだ。スプリガンは正直戦闘向きの種族ではないが、そう言った魔法を駆使すれば、適度な足止めくらいにはなるだろう。

現に、ボスは煙幕の発生により、大鎌を振り下ろすのを躊躇った……その隙に攻撃態勢へと入るには、充分な時間を稼げた。

 

 

 

「行けッ!」

 

 

シノアの構えていた弓から矢が放たれて、その矢は煙幕を高速で通り抜け、その先にいたボスの顔面へと直撃。

矢が放たれる少し前に、アスナによる聖属性の付与魔法かエンチャントされていたことによって、直撃と同時に膨大な光が拡散。

目の前が真っ白になり、目が眩んでいるのか、左手で顔を抑えるボスモンスター。

その間に、煙幕から駆け抜けてきた四人。

 

 

 

「でえぇぇいッ!」

 

「てやぁぁぁぁッ!」

 

「はあッ!」

 

「ええぇぇいッ!」

 

 

 

リズのメイスが脳天を叩き、シリカがボスの左の肋骨付近を切り上げ、ラウラの蹴りとナイフ捌きの混合技が炸裂し、態勢がぐらついたところを、軽快な足取りでフィリアの短剣がボスを斬り刻む。

 

 

 

「ンオオオオオーーーーンッ!!!?」

 

 

 

絶え間なく続く剣撃と、魔法による追加攻撃。

本格的な戦闘が開始してからあまり時間が経ってはなかったが、もうすでにHPゲージの一本を削った。

 

 

 

「ん〜……! 実に素晴らしいねぇ〜! ここまで強いとは」

 

「メテスさん!? メテスさんは何か魔法とか使えますか?!」

 

「ん? まぁ、使えるっちゃ使えるが……」

 

「使えるけど……?」

 

 

戦闘中にもかかわらず、少し離れたところから見物していたメテスに、カンザシが問う。

メテスも魔法が使えるとのことであったので、直接戦闘に参加することは出来るのだが、何故か今の今まで直接的な戦闘行為は行っていない。

 

 

「せいぜい俺が出来るのは敵の妨害をする様な魔法だけだぞ? あとは……皆がやってる様な付与魔法くらいなものだ」

 

「いや、ならそれをお願いします……!」

 

「そうか? ならばやろうではないか!」

 

 

 

徐に右手を突き出し、右手に魔力を集中しているのか、魔力の光が集まっている。

その間にキリトたち前衛班は、パターンの変わったボスの攻撃に探りを入れている様で、思う様に行かず、攻めあぐねていた。

その時、ボスが大鎌を振りかぶり、大きな一撃を見舞おうとモーションに入る。

 

 

「範囲攻撃! 来ます!」

 

「っ! 全員回避!」

 

「メテスさん!?」

 

「わかってるよ、眼鏡のお嬢さん♪ それっ!」

 

 

 

仲間が攻撃を受けそうになり、カンザシは咄嗟に叫んでしまった。

が、これを見計らっていたのか、メテスの魔力が一気に解放され、バスケットボール大の大きな電気の球が射出された。

その電気球は、カンザシ達が使う魔法と遜色ないスピードで、一直線にボスの顔面へと飛んでいく。

 

 

 

「ンオオオッ!?」

 

 

 

顔面に直撃したのと同時。

電気球が弾け、ボスの体全体に電流が走る。

そして、ボスのHPゲージの横に、小さく黄色いアイコンが出た。

これは、『麻痺状態』を意味している。

 

 

 

「付帯効果付きの魔法かっ!?」

 

「風魔法の《サンダーウェブ》みたいな魔法だね……」

 

 

 

メテスにもALOの魔法と似た様なものが使えるのなら、いくらでも戦略は立てられる。

そう思った時だった……ボスの麻痺状態が解除され、雄叫びをあげ、振りかぶった大鎌を頭上から振り下ろしたのだ。

 

 

 

「げっ!?」

 

「か、躱せっ!」

 

 

 

安心したのも束の間。すぐに攻撃行動へと移ったボスの動きに、多少の疑問が浮かんだ。

どうやって麻痺状態から解放されたのか? そもそもメテスの魔法の力はどこまでのものなのか? そして、“何故、魔法攻撃を受けたのに、ボスのHPパラメーターか減っていないのか?”

 

 

 

「えっと……メテスさん? まさか、これが全力じゃあ、ないですよね?」

 

「ん〜……」

 

 

唖然として、代表してカンザシがメテスに問う。

当のメテスは、腕を組んでやや考える仕草を取った。

 

 

 

「あれでも全力で放ったつもりなんだがなぁ……」

 

「今ので全力なのっ?!」

 

 

 

カンザシは驚きのあまり叫んでしまった。

あの程度の魔法が全力……一時的な行動を停止させる魔法。足止めくらいには……とは言っていたが、これでは本当に “足止めしかできない” レベルだ。

 

 

 

((((マ、マジで……!?))))

 

 

 

前衛でその話を聞いていたメンバーも、あんまり役に立たないメテスの魔法に驚きを隠せないでいた。

 

 

 

「とりあえず、今の戦力でどうにかするしかないか……」

 

 

パターンの変わったモンスターの行動を逐一確認する。

ボス攻略の基本は情報収集とそれにどうやって対応出来るか……だ。

現在明確な盾役がいないこのパーティーでは、ボスの攻撃をあえて受けて隙を突くと言う戦略は難しい。

出来たとしてもクライン一人が攻撃を凌げるくらいなものだ。

 

 

 

「ンオオオォォォーーーーッ!!!!」

 

「「ッ!?」」

 

 

 

だが、そう悠長に構えてもいられなかった。

ボスは大鎌を振り回しながら、こちらに攻めてきた。

それに応じて、各自が剣や槍を構える。そして、ボスの大鎌が射程内に入ったのを確認した……が、そこまでしかわからなかった。

 

 

 

 

「……えっ!?」

 

「なに!?」

 

 

 

一番前にいたキリトとチナツが唖然とした。

なぜなら、突進してきたボスの姿が、霧の様に消えて行ったからだ。

 

 

 

「ど、どうなってるんだ……?!」

 

「一体、どこに?!」

 

 

あたりを見回しても、気配すら感じ取れない。

パターンが変わった事によって、新たな攻撃を仕掛けてきたとしかわからなかった。

が、それだけなのである。一体何処にいて、何処から来るのか、何をするのか、全くわからない状況であった。

が、そんな中で、不意に二人の足元が波打っているのを、誰も気づいていなかった。

 

 

 

「「ッ!?」」

 

 

 

そして、二人が気づいた時には、既にボスがキリト達の間合いに入った瞬間だった。

 

 

 

「ンオオオォォォーーーーッ!」

 

「ぐあっ!?」

 

「ごほっ!!」

 

 

床下から突如現れたボス。

その勢いに乗せられた大鎌は、確実にキリトとチナツの二人を捉えた。

二人はあまりの衝撃に、咄嗟に防ごうと剣を構えたが、その剣ごと空中に弾き飛ばされた。

 

 

 

「キリトくん!?」

 

「そんな……っ! チナツ‼︎」

 

 

 

大きく宙を舞い、陣形の後方に吹き飛ばされた二人は、HPの約半分を失っていた。それにプラス、バッドステータスとして、麻痺状態であった。

 

 

 

「ぐっーーッ!」

 

「こぉ……っ、んのっ!」

 

「そんな、二人が気づかなかった……?!」

 

「なんだよ、今のはーーッ!?」

 

 

同じ前衛にいたリーファとクラインですら、ボスが消えた瞬間も、現れた瞬間も見えなかった。

一体どういうことなのか、わからないのであれば、防ぎようがない。

 

 

 

「アスナさん、二人の回復を!」

 

「う、うん! スー フィッラ ーーーー」

 

 

 

カンザシの指示のもと、アスナが素早くキリトとチナツを回復する。

そして、前衛組は、再び現れたボスに対して、リーファ、クライン、カタナ、スズ、ラウラの五人が果敢に攻めていく。

SAO攻略組の二人と、ALO年長者が一人、駆け出しが一人と、ビギナーが一人と言うアンバランスな組み合わせだが、みなそれぞれ腕には確かな自信を持っている。

故に、前衛はクラインとリーファに任せ、続く形でカタナ、スズ、ラウラの三人が追撃する。

だが、攻撃パターンが増え、なおかつ大鎌を駆使して、徹底的にカタナ達の攻撃を防いでいる為か、包囲しながら波状攻撃をしているにもかかわらず、思いの外ダメージが少ない。

 

 

 

「ちっ! どうなってやがんだ?! 急に強くなってんぞ、こいつ!」

 

「と言うより、急に動きが良くなってるわ……‼︎」

 

「くっ、とっととくたばれっての!」

 

 

 

 

クライン、カタナ、スズは、中々攻めきれない現実に、若干ながら冷や汗をかく。

まだ相手のHPも一本と八割方残っている……このメンバーでも倒しきれないレベルではないと思いたいが、先ほどの奇襲攻撃が頭から離れない。

そう思っていた時、ボスがモーションをかけた。

 

 

 

 

「っ! いけない! 範囲攻撃だよ!!」

 

「くっ、一旦退避! 射程内から下がるぞ!」

 

 

 

ALOでの長年の経験と、軍で経験したこの差し迫った感覚が教えてくれる。

リーファとラウラは咄嗟に叫び、自分達も一緒に退避した。

大鎌が振り抜かれても、余裕で躱せれる位置まで……。

が、次の瞬間、五人は目を疑った。

 

 

 

「アハハッ、アハハッ!!!!!」

 

「んっ!?」

「きゃあっ!?」

「ぐうっ!?」

「うわぁっ!?」

「ぐあっ!?」

 

 

 

突然ボスの大鎌が振り抜かれ、その紫色に光った大鎌の刃から、漆黒の荊が飛び出し、確実に回避したと思っていた五人に的確に攻撃し、HPが半分、もしくは三分の一にまで減った者もいた。

 

 

 

「っ!? どうして! さっきのはちゃんと躱したのに?!」

 

「まるで、躱したのを追ってきたような動きでしたわね……!」

 

「っ! みんな、急いで回復を!」

 

「「はい!」」

 

「リズ! シリカちゃんとシノアちゃんとフィリアちゃんの四人でなんとか持たせられない?!」

 

「うぇっ!? 無茶言わないでよ、キリト達でも敵わない相手なのよ!?」

 

「くっ! ……わかった、私も出るわ!」

 

「ア、アスナさん?!」

 

 

 

アスナはステータス画面を操作し、自身の腰に白銀のレイピアを装備する。《レイグレイス》。雪の結晶を凝縮したかの様な、透き通る様なレイピア。

そして、それを手に前衛に出る。SAO攻略組総司令を務めたことのある数少ない人物。

アスナを筆頭に、リズとシリカがバックアップに入り、その後方でフィリアが魔法による遊撃とシノアによる弓の牽制を入れる。

 

 

 

「行くよ!」

 

「全く、やるだけやってやるわよ!」

 

「そ、そそそうですね! ピナ、行くよ!」

 

「キュウ!」

 

「単純な魔法攻撃しか出来ないのが、痛いけどね……!」

 

「でも、やるしかないーーッ!」

 

 

 

 

前衛をアスナ、リズ、シリカの三人で行い、フィリアとシノアが中距離からの支援砲火。

そして、その間にティアがやられていたカタナ達の回復を一手に引き受ける。

その中でカンザシは、メテスと何やら話し合っていた。

 

 

 

「メテスさんの使える魔法は、これだけなんですか?」

 

「あぁ。一通り使えるのはこの程度。あとは、大まかな呪文を唱えないと発動できない魔法でね……とても今の状況では使いづらいと思うが……?」

 

「大丈夫です……一応、回復の魔法もあるんだし、それだけ魔法のレパートリーがあるなら、使い方によっては攻略出来ます……っ!」

 

「ほう……自分で言うのもなんだが、この俺の魔法がそこまで役立つとは思えないんだがな……」

 

「大丈夫。私に任せてください……」

 

 

 

カンザシは眼鏡をクイっとあげると、持っていた杖を傾ける。

 

 

 

「スー フィッラ フール アウストルーーーー」

 

 

回復の呪文を唱えて、キリトとチナツのHPを全開。

その間に、カタナ達もだいぶ回復し、今はポーションで体力の回復を待っている状態であった。

その中で、未だ前線で戦っているアスナ達も、そろそろ限界に近づきつつあった。

 

 

 

「キリトさんとチナツは、前線でアスナさん達と入れ替わって!」

 

「お、おう?」

 

「了解……?」

 

「次にメテスさんです……全体に脈動回復呪文を……。その後に、私の指示したメンバーに向かって、遮断魔法をお願いします」

 

「おう! 任せろ」

 

「ティア、後の回復はメテスさんに任せるから、ティアは支援魔法でバックアップに回って」

 

「は、はい……」

 

 

 

 

淡々と指示を出すカンザシ。

その光景に、カタナは目をウルウルさせていた。

 

 

 

「カンザシちゃん〜〜〜〜ッ! あんなにカッコよくなって〜〜ッ! お姉ちゃん、嬉しいわ……♪」

 

「ちょっとカタナさん! 今感動してる場合じゃないから! とっとと下がるわよ、じゃないと、また範囲攻撃が来ちゃう!」

 

 

 

 

一方、前線では、アスナ達が危なげに戦闘を続けていた。

と言うのも、ボスの出す神出鬼没の攻撃……最初にチナツとキリトがやられた攻撃を受けており、今のところ全員無事ではあるが、それでもHPがイエローゾーンに入ったり、更にその上のレッドゾーンに入っている者もいる。

 

 

 

「っ! 来るよ!」

 

「「「「ッ‼︎」」」」

 

「アハハッ! アハハッ!」

 

 

 

 

不気味な笑い声と共に、ボスは再び消えた。

そして、一番後ろにいたフィリアとシノアの背後から現れ、その両手一杯に力強く握った大鎌を真横に大きく構えた。

 

 

 

「えっ!?」

 

「やばっ!」

 

 

 

魔法による呪文詠唱とロングボウを構えていた為、咄嗟に動くことが出来ずに、反応が遅れてしまった。

そしてそのまま、ボスの大鎌は横薙ぎに一閃された。

致命を必至……よくてもHPはレッドゾーンにまで落ちるだろう。

二人は諦めかけていた……が、その刃が二人を斬り裂くことはなかった。

 

 

 

「させるかぁぁぁッ!!!!」

 

「「キリト!?」」

 

 

 

 

キリトの持つ漆黒の片手剣が、大鎌の攻撃を受け止めていたのだ。

 

 

 

「ぐうぅぅぅぉおおおーーッ!? チナツッ!!!!!」

 

 

 

全身を突き抜ける様な衝撃に耐えながら、キリトが上を見上げながら叫んだ。

その先には、鋭い牙を携えた妖精の姿が。

 

 

 

「おおおおぉぉぉッ!!!!!」

 

 

跳躍してからの上段斬り落とし。

チナツの得意技でもある《龍槌閃》が煌く。

その一撃が、ボスの脳天から股下まで一直線に傷痕を作り、ボスは大きく後ろに後退した。

 

 

「「チナツっ!!」」

 

「悪い、遅くなった!」

 

「こっから逆転させてもらうぜ!」

 

「ええ……さっきのお返しも、まだ全然足りませんしね!」

 

「行くぞチナツ!」

 

「はい!」

 

 

先行してキリトとチナツが突っ込む。

大鎌を避け、受け流し、それでも前へと突き進む。

 

 

 

「せえぇぇぇやあああーーッ!」

「でえぇぇぇああああーーッ!」

 

 

 

直剣と打刀による絶え間なく続く斬撃。

二人の剣技もさることながら、その気迫に満ちた動きに、ボスも翻弄されている様で、次第に動きも変わってきた。

攻撃よりも防御を優先し、大鎌を巧みに扱って致命傷になる攻撃だけを受ける。

 

 

「ちょっと、二人だけで熱くならないでよねッ!」

 

 

 

ボスの後ろから聞こえてくる声。

その方向へと視線を向ける。そこには蒼穹の槍を振り回しながら、ボスへと斬り込んでいくカタナの姿があった。

 

 

 

「俺たちもーーッ!」

 

「っ………いるのをーーーッ!」

 

「ーーーーーー忘れんじゃないわよ‼︎」

 

 

 

今度は上段からクラインとリーファ、スズが斬り捨てる。

これで最も攻撃を与えるプレイヤーが六人は揃った。

ボスのHPもあと僅か……。このまま斬り込んで行けば、ボスを倒せる。

が、そう甘くないのも現実だ。その証拠に、ボスは再びその場から霧の様に消えてしまった。

 

 

 

「まずい! アレが来るぞ!」

 

「全員警戒!」

 

 

 

アレとは、まさしくキリトとチナツが初めに喰らったボスの攻撃。

霧の様に消えたかと思いきや、いきなり何処かに現れて攻撃を仕掛けてくる。

六人……いや、その場にいた全員が、警戒に当たっていた。

気配を探り、視野を広く持った。

だが、一人だけ、他の皆よりも落ち着いている人物が一人いた。

 

 

 

 

「メテスさん」

 

「おう!」

 

「チナツとお姉ちゃんに《ダメージ遮断》の魔法を!」

 

「あいよぅ!」

 

 

 

カンザシだ。

カンザシはメテスに指示をし、前衛で戦っている全員ではなく、チナツとカタナにだけ守る様にメテスに言う。

 

 

 

 

「ンオオオッ!」

 

「くっ!!?」

「来たわねッ!」

 

「神の加護だ、受け取れ‼︎」

 

「「っ!!?」」

 

 

 

 

チナツとカタナは目を疑っただろう。

自分たちも防御行動を取ったとは言え、確実に攻撃をもらうと思っていた。が、実際はどうだろう……。

体を覆う金色の光。それが大鎌の刃を拒絶する様に弾いた。

 

 

 

「これは……!」

 

「攻撃を、弾いた?!」

 

 

 

態勢を整えながら、再び大鎌を構えるボス。

その大鎌か妖しく光り、モーションに入ったことを知らせる。

 

 

 

「ヤベェ! 範囲攻撃だ!」

 

「いけない! まだリズさんたちも回復仕切ってないのに!」

 

 

 

咄嗟に回避行動を取るが、後ろにはまだ完全回復仕切ってないリズやシリカたちがいる。なのにHPをごっそり奪うあの攻撃を受けてしまったら、流石に次はないだろう。

だが、

 

 

「ンオオオッ!」

 

 

容赦なく振り抜かれた大鎌。

そこから伸びる漆黒の荊が襲ってきた。

 

 

 

「メテスさん! もう一度《ダメージ遮断》と《軌道阻害》の魔法を!」

 

「ほいさっ!」

 

 

今度は両手をあげるメテス。

左右の手のひらに魔法の光が集まり、その魔法を前衛で戦っていた六人と、体力を回復させていたアスナとリズとシリカの三人にかける。

そして、放たれた荊は、カンザシの指示した九人の元へと飛んでいった。だが、《ダメージ遮断》と《軌道阻害》の魔法よって、攻撃は弾くし、軌道そのものが狂い、直撃を免れた。

 

 

 

「カンザシさん………あの範囲攻撃が、誰に対して放たれるのか、知っていたんですの?!」

 

「うん……なんとなくだったけどね……」

 

「一体、どうやって……!?」

 

 

 

カンザシの目論見はうまくいった。

それに驚くティアは、どういうカラクリなのか、カンザシに問い合わせた。

 

 

「あれは無差別な範囲攻撃じゃなくて、“あの技を使う間に、自分に対して一番ヘイト値を稼いだプレイヤーと、その視界に映るプレイヤーを選抜して放たれた指名攻撃” なんじゃないかって思って」

 

「ぁ…………」

 

「なるほど……現に、あそこで回復に勤しんでいる弓兵の少女と冒険者の少女には攻撃されていないというわけか……」

 

 

 

カンザシの説明に、メテスが補足をつける形で言う。

 

 

 

「そして、あの消える攻撃も同じ……あれはヘイト値を稼いだ上位二名を選択し、奇襲攻撃をしかけるもの。

だから、最初はキリトさんとチナツ、次にフィリアとシノア、最後にチナツとお姉ちゃん……全部技が出る前にボスのヘイト値を上げた組み合わせ」

 

 

 

淡々と説明するカンザシに、メンバーは驚いていた。

あの状況で敵の技を解析し、なおかつそれに対する対処法を、メテスの弱い魔法で補ってたのだから。

 

 

「カンザシ! お前が指示してくれ!」

 

「今のお前なら、この状況を打破できるかもしれない!」

 

「キリトさん……チナツ……!」

 

「カンザシちゃ〜〜ん!」

 

「っ?! お姉ちゃん?」

 

 

 

大声で愛する妹の名を呼ぶ。

 

 

 

「あなたを信じるわ! だから、私たちを導いてッ!!」

 

「っ!!」

 

 

 

信じる……それはそう簡単なことではない。でも、自分の姉は信じるといった。キリトもチナツも……いや、全員同じ顔で、同じ目で見ている。

自分を信じると……そう言う顔で。

 

 

 

「っ……! あと数手で私たちが勝つ……! いや、勝たせてみせるっ!!!!!!」

 

「ふふっ、良き仲間たちだな……どれ、俺様も其方の指示に従おう……一気に殲滅するのだろう?」

 

「はい、私が指示をしたら、あの魔法をお願いします!」

 

「あいよぅ!」

 

 

 

 

それからの攻略は、まるで物語を読み進めているかのように、順調かつ迅速に進んだ。

カンザシの指示のもと、攻撃、防御、回復、追撃と、流れるような攻防が繰り広げられ、そして……

 

 

 

「メテスさん! 今です!」

 

「戒めの鎖よ 我が敵を縛り、罪過を与えん!」

 

 

 

 

地中からおよそ十数本にも及ぶ鎖が飛び出し、ボスの体を拘束していった。

 

 

 

「今! ボスと鎖を、みんなで断ち切って!!!!」

 

「「「「おうっ!!!!!!」」」」

 

 

 

最後の攻めだ。

鎖で縛られたボスの動きは鈍く、防御ですらままならない状態だ。

そこに、全方向から容赦の無い全力攻撃。

剣技や魔法による攻撃もそうだが、メテスのかけた鎖は、断ち切るとまるで罪を与える様に光が弾け、鎖をかけた対象に大ダメージを与えた。

 

 

 

「ンオオオォォォーーーーッ!?」

 

 

 

 

そして、ボスのHPが完全尽きる。

その体を構成していた情報体が弾けとび、ポリゴン粒子となって虚空に消えた。

その代わりに、メンバー全員に見える様にして、Clear Congratulatious! の文字が映し出され、それを祝福するBGMが鳴り響いた。

 

 

 

「やっ、た……んだよな?」

 

「ええ、やりましたね……」

 

「うん! 勝ったんだ……私たち!」

 

「ええ! 勝ったわよ!!!!」

 

 

 

歓喜に沸く面々。

特に活躍したカンザシには、カタナからの熱く甘い抱擁が待っていた。

 

 

 

 

こうして、フィールドボスとの戦闘を無事おけた面々。

残る敵は、このクエストの真のボス。宝を持ったクエストボスだけとなった。

 

 

 

 

 




おそらく次で終わりですね( ̄▽ ̄)

それから、ISサイドに戻り、臨海学校の話をしようかと思います!
感想、よろしくお願いします!


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