ソードアート・ストラトス   作:剣舞士

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やっとクエスト開始前まで来れた。

ここからどう展開していくか、正直考えるのキツイぜ……( ̄O ̄;)




第26話 猛獣の洞窟

《アルン》を飛び立って数時間。

山々を抜け、壮大に広がる中立域の森の上空を飛んでいる一行は、クエストがある洞窟を探していた。

また、そこにもモンスターが現れ、それを撃破しながらの捜索のため、中々見つからない。

 

 

 

「ふぅー……本当にここら辺に洞窟なんてあったのか?」

 

キリトがそう呟く。

周りを見渡すも、広がる森の大きさに圧倒される。

そしてそこからクエスト発動の洞窟を探さなくてはならない。

中々見つからない洞窟の捜索と、群がるMobの撃破と、いくら人数が多いとはいえ、このままでは埒が明かない。

 

 

 

「その筈なんだけ、ど! こんな広いところから探せっていうのも無理な話よねえ……」

 

 

 

カタナがMobに槍を突き刺しながら返す。

その他にもシリカはピナとともに低空飛行で洞窟を探し、その護衛にリーファが付き合う。

アスナとティアで、Mobと戦闘をしているラウラ、シノア、リズ、スズの四人をカバーし、カンザシがカタナとキリトをアシスト。残るチナツは、高速飛行で一通り飛んで、洞窟らしきものを捜索していた。

 

 

 

「っていうか、あと二人集められない? エギルとクラインは?」

 

「クラインには連絡したんだけどよ、リアルで用事があって、少し遅れるってメールが来たんだよ。そんで、エギルは店があるから無理!」

 

「そっかぁ……じゃあもしもの場合は、互いに六人でパーティー編成しなきゃダメか……」

 

「まぁ、仕方ないさ。リアルの時間を優先させるのは基本だからな」

 

「そうね……。それはいいけど、早く見つからないかしらねぇ……」

 

「座標はここら辺で間違いないと思うんだけどな……」

 

 

 

 

 

戦闘をしながらも、洞窟を探す余裕を見せるキリトとカタナ。

そんな時、前方から猛スピードでキリトたちの元に飛んでくる影を見つける。

 

 

 

「あれは……」

 

「チナツ?」

 

 

 

 

ようやく視界で認識できる距離に来てわかった。

金髪に日本刀を差したシルフの少年。チナツが高速飛行をしながら、こちらに向かってくるのだ。

 

 

 

 

「どうだった? 見つかったか?」

 

「はい。なんとか……それと、クラインさんも、例の洞窟付近にいましたよ……俺の知り合いに案内してもらってたみたいです」

 

「クラインが? まぁ、あいつサラマンダーだし、近いか……。ん? お前の知り合いって、誰だ?」

 

「ああ、その子の事は、直接あって紹介しますよ。っていうか、キリトさんも一度は会ってるんですよ? その子に」

 

「えぇ? 誰だろう……」

 

 

 

キリトが顎に手を当てて、なんとか思い出そうとするも、該当する人物が出てこなかった。

そして……

 

 

 

「まぁ、それは行けば分かるんでしょう? ねぇ、チナツ?」

 

「お、おう……。って、なんで怒ってんだ?」

 

「別に……」

 

 

怒っているカタナがいた。

 

 

「なぁカタナ、なんで怒ってんだよ……」

 

「怒ってないわよ。全然」

 

「えぇ〜……」

 

「ところでチナツ、場所を教えてくれないか? さすがにずっとこのままってのもな……」

 

「あ、はい! こっちです」

 

 

 

 

その後、キリトに促され、他で戦闘になっているメンバーにも声をかけ、あらかたMobを片付けたところで、チナツを先頭に目的地まで飛翔する。

っと、目的地に近づくにつれ、何やら小高い丘が見えてきて、そこへとチナツ達は向かっていく。

 

 

 

「ん? あんなところに洞窟なんてあったけ?」

 

「さぁ……? でも、よくよく考えてみれば、わたくし達、サラマンダー領には、あまり行ったことがありませんから……」

 

「あぁ、それもそうね……」

 

 

 

もっともいろんなところで修行中のスズとティアでも、ここら辺には来たことがなく、洞窟の存在自体知らないかった。

カンザシも同様に、ほとんどシルフやケットシーの方面、南西方面か、ウンディーネの領にしか行ったことが無い為、ここら辺の土地に詳しくない。

 

 

 

「まぁ、仕方ないよね。サラマンダーの人たちって、いろいろと面倒な人多いし」

 

 

と、本当に面倒くさそう話すのは、ALO歴最長のリーファ。

シルフとサラマンダーは、相当仲が悪い。それも、以前のグランドクエストが存在したALOでの話だったが、それでも、まだシルフ狩りをするようなサラマンダーのプレイヤーは多いと聞く。

 

 

 

「そうよねぇ〜。私なんて、「なんでもいいから最高の武器を作れ」なんて言われた時には、本気で追い出そうかと思ったわよ」

 

「うわぁ〜……それは酷いですね……。私もピナと一緒にパーティーに入らないかって、結構言われてるんですよねぇ……。

そんな気は無いって、きっぱり断ってるんですけど……」

 

 

 

これはリズとシリカだ。

リズはその鍛治の腕を見込まれているみたいだが、リズにはリズのポリシーというものがある。

鍛冶師の性みたいなものだ。

シリカはシリカで、いろいろと大変のようだ。SAOでも、その可愛らしいルックスと性格で、中層域のプレイヤーの間では、アイドルのような存在だった。そのため、自分のパーティーに入れようとする男性プレイヤーは少なくなかった。

 

 

 

「僕も《アルン》来る前に、サラマンダーの人たちに絡まれちゃったし……」

 

「うむ……仮想の世界でも、人間のやる事は変わらん……か。全くもってその通りだな」

 

「うん……ここにいる人たちは、みんな、ちゃんと生きている」

 

 

初めてこの世界に足を踏み入れたシノアとラウラ。

そして、スズたちと同じ時期に入ったカンザシ。

時期は違えど、それぞれが持つこの仮想世界での印象は、“プレイヤーたちが、本当に生きている様に過ごしている” と言うことだった。

 

 

 

「そろそろ着きますよ」

 

 

 

チナツの言葉とともに、全員が身を引き締める。

カタナとアスナを除いて……。

 

 

 

「カタナちゃん、あんまり怒っちゃダメだよ?」

 

「わかってるけど……。でも、どうせ女の子よ? そのもう一人の知り合いっていうの」

 

「そ、そうかなぁ……でも女の子ってチナツくんは言ってなかったよ」

 

「甘いわよ、アスナちゃん。これはチナツに限らず、キリトもそうだったけど、行く先々で知り合った人たちを思い出してみなさい……みんな女の子でしょう?」

 

「ん〜……」

 

 

 

 

カタナに促されて、思い返してみる。

確かに、チナツの周りにいるのはカタナを初め、IS学園の同級生のみんな。IS学園、つまり女の子ばっかり。幼馴染だというスズに、クラスメイトのティア、シノア、ラウラ。

カタナの妹であるカンザシ。全員が同じ年の女の子。

そしてキリト。SAOからの知り合いということで、アスナ、リズを初め、シリカ、ALOで知り合ったリーファと、その経由でシルフ領主であるサクヤとケットシー領主であるアリシャ・ルー。それと、先日分かったことだが、βテストの時から一緒だった情報屋のアルゴもまた、ALOを始め、キリトも情報を提供してもらっている様だ。

キリトもキリトで、負けじと女の子との交流も持っている。

 

 

 

「うん……確かに……女の子が多いかなぁ……」

 

「でしょう? どうせまた女の子なのよ」

 

「でも……うーん……やっぱりそうなのかなぁ〜」

 

 

 

カタナの発言は理にかなっているため、アスナもあまり強く否定できない。

キリトはその中性的な顔立ちと性格で、出会った女の子に好意を抱かせる。

チナツはチナツでキリトとはまた違った雰囲気を持つ。顔立ちは申し分ないくらいのイケメンであるし、性格もまたキリトと同じ。

そして、両者共に同じ点を挙げるとしたら、優しいところだ。

キリトは他人の痛み、強いては人の感情というものに敏感なため、その感情を察するところからくる優しさを持つ。

チナツは言わずもがな、優しさと言うものに境界線がない。

チナツにとって警戒すべき人物以外、どんな人でも包み込んでしまう様な心を持っている。

どちらも、カウンセラーとしての資質ありなのだ。

そんなわけで、その二人に対して出会った女の子たちの乙女心が開かないわけがないと言うことにつながる。

 

 

 

「まぁ、その時はその時で、ねぇ?」

 

「そうね。しっかり躾けないと……! 夫の不始末は、妻がしっかりつけなきゃね♪」

 

「うんうん♪」

 

 

夫の知らないところで、妻たちの熱い誓いが交わされたのだった。

 

 

 

 

 

 

「あそこですね」

 

「ん〜?」

 

 

 

チナツが指差す先には、丘の頂上より少し下のところにできた大きな洞窟の入り口。と、その入り口の前に、二人の人影が。

 

 

 

「おーい! 遅えぞお前らぁ〜!」

 

 

 

逆立った赤髪にバンダナが野武士面の顔によく似合う男性。

まるで着流しの様な和と洋を開け合わせた様な衣装と、腰に差してある日本刀が印象的だ。

彼の名はクライン。キリトたちと同じSAOサバイバーであり、攻略組の中では絶対生還ギルド『風林火山』でギルドリーダーを務めていた人物であり、キリトとチナツの中では、数少ない男性プレイヤーの理解者で、二人にとっては兄貴分の様な感じだ。

そしてもう一人。

黒髪に水色を基調としたジャケットに黒の短パンと、身軽そうな印象与える少女の姿があった。

全員が洞窟前に降り立ち、二人の元へと駆け寄る。

アスナとカタナは、予感が的中したとばかりに頭を抱え、その様子を他のメンバーが見て、何事かを悟った。

 

 

 

 

「よう、クライン。なんだ、意外と早かったじゃん」

 

「まぁな。呼ばれてから仕事は早めに終わらせて、早速ログインよ。しかもこのクエストに行くっていうだから、行かねぇ手はないしな!」

 

 

 

クラインとたわいない会話をしていると、その後ろから問題の少女が歩みよってくる。

 

 

 

 

「ど、どうも、こんにちは」

 

「あ、どうも……」

 

「キリトさん、彼女のこと、思い出しませんか?」

 

「え?」

 

 

 

チナツに言われてその少女を見る。

身軽そうな装備に短剣。黒髪から察するに、キリトは自分と同じスプリガンだと分かった。

スプリガンの得意な魔法は幻惑魔法……その他にもトレジャーハント系の魔法も得意で……。

 

 

 

「えっ? も、もしかしてーーーー」

 

 

 

その昔、キリトも会っていた。

あの浮遊城にて、“トレジャーハンター” と名乗る少女と。

 

 

 

「フィリア?!」

 

「正解! 覚えててくれたんだね、キリト!」

 

「フィリア、ALOやってたのか!?」

 

「うん。新生ALOとして運営され始めた時にね。こっちでも、トレジャーハンターやってるんだよ」

 

「いやぁ、驚いたよ。中層域で少しの間冒険して以来だからな……元気そうでよかった!」

 

「キリトこそ、相変わらず黒いね」

 

「っ、そこはほっとけよ」

 

 

 

 

久しぶりの再会に話が弾む。

だが、それを破壊するように咳払いが木霊する。

 

 

 

 

「ん、んんっ!」

 

「「っ!」」

 

「キリトくん。そろそろ紹介してくれないかな?」

 

「あぁ、アスナ。この子、俺たち同じSAOサバイバーで、フィリアって言う子なんだ」

 

「フィリアです。初めまして、ですね。今日はよろしくお願いします」

 

「ど、どうも〜……アスナって言います。よろしくね、フィリアさん」

 

 

 

少し引き攣った表情になりつつも、お互いに自己紹介を交わす。

その後ろでは、カタナが首を捻ってフィリアの顔を見つめる。

 

 

 

「あれ? あなたアインクラッドで会った……」

「はい! 以前チナツに助けてもらった時に! あっ、チナツ、あの時はありがとね! ちゃんとしたお礼が出来てなかったから……」

 

「いいよ。フィリアも無事アインクラッドから生き残れていただけでもよかった。今日はよろしくな!」

 

「うん! こちらこそ! 借りはきっちり返させてもらうよ!」

 

 

 

互いに握手を交わすチナツとフィリア。

だが、その光景を見ていて面白くない者達もいるわけで……。

 

 

 

「何、あれ……?」

 

 

と、ジト目で見るスズ。

 

 

「仲が良さそうですわね……」

 

 

と、スズと同じように見るティア。

 

 

「うん……初めましてでは、ないと思う……」

 

 

と、困惑しながら見つめるシノア。

 

 

「うむ……ここまで女への繋がりが強いとは……流石は師匠」

 

 

と、何故か納得するラウラ。

 

 

「…………チナツ、大丈夫かなぁ……」

 

 

と、心配そうに眺めるカンザシ。

各々の思惑が交錯する中、一行は問題の洞窟の入り口へと足を向ける。

 

 

 

 

 

「それで……ここが例の……?」

 

「うん……多分、そのはずよ」

 

 

 

アスナとカタナが見上げて言う。

目の前にあるのは巨大な門。

洞窟というからには、自然的に出来た岩壁の物を想像していたが、そこにあったのはまるで誰かぎ立てた様な人工的な立派な門。

 

 

 

「これ……ほんとに洞窟?」

 

「というより、遺跡のような……」

 

「それに、不自然な感じがする……。森の中に、いきなりこんなのがあるなんて……」

 

 

スズとティアの意見に誰もが頷き、そこにカンザシが補足を入れることで、なお全員が納得する。

 

 

「なぁフィリア、何か知らないか? トレジャーハンターやってるなら、このクエストのことも色々と聞いたんじゃないか?」

 

 

こういったクエストの報酬というのは、中々のレア物が与えられる。レアアイテムを追い求めるトレジャーハンターとしては、見逃せないと思い、キリトが尋ねるも、フィリアは顔を横に振る。

 

 

 

「ごめん、私もこのクエストを聞いたのはごく最近なんだ……。挑戦した人の話を聞く限りじゃ、出てきたボスモンスターが厄介だって言ってたけど……それ以外は……」

 

「流石に情報不足か……」

 

「ごめん。もっと情報を集められればよかったんだけど」

 

「いや、それだけ聞ければいいよ。よし、みんなHPとMPが回復したら、早速入ってみるぞ。今のうちにしっかり準備しておいてくれよ」

 

 

 

キリトの指示に従い、各々がメインメニューを開いて武装やアイテムの確認を行う。

その後、集まった14人のメンバーを二つに分ける。

キリトをパーティーリーダーにしたアスナ、リズ、シリカ、リーファ、クライン、フィリアのパーティー。

チナツをパーティーリーダーにしたカタナ、スズ、ティア、カンザシ、シノア、ラウラのパーティー。

 

 

 

 

「前衛は、俺とチナツ、リーファにクラインの四人。中衛の第一陣としてカタナ、リズ、シリカ。第二陣としてフィリア、スズ、ラウラ。後衛は、アスナとカンザシ、ティアとシノア。

これで行こうと思うが、みんないいか?」

 

 

 

今回のクエストにおいてパーティーリーダーを務めるのは、キリトとチナツの二人だが、全体のレイドパーティーのリーダーはキリトが務める。

こういった攻略戦における知識に長けているからこそ、彼の指示に誰も否定も疑いも持たなかった。

 

 

 

「それで行きましょう!」

 

「問題ないわ」

 

「問題ないよ、キリトくん!」

 

「うん! それで行こう」

 

「異論はないわよー」

 

「はい! それで大丈夫です!」

 

「おっしゃぁ! いっちょ頑張るぞぉ!」

 

「うん。私も大丈夫かな」

 

「わたくしも、異論はなしですわ」

 

「あたしもー!」

 

「私も、なしです」

 

「僕も」

 

「私もだ。異論はない」

 

 

各員の了承を得たところで、全員がその目の前にある巨大な門を見る。

 

 

「行くぞーー!」

 

『『『おおっ!』』』

 

 

 

 

 

かくして、追加で二人が加入し14人のツーパーティーになった一行は、異形な門の扉を叩いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

中に入ると、しばらくは洞窟らしい道のりが続く。

周囲すべてが石を削った様な感じで、時折鍾乳洞の様なものまである。

いくつもの道があり、マップが無ければ本当に遭難しそうなところであった。

また、洞窟内は光が全くなく、今はフィリアによる暗視能力付加魔法をかけてもらい、洞窟内か見えている状態だ。

 

 

「うへぇ……薄気味悪りぃなこりやぁ……」

 

「そうか? なんだか、いかにもダンジョンって感じじゃないか……」

 

「でも、なんだか嫌な気配を感じるんですけど……」

 

 

 

先行して歩く男3人。

アインクラッド第一層《はじまりの街》にて出会った3人。

クラインとチナツの二人で、キリトに戦い方……強いては、ソードスキルの使い方をレクチャーしてもらった。

そして、午後5時半……運命の時まで一緒に行動し、そこから二手に分かれた。βテスターだったキリトについて行く事を選んだチナツと、同じギルドの仲間たちと協力して行くと決めたクライン……あの時の後悔はあったが、三人ともに攻略組のメンバーに入り、死線をくぐり抜けてきた。

それが、今ではそれが三人とも誇らしく思えている。

そんな男達を後を追う形で、中衛の第一陣と第二陣、後衛のメンバー。ちなみにリーファは男達に気を使ってか、中衛のカタナたちとともに進軍している。

 

 

 

 

「相変わらず仲がいいわねぇ〜あいつら……」

 

「まぁ、キリトさんにとって、数少ない男友達ですもんね!」

 

「シリカ、それはキリトくんに失礼だから、本人には言わないでおこうね……」

 

「はっ! い、いや、違いますよ! 決してそういう意味ではーー‼︎」

 

 

いつも仲良し三人組。

リーファとシリカとリズ。キリトを通じて仲良くなった三人。その理由もある意味では同じ、キリトのことが未だに好きだという事だった。

 

 

 

「最近キリトさん達のこと聞いてますか、リーファさん?」

 

「うーん……まぁ、メールとか電話もするんだけど……あんまり分かんないかなぁ……」

 

「まぁ、いつもみたいにイチャコラやってんでしょうね……。ほんとけしからん」

 

「カタナさん。学校ではキリトくん、どうですか?」

 

「ん? いつも通りよ? 二人で一緒にいるのはザラね」

 

「「「…………」」」

 

 

 

思わずため息が出る。

元から仲のいい二人であったのは知っているが、あの様な甘々な雰囲気を醸し出しているのを見ると、どうしても遣る瀬無い気持ちになってしまう。

 

 

 

「そう言うカタナさんだって、毎日チナツと一緒にいるわよ」

 

「あぁ。いい加減見飽きたくらいにな」

 

「なっ!? スズちゃん?! それとラウラちゃん? それ、どういう意味?」

 

 

 

 

ともに進軍しているスズ達の介入によって、横腹を抉られている様な光景のカタナ。

スズの発言には、リーファ達もジト目で見ざるを得ない。

 

 

 

「へぇー。カタナさんもなんですか……」

 

「まぁ、そうよね。一緒の学校に居るんだし……」

 

「そ、そうですよね! 逆にそんなんじゃないと、カタナさんじゃないですしね!」

 

「ちょ! 何よぉ〜みんなしてぇ〜! カンザシちゃん、みんながいじめるぅ〜!」

 

「え? でも、いつも一緒にいるのは、間違いじゃないよ?」

 

「カ、カンザシちゃん!?」

 

 

 

妹にもジト目で睨まれる。

そしてカタナの背後はジト目の視線が囲っている。

逃げ場はなかった。

 

 

 

「な、何よ! 一緒に居たっていいじゃない!」

 

「一緒に居過ぎなのよ! あんた達は!」

 

「そうですわね……おかげでチナツとの会話が長く保ちませんわ」

「うーん。確かに、言われてみれば……」

 

「あぁ、私の訓練中もずっと居たしな。全く、いつもながらご苦労な事だ」

 

「うん……」

 

「な、何よぉ……アスナちゃん、なんでこんな事になるの?」

 

「うーん……私にも、分かんないかなぁ……」

 

 

カタナの涙ながらの訴えも、みんなは聞き入れず、慰めてくれるのはアスナだけだった。

アスナはカタナよりも一つ年上であるからか、カタナも時々アスナに甘える事もある。

 

 

 

 

「おーい! 遅れるなよぉーー!」

 

「ハーイ! 大丈夫だよー!」

 

 

 

先頭を歩く男達に言われて、ここがダンジョンだと改めて認識し、思い出す。

再び陣形を保ち、進軍する。

 

 

 

「そう言えば、キリトとチナツはIS学園に行ったんでしょう? ねぇ、IS学園ってさ、どんなところなの?」

 

 

そう切り出したのはフィリアだった。

トレジャーハンターだけあって、そういった新しいものには好奇心が働くのか、目が爛々と輝いて見えた。

 

 

 

「基本的には、他の学校と変わりませんわよ。ただ、IS学園というだけあって、日本人以外の生徒も多いですわね」

 

「へぇー! あっ、そう言えば、ちゃんとした挨拶をしてなかったっけ!」

 

「そう言えばそうね」

 

 

 

歩きながらで無作法だと思ったが、あまり堅苦しいのは無しでいく。

 

 

 

「改めまして。フィリアっていいます。トレジャーハンターです。よろしく!」

 

「スズよ。よろしくねぇ〜」

 

「ティアっていいます。以後お見知り置きを」

 

「シノアです。よろしくお願いします」

 

「ラウラだ。よろしく頼む」

 

「カ、カンザシです……お姉ちゃんが、お世話になりました」

 

「私はリズベット。リズでいいわ」

 

「リーファです。兄がお世話になりました」

 

「シリカです! こっちはパートナーのピナです!」

 

『キュウ!』

 

「改めまして、アスナです。よろしくね、フィリアさん」

 

「私はもう知ってるわよね。カタナです。久しぶりね、フィリア」

 

「うん! また会えて嬉しいよカタナ」

 

 

 

女の子同士自己紹介を終えたところで、話は先ほどのIS学園の話に戻っていく。

 

 

 

「えっと、なんだっけ? あぁ、IS学園の事だったけ?」

 

「うん。やっぱり、他の学校とは違うの?」

 

「うーん……いうほど変わってはないわよ? 確かに、ISを取り扱う事に関してなら、凄く規則が多いけどねぇ〜」

 

「はい。世界の条約でも取り決められているものですので、これらを破ることは固く禁止されていますわ」

 

「それを破ろうものなら、問答無用で査問会への招集。それからは罰則として牢屋にぶち込まれるのがオチだな」

 

 

 

 

IS学園生からの直々の情報は、やはり身にしみる様な感覚に陥る。

フィリアはまだ知らないが、ここにいるのは全員が国家を代表するIS操縦者なのだ。

それを聞きながら、フィリアは「うへぇ〜」と苦虫を噛んだ様な表情に。トレジャーハンターとしては罰則は一番苦手なものなのか……?

 

 

 

「その他は普通だよ? 勉強だって高校生で習う範囲内だし、部活動だって全然あるし、寮生活もいたって普通……。まぁ、特別授業で爆発物の取り扱いや銃の射撃訓練なんか習うけどね」

 

「えっ!? もしかして、実弾を撃つの!?」

 

「「「ば、爆弾っ!?」」」

 

 

シノアの発言にはさすがに驚いたのか、全員の目が点になる。

 

 

「アスナ……もしかして、あんたもやってんの?」

 

「う、うーん。専用機を持ってる人は強制で受けなくちゃいけないみたいで……」

 

「危なくないですか、それ?」

 

「まぁ、それは実物じゃなくて、試験用に改良したやつだから、失敗しても爆死はしないわ。あっ! でも、冷却ガスが噴き出るから、顔面直撃ぐらいはあるかもね♪」

 

 

カタナの冗談も、この時ばかりは笑えない。

IS学園生以外のメンバーは苦笑いで答え、前方を歩いていたクラインもまた、その話を聞き、キリトとチナツに確認を取っていた。

 

 

「まぁ、当然だろう。ISでも実弾は撃つし、真剣を振るう。それがISだけに留まっていたならば、怪我はするし、最悪人を殺してしまうことだってあるんだ……。ならば、使い手の人間も、それを使いこなすだけの技量を身につけなくてはならん」

 

 

 

現役軍人のラウラの言葉は、その場にいた者達の心をある意味鷲掴みにした。

人が死ぬという単語は、フィリアを含め、SAOを経験した者達にとっては、あまりに現実的過ぎた。

 

 

「っ……すまない。この事は、みなに言う言葉では無かったな。謝罪しよう」

 

「ううん……別にあんた達が謝る事じゃないわよ。ね?」

 

「は、はい! そうですよ! それが当然なんですし、やっぱり自分も知っておかなきゃいけないことなんですから……」

 

「でも、あんまり無茶とかはして欲しくないっていうのが、第一かな……キリトくんやチナツくんもだけど、みんなもさ……」

 

「そうだよね……みんな、ほんと気をつけてね?」

 

 

リズ、シリカ、リーファ、フィリアの四人も、その事実を受け止め、自分たちのことを心配してくれている。

そのことが、少なからず嬉しくもあった。

そんなこんなで、女子達は女子達で仲良くなり、道半ばではあったが、意気投合している様だった。

そして、それを眺める男三人。

 

 

 

「とりあえず、良かった……のか?」

 

「ええ。フィリアもみんなも……あれで仲良くなったでしょう」

 

「青春だねぇ〜。そう言えばよ、お前ら学校どうなんだよ。正直に俺に話してみろよぉ〜」

 

「ぐえっ! 何すんだ! やめろ……!」

「ぐうっ?! ちょっ、苦しいぃ……!」

 

 

 

前を行く二人の背後に立ち、後ろから両腕で両人の首を軽く締める。

そうやって呑気に洞窟の道を進んでいる、その時だった。

 

 

 

 

ウオオオオオオオオーーーーゥンっ!!!!!

 

 

 

 

『『『っ!!!!!!!?』』』

 

 

 

更に奥へと続く道筋から聞こえてくる猛獣の雄叫びの様な声。

そして、怪しく光る猟奇的な視線。

 

 

 

「全員警戒態勢!」

 

 

 

 

キリトと指示の下、全員が武装を装備し、前衛四人と中衛六人が後衛四人を囲む様に展開する。

一番先頭にいるキリト、リーファ、チナツ、クラインは抜剣し、敵Mobの姿を捉えた。

赤く光る鋭い目と口から仄かに噴き出る火の粉。四本の足でジリジリとこちらへと間合いを詰めてくる獣。

 

 

 

「あれは……《ヘルハウンド》だな」

 

「地獄の猟犬……ってとこですか?」

 

「なあーんだ。大したことねぇーじゃねぇか! なら、サクサクっと片付けちまおうぜ!」

 

 

 

そう言って飛び出して行ったのはクライン。

自身の刀を両手にもち、ヘルハウンドに迫る。

 

 

 

「っ!? クラインさん、ちょっと待ったっ!」

 

「うおっ?!」

 

 

 

だが、その進行をチナツが止めた。振りかぶろうとしたまま、クラインは立ち止まり、チナツがその前に立って、クラインに背中を向けつつ手をかざして止めに入ったという感じだ。

 

 

 

「おいおい、何すんだよチナツ。こんな奴らいくらいようがーー」

 

「っ! クライン、チナツ! 一旦引け!」

 

 

今度はキリトから声がかけられる。

その声でハッと上を向いて、それを見てしまった。

 

 

「おいおい……!」

 

「な、何なんだよこりゃあ……!」

 

 

そこにあったのは、キリト達が立っている道の二、三メートル上の瓦解した洞窟の穴から現れ出た数十体にも及ぶヘルハウンドの群れだった。

目の前にいるヘルハウンドと同様、赤く光る猟奇的な視線がキリト達を包み込む。

 

 

 

「うそっ! 何でこんなにモンスターがポップするの?!」

 

「この数は……! チナツ、クライン、一旦固まって態勢を整えるぞ!」

 

「おう!」

「了解!」

 

 

 

普通のダンジョンにしては、明らかにモンスターのポップ数が多かった。

今にもモンスターの数は増え続け、あれよあれよと言う間に道を塞ぐほどのモンスターが現れた。

 

 

「アスナとティアは防御の支援魔法を! カンザシは攻撃呪文、シノアは射撃態勢!」

 

「うん!」

「はい!」

「了解!」

「は、はい!」

 

 

 

ウンディーネ三人の魔法詠唱が始まり、シノアは深呼吸を一度して、弓のつるに矢を番える。

 

 

 

「いいか、互いの背中を守りつつ、ダンジョンの奥地へとダッシュだ! 先陣は俺とチナツで切る! 全員遅れないように来てくれ!」

 

『『『おおっ!!!!!』』』

 

 

 

 

キリトの指示通り陣形を変え、キリトとチナツが先頭に立ち、後衛の守りをクラインとリーファが務め、両サイドは中衛組が遊撃という形で陣形を組んだ。

 

 

 

「今だ! 行くぞ!」

 

 

 

 

キリトの掛け声と共に、ヘルハウンドの群れの中を斬り込んで行く。クエスト前の第一戦の火蓋が、今切って落とされだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






どうでしたか?
次話で、クエストNPCとの接触と、クエスト内容、できればボスモンスターとの戦闘まで書けたらいいかなと思っています。

感想よろしくお願いします^o^

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