ソードアート・ストラトス   作:剣舞士

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ええータイトルの通り、あの技が出ます!


それではどうぞ!!!




第19話 絶技『九頭龍閃』

ラウラとの一件以来、訓練自体は中止になったりはしなかったが、対戦形式での訓練は禁止となった。

周りの空気もよりピリピリとしだして……特に一組。事の張本人であるラウラを始め、その被害者側であるセシリア、最後に最も因縁のある一夏。

昨日の最後の一戦は、一夏の絶技によって勝敗が決した……いや、厳密には千冬の介入によって中断させられたのだが、あの状況では一夏のほうに分があったであろう事ははっきりしている。

そんな状況下の中で、朝のSHRが執り行われる。千冬が教壇に立ち、本日から始まる『学年別タッグマッチトーナメント戦』の説明を行っていた。

そこから少し離れて、入り口付近に副担任である真耶が立っている。生徒たちにとって、今学期一番のイベント。一年には臨海学校があるのだが、他の学年、二年と三年の生徒たちにとっては、遺憾無く実力を発揮できる場なのだ。

特に三年には将来の進路先の事も考えなければならないイベントの一つ。二年から別れる事ができる『整備科』の生徒たちも、いずれは整備士としての進路もあるだろう。

戦う事が全てではないと言う事なのだ。

だが、一夏たちにとっては、戦う事は避けられはい大一番とも言える舞台なのだ。

 

 

 

「では、以上でSHRを終了する。各自、ISスーツに着替え、所定の位置にて待機しておけ。なお、パートナーの申請をしていなかった者は、対戦相手の発表と同時に提示する……。何か質問はないか?」

 

 

 

最後の確認を取ろうと思い、千冬は一組の生徒達に促すが、誰一人とて手を上げない。

どうやら何もないようだ。

 

 

「何も無し……か。それでは、行動は迅速に……。解散‼︎」

 

 

 

千冬の言葉とともに、一斉に動き出す。

一夏、和人、シャルロットは、男子更衣室へと走っていく。

 

 

 

「チナツ、大丈夫か?」

 

「え? えぇ、まぁ何ともないですよ?」

 

「あはは……和人は昨日の事があったから、心配なんだよねぇ〜?」

 

「いや、そういうわけじゃあ……シャルロットだってそう思ってたんだろ?」

 

「キリトさん……シャルロット……ありがとうございます……‼︎ でも、もう大丈夫ですから。後は、俺がどこまでいけるか……です」

 

「……じゃあ、もう大丈夫だな」

 

「そうだね。お互い、頑張ろうね!」

 

「ああ!」

 

「もちろん!」

 

 

 

男の友情? を交わし、一同は更衣室で着替え、トーナメントの対戦表の発表を待っていた。

発表は、生徒会が自動抽選を行い、生徒会長である刀奈が発表するという仕組みになっている。

丁度今の時間になると、タッグ申請をした組みと抽選でタッグになった組みとを確認し、それを自動抽選にかけているところだろうか……。

 

 

 

「さてさて……俺たちは誰と当たるかな?」

 

「出来れば、キリトさん達とは決勝くらいで当たりたいですね……」

 

「僕もかなぁ〜。初戦から和人や一夏たちと当たりたくないな……」

 

「「え? なんで?」」

 

「いや、だって……簪も言ってたけど、二人……いや、楯無さんと明日奈さんもだけど、四人を相手にするにはそれ相応の準備をしておかないと無理だって……!」

 

「「ええ? そんなに?」」

 

「二人はもっと周りからの評価を気にした方がいいと思うよ……?」

 

 

 

あまりに鈍感……と言うか、気にしなさ過ぎの二人に、シャルロットは軽く呆れる。

一夏も和人も首を捻っては「ん?」と言っているが、周りの評価は一概に二人を高く評価しているのだ。

 

 

 

 

「まぁ、それもこれも、対戦表が出てから……っと、噂をすれば何とやらだな」

 

 

 

和人の言葉に一同はモニターを確認する。

丁度良いタイミングで、対戦表がモニターに映し出された。

 

 

「なっ!」

 

「おいおい……これは……」

 

「一回戦から……ハードな組み合わせだね……」

 

 

 

和人、シャルロット、一夏と共に別の組み合わせとなったため、初戦から当たるという事はなくなったが、問題は、一夏と刀奈の初戦の相手……。

 

 

 

織斑 一夏・更識 楯無 VS ラウラ・ボーデヴィッヒ・篠ノ之 箒

 

 

 

「マジかよ……」

 

「しかも箒とタッグだったんだ……」

 

「おそらくは抽選だろうな……」

 

 

 

 

一方、女性陣営は……。

 

 

 

 

 

「カ、カタナちゃん! これってもしかして……わざと?」

 

「いえ、公平な抽選を行った結果よ……。私だってビックリしてるんだから」

 

「だ、だよねぇー。……でも、これは……」

 

「ええ……。流石に出来過ぎよねぇ〜」

 

 

 

なにやら悪意を感じるこの組み合わせ。

刀奈も明日奈も裏を感じていた。よりにもよって一回戦からとは……。

 

 

 

 

(最悪だ……! 一回戦から一夏たちと当たるのはまだいい……だが、よりにもよってパートナーがあいつとは……!)

 

 

 

箒はそう思いながら、視線をある人物に向ける。

そこにいるのは当然、これから箒とタッグを組む人物。ラウラ・ボーデヴィッヒ本人だ。

 

 

 

(ふふっ……‼︎ まさか初戦からとは……面白い!)

 

 

 

 

ラウラの冷たく、寒気を覚えるような笑みがこぼれる。

それを察知したのか、周りにいた女生徒たちも、少しラウラから遠ざかった。

 

 

 

 

両者共に不安に思うも、決まったことだ。取り下げには出来ない。

よって、これから始まる試合は、苛烈さを増すものとなると、誰もが思っただろう……。

 

 

 

 

定刻となり、アリーナ全体にアナウンスが流れた。

これより、学年別タッグマッチトーナメント戦が始まる。

 

 

 

『これより、一学期末学年別タッグマッチトーナメントを開催いたします』

 

 

放送部の生徒のアナウンスに会場の熱気が跳ね上がる。

各アリーナで行われる第一試合……その出場選手たちは、各アリーナの控え室にて待機。

一夏は刀奈と合流し、和人も明日奈と合流し、簪もシャルロットと無事合流し、観客席へと移動した。そして、一夏達は第一試合の為、控え室へと向かう。

 

 

 

〜観客席〜

 

 

「さて……第一試合から波乱だな」

 

「そうだねー。チナツくんも厄介事に巻き込まれやすい体質だけど……」

 

 

和人の言葉に明日奈が反応し、チラッと和人を見る。

和人も明日奈の視線に気づき、ちょっと気まずくなる。

 

 

「な、なんだよ……」

 

「ううん、別にー? ホント誰かさんと似てるなぁーと思ったの」

 

「いや、俺だってそう進んで厄介事に首を突っ込んでるわけじゃないんだぞ?!」

 

「うっそだぁー。これまでのことを考えたら、キリトくんはいっつもなにかしらトラブルに巻き込まれてるじゃない……! ねぇ? 簪ちゃん!」

 

「うえっ!? わ、私ですか?!」

 

 

視線が一気に簪に集まる。

どう答えたものか悩むが、よくよく考えてみると、ALOに初ログインした時、和人と一夏が誰かと揉めて戦いになったと風の噂で……。

 

 

「そう、ですね。和人さんも、少しは気をつけた方が……」

 

「なにぃーっ!? か、簪! お前までそう言うのかよ!?」

 

「ええっ? だ、だって……この間もレアアイテムの取り合いで決着がつかなくてデュエルで決着をつけたし……」

 

「い、いや、あれはだな……」

 

 

元々がバトルジャンキーな和人。

バトルはおまかせと言わんばかりに、ことごとく他のプレイヤーと戦い、勝利を収めている。

その常人離れした戦い方故に、『ブラッキー先生』と言うあだ名をつけられている。

 

 

「ま、まぁ、俺のことはともかくだ! 今はチナツの試合だろ?」

 

「あー……逃げたぁー……。ふふっ、まぁこれくらいにしておきましょうか」

 

 

 

そう言って悪戯っぽく笑う明日奈。

普段がお淑やかで物静かそうな雰囲気故に、その表情は非常に珍しく、そして可愛く思った。

そして、アナウンスが流れて数十分後。

アリーナの説明及び、緊急時による避難法を全員に通達する。

それが終わり、やっと第一試合が始まった。

 

 

 

 

〜一夏陣営〜

 

 

 

「チナツ……大丈夫?」

 

「あぁ、問題ない。すこぶる快調だ」

 

「そう? ならいいわ……。ついに来たわね」

 

「あぁ、昨日は見せられなかった技、とくと見せつけてやるさ……‼︎」

 

「ええ、その意気よ。さてと、私は箒ちゃんを相手しようかしら……」

 

「カタナなら大丈夫だとは思うが、油断禁物だぞ?」

 

「大丈ぉぉ夫‼︎ 箒ちゃんには、全力全開、真剣勝負で行くって言ってるから……。手を抜くつもりはないわよ」

 

「そっか……じゃあ、行きますか」

 

「了解♪」

 

 

 

カタパルトデッキに赴き、それぞれISを展開する。

 

 

 

「来い、白式!」

 

「行きましょう、ミステリアス・レイディ!」

 

 

白と蒼の機体は、高らかに翼を広げ、アリーナへと飛翔する。

 

 

 

 

〜ラウラ陣営〜

 

 

 

「おい」

 

「なんだ、ボーデヴィッヒ」

 

「貴様はISの稼動時間はどれくらいだ」

 

 

 

準備を整え、精神集中を行っていたところ、後ろにいたラウラに声をかけられる箒。

 

 

「私も一般生徒と変わらん……。専用機も持ち合わせていないのでな……なるべく乗るようにはしているが、一年の平均時間と大差ない」

 

「そうか。では私にも好都合だ……。あまり無駄に動かれても邪魔なだけだ」

 

「なんだとっ!?」

 

「そうだろ? 私の目的は、織斑 一夏を潰すことだ……貴様はせいぜいあの不愉快な生徒会長とやらを相手していればいい」

 

「ふざけるな! それでは向こうの思うツボだぞ! 楯無さんは国家代表生でもあり、一夏とて無断ならん! 即席とはいえ少しくらい連繋をとってーーー」

 

「連繋? 馬鹿なことを言うな。貴様が私と同格に戦えるのか? 剣しか満足に使えんような奴に、私の背中を任せろと? ジョークにしてはユーモアがないな」

 

「冗談で言っているわけではない。それに、たかが剣一本で、貴様は一夏に敗北していたはずだが?」

 

「っ!」

 

 

 

箒の言葉にラウラは激昂し、走り出すと、目にも留まらぬスピードで箒の首を掴み、そのまま後ろへと押し出す。

そして、後ろにあったロッカーに箒の体を叩きつけると、首を絞める。

 

 

 

「あっ、ぐぅーー!?」

 

「私が負けた? ふふふっ…貴様も潰されたいようだな……」

 

「がぁ!」

 

 

 

首を絞める手に更に力が入る。

両手で振りほどこうとするが、ラウラの手の力が弱まることはなく、逆にまた強くなる。

 

 

「う、ううっ……」

 

「雑魚の分際で……! そう言う意見は私よりも強くなってから言ったらどうだ?」

 

「っ……、くっ!」

 

 

だが、箒は咄嗟にラウラの肘関節を掴み、経絡のツボを強く握る。

すると、ラウラは少しだけ苦悶の表情を浮かべ、腕の力が弱まる。その一瞬に拘束を剥がし、今度は箒がラウラの腕をとって仰向けに投げる。

投げ飛ばされたラウラは、地面に激突する直前で体を捻って、その場に着地する。

 

 

 

「ほう……合気か?」

 

「篠ノ之流だ。私の流派は剣だけではない!」

 

「ふん……まぁ、良いだろう。そこら辺の雑魚よりはやるようだ。だが、前もって言っておく。織斑 一夏は私の獲物だ。手出しはするな……!」

 

「はぁ……いいだろう。が、私は貴様の部下でもなければ奴隷でもない。常に貴様の言う通りに動くとは思わぬことだな」

 

「ふんっ……口の減らない女だ」

 

「お互い様だ」

 

 

 

互いに睨み合い、一歩も譲らない。

おそらくはどのタッグよりも殺伐としているだろう。

そう言う雰囲気の中でも、二人は同じように部屋を出て行き、カタパルトデッキへと向かう。

 

 

 

「頼むぞ、打鉄」

 

「行くぞ……! 展開」

 

 

 

箒は今回も日本の第二世代である打鉄に乗り込み、ラウラは専用機を展開する。

鋼と黒のISがともにアリーナへと飛翔していった。

 

 

 

 

 

 

アリーナの中央。四機のISが鎮座している。その内専用機が三機。開始前にも関わらず、妙な空気に包まれている。

観客もそれを察しているのか、静かに四人を見守っている。

 

 

 

 

「よもや一戦目から当たるとは……待つ手間が省けたと言うものだな……」

 

 

不敵な笑みを浮かべ、口を開くラウラ。

その視線の先には、当然一夏がいる。

 

 

「そうだな……。俺も同じ気持ちだぜ。別のタッグの子達に当たって、下手に怪我させてもいかんしな」

 

「ふんっ。それはそれで、そいつらが弱かったというだけだ」

 

「そうかよ……」

 

 

 

一方、お互いのパートナーは……

 

 

 

「まさかこんな形であなたと戦うことになるとはね……」

 

「ええ、まったくです」

 

 

 

箒と刀奈。少し距離が離れているが、互いの顔が見えないわけでは無い。

ISのプライベート・チャネルを開き、あの時の約束を果たす。

 

 

 

「ですが、これはいい機会です。私は修行中の未熟者ですが、楯無さん」

 

「ん?」

 

 

刀奈の名を呼び、箒は右手を左腰に持っていく。

量子変換によって生成された日本型ブレード《葵》を握り、正眼の構えをとる。

 

 

 

「篠ノ之 箒……一武士として、あなたに挑ませて頂きます!!!」

 

「…………ふふっ、そう……」

 

 

 

それに答える形で、刀奈も右手をかざす。

そこから現れるのは、刀奈の半身、紅に染まった長槍。

 

 

 

「《龍牙》!」

 

 

 

呼び出された真紅の槍を、まるで自分の手足のように振り回す刀奈。

その槍が振られる度に、紅い斬光が、右に左に、上に下にと流れ、刀奈を包む。

 

 

 

 

「ならば、あなたの挑戦を受けましょう。IS学園生徒会長……いや、一人の女、更識 楯無として……!!!」

 

 

 

向けた矛先から放たれる覇気。

箒が今までに味わったことの無い覇気だった。

 

 

 

「……どうやら、あちらもやる気みたいだな。そんじゃ、俺たちもやるか……」

 

「ふん、言われずともな……」

 

 

 

 

互いのパートナーたちのやる気に当てられたのか、この一戦の主役たる一夏とラウラもまた、戦闘態勢に入る。

 

 

 

「我がシュバルツェア・レーゲンの力……今度こそ思い知らせてやる……!!!」

 

 

両手のプラズマ手刀を展開し、軍隊式格闘術の構えをとるラウラ。

 

 

 

 

「そうか……なら、俺も出し惜しみは無しだ……」

 

 

 

左腰に展開済みだった刀。

その純白の柄を右手で握り、左手で純白の鞘を持ち、鯉口を切る。

ゆっくりとした動作で刀を鞘から抜く。

そこに現れたるは、SAOにおいて、一夏を……いや、チナツを象徴する純白の刀《雪華楼》。

澄み切った青空と照りつける太陽の光が、一夏の雪華楼をより際立たせていた。

雪華楼の刀身をゆっくりと右下に振り抜き、刀の側面……皮鉄をラウラに対して見せるように構える。

 

 

 

5………4………

 

 

 

準備が整ったのを見計らったように、カウントが始まる。

 

 

 

3………2………

 

 

 

自身のモチベーションを一気に最高値へと持っていく。

鋭い眼光、発せられる覇気や剣気。会場の雰囲気が瞬時に変わった。

 

 

 

1………Battle Startーーー!!!

 

 

 

「叩き潰す!!!」

「行くぞ‼︎」

「いざ参る‼︎」

「推して参る!!!」

 

 

 

 

四人が四人とも動き出す。ラウラと一夏、箒と刀奈。

互いに近接武器による格闘戦。方やドイツの現役軍人と剣道の全国チャンピオン。もう方やSAO攻略組のトッププレイヤーにして、ユニークスキル持ちの二人。

一夏とラウラの刃が交錯し、箒と刀奈が間合いを取り合いながらも、切先と矛先が合わせる。

刃が当たる度に、鋼がぶつかり合い、鋼同士をジャリッと引っ掛けるような独特の音が掻き鳴らされる。

 

 

 

「おおっ‼︎」

 

「っ! なるほど……前よりかは力が増しているな……!」

 

 

 

鍔迫り合いの状態で、初めは拮抗していた一夏とラウラだが、徐々にラウラからの力が上がっているのを感じていた。

 

 

「ふふっ、言っただろう……私の、シュバルツェア・レーゲンの力を見せると! 貴様を潰すと‼︎」

 

 

 

言葉の一つ一つに力が込められているかのように、更に力が上がっているのを感じた。

よく見ると、脚の開き方、腰の位置、重心の位置、腕の力の伝え方……それら一つ一つの使い方が、以前よりも効率よく行っている。

だからこそ、少ない動きでここまで力が出ているのだ。

 

 

 

「流石は現役軍人……。たがな、力比べに付き合う気は無いねッ!」

 

 

 

一夏は一度力を抜くと、雪華楼の刀身を寝かせて刃を滑らせ、左前方へと体を移す。ラウラは当然の如く前のめりの態勢へとなるが、咄嗟に左足を前に出して態勢を整え、一夏に再び斬りこもうとするが、既にそこに一夏の姿は無かった。

 

 

 

「っ?!」

 

「どこ見てる、後ろだ!」

 

「こ、のッ!」

 

 

 

背後からの声に反応し、手刀を振るうが、またしても一夏を捉えることができなかった。

当の一夏は、ラウラの周りを動き回り、完全に撹乱させるのが目的なのだ。

 

 

 

「くっ! ちょこまかと……! それにこれは……リボルバーイグニッションか!!!」

 

「流石代表候補生、やっぱり知ってるか……」

 

 

 

前に一夏が見せた技術。ダブルイグニッション・ブーストと同じ高等技術。《個別連続瞬時加速(リボルバーイグニッション・ブースト)》。自身のISのブースターを、個別に操作することによって、連続したイグニッション・ブーストが可能になる。

 

 

 

「馬鹿な! 貴様の機体では、せいぜいダブルイグニッションぐらいしか使えないはず……!」

 

「ああ、らしいな。俺の白式はブースターが二つしか無いから、出来たとしても二回が限界だよ……。

でも、それに対応出来てないなら、二回しか出来ないとしても、同じだろ?」

 

「くっ、そぉぉぉッ!」

 

 

 

ダブルイグニッション、リボルバーイグニッションと機動系統における高等技術を、こうも繰り出されるとは思ってもみなかったラウラ。

技術としての熟練度や成功率は、まだまだ低いものの、ISに触れて、一年も満たない人間がこうも容易くやってのけるのは、正直異常もいいとこだ。

 

 

 

 

〜管制室〜

 

 

 

「織斑くん……いつの間にリボルバーまで覚えたんですか?!」

 

「何、更識が執拗に叩き込んでいたからな……だが、それでもまだ粗いな……」

 

 

 

管制室にて試合を観戦していた千冬と真耶。

一夏の見せた機動系統スキルに、驚きを隠せない真耶。元日本代表候補生である真耶や日本代表の千冬ならば言わずとも分かっているが、一夏はとんでもない事をやってのけでいるのだ。

 

 

 

「そ、そうですけど! リボルバーはともかく、ダブルまで習得しているんですよ?! 私でも出来ないのに……」

 

「いや、山田先生は射撃戦闘型ですよ? 別に出来なくても問題は……」

 

「先生としての威厳がぁぁ……」

 

「…………真耶、今度何か奢ってやる……」

 

「織斑先生ぇぇ……」

 

 

生徒が成長してくれるのは、教師としては嬉しい事なのだが、実際に目のあたりしてしまうとどうしてもヘコむ。

自分が教える立場であるのに、教師が出来なくて生徒が出来ると言うのこ事実は、真耶の心を刺し貫いた事だろう……。

千冬の優しさに、心打たれる真耶であった。

 

 

 

 

〜アリーナ観客席〜

 

「一夏……凄い!」

 

「あいつ……いつの間にあんなのを……」

 

「たぶんカタナちゃんの指導の賜物ね……。それに、チナツくんもそれについていったって事だよ」

 

「でもあれって、普通のIS操縦者じゃ出来ない技術なんだよ? 僕だってまだ出来ないし……」

 

 

試合を観戦していた四人。簪、和人、明日奈、シャルロット。一夏の新技を見て各々が驚いていた、その時だった。

 

 

「あっちゃ〜……もう始まってるじゃん!」

 

「仕方ありませんわ。検査が少し長引いてしまいましたもの……」

 

 

 

和人達が座っていた席の後方で、聞き覚えのある声が聞こえ、和人達は振り向く。

 

 

 

「鈴、セシリア!」

 

「二人とも、寝てなくて大丈夫なの?!」

 

 

和人と明日奈が二人に声をかけ、自分たちの隣りの席に座らせる。

 

 

「ええ、もう検査は終わりましたので、問題ないと先生から言われましたわ」

 

「それに、おちおち寝ても入らせないからねぇ……あいつ、ちゃんとやってんのかしら?」

 

 

 

鈴が向ける視線の先は、もちろん一夏だ。

今現在、ラウラの周りを超高速移動を行い、ラウラを撹乱していた。

 

 

「って、なによあれ! もしかしてあれって……」

 

「リボルバーイグニッション‼︎ 一夏さん、ダブルイグニッションだけじゃなかったんですの!?」

 

「いや、それがね……」

 

「一夏……化け物だったみたい……」

 

 

 

シャルロットと簪の目がマジだったのには、セシリアも鈴も驚いていた。

 

 

「くっそぉー、俺もカタナに習おうかな……」

 

「もう、変なところ負けず嫌いなんだからー、キリトくんは……」

 

「習おうと思ってホイホイ出来るもんじゃないんだけどねぇ……あれ」

 

「わたくし達代表候補生の立つ瀬がありませんわ……」

 

 

 

そんな調子の和人にも呆れつつ、視線はもう一つのペアへ。

 

 

 

 

「もう終わりかしら? まだまだ序の口なのだけど?」

 

「くっ! なんの! はあぁぁぁぁぁぁッ!!!!」

 

 

 

刀奈の華麗な槍捌きを前に、苦戦を強いられている箒。

序盤は箒が先制をかける形で始まったものの、徐々に分が悪くなっていき、刀奈に押され始めていた。

 

 

「はあぁぁぁぁ!!!」

 

「ふっ!」

 

 

 

迫り来る箒の上段。

刀奈はそれを槍の中腹の部分で受けると、流れるような動作で龍牙をくるっと回す。矛先で刀を弾くと、今度は右腕を軸に槍を回転させ、がら空きとなった箒の懐に一撃を見舞う。

 

 

 

「があっ!」

 

「まだよ!」

 

「っ!」

 

 

 

今の一撃で少し後退した箒を追随する形で、もう一撃放つ。だが、今度はそれに反応し、矛先を刀の刃で滑らせ、直撃を免れる箒だったが、それで終わる刀奈では無い。

一撃一撃でダメならばと、今度は高速の連続突きで箒を翻弄する。

箒も箒で、迫り来る高速の突きを辛うじていなしていくが、それでもあまりの手数の多さに圧倒され、小さいがダメージを負っていく。

 

 

「くっ! このままでは……!」

 

「はあっ!」

 

「っ!」

 

 

 

一瞬の気の緩みを突かれ、体の回転を利用した一撃《フェイタル・スラント》が箒の胸……正確には心臓部に向かって放たれる。

翡翠のライトエフェクトは、そのままスピードを緩めることなく、がら空き状態の箒の胸に突き刺さった。

 

 

 

「があっはっ!!!」

 

 

 

深々と入ったその一撃によって、箒の打鉄はシールドエネルギーを消滅させられ、行動不能となってしまった。

関節部分からは煙が吹き上がり、徐々に体が重くなっていく感じを、箒は全身で感じた。

刀の切っ先を地面に突き刺し、両手で柄頭を握る。

 

 

 

「くっ………ここまでか……!」

 

「まぁ、他の子に比べれば、箒ちゃんは大したものよ……。

ただやっぱり、実戦経験の無さが勝負の決め手ね。篠ノ之流剣術を修めていても、対人戦の経験が不足しているから、要所要所で防げてない……」

 

「っ…………」

 

 

 

刀奈の言葉は最もで、箒は何も反論出来ない。

いや、反論するつもりは無かった……。現役の国家代表であり、生徒会長である刀奈に手も足も出ないのは分かっていた……。

だが、こうもあっさりと負けてしまうと、流石に分かっていたとはいえ、気持ちが沈む。

 

 

 

「箒ちゃん。ISも剣術も同じよ……乗れば乗るほどにISが理解するように、剣術だって相手との対戦で、会得出来るものがあるの。

それが見つけ出せれば、あなたは今よりもっと強くなるわ」

 

「…………はい。ありがとうございました、楯無さん。完全に私の負けです……」

 

「そう、畏まらなくていいのよ? あなたはまだまだ見込みがあるんだから……。

今度、チナツと一緒に訓練しましょ? もちろん、箒ちゃんがよければだけど」

 

「はい。よろしくお願いします」

 

 

 

箒の表情は、未だにあまりよく晴れてはいなかったが、それでもその目に映っていたやる気に満ちた光のような物は、確かに刀奈に届いていた。

そして、二人の視線は未だ鳴り響いている剣戟の音のする方へ……。

 

 

「チッ! まさかここまでとは……!」

 

「はあぁぁぁッ!」

 

「っ!」

 

 

 

 

ラウラの背後をとった一夏。

そこから袈裟斬りに一撃。咄嗟に判断したラウラは、両腕の手刀で受け止める。

 

 

 

「くっ……この私が……! この様な雑魚にッ! はあぁぁっ!」

 

 

 

 

一旦一夏を振り払い、ラウラは左手で眼帯を外す。

ラウラの部隊『シュバルツェ・ハーゼ』の隊員及びラウラ自身も保有している目……『オーダン・ヴォージェ』。

その正体は、簡潔に言うと『擬似ハイパーセンサー』だ。両眼を晒した今のラウラは、一夏の動きをしっかりと捉えることが出来る。故に、まだ未完成なリボルバーも封じられた……。だが、それで怯む一夏では無い。

 

 

 

「貴様は潰す! その姿! 一片たりとも残しはしない‼︎」

 

 

 

ガシャッ! という重量音が響く。

シュバルツァー・レーゲンの主砲であるリボルバーカノンが、一夏に砲口を向ける。

その大きな砲口から放たれた砲弾。そして、それを追う様に射出されたワイヤーブレード4本。

そして、ワイヤーブレードの射出と同時に動き出すラウラ。両手には展開したプラズマ手刀。完全な攻撃態勢だった。

 

 

 

「おおぉぉぉぉっーーー!!!」

 

 

 

しかし、一夏の咆哮とともに斬り裂かれた砲弾が、後方で爆発し、射出されたワイヤーブレードを一夏は躱し、ブレードの部分を断ち切り、迫り来るラウラに向かってイグニッション・ブースト。

一気にラウラの懐へと入る。

 

 

 

「くそっ!」

 

「逃がすかっ!」

 

 

迫り来る白閃。

ラウラの目に映る左から右へと流れる剣閃の軌道が、まっすぐラウラの首筋に向かう。

咄嗟に判断し、右の手刀でいなすも、今度は逆手に持った状態からの右薙。間髪入れずに放たれる剣撃は、ラウラの胴を斬る。

反射的に半歩下がったおかげで、大きなダメージには至らなかったものの、必然的にラウラが後退する形になる。

 

 

 

「この……っ!」

 

「どうした? 俺を潰すんじゃなかったのかよ!」

 

「黙れ! この虫けらがっ!」

 

 

今度はラウラが仕掛ける。

右から左、左から右へと絶え間なく放つ手刀の連撃。

軍隊式の格闘術とナイフ捌きを取り入れているのだろう……。その動きには一切の無駄がなく、一般人ならば容易く倒せていただろう……。が、しかしーーー

 

 

 

 

(くそっ! なんなんだこいつは……!)

 

 

 

オーダン・ヴォージェを解放しているラウラには見えていた。自身の攻撃の動きと合わせる様に、一夏の剣もまた、同じ速さで打ち合っている事に。

 

 

 

(手数ではこちらが上……現役の軍人達ですら倒した私のナイフ捌きが、こうも通じぬものなのか……!?)

 

 

 

攻撃の手は緩めない。だが、それでもまだまだ食らいついてくる一夏の姿が……目が、ラウラの心を揺さぶる。

 

 

「どうしたよ……剣の勝負ならいくらでも付き合ってやるぜ? 見せてみろよ、お前の本気をーーー‼︎」

 

「黙れ! 黙れ黙れ黙れぇぇぇッ!!!!」

 

 

 

突如、ラウラが動きを変え、右手をかざす。

その行動を取るときに発生する技は一つ。それは一夏も分かっている。

 

 

 

(ーーーAICか!)

 

「これでぇぇ!!!」

 

 

 

右手と相手である一夏に意識を集中する。

そこから発せられ透明と波動……シュバルツェア・レーゲンに搭載されている第三世代兵器である『アクティブ・イナーシャル・キャンセラー』通称AIC。

それで一夏の動きを止め、リボルバーカノンでとどめを刺すつもりだった……が。

 

 

 

「悪いが……それも読めてたよ……」

 

 

 

ガシャンっ‼︎

 

 

 

「なっ!?」

 

 

 

 

かざした右手に走った衝撃。そして、砕け散ったプラズマ手刀を展開していた展開部分。

それを破壊した黄色のライトエフェクトを纏った刀身とその刀身に当てられた左の拳。

 

 

 

「龍翔閃ーーー!!!」

 

 

 

AICが発動する0コンマ数秒という時間の中で、一夏の放った剣撃の方が、速さでは上回ったのだ。

一夏はそのまま飛翔し、両手で握った雪華楼でラウラの頭上から斬りつける。

破壊された右の手刀はもう展開出来ず、咄嗟に取れた行動は、せめて右腕の装甲のみで受けきるだけだった。

 

 

 

「ぐぅ!!!」

 

 

見た目以上に重くのしかかる剣撃。受け衝撃に耐えきれず後ろへと後ずさる。

 

 

「はあ……はあ……」

 

「さて、もうそろそろ終わらせようぜ」

 

「くっ!」

 

 

一夏はゆっくりと刀を持ち上げると、両手で握り、体の中央で構える。

剣術の基本の構えの一つである正眼の構えだ。

 

 

 

「こいつで最後だ……‼︎」

 

 

 

今までにない気迫のこもった剣気をぶつけられる。

その言葉通り、一撃で決めにくるようだった。

 

 

 

(どう攻めてくる……! 上か、下からか……それともカウンターで横から……)

 

 

ラウラは考える。今までの一夏の剣を見る限り、どれもが相手を一撃で斬り刻む事が出来るものだった。

故に、その予測が間違ったときには、確実にやられる。

 

 

 

「行くぜーーー!!!」

 

 

雪華楼の刀身が蒼光に包まれる。

ソードスキル特有のライトエフェクト。

ラウラもそれに伴い、行動に移る。

 

 

(あの光が灯っている間は、身動きが取れないはず! ならば、オーダン・ヴォージェで見てから判断してからでも充分殺れる!!!)

 

 

 

ラウラが狙うのは、いわゆるカウンターだ。

ソードスキルはその使用後に起こる硬直もそうだが、スキルを使っている間は、他の行動が取れない。

ラウラはオーダン・ヴォージェを使い、スキル発動と同時に一夏の隙をついて倒そうと考えていた……。

オーダン・ヴォージェによる視界には、一夏の動きがスローモーションで見えている。

ならば、ラウラのとった行動は間違いではない……そのはずだったが……。

 

 

 

(な……ば、馬鹿な……! これは……!?)

 

 

 

オーダン・ヴォージェに映る、一夏の剣閃。

その軌道によって、ラウラはカウンターを入れようと思っていた。色々やりようはあったのだが……。

 

 

( “躱す隙がない” ……だとッ!?)

 

 

 

ラウラの左目に映るのは、ラウラに迫り来る “九つの斬撃” だった……!

 

 

 

「くっ!」

 

「九頭龍閃ーーーッ!!!」

 

 

 

見開かられラウラの目。神速で放たれる斬撃。その九つの斬撃は、確実にラウラを斬り裂いていった。

 

 

 

「ッーーー!!!?」

 

 

 

言葉すら発せられず、吹き飛ばされたラウラは、アリーナの外壁に叩きつけられ、その場に倒れた。

九つの斬撃全てをくらい、シュバルツェア・レーゲンのシールドエネルギーは残り100を切っていた。

 

 

 

 

〜管制室〜

 

 

 

「今の……織斑くんは……一体何を?」

 

 

 

真耶の言葉に、管制室内は騒然としていた。

システムを調整していた生徒と教師。そして真耶自身と一夏の姉である千冬も例外無くだ。

 

 

「今のは剣術……なんですよね?」

 

「あぁ……。それも破格の大技だろうな……山田先生、今の斬撃、何回に見えましたか?」

 

「えっ? ええっと……四? それか五回?」

 

 

真耶の答えに千冬は首を横に振る。

 

 

 

「正解は、九回です」

 

「九!?」

 

 

千冬の言葉に、今度こそ黙り込んでしまった……。

 

 

 

 

 

〜アリーナ観客席〜

 

 

 

「何……今の?」

 

「一体、一夏さんは何を……」

 

「剣技……でも……」

 

「一瞬で、ボーデヴィッヒさんを……!」

 

 

鈴、セシリア、簪、シャルロット。各々が言葉を発し、唖然としている中、和人と明日奈は落ち着いた様子だった。

 

 

「決まったな、九頭龍閃」

 

「うん。今の状況で、チナツくんが決めに来るなら、あれしかないと思ってた」

 

「二人とも、あれがなんなのか知ってるの?!」

 

 

その質問をしたのは鈴だった。幼馴染である一夏は、自分の知らない間に、一種の化け物になっていたのだから当然だ。

そして、それは鈴以外のメンバーも同じ。

刀一本で、あそこまでの技を出せる一夏もそうだが、あの剣技のことも気になっていた。

 

 

 

「あれは、チナツが使うドラグーンアーツの最上級スキルだ……。元々チナツが使うユニークスキルの本質は抜刀術……ドラグーンアーツは抜刀術という特殊な型に特化したスキルの不利を補う為に備え付けられてるサブスキルなんだ……」

 

「ドラグーンアーツは硬直が短過ぎる分、与えるダメージが通常のスキルよりも少ない。でも、急所を斬られたり、元より即死してしまうような箇所を斬られれば、その分のダメージを負わす事も出来る……そこまでは、鈴ちゃんとセシリアちゃんは知ってるよね?」

 

 

 

明日奈の言葉に鈴とセシリアは頷き、今しがたその説明を聞かされたシャルロットと簪もまた、和人と明日奈の言葉に耳を傾ける。

 

 

「そして、チナツの戦闘スタイルは高速移動歩法『神速』を旨とする神速剣……。

ドラグーンアーツ……抜刀術スキルを会得出来たのはそれが由縁なんだ」

 

「そして、あれがドラグーンアーツの最上級スキル『九頭龍閃』。神速を最大限に活用した、九撃必殺のスキル」

 

「「「「きゅ、九撃!!?」」」」

 

 

 

四人の声が、綺麗にハモって観客席に響いた。

 

 

 

〜アリーナ中央〜

 

 

 

一夏の決めた大技を、少し離れた場所で眺めていた二人。

刀奈と箒の二人だ。

当然の如く、箒も箒で一夏の使った剣技に驚き、その正体を刀奈に問いかけていた。

 

 

「あの剣技は……」

 

「ドラグーンアーツ最上級スキル『九頭龍閃』。チナツが最も得意とする技よ」

 

「今のは……一体何連撃だったんですか…?」

 

「名前の通り、九連撃。箒ちゃん、剣術の技の共通点が何かわかる?」

 

「剣術の共通点……ですか? ん……」

 

 

 

箒は考えた後に、答えた。

 

 

「構え……ですか?」

 

「ほう……その心は?」

 

「どの流派の剣術も、構えはどれも基本的には同じ筈です……基本の『五行の構え』」

 

「うん、いいセンだけど違うわ。他には?」

 

「他には……はっ!」

 

 

 

構え……または防御の型以外の共通点とした時、箒は気付いた。

 

 

「もしかして、斬撃……『斬り方』ですか?」

 

「うん♪ 正解♪」

 

 

 

どこから出したのか、いつの間にか右手に現れた扇子。いつも刀奈が持ち歩いているもので、パッと開かれたそこには、『お見事!』と達筆な字で書かれている。

 

 

 

「その通り。剣術に基本の斬撃は、九つ。上段唐竹、袈裟斬り、逆袈裟、右薙、左薙、右切り上げ、左切り上げ、下段逆風、そして刺突の九つ……。

どの流派の剣術も、この九つの斬撃以外には無く、また自然や防御の型もこれに対応したものになる……けれど」

 

 

今度はパシィン! と扇子をたたむ。

 

 

「神速を最大限に引き出して、九つの斬撃を一気に放つ破格の大技……それが九頭龍閃なの」

 

「九連撃を一気に、ですか!?」

 

「ええ。故に、防御も回避も不可能の技なの……」

 

「そんな技を……一夏、お前と言う奴は……」

 

 

 

視線は再び一夏に戻る。

当の一夏は、放った大技で吹き飛ばされたラウラを見ていた。曲がりなりにもドラグーンアーツの最大の技を放ったのだ……無事でいられる筈が無い。

そして、当のラウラはと言うと……。

 

 

 

 

(負けるのか……この私が……!)

 

 

 

霞んでいる視界に、倒すべき相手の姿が映る。

だが、そんな目的も、一瞬で砕かれてしまった。

 

 

 

(教官に汚点を残した奴を……倒すと誓った! だが……何故だ!)

 

 

千冬に憧れ、力を求め、専用機を手に入れ、代表候補生になり、軍のIS部隊で隊長にも就任した。

たが……。

 

 

(負けられない! 負けるわけにはいかない! 私は負けてはならないッ!!!!)

 

 

 

更なる力を求めた。

 

 

 

 

ーーー願うか……? 汝、自らの変革を望むか……? より強い力をを欲するか……?

 

 

 

声が聞こえて来た……それも、自分が欲しいものを求めるかと聞いてくる。

そして、ラウラは答えた……。

 

 

 

ーーーよこせ! 力を! 比類なき最強を、唯一無二の絶対を……私によこせッ!!!!

 

 

 

Damage Level……D

Mind Condition……Uplift

Certification……Clear

 

 

《Valkyrie Trace System》……BOOTーーー‼︎

 

 

 

 

 

「くううっ! うわあぁぁぁぁぁぁッ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 





どうでしたか?
次回は、決着と和解をやっていきます!


感想よろしくお願いします!


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