ソードアート・ストラトス   作:剣舞士

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えぇ〜今回から、あの二人の登場です。

それではどうぞ!




第二章 疾風黒雨
第13話 金銀の転校生


夏休みに入る前、6月の初頭。

謎の侵入者事件があったり、アインクラッド復活があったりと、色々とびっくりさせられるような事がありましたが

、もう今ではすっかり平和になりました。

この時までは……。

 

 

 

 

「お引越しです♪」

 

「「はい?」」

 

 

一組の副担任である真耶の一言が、あまりにも唐突過ぎたので二人して聞き返す。

現在。俺、織斑 一夏は同居人であり、幼馴染みの篠ノ之 箒と一緒に自室でくつろいでいた。

俺は部屋のパソコンを使って、ネットニュースを見ていて、箒は自身で買った雑誌をベットに座った状態で見ていた。

そんな時にいきなり「お引越しです♪」なんて言われても……ねぇ?

 

 

そんな事いざ知らず、そのまま話す真耶。

 

 

 

「部屋の調整が済んだので、篠ノ之さんには別の部屋を使っていただきます。流石に、年頃の男女がいつまでも同じ部屋と言うのは、篠ノ之さんもくつろげないと思いますので……」

 

 

との事だ。まぁ、確かに理にかなっている理由である。

まぁ、一夏にとってはそんな事は別に関係ないのだが……。

昔は恋人である刀奈と同じ部屋で過ごし、同じベットで寝たりなんて当たり前だったからだ。すでにそこまで気を許していると言ってもいいだろう。

だが、箒とは違う。箒は幼馴染みであって恋人ではない。

一夏がいいと言っても、箒自身が嫌ならば交代しないわけにはいかない。

 

 

 

「待って下さい! それは今でないといけませんか?」

 

 

と、そんな事を思っていると、意外にも箒は待ったをかけた。そして、何故か俺の顔を見る。

 

 

「まぁ、箒。その、会えなくなるってわけじゃないんだし、ここは先生の計らいに従った方がいいと思うぞ?」

 

「なっ!? お前は、私に出て行って欲しいと……そう言っているのかッ!!?」

 

「いや! 違う違う‼︎ そうじゃなくてだな……」

 

「ではなんだ!?」

 

「多分だが、この部屋の移動を言ったのは千冬姉だと思うぞ?」

 

「うぅ…」

 

 

千冬の名前を出した途端、箒はあっさりと引いた。

そして、真耶は「凄いですねぇ! 流石はご姉弟! よくわかりましたね♪」などと言う。

まぁ、一年寮の寮長の名前を見たので……。

SAOから帰ってきた時、千冬姉は家にほとんど居なかった。今の仕事は何をしているのかと聞いたら「公務員だ」としか答えなかった。しかし、俺たちがISを動かしてしまい、強制的に入学してしまった為、当然クラス担任だったのにも驚いたし、その後で見た名簿に「一年生寮長 織斑 千冬」の名前を見つけた時も驚いた。

なるほど、通りで帰ってこないわけだ。

 

 

 

「わかりました……。では、準備をしますので少し待ってもらってもよろしいですか?」

 

「はい! わかりました! 何かあったら言ってくださいね? 荷物持ちくらいならやりますよ?」

 

「い、いえ! そこまでは……。それに、そこまで荷物も無いので……」

 

 

 

そう言って、そそくさと荷造りを始める箒。俺も手伝おうとしたが、断られた。

確かに荷物は少なく、道着や竹刀、それから着替えやその他諸々……。

女子にしては荷物は少ない方だ。

 

 

 

「で、では一夏。またな」

 

「おう、また明日な」

 

 

 

最後には箒の方から挨拶を交わし他のだが、その顔はどこか切な気で、悲しそうだった。

この日、俺は一人部屋になってしまった。

まぁ、後々刀奈が来るんだろうと思っていた。いつかは生徒会長権限を行使するとではないかと少なからず思ってたり……。

翌朝のサプライズが無ければ……。

 

 

 

 

「席に着け、SHRを始める」

 

 

朝、千冬の一言で始まる。

席に着き、いつも通り真耶によるSHRが執り行われたのだが…。

 

 

「はーいみなさん! 今日はなんと! 転校生を紹介します! それも二人です! では、二人共入って来て下さい!」

 

 

そう言って、真耶が教室の入口を見る。それにつられて、みんなが視線を集める中、ドアが開き、そこから二人の生徒が入ってきた。

その二人に、後々俺たちは驚く事になる。

何故なら……1人目。長い金髪を後ろで一つ結びにし、どこか中性的な顔立ちをしている。身長もほとんど和人と変わらないのではないかと思う。そして、一番気になったのが、俺たちと同じ男子の制服を着ていたからだ。

 

 

 

「どうも初めまして。シャルル・デュノアです」

 

「え? 男……?」

 

「はい。こちらには僕と同じ境遇の方が二人いると聞いていたので、フランス本国から転入をーー」

 

「「「きゃあぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!!」」」

 

「ふぇ?!」

 

 

 

まさかの三人目の男子の登場で、教室内のボルテージはMAX。女子達によるハイパーソニックボイスが一夏と和人の体を震撼させる。

 

 

「ぐおっ!?」

「す、すごいな……これは…!」

 

 

恋する年頃の女子には、そんな事関係ない。

先ほどから一夏と和人、シャルルを見比べては歓声を上げている。

 

 

 

「来た! 三人目の男子!」

 

「美形! しかも守ってあげたくなる系の!」

 

「やったぁぁぁ!!! 一組最高ぅぅぅッ!!!」

 

 

 

と、まぁこんな感じで…。

この勢いを止める事が出来るのは、多分ここに一人だけだろう……。

 

 

 

「静かにしろ!」

 

「「………………」」

 

 

 

流石は千冬姉。たった一言でこの騒ぎを収めた。

 

 

 

「そうですよ、皆さん! まだ、もう一人の自己紹介が終わってませんよ?」

 

 

そう言って、真耶がもう一人の転校生に視線を向ける。

もう一人の転校生の印象は、まぁ、簡単に言えば、とごか冷たい様な感じだ。すらぁ〜と伸びたストレートの銀髪は、とても妖艶で、物語に出てくる妖精を彷彿とさせる。ましてや、小柄な体格とも相まって、可愛らしいのではあるが、一番目を引く左目の眼帯。そして、まるで周りを見下すかの様な視線が印象的であった。

真耶の紹介にも応じず、ただじっと立っているだけだ。

 

 

「ほら、自己紹介をしろ…。ボーデヴィッヒ」

 

「はっ! 教官!」

 

「ここではもう ‘教官’ ではない。私のことは、 ‘織斑先生’ と呼べ」

 

「了解しました、織斑先生!」

 

 

 

一通りの挨拶を交わすと、ディスプレイに名前が表示された。名前はラウラ・ボーデヴィッヒというらしい。

それに、千冬の事を教官と呼んでいた……。つまり、千冬の知己であるという事だ。

 

 

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ!」

 

「「………………」」

 

「………」

 

「あのぉ〜……以上ですか?」

 

「以上だ。ッ!、お前か……!」

 

「ん?」

 

 

 

初めの一夏たちの自己紹介よりも短く、名前だけ述べたラウラ。そして、一夏の姿を確認した途端、顔色が強張り、静かに近づいたかと思うと、いきなり平手打ちをかまそうとした。

 

 

 

「おっと!」

 

「ちッ!」

 

「初めて会った人間に対して、いきなり平手打ちとは……ドイツの習慣は少し過激だな?」

 

 

 

だが、やすやすと食らう一夏でもなかった。

持ち前の先読みで、迫り来る平手打ちを寸でのところで受け止める。

 

 

 

「ふんっ……動きはまあまあか……。だが、私の敵ではないな……」

 

「何かを試していたのか? にしても、あまりにもいきなり過ぎじゃないか? 俺はお前と会うのは初めてのはずだが?」

 

「黙れ。貴様の様な輩が居なければ、教官は二連覇と言う偉業を成し遂げ、名実ともに最強になるはずだった……っ! それを貴様はーー!!!」

 

 

 

再び手が振るわれるかと思ったその時、後ろからラウラの手を掴む者がいた。それは当然、担任である千冬だった。

 

 

 

「いい加減にしろ! 転入早々問題を起こしてくれるな」

 

「……くっ!……申し訳ありません」

 

 

 

千冬の一喝が効いたのか、ラウラはすぐに手を引っ込めて自分の席へと向かう。ちなみにラウラは一番後ろの廊下側で、シャルルが一夏の隣になった。

 

 

 

「では、一時間目は二組と合同でのIS実習を行う。直ぐに着替えて、グラウンドに集合すること。では、解散!」

 

 

 

千冬の号令と共に動き出すクラスメイト達。

一夏達も急いでアリーナの更衣室へ向かう。

 

 

 

「織斑、桐ヶ谷」

 

「はい」

「何でしょうか」

 

「デュノアの面倒を見てやれ。同じ男子同士だ」

 

「わかりました」

「了解です」

 

 

 

そう言うと、そのシャルルの方から近づいてくる。

 

 

 

「君たちが織斑くんと桐ヶ谷くん? 初めまして、僕はーー」

 

「ああ〜そう言うのは後でいいから!」

 

「急いでアリーナの更衣室に行くぞ!」

 

「ふえっ!?」

 

 

 

紳士にも二人に挨拶をしようとした時、いきなりそれを二人から遮られ、一夏に手を握られて、引っ張られるシャルル。いきなりのことだったのか、あまりにも可愛らしい声を上げるので、少し驚く。

 

 

 

「ちょ、いきなりどうしたの?」

 

「急がないと、千冬姉に鉄拳を食らうことになるからな!」

 

「俺たちは、いつもアリーナの更衣室で着替えているんだよ。授業の度にこの移動だから、早めに慣れてくれ」

 

「あ、う、うん。でも、まだ時間はあるよ? そんなに急がなくても……」

 

 

確かに、休憩時間はおよそ10分ぐらいだ。教室からアリーナまでの距離はそれなりにあるが、だからと言ってそう急ぐ必要はないと思う。シャルルはその事について疑問になったのだが……。

 

 

 

「それは、今から分かるさ……」

 

「え?」

 

 

 

一夏の言葉に反応したのとほぼ同時だった。

 

 

ドドドドドドドドーーーッ!!!

 

 

 

「ヤバっ! 急げ、来たぞ!」

 

「えっ?! な、なに?!」

 

 

 

いきなり鳴り響く地響き。

そして、和人の言葉で少し不安になるシャルル。

その地響きはどんどん大きくなり、やがてその正体を現した。

 

 

「ああーー!!! 織斑くん達発見ッ!!!」

 

「桐ヶ谷くんとシャルルくんも一緒よ‼︎」

 

「者共であえであえッ!!」

 

 

一瞬にして囲まれてしまった。

 

 

「見てみて! 織斑くんとデュノアくん、手繋いでるっ‼︎」

 

「やだ、可愛いいッ!!!」

 

「桐ヶ谷くん達の黒髪もいいけど、デュノアくんの金髪もいいわねぇ〜♪」

 

「うわ〜……やっぱりこうなったかぁ〜……」

 

「でも、これを突破しなきゃならないんだし……行くしかねぇーー‼︎」

 

「シャルル! 手、離すなよっ‼︎」

 

「ふえっ!」

 

 

 

 

シャルルの手を握り、走り出す一夏と和人。

前に立ち塞がっている女生徒たちの合間を縫ってすり抜ける。

 

 

「ああーー‼︎ 逃げた!」

 

「待ってぇーー!!! せめて写真でもッ!!!」

 

 

最後には黛先輩までもが来たが、何も出来ずに終わってしまった。

 

 

 

〜一組教室内〜

 

 

「それにしても、チナツくんとボーデヴィッヒさん…何かあったのかな?」

 

「さぁ? チナツは知らないみたいだけど……。ラウラ・ボーデヴィッヒねぇ〜……ドイツの代表候補生だって言うのは知っているけど……」

 

「ドイツの子なのかぁ〜。綺麗な銀髪だったしね〜」

 

 

 

先ほどの出来事を思い出しながら、話し合う明日奈と刀奈。いきなりの平手打ちと敵意。強烈なファーストコンタクトだった。

 

 

「それに、さっき二連覇を逃したって……」

 

「うん……多分だけど、それは二年と少し前の話ね……ここからは、チナツ本人に聞いてみる他ないわね……」

 

「そうだね……。ああ、それとデュノアくんだっけ? びっくりしたよー! キリトくんとチナツくんの時にもびっくりしたけど……もう一人居たなんて」

 

「うーん……それなんだけどね? なんかひっかかるのよねぇ〜」

 

「えっ?」

 

「時期もそうだけど、『デュノア』ねぇ〜」

 

「うーん……感じ的にはキリトくんと似た感じの雰囲気だったねぇ〜。なんかこう、中性的って言うか…」

 

「まぁ、そうね。何事も無ければいいけど……さて、私たちもそろそろ行きましょう? 遅刻は死を意味するわ」

 

「う、うん! そうだねぇ……」

 

 

 

先ほどの千冬の一喝を思い出し、苦笑いしながら先を急ぐ二人であった。

 

 

 

〜アリーナ更衣室〜

 

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

「何とか、辿り着けたな……」

 

「凄かったね……さっきの……」

 

 

先ほどの女生徒の大群を抜けて、やっとかっとアリーナの更衣室にたどり着けた三人。

お互いに息を整える。

 

 

 

「それにしても、なんでみんなあんなに騒いでるんだろう……?」

 

「いや、何でって……俺たちが男だからだろう?」

 

「えっ?」

 

「俺たちは、世界で三人しかいない男性IS操縦者なんだぜ? それを見ようと群がってくるのは必然だろ?」

 

 

何を当然の事を聞いているのか。一夏と和人は疑問に思って尋ねてみると、シャルルは「ああ! そうだね」とこれまた変な返しをする。

 

 

「まぁ何はともあれ、俺は織斑 一夏。俺の事は一夏って呼んでくれ」

 

「じゃあ俺も。桐ヶ谷 和人だ。俺の事も好きに呼んでくれ」

 

「うん! じゃあ一夏に和人! これからよろしくね。僕はシャルル・デュノア。僕の事もシャルルでいいよ」

 

 

ここへ来てやっとまともな自己紹介が出来た。

しかし、安堵ばかりしていられない。更衣室にあった時計を見てみると、集合時間まで残り時間が約8分。

 

 

「うわ! ヤバい、早く着替えないと!」

 

「うお!? もうこんな時間かよ……急がないと!」

 

「う、うわあ!」

 

 

時間が迫っている為、急いで制服を脱ぎ、裸になると、いきなり驚いては後ろを向いて、両手で顔を覆うシャルル。

何事かと思い、一夏も和人もシャルルの方を見る。

 

 

 

「おい、シャルル。早くしないと間に合わないぞ?」

 

「う、うん……分かってる。着替えるから、その、向こうを向いたままで……ね?」

 

「いやまぁ、別に裸をジロジロと見るつもりはないけど……」

 

 

 

そう言って、再び着替え始める三人。

だが、驚く事に一番最後に着替えに取り掛かったシャルルが、一番早く着替え終わったのだ。

一夏と和人は、一度不審に思ったが、ISスーツを着るのには、慣れが重要なものなのだろうと思い、その場を後にした。

グラウンドへは問題なく辿り着き、一組と二組の生徒達が整列しているところに混ざる。

 

 

 

「随分と遅かったね、キリトくん」

 

「あぁ、着替えに行く途中で、女の子達に行く手を阻まれてな…」

 

「ふぅーん……」

 

「いや、別に変な事はしてないぞ?! ちょっと今日は人数が多かっただけだって……」

 

「そう。まぁ、それなら仕方ないね」

 

「はぁ〜」

 

 

無事に明日奈に納得してもらい、安堵する和人。

そして、もう一人はと言うと……。

 

 

「遅かったわね」

 

「ん。別のクラスの子達に追われてたんだよ。キリトさんと一緒にいた時よりも、数が多くて大変だったぜ」

 

「あらあら、人気者だこと」

 

「いや、そんなんじゃないと思うぞ?」

 

「どうかしらねぇ〜」

 

「本当だってば……!」

 

「はいはい、わかってるわよ。それよりも、あのラウラちゃんとは、どう言う関係なの?」

 

「あぁ…」

 

 

そう言って、少し言葉を濁した後、思い切って自白する。

 

 

「あいつ、千冬姉の事を『教官』って呼んでただろ? なら多分、あいつは千冬姉が一年間ドイツの教官をしていた時の教え子って事だ」

 

「そっか。織斑先生って確か、現役を引退してからすぐにドイツで教官やってたんだっけ」

 

「流石だな。もう仕入れていたのか……」

 

「まぁ、それは私の専売特許みたいなものだからね……。それで、あの子のあの態度を見るからに、チナツを恨んでいる目的って言ったら……」

 

「あぁ、そう言う事になるな……」

 

 

 

顔を落とし、目をつむって苦辛する一夏。

それを見て、刀奈も「ごめんなさい…」と謝る。

 

 

「いや、別にいいんだ。ただ、いずれあいつとは戦う事になるからさ、そん時は俺が決着をつけなきゃいけないからさ…」

 

「そうね……。けど、無茶だけは無しね」

 

「分かってる」

 

「そう? ならいいわ」

 

 

そうしている内に千冬が登場し、みんなが整列する。

 

 

 

「さてと、本日の実習だが、まずはIS戦闘における基本的な操縦を見せてもらう。凰! オルコット!」

 

「「はい‼︎」」

 

「専用機持ちならば直ぐに始められるな? 前に出ろ!」

 

「はぁー、面倒くさいなぁ〜」

 

「こういうのは、見せ物みたいであんまり気が進みませんわね……」

 

 

 

そう言いながらも、しぶしぶ前に出る。

 

 

「それで? お相手は誰ですの? 鈴さんとですの?」

 

「ふん、上等じゃない。返り討ちよ!」

 

「慌てるな馬鹿者。相手なら……」

 

 

 

そう言って、空を見上げる千冬。

特になんのことない澄み切った青空が広がっているだけなのだが……

 

 

「わあああああああ〜〜〜〜!!! 退いて下さ〜〜〜い!!!」

 

 

その青空から落ちてくる緑色の機影。

緑色のラファール・リヴァイヴに乗った真耶が飛んできた。

…………一夏と和人を目掛けて。

 

 

 

「ヤバい! こっち来るよ!」

 

「みんな! 逃げなさい!」

 

「「うわあああああ〜〜〜!!!」」

 

 

 

早急に動いた明日奈と刀奈の指示のもと、みんな四散して行くのだが、整列していた場所がほぼど真ん中だった一夏と和人は、逃げ出すのが遅れてしまった。

 

 

 

「キリトくん!」

「チナツ!」

 

「やばっ! 月光!」

「来い! 白式!」

 

 

 

避けきれないと判断した一夏と和人は、すぐにISを展開し、上昇し、動き出しが早がった一夏が真耶の腕を掴んで、勢いを殺し、待っていた和人がそれを受け止めた。

だが、完全には勢いを殺し切れなかったのか、三機ともまとめて地面に倒れる。

衝撃はそこまで無かったものの、ある程度の勢いがあった為に、軽く土煙が上がる。

 

 

 

「キ、キリトくん!?」

 

「チナツ‼︎」

 

 

二人が心配になって、近づく明日奈と刀奈。

やがて、その土煙が晴れてきて、中から白い機体と黒い機体、そして真耶の緑色の機体。

 

 

「「あっ‼︎」」

 

 

なんとか無事な姿を見つけ、安堵するのだが、その後。

二人が硬直した。

 

 

「「へっ……⁇」」

 

「痛ってぇ〜〜! 大丈夫か、チナツ?!」

 

「問題ないです。山田先生は大丈夫ですか?」

 

「あ、はい、大丈夫なんですけど……その…」

 

 

 

お互いに無事を確認しあったまでは良かった。

その状態が明るみにならなければ……。

 

 

「あ、あのぉ〜二人とも? そろそろ離れてくれると嬉しいのですが……」

 

「「えっ??」」

 

 

 

視線を山田先生に、いや、それよりも下。胸元あたりを見た時、戦慄した。

二人とも左右一つずつ真耶の胸を掴み、揉んでいたのだから。

 

 

 

「「のわあぁぁぁぁぁぁっ!!!」」

 

 

 

状況を把握した二人。

急いでその手を退かし、離れようとしたのだが、視線を上げた途端、目の前には鋭く光り輝く刃の切っ先が見えた。

 

 

 

「ねぇ、キリトくんってば、もしかして死にたい人なのかな? それとも殺されて欲しい人なのかな?」

 

「ひっ!!? ちょ、ちょっと待てってアスナ!! 今のは不可効力だ!!!」

 

「ふーん……不可効力で人の『胸』を揉んだりしちゃうんだ……」

 

「いや! だ、だから!」

 

 

 

素早く展開した閃華のメインアーム、ランベントライトの切っ先が和人の眉間を今にも突き刺しそうな位置で止まっていた。

それをした明日奈の表情は、笑顔ではあるが陰りがあり、見ていて恐怖を覚える。

そして、一方では…

 

 

 

「ねぇ、チナツ?」

 

「は、はい……なんでしょう……カタナさん?」

 

「チナツって、ほんとわざとやってるんじゃないかと思う時があるのよねぇ……。

なんでいつもこんな事になるのか、説明してもらえるかしら?」

 

「いや、そんなこと言われても……」

 

 

 

一夏は一夏で、刀奈が展開した紅い長槍《龍牙》が喉元に突きつけられる。

後数センチ動けば喉元を突き刺す位置にある為、下手に動けない。

 

 

「いや、あの……カタナ……」

 

「動かないで」

 

「うぅ……」

 

「あぁ、間違えたわ。‘別に動いてもいいけど、その時はとても危険よ?’ って言った方がいいかしら?」

 

「どっちでも一緒だよ‼︎ そんなもん‼︎」

 

 

 

戦慄の現場。

刃物を持った女子2人が、男子二人を今にも刺しそうと言う世にも恐ろしい光景がそこにはあった。

女子二人の顔は、笑顔ではあるがその目は笑ってない。ましてや、ドス黒いオーラまで感じられる。

対して男子二人。

共に硬直したままで、顔は怯えが見える。さらには、血色が悪く、顔は青ざめている。

 

 

 

「お前たち、いい加減にしておけ。今は授業中だぞ」

 

 

はぁー、とため息を漏らしながら、四人に近づいていく千冬。それを聞いた明日奈と刀奈は剣と槍を納め、その場から離れる。

一夏と和人もそれを見て、ホッとする。

 

 

「さて小娘共、準備はいいか?」

 

「えっ? もしかして…」

 

「わたくしたち、二人で相手しますの?」

 

 

 

仕切り直して、千冬が改めて鈴とセシリアの方へと向く。

未だに後ろでは一夏と和人が、刀奈と明日奈にジト目で睨まれているが、それは放っておくみたいだ。

 

 

「それは、あまりにも……」

 

「そうよね〜。いくら何でも……」

 

「安心しろ。今のお前たちならすぐ負ける」

 

「「む‼︎」」

 

 

 

千冬の一言に、カチンと来た二人は一足早く上昇し、真耶の到着を待つ。

そして、やっとかっと立ち直った真耶も上昇していき、やがて相互が対峙した。

 

 

 

「こうなったら、手加減は致しませんわよ?」

 

「私たちだって専用機持ちなんだから! 格の違いってやつを見せてあげる‼︎」

 

「い、行きますーー‼︎」

 

 

 

お互いの集中力が増していき、鈴は双天牙月を構え、セシリアはスターライトを、真耶はアサルトライフルの安全装置を解除し、トリガーに指をかける。

 

 

 

「それでは……始めっ!!!」

 

 

 

千冬の合図と共に、相互が一旦距離を取る。

セシリアはビットを展開し、多方向からの波状攻撃を仕掛ける。鈴は龍咆を駆動させ、的確に真耶を狙い撃つ。

そして真耶は、その攻撃を上手いこと躱したり、シールドで受け止めるなど、ことごとく防ぐ。

 

 

 

「ちょうどいい機会だ。デュノア、山田先生が乗っている機体について説明してみろ」

 

「は、はい‼︎」

 

 

いきなりの振りに少し慌てたが、シャルルはリヴァイヴの解説をする。

 

 

「山田先生が乗っている機体は、デュノア社製『ラファール・リヴァイヴ』第二世代最後期の機体でありながら、その汎用性の高さから、第二世代でも第三世代に劣らないスペックを持っています。

現在配備されてる量産型ISの中でも世界第三位で、使い手を選ばす、各種戦闘スタイルに合わせて装備の換装が可能です」

 

「よし、そこまででいいだろう……。ちょうど決着がつく頃合いだろう」

 

 

 

よく見ると、上空ではセシリアと鈴が誘導されたのか、二人とも衝突し、身動きが出来ないでいるところに真耶がグレネードランチャーを撃ち込んでいた。

派手な爆発音と爆煙が立ち込め、その爆煙の中から二人の悲鳴が聞こえる。

やがて二機が爆煙から姿を現したのだが、二人とも揃って地上へと一直線に落ち、これまた派手な音をたてて地面と衝突した。

 

 

「あんたねぇ〜っ‼︎ 何面白い様に回避先読まれてんのよっ!!!」

 

「鈴さんこそ! 無駄にバカスカ撃つからいけないんですわっ!!!」

 

「なによっ!!!」

 

「なんですのっ!!!」

 

 

 

互いが互いを責め合う。

その場にいた生徒全員が、「代表候補生って……」と、ちょっと呆れている。

 

 

「山田先生はこう見えても『元代表候補生』だ。今くらいの戦闘なんて造作もない」

 

「昔の話ですよ〜。それに、代表候補止まりですし…」

 

「これで諸君も、教職員の実力を理解してもらったと思う。今後は、皆敬意をもって接するように。いいな?」

 

「「「はいっ!!!」」」

 

 

 

千冬が締めくくり、授業に入る。

今日はISの装着と歩行の訓練だ。複数のグループに分かれ、各グループを専用機持ち達がリードすると言う具合に進める予定だった……のだが、

 

 

 

「織斑くん! お願いしますっ!!!」

 

「ああ! ずるいよっ!」

 

「じゃあ、桐ヶ谷くん! 私たちに教えて!」

 

「手取り足取りお願いしま〜す♪」

 

「デュノアくんの操縦技術が見たいなぁ〜‼︎」

 

「デュノアくん! よろしくお願いしますっ!!!」

 

 

 

専用機持ちは男子三人を含めても8人いるのだが、皆ここぞとばかりに一夏、和人、シャルルの三人のところに集まる。

その三人と言えば、一様に戸惑いを見せている。

更に、一夏は刀奈の、和人は明日奈のどキツイ攻撃的な視線と殺気が、自身の体を貫く。

 

 

 

「このバカ共がっ‼︎ 出席番号順に並べ! グラウンド100周させるぞっ!!!」

 

 

 

またまた千冬の一喝でクラスがばらける。

綺麗に無駄のない動きで。

やはり流石だ。織斑先生。

 

 

その後は、一様に専用機持ち達によるISの起動から歩行を行い、次の人にバトンタッチ……と言う具合に、授業を進めた。

その中で一夏と和人の班では、ISを立ったまま降りてしまった子がいた為に、一夏と和人がISを起動させて、お姫様抱っこして載せるという年頃の女の子としては最高に羨ましい光景があったが、当然二人は後ほど山田先生の胸を触った事も含め、明日奈と刀奈からの説教を受けたのだ…。

その後は午前の授業が終わり、昼食を取った。

まだ先ほどの出来事について許しを得てない一夏と和人は、刀奈と明日奈の二人に必死で謝って、やっとの事で許してもらった。

午後の授業は、一般教科の座学であった。

これも問題なくクリアし、放課後。

 

 

 

「じゃあ、私は生徒会の仕事があるから〜!」

 

「そっか、じゃあ俺はどうしようかなぁ……」

 

「だったら、簪ちゃんの手伝いをお願いしていい? 多分今日も整備室にいると思うから」

 

「ああ、そうだな……。オッケー、終わったら連絡するよ」

 

「うん♪」

 

「キリトくん、この後予定とかある?」

 

「ん? いや、特に何もないからALOにログインしようかとも思ってたんだが……」

 

「じゃあ、私のリハビリに付き合ってくれない? 後もう少しでリハビリ終わるんだ」

 

「あぁ、そっか。わかった、付き合うよ」

 

 

 

刀奈と一夏は生徒会室と整備室がある棟に移動し、明日奈と和人はリハビリをする為にトレーニングルームへと移動していった。

 

 

 

「そう言えばチナツ、あなたの次の同居人って確か…シャルルくんよね?」

 

「ん? あぁ、そうだけど? それがどうかしたのか?」

 

「……ちょっと気になることがあってね。気をつけなさい。あの子、何か隠しているわよ?」

 

「うーん……まぁ、確かに男にしては背は低いし、体も細いし……何より…」

 

「何より?」

 

「あいつ、一年の女子の大群に遭遇して逃げた時、普通に「なんで追いかけてくるんだろう?」って言ったんだ……。まぁ、最初は初めて見たことだから驚いたのかもしれないと思ったんだけど……どうにもな」

 

「確かに、それは少し怪しいところよね……。まぁ、その事については、こっちでも調べてるから、くれぐれも気をつけなさいよ?」

 

「あぁ、了解だ。っと、ここで分かれないと…」

 

「えぇ、そうね。じゃあまたね」

 

 

そう言って二人は別々の方向へと歩き出す。

一方、和人達は……。

 

 

「なぁアスナ、あのシャルルのことどう思う?」

 

「え? シャルルくんのこと? うーんそうだなぁ〜」

 

 

共にトレーニングルームに向かう中、和人がふとそんな事聞く。明日奈は首を捻って考え込む。

 

 

「まぁ、とてもいい子だと思うけど? あぁ、でも……」

 

「ん?」

 

「あの子、何かこうどこかぎこちないと言うか、男の子っぽくないなぁ〜と思ったりすることあるかなぁ?

この間、クラスのみんなと美味しいスイーツの話してたんだけどね、シャルルくん、やたらとそう言うのに詳しかったし、女の子の服なんかにも詳しかったかな?

後は……顔? 何だかキリトくん以上に女の子っぽいかな?」

 

「俺が女の子っぽいって言うこと前提なのな……」

 

「うわあぁ‼︎ ごめんごめん! そう言う事じゃなくて!」

 

「ん……まぁ何にせよ、シャルルはちょっと怪しいな…」

 

「うん……カタナちゃんも同じこと言ってたし……チナツくんが今度同じ部屋になるって言ってたよ?」

 

「まぁ、あいつの事だから心配は要らないと思うぜ? あいつ、そういうの鋭いからな…」

 

「うん、まぁそうだね……。さてと! 今日も頑張ろうっ! あと少しリハビリ課程終わりだし!」

 

「そうだな……俺も少しトレーニングしていこうかな?」

 

「うん! 一緒にやろうよ!」

 

 

 

二人一緒にトレーニングウェアに着替え、明日奈はリハビリ。和人も筋力アップのトレーニングを開始するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 




ちょっと切れが悪かったかな?

次話も出来るだけ早く更新しようと思いますので……


感想よろしくお願いします^o^

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