ソードアート・ストラトス   作:剣舞士

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えぇ、今回はバトルらしいバトルはあまりしないかな?

とりあえず、鈴ちゃんとの和解シーンです!


では、どうぞ!




第11話 決着

 

「鈴、左だッ!!」

 

「わかってるッ!」

 

 

 

侵入者との戦闘から数十分が経過したか……。

一夏が雪華楼で近接戦を挑み、鈴が龍砲で中距離からの援護を行っているのだが、相手の機体性能がいいのか、中々決定打を打つ事ができず、いまだに決着がつけられずにいた。

 

 

「チッ、速い……っ!」

 

「もう! 何やってんのよッ! さっきから掠ってばっかりじゃないっ! ……私にやったみたいに滅多斬りにしてやりなさいよっ‼」

 

「わかってるッ!」

 

 

 

攻め込む一夏と鈴。

だが、それでも敵のISは回避、防御、反撃といった形で攻撃を防ぐ。

そして、逆に今度は両肩に搭載されたビームマシンガンで圧力攻撃を仕掛け、両腕の巨大なビーム砲で二人を狙い撃ちにする。

 

 

 

「どうすんのよッ!? このままじゃ、こっちがやられちゃうわよっ‼」

 

「逃げたきゃ逃げていいぜ?」

 

「はあっ?! ふざけないでッ! これでも私は代表候補生よ!」

 

「そうかよ……。なら、お前の背中くらいは、守ってやるよ」

 

「〜〜〜〜っ‼」

 

 

 

何気ない一夏の一言。そして、その一夏の表情を見ていると、顔が熱くなってくる。

やはりまだ、鈴にとって一夏という人物は、絶対的な存在なのだ。

 

 

「その……ありがと…」

 

「あぶねぇッ! 躱せ、鈴っ‼」

 

「うわあっ!?」

 

 

一夏の一言でヘブン状態になっていたところを敵が襲撃。

キャノン砲で砲撃してきた。

寸前で一夏の言葉が入り、なんとか躱す鈴。

 

 

「集中しろ!」

「わかってるわよっ‼ ……一体、誰の所為だと思ってんのよ……!」

 

 

そんなこともいざ知らず、一夏は敵を追い詰めていくが、いまだ立ち込める黒煙の中に逃げ込み、追撃を逃れる。

 

 

「くっ……! 逃げられたわねっ」

 

「あぁ……」

 

 

 

黒煙に逃げ込んだ敵の出方を待つ二人は、一度距離をとって様子を見る。

 

 

 

 

「………なぁ、鈴」

 

「ん? 何よ」

 

「さっきから気になっていたんだけどさ……あいつの動きって、なんだか機械じみてないか?」

 

「はぁ? 何言ってんのよ、ISは機械じゃない」

 

「いや、そういうことじゃなくてだな……。

あの機体って、本当に人が乗ってるのか……?」

 

「は、はぁッ!?」

 

 

 

一夏の言葉に驚き、思わず声を上げる鈴。

それもそのはずだ。何故なら、一夏の言っている事は人が乗らないでも動くIS。つまりは……

 

 

 

「ま、まさか、あの機体が ‘無人機’ だって言いたいの?!」

 

「そのまさかだよ。さっきからあいつの動きには、不自然な事が多すぎるんだ……それに、俺もあいつの動きを先読み出来ない……」

 

「はぁ? 不自然な動き? 先読みが出来ない?」

 

「あぁ。まず第一に、あいつは俺たちがこうやって話しているときには、攻撃を仕掛けてこないだろ?」

 

「…………あぁ、確かに! 言われてみればそうね。

最初の時も、私たちから仕掛けに行ったし……」

 

「そして第二に、あいつは俺たちの攻撃を同じ要領で防いでいる。防御または回避。それからの反撃。

俺と鈴がどっちから仕掛けたとしても同じ反応だ。どちらか先に潰しに来るのではなく、仕掛けたからやり返すみたいな感じでだ……。しかもそれを何度もな…」

 

 

 

一夏の説明で更に疑念が湧いてきた敵の無人機疑惑。

 

 

 

「そう言えば、あんたさっき先読みがどうとか言ってたわよね? あれはどういう事よ……?」

 

「これは俺の直感なんだけどな…俺はSAO時代の戦い方で、相手の動きを先読みして、攻撃に移る戦い方をしていたんだ。

そして、それを可能にするのが、人間の ‘感情’ だ」

 

「感情?」

 

「あぁ、人間には感情がある。嬉しかったり、怒ったり、泣いたり、笑ったり、要するに喜怒哀楽ってやつさ。

怒ったりするれば、相手を挑発にのせやすいし、攻撃を誘導させて隙をつく事も出来るし、泣く事……哀の感情があるからこそ、とどめを刺すのを躊躇ったりするわけだ……」

 

「へ、へぇ〜〜」

 

 

いつの間にか、個人授業を受けている鈴。

SAOでの生活事情が疑われる一夏の説明に若干引き気味であった。

 

 

「だが、あいつからはその感情が一切感じられないんだ……。あそこまで感情が欠落している人間はそういないだろう」

 

「まぁ、ストレスなんかの耐久テストを受けた人間でも、少しくらいは感情があるものよね……。

つーか、あんた先読みが出来ないんじゃ意味ないじゃないっ‼」

 

「あぁ、そうだな……。あいつは俺の天敵みたいなもんだ」

 

 

 

清々しいほど素直に宣言する一夏に呆れる鈴。

だが、これこそ一夏なのだなと思ってしまう。

 

 

 

「さてと、もうそろそろ決めないとな……。エネルギーは……あと三百ってところか……鈴、エネルギーはあとどのくらいだ?」

 

「さっき撃ったので大分なくなったわね……。多く見積もってもあと一発分しかないわ」

 

「そうか……。わかった、次の攻撃で終わらせるぞ!」

 

「まぁ、別にいいけど、ちゃんと当たんでしょうね?」

 

「あぁ、問題ない。次は当てるさ!」

 

 

 

一夏は一度、雪華楼を収納し、右手にもう一本の刀を呼び出す。

それはもちろん、嘗て自分の姉が使い、世界最強の頂にまで導いた刀。

『雪片弐型』だ。

 

 

「さてと、クライマックスと行こうかっ‼」

 

 

 

 

 

 

 

〜管制室内部〜

 

 

 

「キリト、システムの解除まであとどれくらい?」

 

「正確な時間は言えないけど、残り数カ所をパージ出来れば、完全に解除出来る……っ‼ そう時間はかからないと思う……」

 

 

 

ただいま絶賛システムクラック中だ。

和人がユイと共にシステムに干渉し、三年の精鋭達と共にシステムクラックを行ってから、大体数十分くらい経っていた。

刀奈は生徒の避難路の確保と確認を行っており、明日奈はその誘導といった感じで対応をしていた。

二人とも元は騎士団の副団長。

こう言った全体を指揮するのには慣れているのか、どこか自然体で事態に対処しているかに思えてくる。

 

 

 

 

「はぁ……。これでは、私たち教師の立つ瀬がありませんね」

「なに、生徒たちが自主性を持つのは、いいことだと思うぞ? 取り敢えず落ち着け。コーヒーでも飲んで落ち着くとしよう」

 

 

 

一夏と鈴は警告を無視して戦闘に入り、周りの生徒たちも和人、明日奈、刀奈の指示で動いているため、特にやることが無く、ただ見ていることしか出来ないでいる真耶。

そんな真耶に、コーヒーを勧めてくる千冬。自身も飲む為にカップにコーヒーを入れる。

この緊急時にここまで落ち着いている千冬は、流石はブリュンヒルデだと思ってしまう。

 

 

 

コーヒーに砂糖ではなく、塩を入れていることを除けばだが……。

 

 

 

「あのぉ〜、織斑先生? それ、塩ですけどぉ〜?」

 

「む……。なんでここに塩があるんだ?」

 

「何で…と言われましても……あぁっ! 分かりました! なんだかんだ言って、織斑先生も一夏くんの事が心配なんですねぇ〜♪」

 

 

 

ガシッ‼︎

 

 

 

ちょっとした悪戯心でやってしまった千冬いじり。

本当にちょっとした気持ちだったのだが、今の現状、真耶の頭には千冬の手が置かれ、ギチギチというどうやって鳴っているのか分からないような音が聞こえる。

 

 

 

「痛いっ‼ イタタタタっ‼ お、織斑先生っ‼ 割れます! 割れちゃいますってっ‼」

 

「山田先生……私は身内ネタでからかわれるのはキライだ……。

あぁそれから、これをどーぞ。冷めない内に…。さぁ……」

 

 

 

そう言って差し出したのは、今まさに千冬が砂糖と塩を間違えて入れてしまったコーヒーだ。

 

 

「ほらっ‼ お前たちもさっさと作業を続けろ! 事は一刻を争うぞっ‼」

 

「「「は、はい…………」」」

 

 

 

真耶と千冬のコント劇を見ていた者たちに一喝。

なんとも理不尽な先生だ。

だが、千冬も千冬で、弟の事が心配で仕方ないのだろう…。

教師である前に彼女も姉弟だ。今のところ一夏たちは無事みたいだが、何が起こるか分からない。和人達も急いで救援活動に戻る。

っと、そうしていると……。

 

 

 

 

「先生! 私に出撃命令を! 専用機を持っているわたくしなら、戦闘でお役に立てますわ!」

 

 

ここまで千冬たち同様何も出来ないでいたセシリアが、出撃する事を提案してきた。

 

 

「無駄だ。システムクラックが終わらない以上、我々も出る事が出来ん……。それに、どっちにしろお前は出撃出来ないから安心しろ」

 

「な、なんですってっ!?」

 

「お前のブルー・ティアーズは一対多数の戦闘に向いている機体だ……。

だがそれは、お前が一で、相手が多数である場合だがな……。逆にお前が多数の側に入ると、むしろ邪魔になる」

 

「そ、そんなことありませんわっ‼ わたくしだって代表候補生ですのよ!? それくらいの立ち回りはーーー」

 

「では、連携訓練はしたか? その時のお前の役割は? 相手はどのくらいのレベルを想定している? 連続稼働時間はどれくらいーーー」

 

「わ、分かりましたわ……! もう結構です……うぅ…」

 

「ふん、分かればいい」

 

 

 

 

千冬の言葉攻めに為す術なく引き下がるセシリア。

だが、どれも真に的を射た言葉ばかりだ。セシリアは千冬の言ったどの訓練もやっていない。

多方向からのビット攻撃での味方の支援をどうやるかなんて、考えてもいなかった。

だからこそ、今のところ一夏たちの役に立ちそうな所は見当たらない。

そう思ってシュンとしているセシリアに対し、自分は何とか力になろうと動いた人物がいた。言わずとも分かると思うが、箒だった。

 

 

 

 

 

「箒ちゃん? どこに行く気なのかしら?」

 

「っ!? 楯無さん……」

「まさかとは思うけど、チナツ達の戦闘に介入しようだなんて、思って無いわよね?」

 

「そのまさかです! 私も訓練機を使えば、戦闘に参加出来ますっ‼ 打鉄ならばセシリアのブルー・ティアーズとは違って、完全な近接格闘型です! 援護は出来ても、邪魔にはなりませんっ‼」

 

 

 

確かに、箒の言い分にも理にかなっている所はある。

同じ近接格闘型の機体であるのならば、ブルー・ティアーズよりは一夏たちに合わせて連携は取れるだろう……。

だが、

 

 

 

「箒ちゃん、それ、本気で言っているのかしら?」

 

「えっ?」

 

「確かに、打鉄ならばセシリアちゃんとは違った連係は取れるでしょうね……。

でもね、これは ‘訓練’ じゃないのよ? もしかすると死ぬかもしれない ‘実戦’ なのよ……!」

 

「っ‼ そ、それはわかっていますっ‼ だからこそ救援にーーー!」

 

「行ったところでどうするの? 向こうの情報は未だ不鮮明、専用機二機がかりで応戦しても未だに苦戦している。

そんなところに、競技用にカスタマイズされた量産型の訓練機で、どうやり合うの?」

 

「そ、それは……」

 

「ましてや、箒ちゃんのIS稼働時間だって、他の一般生徒と変わらない……。

チナツ達とやった連携訓練もたったの数回……。それで勝てるほど、実戦は甘くないわよ……っ‼」

 

「……っ…………」

 

 

 

刀奈の言葉の一つ一つが、箒の胸に突き刺さる。

とても辛く、痛みで顔が苦悶に満ちる。

 

 

 

「それでも……それでもっ‼」

 

「……わかっているわ…………」

 

「っ!?」

 

 

それでも食い下がろうとした時、刀奈も自分と同じような顔をしていたのを見た。

 

 

 

 

「私だって、今すぐにでもそこの隔壁をぶち破って、助けに行きたいぐらいだもの……。箒ちゃんの気持ちが分からないでもないわ……。

でも、私はここの生徒会長でもあるの……っ! みんなの安全を守らなきゃいけないの……だから箒ちゃん、あなたを危険なところに行かせるわけにはいかないわ……っ‼」

 

「楯無さん……」

 

 

 

刀奈の立場から考えれば、箒もこの学園の生徒なのだ……当然守らなければならない存在だ。

そして、最愛の人、一夏もまたその生徒たちを守るために戦っているのだ……。ならば、生徒達の長たる自分が、役目を放棄する訳にはいかないのだ。

 

 

 

「だから、ここで大人しくしてもらうわよ……箒ちゃん…」

 

「………わかり、ました……」

 

 

 

自分の無力さに怒りを覚え、拳を強く握りしめる箒。

何も出来ないでいる自分が悔しくてたまらないのか、苦虫を噛んだ様な表情をする刀奈。

今二人に出来ることは、より早くシステムクラックを完了させる事と、一夏の無事を祈ることだ。

 

 

 

 

(チナツ……お願い、無事でいて……っ‼)

 

 

 

 

 

 

 

〜アリーナ内部〜

 

 

 

 

 

「それで? その刀でどうするのよ?」

 

「相手が無人機ならば、遠慮はいらない……全力で斬りに行くだけさ…」

 

「まぁ、あんたの武装はそれしか無いから仕方ないけど、その攻撃が当たらないんじゃない……」

 

「大丈夫だ、次は当てる」

 

「ほう、言い切ったわね。それで、その武器の威力は宛てにしていいの?」

 

「あぁ、これは千冬姉が使ってたやつの後継機だ……。そして、その能力も継承されてるみたいでな。

この攻撃で、今度こそ終わらせる……っ‼」

 

「了解、そんじゃあ私はバックアップに回るわ」

 

「あぁ、龍砲で牽制してくれ。そして、おそらくその反撃でお前に向かって攻撃が行くと思うが……」

 

「心配要らないわよ。あいつの攻撃くらい耐えてみせるから…」

 

「いや、そんな心配すらいらねぇよ。お前には絶対に当てさせない! その前に俺が片ずけてやるさ……!」

 

「〜〜〜〜っ‼」

 

 

 

 

確固たる決意に満ちた一夏の顔に、ドキドキする鈴。

 

 

 

 

「わかった……お願いね、一夏…」

 

「あぁ、行くぞ……鈴!」

 

「了解っ‼」

 

 

 

 

丁度黒煙から現れた敵は、二人の姿を捉える。

そして、一夏が動き、それに続いて鈴が動く。

鈴が龍砲の射程に移動し、一夏は敵機と同じ土俵。地上に降り立ち、雪片の切先を相手に向け、八相の構えをとる。

 

 

 

 

(一夏……信じるからね……っ‼)

 

 

 

決意を固め、残りのエネルギーの全てを龍砲に込める。

二つあるアンロック・ユニットが駆動し、最大出力の衝撃砲が、敵機を襲う。

 

 

 

「いっけええぇぇぇぇぇっ‼」

 

 

放たれた龍砲は、敵機に直撃はしなかったが、その着弾地点からの爆発によって発生した衝撃が敵機を襲う。

だが、それで終わるほど甘くはない。

衝撃に耐え切った敵機は、そのまま鈴に向かって加速していく。

 

 

 

 

「っ‼ 一夏ッ!!」

 

「頼むっ‼ 力を貸してくれ、白式ーー‼」

 

 

 

 

突如、一夏の全身が黄金に輝き、手に持つ雪片の刀身が割れ、レーザーブレードが出現する。

 

 

 

【単一仕様能力 零落白夜 発動】

 

 

白式から出された空中ディスプレーに表示された情報。

それは白式を白式たらしめる唯一無二の能力。

全てのシールドエネルギーを消滅させる最強の技。

だが、敵機はそんなことも気に留めず、真っ先にエネルギーを失った鈴に向けて、その巨大な右腕を振りかぶる。

 

 

 

「くっ!」

 

 

 

敵の攻撃が、目の前に迫る。

鈴は目をつむり、両腕を顔の前でクロスさせて身構える。

 

 

 

(鈴ッ!! させるかあぁぁぁぁっ!!!)

 

 

 

全ての意識を敵を斬ることに向ける。

 

 

 

ーーーー絶対に守るっ‼ 俺が、鈴を! みんなを! こんな奴に、やらせてたまるかっ!!!!!!ーーーー

 

 

 

まるで、一夏の思いに応えるかの如く、更に輝きが増していく白式。

 

 

「くっ‼︎ うおぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!」

 

 

 

極限までに加速した白式は、一気に敵に肉薄する。

そして、光輝くその刀身が、鈴に振るわれる敵の拳よりも速く横薙ぎに一閃。敵機の胴体を真っ二つに斬り裂いた。

 

 

 

「せいやあぁぁぁぁぁッ!!!!」

 

ズシャアァァァァァンッ!!!

 

 

 

鋼鉄を斬り裂く音。少しずつ削っていたエネルギーが一気に消滅し、胴体が切れた敵機の上半身は、宙に舞い上がり、下半身は慣性に従って鈴の隣を通り過ぎ、激しい轟音をたて、アリーナの防壁に激突する。

 

 

 

「ん、んん……」

 

「鈴…」

 

「っ…一、夏?」

 

「終わったぜ……」

 

 

 

迫り来る攻撃に目をつむっていた鈴。

次に目を開けた時は、優しい微笑む一夏の顔だった。

 

 

 

「えっ? 終わっ……たの?」

 

「あぁ、ギリギリだっがな……。大丈夫か?」

 

「う、うん……」

 

 

 

 

衝撃砲を撃ち終わった直後、迫り来る敵の攻撃に身を竦め、尻餅をついて倒れていた鈴。差し出された一夏の手を強く握りしめ、立ち上がる。

そして、やっとシステムクラックが終わったのか、緑色のリヴァイヴを纏った教師部隊が接近してきた。

 

 

 

「突入が遅れてごめんなさい! 二人ともケガはない?」

 

「俺は大丈夫です。鈴、どうだ?」

 

「私も大丈夫よ」

 

「そうですか……よかった。もうすぐ回収班も来ます。二人はこのままこの場で待機を」

 

「「了解しました」」

 

 

 

二人に簡単な安否確認をして、今度は一夏に破壊された敵機の回収をする為に他の教師達と共に集まる。

 

 

「ふぅー…なんとか終わったな…」

 

「そうね……」

 

 

 

二人はISを解除し、その場に降り立つ。

甲龍はエネルギー切れによってしばらくは動かせず、白式も最後の一撃にほぼ全てのエネルギーを注ぎ込んだ為か、エネルギーが完全に切れていた。

 

 

 

「にしても、最後のは危なかったわよ! もう少しで攻撃を受けるところだったんだから!」

 

「悪るかったな……。でも、ちゃんと約束は守ったぞ」

 

 

 

不敵な笑みを浮かべる一夏に、鈴は「ふんっ…」と少し拗ねたように反応する。

だが、その頬はどこか赤く染まっていた。

 

 

 

「まぁ、ありがとう。一夏がいなかったら、正直やばかったと思う……」

 

「いや、そんなことないと思うぞ? それに、お前がいたからこそ、俺もなんとかあいつを倒せたんだし……。

ありがとな、鈴!」

 

「っ‼ べ、別に、お礼なんか要らないわよっ!……その、助けてくれて……ありがとう……」

 

 

 

俯きならがらも、一夏にお礼を言う鈴。

それを一夏は、微笑みながら「あぁ、どう致しまして」と受け取った。

 

 

 

「チナツゥゥゥっ‼」

 

「チナツく〜んッ!」

 

「チナツ! 大丈夫かッ!?」

 

 

 

 

と、そこへ刀奈と明日奈、和人が駆けつけ、合流する。

 

 

 

「チナツ! 大丈夫?! ケガはない? どこか痛めたとかは?!」

 

「だ、大丈夫だってカタナ……」

 

「鈴ちゃんは大丈夫? 最後のはちょっと危なかったけど……」

 

「あ、はい! なんとか……」

 

「一応、念のために検査くらいはしておいた方が良さそうだな……。とりあえず二人は、織斑先生の所へ行ってこい。

チナツ、後でちゃんと謝っとけよ。織斑先生も相当心配してたみたいだからな…」

 

「「プッ! ふっふふふっ♪」」

 

「「ん??」」

 

 

和人の一言で、何故か吹き出す面々。

そして、それを見て首を傾げる一夏と鈴。

 

 

その後、一夏と鈴は和人の言う通りに、千冬の元へと向かい、一応命令無視の罰として、今日一日絶対安静にしている事。という命令を受け、メディカルチェックを受けた。

チェックでは異常は見られず、二人ともすぐに解放され、学生寮へと帰っていった。

命令無視の罰にしては軽いが、一番は生徒たちの安全を考えての行動だったという事、そして、二人で侵入者を見事撃破した事が軽くなった要因なのだろうか……。

はたまた、単なる千冬の心情からくるものなのか……。

 

 

と、真実を知るのは千冬だけなのだが……。一方、一夏たちは……。

 

 

 

 

「ねぇ、一夏」

 

「なんだ?」

 

「ちょっといい?」

 

 

 

クイッと親指を立て合図をする鈴。

どうやら「話がある」という意味らしい。

 

 

「わかった。なら、屋上に行こうぜ。そこなら誰もいないだろうし……」

 

「うん、じゃあ行きましょう」

 

 

 

 

鈴の後を追う感じで屋上へと足を運ぶ。

以前ここでは、鈴とケンカをし、殴られた記憶がある。

随分と心配させてしまい、挙げ句の果て今もVRMMOをやっていると告げ、ほぼ険悪なムードになった印象しかない。

 

 

 

「その、ごめんね……。ここで、あんたのこと殴っちゃったからさ……」

 

「いや、それは俺も悪かったって言うか、お前の気持ちも考えないで……。その悪かったな、鈴」

 

「ううん。もういいわ……。私がこれだけ言っても、あんたはどうせ聞かないしね」

 

「うぐっ、だから悪かったって……。でもまぁ、確かに、今更やめるつもりはないからな……。

何を言われようと、これからもあの世界と向き合っていくさ」

 

「はぁー……。やっぱりそう言うと思った。でも、なんだか羨ましくも思ったのよ……」

 

「え?」

 

 

 

そう言う鈴の顔は俯き、よくは見えなかったが、どこか儚げな感じがした。

 

 

 

 

「あんたが戦ってる姿がさ、なんか、かっこよくて、和人さんや明日奈さん……それに、楯無さんともあんな感じで……なんだか、あんたがまだ遠くにいるように思えてさ…。

でも、なんだかあんたが楽しそうで、笑ってるとさ、なんだか本当にやめたくないんだなぁ〜て思っちゃだからさ……」

 

「鈴……」

 

「ごめんね、湿っぽくなっちゃって……。それから言い過ぎし、やり過ぎた。あんたにとっては、大事な2年間を過ごしたのよね……。

それをあんな風に言っちゃって、ごめん!」

 

「………………」

 

 

ほとんど無意識だったのか、一夏は謝ってある鈴の頭に手を置き、頭を撫でる。

 

 

「ふぁっ!? な、なによっ‼ いきなり!」

 

「あ、あぁ! いや、ちょうどいいところに頭があったからさ……。

それと、そのことは気にしなくていいぞ? そりゃあ少しは驚いたし、怒ったりもしたけど、俺がお前にそんなこと言えた義理じゃないからな……」

 

「一夏……」

 

 

 

そう言って、手を退かし、今までよりもまっすぐに鈴を見る一夏。

 

 

 

「…ねぇ一夏、私が好きって言ったら、どう、する?」

 

「えっ?」

 

「だから! その、私が、あんたのこと好きだって言ったら、どうするのよ!!!」

 

「…………ええっと……」

 

 

 

いきなりの告白&鈴の勢いに押され、少したじろいでしまったが、一呼吸置いて、もう一度まっすぐ鈴を見る。

 

 

 

「ありがとう鈴、すっげぇ〜嬉しい…っ‼ でも、俺には、もう好きな人がいる」

 

「……んっ」

 

「その人を守ると誓った。そして、俺に関わる人全てを、俺は守りたいと誓ったんだ……。

だからさ、鈴……」

 

 

そう言って、もう一度鈴の頭に手を置く。

 

 

 

「これは俺の我儘だけどさ、俺はお前と今までみたいにずっと親友でいたい! そして、もしお前に何かあったら、そん時はいつでも助けに行ってやる!

この繋がりを、俺は断ちたくはない……ッ!」

 

「………」

 

 

 

そう、これは一夏の我儘だ。一番身近にいて、自分の容態を心配してくれてた女の子。そして、そんな自分のことが好きだと言ってくれた女の子をフッた挙げ句、親友でいたいと言った……。

当然、殴られることを覚悟した。鈴には、それくらいのことをする権利がある。そう思って目をつむり、殴られる覚悟をしていたのだが……。

 

 

 

「はぁ〜あ、フられちゃった……。そして親友でいたいと来たかぁ〜。どこまで我儘なのよあんたわ……」

 

「………っ…」

 

「でもまぁ、いいかな。そんな関係でも…」

 

「ッ!」

 

「別にもう会わないとかじゃないんでしょう? なら別に怒ったりなんかしないわよ……。

やっと会えたって言うのに、もう会わないなんて言ったら、それでこそぶん殴ってたわ」

 

「鈴……」

 

「あぁ! そうだ。ねぇ一夏、アミュスフィアの使い方、教えてくんない?」

 

「え?」

 

「何よ? 教えてくんないの? 私もやってみたいなぁ〜って思ってさ……ALO」

 

「ッ!」

 

 

 

鈴の発言に驚く一夏。

それもそのはずだ。VRMMOをあんなに毛嫌いしていた鈴が、自分から進んでやりたいと言ったのだから。

 

 

 

「あ、あぁ! いいぜ! 鈴も一緒にやろう! お前に紹介したい人とか、見せたいものとかがいっぱいあるんだ!」

 

「そうなんだ……。じゃあ、やってもいいわよ? で? どうやってするの?」

 

 

 

 

 

それから一夏によるALOの講義が始まった。キャラネームから始まり、種族、武器、装備の話があり、のちに魔法や各種スキルの事などを話していった。

そして、その様子をどこか安心した表情で見守る二つの影。

 

 

 

 

「まぁ、何はともあれ一件落着と言ったところか……」

 

「そうですね……。良かったわね、チナツ……」

 

「ふっ。そうしていると、本当の夫婦のようだな」

 

「 ‘夫婦のようだ’ じゃなくて、本当に夫婦だったんです! ……織斑先生は、いいんですか?」

 

「何がだ?」

 

「その、チナツが…一夏が、まだVRMMOをやっていること、とか。私が彼の恋人だ、とか……」

 

「あぁ、そんなことか……。別に、もう気にしていないさ。それに、さっき凰も言ったがあいつはもう、私の言うことなんて聞かんさ……」

 

「そうですか……」

 

「お前も、面倒な奴のことを好きになったな」

 

「はい。でも、なんだか憎めないし、嫌いになれないんですよ……。

何となくこう、そのまま心を触れられたみたいな、そんな感じがして……」

 

「ふん、妬けるな。まぁ、色恋沙汰もいいが、学園ではほどほどにしておけよ?」

 

「わかっています」

 

「まぁ、その、なんだ……これからもあのバカのことをよろしく頼む……」

 

「………ふふっ……はい♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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