兵藤物語   作:クロカタ

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お待たせいたしました。


たくさんの感想ありがとうございました。

感想は質問のみ返信致しました。
量が量なので全部は返しきれないと感じたので……返信できなくて申し訳ありませんでした。




聖剣と愚者 5

 リアスに小一時間説教をされ、若干落ち込んだ一誠。

 頬を叩き、気を取り直して旧校舎から出た彼は、先に外へ出てしまったイリナとゼノヴィアを探そうと周りを見渡すと―――

 

「イッセーくん!こっちだよ!」

 

 自分の名を呼ぶイリナの声が一誠の耳に入り込む。

 イリナの元気な声で2人の場所に気付いた一誠は、遠慮気味に手を挙げながら、駒王学園の校門付近を背に待っていた二人の場所に移動する。

 

 未だに一誠が戦いに参加する事には納得がいっていないイリナだが、それとは別に一誠と居るのは嫌ではないので喜色の表情で彼に手を振り返しながら笑みを浮かべた。

 

「えと、遅れてごめん」

「気にするな、こちらとしても君を協力させる形になってしまって申しわけないとは思っているんだ。後、イリナと同い年と言う事は私とそう変わらないだろう。そう畏まる必要はない」

「あ、ああ」

 

 よく分からないが、思ったより接しやすい人だなぁ、と思いつつ駒王学園から移動する三人。

 暗くなってきた道を無言で歩いていると、隣を歩いていたゼノヴィアが横目でこちらを覗いながら口を開く。

 

「リアス・グレモリーが言うには、君は上級悪魔に匹敵する力を持っていると聞いた。それが本当ならば、君は神器のような特異な力を持っていると判断していいのか?」

「教会のエクソシストだって、そうそう多くないよ?上級悪魔を相手取れる人間なんて……」

 

 当然の質問だろう。イリナやゼノヴィアのように聖剣という武器を持っているならまだしも、今の一誠にはそんな気配は感じない。ただ身体能力が高いだけじゃ種族の差は越える事は難しい。

 まだしも上級悪魔ともなれば、それだけで自力が違ってくるだろう。

 

 一誠は、隠す事もなく両手にオレンジロックシードとバックルを出現させ二人に見せる。別にこれといって隠すような事でもないし、この二人ならば信用できると判断したことからだ。

 

「これは……?」

「なんというか、子供の頃やってた戦隊ヒーローがつけるベルトね」

「俺もよく分からないんだけど、これで変身するんだ。イリナが言っていた戦隊ヒーローみたいにな」

 

 夢の中で見るヘルヘイムの森やあの男の事は話さない。リアスにも話していないこともあるが、一誠自身あの森の事をあまり理解していないからだ。

 

 ゼノヴィアは一誠の掌の上にあるロックシードを興味深げに見つめながら、首を傾げた。

 

「……興味深いな。神器なのか?」

「いや、部長曰く何か違うらしい」

「………イッセーくん、これを使った姿を見せてほしいの。やっぱりイッセーくんの能力は知っておいた方がいいと思うし」

 

 彼女の言葉に一誠は頷きながら、2人を先導し人目につかない場所に移動する。流石に夜遅くなった時間帯に変身したら変質者に間違われ警察の御用になってしまうだろう。

 

「分かった、じゃあついてきてくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 公園―――一誠にとって日常が非日常へ変わ起点とも言ってもいい場所。暗くなった時間帯ならば子供の姿もないだろうし、人通りの少ないので丁度いい。

 

「それじゃあ、見せてくれ」

「ああ」

 

【オレンジ!】

 

 バックルを腰に当て、ベルトが展開される。それだけでイリナが驚く様に小さく声を上げるが、一誠は構わずオレンジロックシードを開錠させバックルに押し込み、流れるような動作でカッティングブレードを切る。

 聞きなれた音声と共に頭上で生成されたアーマーが頭を包み込むように落下し、球体状の鎧が花開く様に一誠の身体を覆う。

 

【オレンジアームズ!花道オンステージ!!】

 

「しっ!これでいいか?」

 

 鎧を展開させた一誠は、大橙丸を肩に担ぎながら意気揚々とゼノヴィアとイリナの方を向くと―――

 

「………驚いたな」

「ほ、本当に変身した……」

 

 案の定、ポカンと口を開け驚いたように立ちすくんでいた。

 一誠は若干照れるように頭を搔きながら、変身したまま近くの遊具に座りやや放心している彼女らの返答を待つ。

 

「いや……まだ、君の実力が分からない。姿だけでは判断できないからな、少し手合せさせて貰っても構わないか?」

「………え?」

「ちょ、ちょっと、ゼノヴィア!?」

「心配するな。君の幼馴染は傷つけないよ」

「そんな戦意滾らせて何言ってるの!?イッセーくんも何か―――」

 

 イリナが一誠の方に助けを求めるように向き直ると、彼は肩に担いだ大橙丸を地面に突き刺し、両拳を前に構えていた。

 

「……いいぜ。俺が協力を願い出たんだ!まず信用される事から始めてやる!!来い!ゼノヴィア!!」

「……行くぞ!!兵藤一誠!!」

 

『どうしたらいいのも―――!!』というイリナの声を聴きながら、こちらに接近してくるゼノヴィアをバイザー越しに鋭くにらみつける。悪魔や堕天使を相手取ってきたとはいえ、相手が人間とは侮らない―――自分も人間だから………むしろそれ以上に警戒しなければならない。

 種族差で劣っているという事はそれ以外の要素で上回らなければならないという事だ。

 自分が【鎧武】という姿に変わっている事と同じように、ゼノヴィアも超常の生物を打倒できる術と力を持っている―――だからこそ、エクスカリバーと言う伝説の剣の欠片を任せられている。

 

 木場には劣るものの、素早い身のこなしで接近してきたゼノヴィアに一歩踏み出し、右拳を放つ。素人と分かる荒削りさがあるが、侮れないものがある。恐らく見た目以上の威力を内包しているだろうと、考えたゼノヴィアはそのままエクスカリバーで斜めに受け流す。

 

 ズンッと衝撃が両腕に伝わることから、感じた通りに尋常じゃない威力がある。予想外の強さに高揚したゼノヴィアは、実を低くし聖剣の柄を一誠の腹部目掛けて突き出す。

 

「ハァ!!」

 

 超至近距離でのゼノヴィアの柄での突きに対して一誠は、彼女のローブを掴み無理やり体制を崩すことで回避する。だが、すぐに掴んだローブが軽くなり、一瞬の内にゼノヴィアの姿が視界から消える。

 

「そこか!?」

 

 ローブで隠れた自分の身体が隠れた瞬間に一誠の視界の外―――彼の斜め後ろに移動した彼女は【破壊の聖剣】を振り上げ、攻撃の態勢に映っていた。

 

 聖なるオーラというのか、オレンジアームズで受けるには見るからに危険なオーラを察知し、咄嗟に腰の無双セイバーを引き抜き、バックルから外したロックシードを取りつけゼノヴィアから距離を取る様にバックステップを踏む。

 

【イチ!ジュウ!ヒャク!】

 

 ロックシードからエネルギーが無双セイバーの刃全体に行き渡り、エクスカリバーにも劣らないオーラを迸らせる。

 ―――これなら打ち合える。

 そう確信し、エクスカリバー目掛け刀を薙ごうとすると――――

 

 

 

 

『ストッォ――――――プ!!!!!』

 

 

 

「!?」

「!?」

 

 どこか顔を青くしたイリナの声が公園中に響き渡る。

 その声に驚いたのか、振るおうとした剣と刀を止めた二人は、ハッと自分たちが今何をしようとしているのか気付き手を降ろす。

 

「もう!ゼノヴィア!イッセーくん!やり過ぎだよ!!」

「す、すまない」

「ごめん、熱くなっちまった」

 

 ゼノヴィアはエクスカリバーを封印しながら、一誠は変身を解除し申し訳なさそうに謝る。

 

「しかし予想以上だ。長期戦になれば負けていたかもしれない」

「いや、エクスカリバーも相当ヤバイ感じがした……」

「私の聖剣は最も破壊力のある『破壊の聖剣』だ。むしろそれに追随するオーラを宿した剣を見せられるとは思わなかった」

 

 戦闘中、一誠の繰り出そうとした攻撃はゼノヴィアの肝を冷やした。奥の手を使えば威力では上回れるが―――恐らく一誠も奥の手を隠しているだろう。

 

「……それは私も同じか……」

 

 だがこれで証明された。実力的には十分以上、むしろ予想の範疇を大きく超えていた。同時に分からない点が多く見つかった。

 まず一つ、単純に一誠の力に対する疑問。

 二つ、光とも魔とも見分けがつかないエネルギー。

 

 神器ではないと言っていたことから、別の力と考えてもいいだろう。だが普通の人間が自然にそんな力を得るという事が有り得るのだろうか?後天的―――という可能性も捨てきれないが、それは一誠と話をしてみないと分からない。

 しかし、そのような不明瞭な点を除いても―――

 

「引き込めないものか……」

 

 放っておくには惜しい人材。

 ―――悪魔なら眷属に、教会なら有能な人間として、堕天使なら危険な人物として―――良くも悪くも注目される可能性を秘めている。

 

「リアス・グレモリーは君を眷属にはしなかったのか?」

「……いやぁ、俺は眷属悪魔になれない体質だったから無理だったんだ」

「眷属にできない……」

 

 イリナが若干安堵するように、胸を撫で下ろすが、ゼノヴィアにとってはまたよく分からない疑問が増えてしまった。

 腕を組み悩みだす彼女を見て、困ったように頭を搔いた一誠はふと頭に浮かんだ疑問を彼女に訊いてみる事に下。

 

「そういえば、これからどうするんだ?エクスカリバーを探すなら、虱潰しにこの町を探索するのか?」

「それしかないだろうな……先に潜らせた教会の関係者は何者かに殺されてしまったから、私達でなんとかするしかない」

「殺されたって……ッ!」

 

 もしかしたら関係ない他の人にまで被害が及ぶかもしれないじゃないか。父さんや母さん、松田や元浜、クラスの皆が危険な目に―――?

 

「……ッ」

「…………探索は明日から行う。君は学校があるだろう?終わり次第私達と合流しよう」

「……分かった」

 

 拳を握りしめ怒りに震える一誠に何かを察したのか、話を切り上げるゼノヴィア。

 

「あ、イッセーくん、リアス・グレモリーには必要以上の事は話さないようにね。探索の状況を報告するのは構わないけど、ゼノヴィアの聖剣とかを話すのはNGだよ」

「………やっぱり部長の事―――というか悪魔の事は信用できないのか?」

 

 敵対勢力に対して必要以上の戦力を知られたくない気持ちは分かるが、一誠の知る限りライザーのような乱暴な悪魔ではない事は明白だ。彼女達もリアスが他の悪魔とは違い温厚だと、聞いているからこそ交渉を願い出たと思うのだが―――。

 

「イッセーくん、信用するとかそう言う問題じゃないの。もう何百年も前から悪魔と私たちの間には大きな隔たりができているの」

「隔、たり?」

「悪魔は契約という方法で人間を惑わし、堕天使は危険な神器保持者を殺す―――私達教会が滅する。ただ契約を結ぶだけでは害はないだろう。だが、はぐれ悪魔は野に放たれた獣と同じだ。人間を食らい、力を蓄え悪逆の限りを尽くす。一誠、君は三大勢力という三竦みについてあまり理解していないのだろう……だから今、理解しろ。私達は切っ掛けがないかぎり歩み寄る事はない……絶対にな」

 

 イリナに代わり、ゼノヴィアが説明したその言葉に、一誠は形容できない気持ちになる。

 

「俺には分からない……そんな、殺し殺し合う関係なんか……首突っ込んじまったオレだけどさ、闘うだけってのは……何か嫌だな」

「………君とは、まだ短い間しか一緒にはいないが……なんとなく甘い男だとは分かった。戦士としては向いていないが神父には意外と向いているかもしれないな……」

「意外……何時ものゼノヴィアなら軟弱者!とかそんな心構えで―――ッ!とか言いそうなのに……」

 

 ゼノヴィアの口調を真似ながら、イリナが両手の人差し指を立てた手を頭に置きながらガオーッと鬼のようなポーズを取る。

 そんな彼女に若干、しかめっ面になった彼女は呆れた様にため息を吐きながらぺしりっとイリナの頭を小突く。

 

「いたっ!もう、なにするの!!」

「……私を何だと思っているんだお前は……私がそのような態度をとるのは、身の丈以上の虚言を放つ弱者だけだ。彼は私に力を示した。即ち強者だ―――それならイッセーの言う言葉は虚言ではない。それに―――」

 

 横目で一誠を見るゼノヴィア。

 鋭い視線で見られ、若干委縮してしまう一誠に彼女は若干の苦笑と共に、彼の肩に手を置く。

 

「これから一緒に戦うんだ。険悪な関係は、お前も望むものじゃないだろう?イリナ」

「……まあ、確かに!悪魔とは仲良くなれないけど、イッセー君とは仲良くやっていこう!」

「……変わらないなぁ。お前は」

 

 女の子っぽくなっても変わらず、あの時のままの天真爛漫で元気なイリナのままだ。それを約十年越しでまた見れて、嬉しくなる。

 

 だからこそ、死を覚悟するほどの戦いさせる訳にはいかない。

 

「友達、だからな」

 

 




ゼノヴィア式強者論(ボソッ)……いえ、なんでもないです。


感想蘭で一樹に対しての感想がすごいことになっていますが……。

私もそう思います(真顔)
私もあんな弟がいたらぶん殴ってます。修正してやります。

でも先を考えるなら一樹は……『可哀想な奴』、と思っていただければ幸いです。

次話もすぐさま更新致します。



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