でも影が薄く感じてしまうのは作者のせい?
―謁見の間
今現在謁見の間は緊張した空気に包まれていた……。
何故なら、現帝国最強と名高いエスデス将軍が帽子をとり片膝をつき頭を垂れていた。
「エスデス将軍。北の異民族征討、大義であった。褒美として金一万を用意した。」
「ありがとうございます。北に備えとして残してきた兵たちに送ります。喜びましょう。」
エスデス将軍の姿は膝まで届く鮮やかな空色の髪を持ち胸元の開いた軍服を着こなす美しい女性だ。
しかしその猛禽類のごとく鋭眼は常に獲物を狙う狩り人そのものであり、その身からあふれ出る覇気はそれこそ並の人間なら裸足で逃げ出すほどである。
そして北の異民族討伐……当初これはエスデス将軍を以てしても一年はかかるかと思われていたのだが……。
街を氷漬けにし、兵士を串刺しにし、民を生き埋めにし、最後には勇者ヌマ・セイカを文字通りエスデスの忠実な犬にして殺したのである。
この間約半年もかかっていないのであった。
「戻ってきてばかりで悪いのですが、仕事がありますぞ。」
「…………。」
大臣が玉座の裏から現れ、皇帝を差し置きエスデス将軍に話しかけ始める。
ヴィクター皇帝はそれをただ黙って見ているだけである。
「帝都周辺にナイトレイドをはじめ凶悪な輩がはびこっていておりましてなぁ。それらを将軍の武力で一掃してほしいのです。」
大臣は階段を降りながらエスデス将軍に言う。
それを聞かされたエスデスはしばし思案顔となるがすぐにドSな笑みを浮かべると……。
「わかりました。では一つ、お願いがあります。」
「何でしょうか?」
「賊には帝具使いが多いと聞きます。帝具には帝具が有効……六人の帝具使いを集めて下さい。」
その発言にその場が凍りつく、特に動揺が激しかったのが皇帝派の官僚である。
彼らからしたらとんでもなく恐ろしいことである、ただでさえ単体でも恐ろしいエスデスのもとにさらに六人の帝具使いを集めたらどうなるか、想像に容易いからである。
「……将軍には三獣士と呼ばれる帝具使いの部下がいたな?更に六人か?」
皇帝はすさまじく顔をしかめる。
流石にこれは皇帝でも受け入れがたい事である……いくら原作という知識があっても現状を考えるとその要求は受け入れがたい物があったからである。
その後エスデス将軍はそれらの物によって独立した治安維持部隊を設立すると宣言。
その場は騒然となる。
「ふむ……よろしいですかな?陛下?」
「…………エスデス将軍なら問題ないだろう。」
大臣は皇帝に問うと何と皇帝はこの要求を受け入れると言い始め、皇帝派は驚きを露わにする。
しかし、皇帝の傍で控えるウォルターやセバスチャンと言った執事たちに加えてブトー大将軍や武装親衛隊の少佐などはまったく動じない。
……少佐に至っては何故か嬉しそうであった……。
「まあ、但し人選はこちらですると言うのが条件だ……、それでいいな大臣?」
「はい、それでよろしいかと(ッチそう簡単に事を運ばせてはくれんませんか……。)」
もっともただされるがままでは無く、ある程度反攻する皇帝であったため大臣は内心悪態をつく。
「それはそうと、これからは将軍に世話になるからな……何か他に欲しい物などあるか?」
「欲しいもの、ですか……敢えていうなら」
誰もが思った新しい拷問具とか拷問用の捕虜とかだろうなと……しかしヴィクター皇帝は違った答えが来る事をしっていた……。
「恋をしたいと思っております。」
『『『『『『『『!?』』』』』』』』
「……(ポカーン」
その一言でその場は文字通り凍りつき、大臣に至ってはその手に持つ肉を取り落とし、ポカーンと口をあけエスデス将軍をみていた……。
誰しもが予想外だったのだ……あのドSが服着て歩いているとも言われる人が恋をしたいと言う事を言った事が。
「…………ぷっ」
しかしその場に吹き出すのを堪える声が聞こえる。
音のもとは……玉座に座る幼い皇帝だった。
「っぷ!っく!アハ!アハハハハハハハ!!」
そしてついに堪えきれなくなったのか盛大に笑い出した。
それを見て凍りつく一部を除いた臣下たち……。
エスデスは相変らず笑みを浮かべたままである。
「ははははは…………はあはあ……すまない、ついな……しかしなぁ」
ひとしきり笑った皇帝は息を整えるように何度か深呼吸をする。
「将軍も年頃なのだなぁ。」
「しかし将軍の部隊にはあなたを慕うものも大勢いるでしょう?」
「あれはペットです。」
さも当たり前のように言うエスデスに皇帝はふたたび笑いを堪えられず今度は少し控えめに笑う。
「はははは……しかし面白い、いいだろう誰か斡旋しようじゃないか!」
「ありがとうございます。それなのですがこちらに条件を書いた紙があります。その条件に合った者をお願いいたします。」
「いいだろう。セバスチャン絞り込んどいてくれ。」
そう幼い皇帝は楽しそうな笑みを浮かべ自身の執事に命令を下す。
命令された執事セバスチャンは畏まりましたというとエスデス将軍より条件を書いた紙を受け取ると一礼し元の場所に戻る。
その後、少し話を挟んだあとに……。
「さて、実は今回皆に見せたいものがある。」
そう皇帝が言うと再び場の空気が変わる。
「諸君も知っているかもしれないが、西方の異民族と無断で交易を行いその利益を革命軍に横流しを行っている中規模の都市がある事は周知の事だと思う。」
皇帝は立ち上がると全体を見渡す。
「今日はその都市に対して粛清を敢行しようと思う、もちろん余の武装親衛隊の手によってだ。」
皇帝のよく通る声変わりのしていない高い声がその場に木魂する。
「その際に諸君に見せたいものがあるのだ……もちろんこの場の全員に、だ。」
彼の眼下の臣下は黙ってそれを聞いている。
「船を用意した……しかも浮遊する船だ、まずは親衛隊の誘導でそれに乗り込んでもらいたい。」
すると謁見の間にある大きな扉が開かれ扉の前に立つ親衛隊が敬礼する。
そして護衛と思わしき武装した隊員も同じく敬礼してたっていた。
「それでは諸君、移動しようじゃないか……余は先に行っているぞ。」
そう言うと執事の二人とブトー大将軍、そして武装SS(親衛隊の事をこれからSSと表記します。)の少佐を伴い先に謁見の間を出ていく。
その後を大臣やエスデス将軍と三銃士、皇帝派と大臣派がぞろぞろと武装SSの誘導に従って出ていく。
そして案内された先にあったのは……巨大な“飛行船”であった。
それから数時間後……。
その飛行船は名をデウス・エクス・マキナといい果てしなく巨大な物で、一隻当たりの収容人数は千人とも言われているがその全容はまったくもって謎の多い代物である。
その飛行船の第一指揮所(ヘルシングで少佐が演説した所)に各官僚や大臣とエスデス将軍等がおり、モニターに写し出される外の光景に興味津々といった感じだった。
またヴィクター皇帝は天井からぶら下がっている可動式の指揮官席(少佐の座ってた椅子)に座り、紅茶を飲んでいたが何処となくそわそわとしていた。
そして近くに立つ少佐と談笑をしているのだった。
「少佐“あれら”の準備はどうだ?もう所定の位置にいるのか?」
「ええ、現在すでに展開完了しており後は我々が到着し陛下の命令を待つばかりです。」
「そうかそうか、楽しみだな~あれの実物をこの目で見られるのだからな!」
「一つ残念なのは兵員が足りず10門しか展開できなかったことですがね。」
「そう言うな、半月で10門分の兵員を用意して訓練できただけでもよしとせねば、そうだろ?」
「そうなのですが、やはり残念なのは残念なのですよ。」
といった感じに片や紅茶を片や砂糖ミルクたっぷりココアを片手に談笑していた。
そしてその数分後に……。
『後1分ほどで目的地に到着いたします。』
と艦内放送がながれ管制室内が少し騒がしくなる。
するとヴィクター皇帝が立ち上がる。
「諸君、大変待たせてすまない……今見えてきたあれらが余が今回諸君らに見せたかったものだ。」
そう言って皇帝がモニターの1点を指さすとその場所を官僚や大臣、エスデス将軍などが注目する。
そしてそこにあったのは……。
「あれが今回開発され実践投入された新型列車砲……名をグスタフ/ドーラ80㎝列車砲という。」
その言葉と共にその場をすさまじい衝撃が襲う。
モニターに映し出される巨大な砲……。
―4本のレールの上に鎮座し、台車の高さだけでビル3階建てには匹敵し、そして最大の特徴であるその巨大な主砲は撃つのを今か今かと待ちわびるように天に向いていた。
―皇帝の憑依前の世界に存在した、ドイツ第三帝国と言う国の作りだした世界最大の産廃砲がそこにあった。
その異様な兵器に官僚は戸惑い、大臣は驚愕し、エスデス将軍は興味津々といった感じで食い入るように見いる。
「それでは詳細は少佐からお願いする。」
「かしこまりました陛下。」
すると今度は少佐が前に出る。
「グスタフ/ドーラ80㎝列車砲は全長47.3 m全幅7.1 m全高1.6 m重量1,350トン、砲口径は800㎜、最大射程距離48㎞、名実ともに現在の砲の中で最大の物と言っていい砲です。」
少佐は嬉々として説明していく。
「今回は目標は一都市ですのでHE(榴弾)を使用し、全部で十門用意いたしました。」
「これで帝国に反攻する都市を砲撃する。」
ヴィクター皇帝も嬉々として話す、その姿は幼いながらも狂気を感じるものだったと後に何人かの生き残った官僚が証言している。
『1番砲から10番砲全門装弾完了!標準微調整よし!砲撃準備完了!』
そこへ砲撃準備完了のアナウンスが流れる。
「砲撃カウント、
『砲撃カウント!
「
カウントが終わり、皇帝の撃てを合図にモニターに映る10門の列車砲が轟音と共に一斉に発射された。
―そして一つの都市が文字通り“消し飛んだ”のだった。
と言う事で今回エスデス将軍だしました!
イェーガーズは作らせたいのです。(迫真
そして皆大好き変態列車砲!グスタフ/ドーラ砲!!
史実では1号車をグスタフ、2号車をドーラといった感じで命名されていましたが、この作品内では開発した工廠の名前であるグスタフ工廠とドーラ工廠からとって命名されたと言う設定にしました。
史実ではフランスのマジノ線を攻略する際に使用される計画で当初は3両、実際建造されたのは2両でした。
取扱いも非常に難しく、人員が最低でも5000人いるというもので巨大すぎる故に使いどころに困り、セヴァストボリ要塞で使用された以外は結局使用されずドイツ軍自ら破壊されてしまった砲です。
ちなみに公式案ではありませんが、ドイツ海軍の戦艦建造案にこのグスタフ/ドーラ砲の80mm砲を使用する計画があったそうです(あくまで非公式です。)
個人的には浪漫溢れる素晴らしい砲なので今回使用した次第です。
まあ何故かって理由はまた次回。
感想、ご意見お待ちしております。
それではまた次回お会いしましょう。