地獄先生と陰陽師少女   作:花札

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突然教室に入ってきた猿猴に驚く郷子達……


そんな中、ただ一人麗華は猿猴に向かって「青」と呼びながら、猿猴に話しかけた。


騒ぎを聞いたぬ~べ~は猿猴を倒すために鬼の手を出すが、鬼の手に驚いた猿猴は黒いオーラを出し、郷子達に襲いかかった。それを見た麗華は郷子達の前に立ち、猿猴の攻撃を防いだ。


すると猿猴は、攻撃を止め学校から出て行った。その後を麗華は焔と共に後を追った。


家と家族の秘密

教室に取り残された美樹達は、ぬ~べ~に連れられ宿直室へ行き、美樹が持っていた押し花を見た。

 

 

「これが、あの猿猴が言っていた花か……」

 

「まさか、昨日行った森が、あの猿の縄張りだったとは……」

 

「森?どこの森に行ったんだ?」

 

「童守町の外れに丘があるでしょ?そこの森でに……」

 

「あぁ、あの森か」

 

「そこで採ったのよ、この花」

 

「そうか」

 

「そう言えば、麗華がこの花の事、百日紅の花だって言ってたけど……」

 

「百日紅(サルスベリ)って、どんな花なの?名前は聞いたことあるけどさ」

 

「百日紅とは、名前の通り猿が登れないほど、樹の幹が滑りやすくなっているんだ。

 

だが、百日紅が咲かす花は、とても綺麗なうえ、長く咲く花としても有名なんだ」

 

「けど、美樹が持っている花は、地面に生えていた花だったけど……」

 

「多分、丘に建っている神社の神主が、猿猴にも見せてやろうと木から花を取り、地面に植えたのだろう。」

 

「神社?あの森に神社があるのか?」

 

「古い神社だ。名前は「山桜神社」

 

 

昔、この辺りは猿猴が住む地として有名だったんだ。

 

だがある日、この地を買い取った殿様が、猿猴が住んでいた森を切り倒しそこに町を作ったんだ。森を壊された猿猴達は怒り狂い、町で大暴れをした。それを聞いた殿様は、京都にいた陰陽師の血を引くといわれる一家を連れてきて、猿猴の怒りを鎮めさせた。

 

猿猴はもう町を襲わないが、その代わり猿猴が住む森に生えている植物や動物を捕らないという約束で残っていた森に手を付けず、それと森を壊した詫びにその森の至る所に、桜と藤、そして梅と椿と百日紅を植え、さらにその近くに神社を建て、その一家が代々その森を守っているという伝説があるんだ」

 

「へぇ。そんな伝説があったのか」

 

「とは言え、その神社の神主は今、用事で明日の夕方まで帰ってこないから、明日の放課後、その神社へ行くぞ」

 

「分かった」

 

「さっ、もう遅い。お前たちは俺が家まで送って行ってやる」

 

「うん」

 

 

宿直室から出て、ぬ~べ~達は学校を後にした。

 

 

 

 

翌日―――――

 

 

無事に学校に着いた美樹達は、昨日の出来事を三人で話し合っていた。

 

 

「全く、せっかくの金曜日なのに、ぬ~べ~と一緒に神社なんかに行かなきゃならないなんて……」

 

「美樹、そんなこと言わないの!」

 

「そうだよ。もとあといえば、お前がその花を押し花にしたのが原因なんだろ?」

 

「な、何よ!私のせいだっていうの!だったら、花を摘んだ郷子も同罪よ!」

 

「そ、それは……」

 

「お前等、さっさと席に着け!チャイムはとっくに鳴っているぞ!」

 

 

ぬ~べ~の声が聞こえたかと思えば、頭を叩かれた三人……

 

郷子達は頭を押さえながら、自分の席に座った。

 

 

「?あれ?ぬ~べ~、麗華は?」

 

 

授業を始めようとするぬ~べ~に、麗華の席が空席だということに築いた郷子は質問した。

 

 

「麗華か?

 

アイツ、今日は家の用事で休みだ」

 

「用事?何の?」

 

「さぁな。とにかく、授業を始めるぞ」

 

 

そう言うと、ぬ~べ~は授業を再開した。郷子は麗華のことを気に掛けながらも、授業に耳を向けた。

 

 

 

 

放課後―――――

 

 

授業が終わり、教室に残る美樹達……

 

 

しばらくすると、教室のドアが開き外からぬ~べ~が顔を出し、美樹達を呼びそのまま学校を出た。

 

 

学校から歩くこと三十分……

 

 

ぬ~べ~達が足を止めたそこは、上へと続く石の階段があり、周りは木々で囲まれていた。

 

 

「あれ?一昨日来たときは、こんな階段なんてなかったわよ?」

 

「おそらく、昨日これが無かったからだろ」

 

 

指を指す方に目を向けると、階段の近くに建っている石の灯篭に火がついており、灯篭の柱に何か文字の様なものが描かれていた。

 

 

「確かにこんなもの、一昨日は無かったけど……なんで?」

 

「これはこの森に立ち入らないように、結界を張り外から人が入って来れないようにしているんだ。。一昨日これが無かったということは、おそらく灯篭に火を点けるのを忘れていたのだろう……」

 

「おっちょこちょいな神主ねぇ」

 

「とりあえず、中に入るぞ。」

 

 

そう言うと、ぬ~べ~は階段を上りその後に続き美樹達も階段を上り始めた。

 

 

階段を上り終わると鳥居がありそこを潜ると、そこには社が建ちその裏側に大きな平屋の家が建っていた。

 

 

「すげぇ……」

 

「こんな立派な神社だったんだ」

 

「何をやっている、早く行くぞ」

 

「あっ!待ってよ、ぬ~べ~!」

 

 

先に行くぬ~べ~の後は、慌てて追い掛ける郷子達。

 

 

家の玄関についているインターホンをぬ~べ~は押し、中にいる人に向かって声を出した。

 

 

「すいませーん!ちょっとお願い事があってきました!」

 

「はーい。今行きまーす」

 

「?ねぇ、ぬ~べ~さっきの声、どこかで聞いたことない?」

 

「ん?言われてみれば、どこかで聞いたような……」

 

 

言いかけた時、玄関の引き戸が開かれ中にいた者が姿を現した。

 

 

「どうかしましたか?こんな遅く……」

 

「え?」

 

「嘘……」

 

 

中から出てきたのは、巫女の格好をした麗華だった。彼女は郷子達の姿を見た途端、引き戸を閉めた。

 

 

「コラァ!閉めるなぁ!」

 

「何で、アンタ達がここに!さっさと帰れ!!」

 

「昨日の猿猴騒ぎでだ。それより、お前こそ何でここにいるんだ?まさか、小学生が巫女のバイトでもしているわけではないよな?」

 

「アホなこと考えるな!!ここは私の家だ!」

 

「は?」

 

「アハハハハハ!!

 

麗華、嘘をつくならもっとマシなウソを突けよ」

 

「そうよ!第一、ここが麗華の家って証拠でもあんの?」

 

「細川には言ってないけど、立野達には言ったはずだ。

 

私は、陰陽師の血を引いている」

 

「陰陽師?」

 

「そう言えば、確かぬ~べ~が昨日話した話で、この神社は陰陽師一家が住んでいるって……」

 

「ま、まさか」

 

「用が無いなら、出て行ってもらいましょうか?」

 

 

怒る麗華は、玄関から木刀を取りだし構えた。

 

 

「そんな物騒なもの、取り出してどうするんだ?!」

 

「決まってるでしょ?どうしても出て行かないというなら、叩き打つまでよ」

 

「待て!俺達は、昨日の猿猴の件でここの神主に用があって来たんだ!」

 

「神主?まだ帰って来てないよ」

 

「え?」

 

「いつ頃帰って来るんだ?」

 

「六時過ぎには帰って来ると思うけど……」

 

「じゃあ悪いが、神主が帰って来るまで待たせてくれないか?」

 

「……入りな」

 

 

嫌な顔を浮かべながら、麗華は木刀を玄関に置き中へ入った。麗華の後に続き家の中へと入った。

 

 

「広っ!!」

 

「何?麗華って、超お金持ちなの?!」

 

「違う!!

 

 

代々受け継がれていた家だからだ。この家は明治時代に建て直された家なんだ」

 

「じゃあ、そんな昔からあるの?この神社」

 

「そうだよ。

 

 

そんなこと良いから、早く入りな。客間に案内するから」

 

 

そう言われ、ぬ~べ~達は靴を脱ぎ麗華に連れられ、客間に案内された。客間に入った彼等は、荷物を降ろし客間に敷かれていた座布団に腰を下ろした。

 

 

「広いわねぇ!他の部屋もこのくらい広いの?」

 

「だいたいね。今お茶持ってくるから、大人しくしてなさいよ?」

 

「あぁ麗華、私も手伝うわ」

 

「良いよ。一人でできるから」

 

 

郷子の親切を断り、客間の襖を閉め麗華はそのままどこかへ行った。客間に残されたぬ~べ~は、異様に漂う妖気に、警戒を張りながら辺りを見回した。そんな様子を見た郷子は、彼に声をかけた。

 

 

「ぬ~べ~、どうかしたの?」

 

「いや、この家が古いからだと思うが……

 

 

やけに、妖気が漂っている」

 

「まさか、どこかに妖怪が?!」

 

「分からん」

 

 

「何者……」

 

「え?」

 

「美樹、何か言った?」

 

「え?うんうん。何も」

 

「何者?何で、二人以外の人の子が?」

 

 

その声の方に顔を向けると、そこには青い髪に銀色の簪を付け、青い生地に白い菊の花の模様を写した羽織の来た女性が客間の襖を開け、郷子達を睨んだ。

 

 

「で、出たぁ!!」

 

「出たとはなんだ!出たとは!」

 

「お前か!この妖気の主は?!」

 

「黙れ!人の子が!!」

 

「コラッ!丙(ヒノエ)、止めろ!」

 

 

客間の襖を足で器用に開け、麗華は目の前にいる女性を注意した。注意された丙という女性は、彼女を見るなり急に大人しくなり、後ろへ回り抱きついた。

 

 

「麗、この人の子は何だい?今日は人が来る話なんて、童(ワラワ)は聞いてないぞ」

 

「急用で、人が来たんだ。お前は私の部屋で大人しくしていろ」

 

「部屋にいるより、童は麗と一緒にいたい」

 

「それでもいいから、とにかく大人しくしていろ」

 

「うむ!承知した」

 

 

麗華は手に持っていたおぼんを、客間の中央にあるテーブルに置き、湯呑みと菓子を置いた。

 

 

「麗華、その妖怪は何者なの?」

 

「気安く『麗華』と呼ぶでない!!」

 

「お前は黙ってろ!」

 

「う……」

 

「こいつは丙。私達がいない時、家の留守番をさせている式神だ」

 

「式神なのか?こいつ」

 

「そうだ。」

 

「じゃあ、麗華のもう一体の式神ってこと?」

 

「私の式神じゃない」

 

「じゃあ、誰の?」

 

「神主の式神だ」

 

「へぇ……」

 

 

「ただいまぁ!

 

あれ?麗華!誰か来てるのか?!」

 

 

突然玄関の引き戸が開く音が聞こえ、そこから少し声の高い男の声が廊下に響き渡ってきた。その声に対応するかのように、麗華は大きい声を出した。

 

 

「客だ!早く着替えて、客間に来い!」

 

「何キレてんだお前!客に嫌なことでもされたのか?!」

 

「違うわい!!」

 

「そう言うなって、客ってどんな奴なんだ?」

 

 

近づいてきた男は、空いていないもう一つの襖を開け、姿を現した。そこにいたのは黒く無造作な髪型をした少年だった。少年の肩には旅行用の鞄が掛けられ、手にはお土産の紙袋があった。

 

 

「何だ?客って、ガキと冴えないおっさんか?」

 

「誰が、おっさんだ!」

 

「おぉ、龍!帰りを待っていたぞ!」

 

 

丙は麗華から離れ、龍と名乗る少年の身体に抱きついた。

 

 

「ただいま丙、麗華。留守番ご苦労だったな」

 

「どうでもいいから、早く着替えてきて。話しはそれからだ」

 

 

そう言うと、麗華はおぼんを抱え客間を後にした。少年は息を吐き、踵を返し自分の部屋へと向かった。


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