地獄先生と陰陽師少女   作:花札

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学校を走る体育教師……


「どうなっているんだ?

逆さだ……逆さだ!」


教室へ入る教師……ところがその教室は、天井が床に床が天井に来ていた。すると、後ろからおぞましい影が現れ、教師は逃げようと窓の外へ出た。


「!!」


だが、窓の外まで逆さになっており、教師は真っ暗な空へと落ちて行った。


逆さの学校

「わざわざ、童守中に来ていただいてすみません。

 

霊能力教師、鵺野先生の噂は中学でも有名でして」

 

「そ、そうですか。あはは……」

 

 

童守中学の校長と一緒に、ぬ~べ~は後者を見回っていた。

 

 

「知っての通り二週間くらい前、うちの体育教師が行方不明になりまして……宿直の時の出来事で。

 

生徒達の間でも、噂になって大騒ぎですよ。

 

 

我が鋼の七不思議の一つ『逆さ学校』に出会って死んだと……」

 

「逆さ?」

 

 

天井を見上げながら、廊下を歩いていたぬ~べ~……その時、何かに足を取られバランスを崩し転び、仰向けの状態で倒れた。

 

 

「キャハハハ!!

 

何やってんのよ、0能力教師!」

 

 

転び目に映った人物……それは紫色の髪を腰下まで伸ばした葉月いずなだった。さらにいずなの後ろに、郷子と美紀の姿もあった。

 

 

「いずな!そうか…君はこの学校の生徒だったな。

 

しかし何で、郷子や美樹まで?」

 

「いずなお姉さまが、面白いことがあるからって、呼んでくれたの!」

 

「ねぇ今回の事件、私に回してくんない?

 

最近、退屈してたしさー。私だって立派な霊能力者だし!」

 

「駄目だ!危険だ!

 

君みたいな半人前の霊能力者が!」

 

「何よ!私は東北のイタコのサラブレッドよ!」

 

「ほーお、サラブレットね!だったら、真二君にでも勝ってくれ」

 

「真二って誰よ!」

 

「うるさい!!とにかく、まだ除霊は無理だ!!この未熟者イタコギャルが!!」

 

 

「あれ?馬鹿教師じゃねぇか?」

 

 

その声に、ぬ~べ~は手を止め後ろを振り返った。そこには制服を着た真二と二人の喧嘩を見て呆れ顔をしている麗華がいた。

 

 

「真二!それに、麗華!」

 

「よっ!」

 

「何で真二さんがここに?」

 

「俺ここの卒業生でさ。後輩からこの学校で起きた事件の事聞いて来たんだ」

 

「麗華は何で?」

 

「龍二は今日、学校の用事で帰りが遅くなるって。緋音は部活と委員会で龍二と同じく帰りが遅いみたいだし……

 

だから、今日は俺のお供って訳!」

 

 

笑いながら、真二は麗華の肩に腕を回した。麗華はため息を吐きながら呆れていた。

 

 

「つー訳で校長。今回の事件、俺に任せてくれ!このイタコの血を引いたこの滝沢真二さんが、見事に解決してやる!」

 

「イタコの血?」

 

「真二さんは、いずなさんと同じくイタコの血を引いてるの!」

 

「けど、男っていう理由でこっちに来たんだって!」

 

「違うわい!親の都合でこっち来たんだ!

 

つーか、何年前の話をしてんだ!!」

 

「へ~、アンタが真二って人ね」

 

「?誰だ、このくそ女は」

 

「葉月いずな……霊力ないくせに、威張ってる女子中学生。修行ほったからして、こっちに上京したみたいだけど……過去の闘い観てる限り、まったく無能」

 

「ちょっと何よ!この女!

 

言ってくれるじゃない!何の霊力もないくせにさ!」

 

「……真二兄さん、筒貸して」

 

「おぉ」

 

 

ポケットから筒を取り、それを麗華に渡した。麗華は筒を受け取ると、それをいずなに向けた。

 

 

「出でよ!管狐!」

 

 

筒から出てきたのは、白い管狐だった。管狐は声を上げ、いずなを睨んだ。

 

 

「アンタには、こういう管狐出せる?

 

無理でしょ?見てる限りじゃ、まともな管狐出してないもんね」

 

「偉そうな口訊いてるんじゃないわよ!!

 

管!!」

 

 

麗華に向けていずなは管を出し。攻撃しようとした。その瞬間、真二がもう一つの筒から管を取り砂が出した管を攻撃した。いずなの管は、あっさり負け筒へと戻った。

 

 

「親友の妹、攻撃されちゃ困るんだよねぇ」

 

「う、嘘?!

 

わ、私の管が!!」

 

「才能のねぇイタコ。俺の姉貴の方が、よっぽど能力はある」

 

「な、何よ!!」

 

「お前、実家に帰れ。そんでやり直してこい」

 

「はぁ?!」

 

「霊力無さ過ぎなんだよ!そんなんでよくもまぁ、そこにいる馬鹿教師や大事な妹に威張れるよなぁ」

 

「何よ!!年上だからって、偉そうに説教しないで!!」

 

「偉そうにしてるのはどっちだ?

 

俺はな、お前みたいな半人前で偉そうな事を言ってる野郎が一番嫌いなんだ。

 

 

そうだ……勝負しようぜ?」

 

「勝負?」

 

「今回のこの事件……どっちが先に犯人を捕まえられるか、勝負しよう。負けたらお前は速攻で実家に帰って出直してこい」

 

「良いわよ!!引き受けてあげる!!

 

けど、アンタが負けたら私に偉そうに説教しないで!!」

 

「あぁ、いいぜ!

 

説教は、全部そこにいる教師にして貰うから、そのつもりで……

 

 

つーわけで校長、今回の事件俺等に任せてくれよ」

 

「し、しかし……」

 

「いいよな?校長」

 

「は、はいぃ……」

 

 

怯えたように、校長は許可を出した。啀み合う二人を見ながら、ぬ~べ~達は麗華に寄った。

 

 

「何か……とんでもない事になったぞ?」

 

「いずなお姉様と真二さんが、対決するなんて……どっちが勝つか見物だわ」

 

「ああなると、兄さん手が着けられないからねぇ……

 

鵺野、審査頼む」

 

「待て待て。俺は明日おじの法事で九州に行くから……」

 

「何だ、いねぇのか……そんじゃ、麗華。お前審査員な!」

 

「結局私も巻き込まれるのね……」

 

「お前は俺のお供ってことで!」

 

「兄貴に怒られても知らないよ」

 

「大丈夫大丈夫!俺がついてるし、焔のいるし!な!」

 

「いや、俺がいるからって……」

 

「コラコラ!勝手に事を決めるな!

 

俺が帰ってくるまで、余計な事をするんじゃないぞ!特にいずな!」

 

「分かりました」

「分かってるわよ!」

 

 

その日の夜……

 

校舎の中へ、侵入するいずな達……

 

 

「ほ、本当に大丈夫?」

 

「当ったり前でしょ!

 

この男に勝負掛けられた以上、負けられないもの!!」

 

「精々、負けねぇ様にな」

 

「いちいちムカつく言い方ね!!」

 

「そんじゃ、俺と麗華はこっちに行くからお前等はお前等で頑張りな!」

 

「えぇ!!麗華、真二さんと一緒なの!?」

 

「半人前の奴と一緒に行動なんかできない。危険すぎる」

 

「アンタね!!夕方もそうだけど、いちいち偉そうな口訊くんじゃないわよ!!郷子ちゃん達と同じ小五のくせして!!」

 

「そっちこそ、半人前が偉そうなこと言わないで!

 

私は陰陽師の血を引いている、山桜神社の桜巫女だ!アンタみたいに修行ほったからして、この戦場にいるんじゃない!!こっちは命懸けの修業を終えて、ここに立ってるんだ!!一緒にするな!!」

 

「お、陰陽師?!それって確か、阿部清明の」

 

「そうよ。

 

ま、分家だけどね。怖気着いた?」

 

「つ、ついてなんかないわよ!!郷子ちゃん、美樹ちゃん!行くわよ!」

 

「あぁ!いずなさん!」

 

 

先行くいずなの後を、郷子と美紀は追いかけて行った。彼女達の後姿を見届けると真二と麗華はため息を吐いた。

 

 

「全く……強情っ張り奴だな」

 

「ああいう奴が、早死にするんでしょ?」

 

「そう言うなって……どうする?あっち行くか?」

 

「何だ、気付いてたんだ」

 

「当り前だ……後ろから、こっそりついてくか」

 

「あんまり乗らないけど……了解」

 

 

静まり返った廊下を歩くいずなと郷子、そして美樹……

 

 

「夜の学校ってのは、気味悪いわねぇ」

 

「い、いいかい……しょん便ちびるんじゃないわよ。

 

怖がったら、妖怪の思うつぼ……」

 

 

郷子達に助言していたが、二人は慣れた様な顔でスタスタと廊下を歩いていた。二人とは真逆に、いずなの脚はガタついていた。

 

 

「わ、私より先に行くんじゃないわよ!!」

 

「?」

 

「怖がっているんなら、後ろで震えてていいよ!」

 

 

廊下を歩く三人……その時、天井から長い舌が伸び、舌は三人の頭を舐めた。三人は悲鳴を上げ、その場に座り込んだ。

 

 

「な、何なの今の?!」

 

「嫌だぁ!!お化け屋敷のコンニャクみたい!」

 

「え?!」

 

「どうしたの?郷……嘘!?」

 

 

今まで正常だったはずの廊下が、いつの間にか天井へと逆さまになっていた。

 

 

「さ、逆さ……」

 

「逆さになってる!!」

 

「見て、逆さにぶら下がってるよ、蛍光灯……」

 

「私等だけ、重力が逆になってるのよ……

 

妖怪の術にかかったのよ。

 

 

いるわ、何か……そこね。

 

出ておいで!!」

 

 

いずなの声に答えるかのように、妖怪が姿を現した。下を長く伸ばし、蛇の体で這っていた。

 

 

「て、天井舐め……

 

大きな屋敷や城などに住む、昔からの妖怪よ……天井裏に人を引き込んで、殺す事もある凶暴な奴……

 

現代の学校で、七不思議になっていたとは……」

 

「い、いずなさん!助けてぇ!」

 

「任せといて!

 

阿耨多羅三藐三菩提!出でよ!管狐!」

 

 

いずなの筒から出てきた管狐達は、一斉に天井舐めに攻撃したが、管狐達はあっさり負けてしまった。

 

 

「駄目よ!全然、歯が立たない!」

 

「くそぉ……それなら……

 

霊能力自然発火!!」

 

 

天井舐めに向けて、いずなは火を放った。火は忽ち天井舐めを包んだが、天井舐めは自身の舌で火を消した。

 

 

「な、舐めて消しちゃった!」

 

「うっそぉ……私の必殺技なのにぃ……」

 

 

天井舐めは、火を消すといずな達に向かってきた。

 

 

「い、いずなさん、逃げよう!」

 

「け、けど……」

 

 

その時、天井舐めは鳴き声を上げいずな達に襲ってきた。

 

 

「キャァァアア!!」

 

 

「水術渦潮の舞!!」

 

 

天井舐め目掛けて、突如水の攻撃が放たれ、天井舐めガラスを割り激突した。放たれた方を見ると、そこには麗華達がいた。

 

 

「れ、麗華!それに真二さん!」

 

「やっぱし、こっちだったか……

 

お前、本当に使えないイタコだな?」

 

「っ……」

 

「さっきの管狐、酷過ぎだぞ?全然霊力ねぇじゃん。おまけにさっきの火、あれは何だ?火遊びでもしたかったのか?」

 

「う、うるさい!!説教すんな!!」

 

「テメェはここで大人しく見てろ!!

 

麗華、水の技を俺の管狐に」

 

「了解」

 

「いでよ!管狐!」

 

 

筒から出てきた数匹の黒い管狐……麗華は氷鸞に指示をし、氷鸞は彼女の言う通りに、管目掛けて水を放った。水を覆った管は、鳴き声を上げながら天井舐めに攻撃した。

 

 

「す、すごぉ」

 

「まだまだ!」

 

 

真二の声に反応してか、水を覆った管は天井舐めにもう一発攻撃を食らわせ、窓へと突き飛ばした。窓の外は学校の中と同様に、逆さになっており天井舐めは空へと落ちて行った。

 

 

天井舐めを倒すと、真二は管を筒へと戻し麗華は氷鸞を手元へと戻した。天井舐めを倒したおかげか、校舎は元通りになっていた。

 

 

「これで勝負は決まったな?」

 

「ゥ……」

 

「し、真二さん……」

 

「まさか……」

 

「……しばらくは、あの教師のいう事をしっかり聞くんだな。

 

でなきゃ、本当に実家に帰って修行して来い」

 

「え?」

 

「じゃあ」

 

「今回は引き分けだ。

 

言っとくけど、俺はまだテメェを認めちゃいねぇから、そのつもりで。帰るぞ、麗華」

 

 

筒をポケットにしまいながら、真二は先に歩き出した。肩に乗っていたシガンを撫でながら、麗華は小さくため息を吐くと、先行く彼の後を追いかけて行った。

 

 

ポカーンと口を開けていたいずなに、郷子と美紀は彼女に抱き着いた。

 

 

「やったね!いずなさん!」

 

「実家に帰らずに済んだのよ!」

 

「ハ…ハハハ……

 

と、当然よ!」

 

 

立ち上がりいずなは高笑いをした。笑いながら、二人の背中を見た。

 

 

(今回は、私の負けね。悔しいけど、二人の力は認めるわ。

 

真二さんと麗華ちゃんか……二人とも、強いなぁ。私ももっと強くならなくちゃ!今度は真二さんに認められる位)




その夜……


「お前、一体こんな夜遅くに麗華と一緒に、どこ行ってたんだ?」


居間で正座する真二を前に、龍二は怒りの形相で彼を睨んでいた。


「だ、だから…その……中学に行ってて」

「こんな夜遅くに、何で中学行く必要があんだ?」

「いやぁ……後輩から中学で起きてる事件聞いて、それで…解決しようかなぁって」

「何で、麗華が一緒に行くんだ?

俺は今日、生徒会の仕事があるから、帰ってくるまで麗華の面倒を頼んだのに……何で、二人して俺より帰りが遅いんだ?」

「いや……だから、中学」
「言い訳すんじゃねぇ!!」

「す、すいませーん!!」


龍二怒られる真二……彼の姿を見ながら麗華はため息を吐いた。傍にいた緋音はヤレヤレと云わんばかりに手を上げて事を済ました。

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