地獄先生と陰陽師少女 作:花札
今回はそのお話。
賑わう童守小学校……
そこへやってきた三人組の不良高校生……
「おい、見て観ろよ!」
「面白そうなことしてますね?」
「け!小学生のくせしてよ!」
「兄貴、寄って行きましょうぜ」
「そうだな……俺達も楽しませてもらうとするか」
学校へ入ると、三人組は早速外に置かれている机や屋台を壊し始めた。担当していた生徒達は皆、止めるよう注意はするが、何の抵抗もすることができずにいた。
中へ入っても、その行為は変わらず、展示物を壊しながら歩いていた。その様子を、焔は遠くから見ていた。
(何ちゅう野郎どもだ……作ったものを壊しやがって)
「もっと面白い出し物は無いのか……?」
ふと目に入ってきたぬ~べ~クラスの出し物……
「見ろよ、お化け屋敷だ」
「お!いいっすねぇ」
「夏にピッタリじゃないですか!」
「少し、楽しませてもらおうぜ」
「入場料、五十円だってよ?高いんじゃないの?」
「おい!本当に怖いんだろうな?」
「ほ、本当なのだ!怖いと……思うのだ」
「怖くなかったら、暴れちゃうぞ?」
不敵に笑いながら、三人は中へと入った。すると、通りかかった井戸から顔を出した郷子が恨めしや~と言いながら現れた。だが、男の内の一人が顔を飛ばすと、彼女は驚き井戸の中へと倒れた。
「け!俺に顔を飛ばす何ざ、百年早いんだよ!」
続いて秀一が、ドラキュラの格好で現れたが、三人は驚きもせず彼を持ち上げそのまま引きずり下ろした。
「何だよ?ちっとも怖くねぇじゃねぇか!」
「た、助けてぇ!」
次々に道具を壊していく三人……物陰で隠れていた広は、彼らの行為を許せなくなり、思わず声を上げた。
「コラ!辞めろ!!」
「何?辞めろだと?」
「あぁ!辞めてくれって言ったんだよ!
こ、これでも、一生懸命作ったんだぞ!!」
「うるせぇ!!」
「壊すことないだろ!」
「そうだよ!酷いよ!」
「何だと、テメェら!」
「酷過ぎるわよ!」
「目茶目茶じゃない!」
「うるせぇ!!こっちは五十円払ってんだよ」
「客何だよ!客!」
「嘘なのだ!!この人達、まだ払ってないのだ!!」
「な!?」
「毎日遅くまで残って、作ったのにぃ!!」
「それがどうし……!?」
殴ろうと拳を上げたが、その手を横から出てきた黒装束に身を纏った麗華が止めた。
「大人気ないよ?あんた等」
「あ?」
拳を放すと、男はすぐに麗華の方へと振り向き睨んだ。すると何も言わずに、麗華の頬を殴った。
「麗華!」
「ガキのくせに、嫌な目付きしやがって。強がってんじゃねぇよ!」
「お前等、何すんだ!?」
「こんなちゃっちいお化け屋敷で、金なんかとるんじゃねぇ!」
男は文句を言いながら、広を殴った。
「悔しかったら、本物みたいなものを出せ。そんで、マジでビビらせてみろよ」
高笑いをしながら、三人は外へと出て行った。しばらくして、騒ぎに気付いたぬ~べ~と玉藻が慌てて駆け付け、教室の状態を見た。
「酷い奴らだ……」
「ぬ~べ~」
「無茶苦茶なのだ」
「クッソぉ!麗に怪我負わせやがって、あの野郎共……」
「頼むから、変な気は起こすな」
「けど!」
「焔!」
「……ち!」
「すまねぇ……高校生には、勝てなかった」
悔し泣きをする広……広に連れられ、まことと克也も泣き出した。
「勝てる勝てないの問題じゃない……あっちは客で、こっちは商売人……どの道したって無駄だ」
「……」
(愚かな……人間のくせに妖怪を馬鹿にして!!
タダでは済まん!!)
「玉藻!」
「?」
「断っておくが、これは俺と生徒の問題だ。お前には手出しさせないぞ」
「鵺野先生……
いいでしょ……あなたのお手並み、じっくり拝見させていただきましょう」
玉藻の話を聞き流しながら、ぬ~べ~は広の元へと行った。
「広、その三人はもっと本物みたいなお化けを出せと言ってきたんだな?」
「うん」
「そして、マジでビビらせてみろ……そう言ったんだな?」
「あぁ」
「だったら、ご期待に応えてやろうじゃないか。麗華!」
「承知。焔!
それから、氷鸞!」
「待ってましたぜ!」
投げられた紙から煙を放ち中から姿を現す、氷鸞。
霊水昌を取り出すぬ~べ~……
「さぁ……これからぬ~べ~クラスのお化け屋敷だ」
その頃、小学校へと来た龍二と男女二人……
「ウッヒョ―!懐かしい!」
「卒業して、もう五年も経つのかぁ」
「何も変わってねぇな?ここは」
「みてぇだな。早く中に入って、麗華のクラスの出し物見ようぜ」
「おうよ!」
「あ~……麗華ちゃんに早く会いた~い!」
カメラを首から下げた女が、カメラを弄りながらそう言った。そんな彼女を隣にいた男が、引き攣った顔で見た。
「頼むから、変な行為はするなよ?」
「分かってるわよ」
「オラ、行くぞ!」
同じ頃……暇を潰す不良三人組。入ったメイドカフェ風の教室に入り、注文したジュースの入ったコップを、床へと落し生徒を脅した。
「ジュースなんていらねぇよ!」
「ビールだ!ビール!」
「俺達はお客だろ?」
「でも……」
「ビール持って来いって言ってんだよ!!」
「あなた達なんですか!!」
そこへ律子先生が現れ、三人を怒鳴った。
「皆迷惑してるのが、分からないの?とっとと出て行きなさい!!」
「おぉ!怒ると、また色っぽいねぇ」
「俺達と一緒に楽しくやろうぜ」
「出てって!!嫌ぁあ!!」
「お客さん」
律子先生とじゃれていた男の肩を、広はソファーの後ろから叩き呼んだ。後ろを振り返ると、広の他にい克也と秀一が立っていた
「何だよ……変な声、出しやがって」
「さっきの奴らか」
「何だ?用があるのか?」
「お化け屋敷が、新装開店いたしまして」
「今度はなかなか、本物みたいですよ?」
「決して、あなた達の期待を裏切らない事を、お約束します」
広達に連れられ、文句を言いながらも教室の中へと入った三人組……中は先程と変わらない様子だった。
「怖くなかったらどうすんだよ?」
「覚悟はできてんだろうな?」
「覚悟するのは、あなた達ですよ!さ、どうぞ」
しばらく奥へ進むと、途轍もない冷気が漂ってきた。
「寒くないか?」
「何か、気味悪いぜ」
それもそのはず……美樹の隣で、氷鸞が錫杖を回しながら、冷気を送っていた。その時、どこからか不気味な音が聞こえ、男の一人がその方向に目を向けると、そこに社が建っていた。
「あんなの、さっきは無かったはず」
『許さん』
「へ?」
『罪人は、打ち首じゃあ!!』
社の扉が開き、中から円陣になった刀に乗る妖怪…はたもん場。
「な、何だありゃ?!」
『けっけっけっけ!心臓を食わせろ!』
長い舌を回し、不敵な笑い声を出す…ヤモリ。
「ど、どうなってんだよ!これは!」
「もう後悔しても遅いよ!ぬ~べ~と麗華は、本物を呼び出しちゃったんだから。失神するまで、出られないよ!」
そう言うと、広は教室の扉を閉め鍵を掛けた。
「おいコラ!待てよ!」
「開けろよ!!」
「ウフフフ!
ぬ~べ~クラスを舐めちゃいけないわよ!生きてここから出られないかもねぇ」
笑みを溢す美樹……だが、その首が異様な長さへと伸びた。
「ろ、ろくろ首だ!!」
逃げ惑う三人……その時、何かを引きずる音が聞こえてきた。
「な、何だ?今度は」
「……いやあ。君は人だね。
丁度良かった……今、霊気を切らしていてねぇ。補充したかったところなんだ!」
黒いマントを羽織った鎌鬼は、持っていた麗華の死体(役)を捨て、鎌を振り下ろした。
次々に現れる、本物の妖怪達に悲鳴を上げながら、三人は逃げ回った。
「何だ?不甲斐無い」
三人を追い回していた妖怪は、一斉に消えそれと共ぬ~べ~が姿を現わした。床に横になっていた麗華は、起き上がり三人の元へと近付いた。
「もうダウンか?」
「本物を出して、ビビらせてほしかったんじゃなかったの?」
「ぎゃぁああ!!ゆ、ゆゆ、幽霊!」
「生きとるわ!!」
「お前達が見たのは、本物じゃない。この水晶石が憶えていた記憶だ。こいつは霊力が強いので、その記憶を鮮明に出すことができた。ビデオテープの様にな」
「こ、ここ、こんなのインチキだ!!」
「まだ疑う気?
しょん便垂らしてる、高校生の先輩に言われたくないんだけど」
「この!ガキ!!」
立ち上がり、ふらつく足で男は麗華を思いっきり殴り飛ばした。麗華は壁に激突し、口から血を流しながら立ち上がり三人を睨んだ。
「麗華!」
「黙ってみてりゃあ、いい気になりやがって……」
「……次殴ったら、後ないよ?」
「へ!そんな脅し、通用するか!!」
殴ろうと、腕を上げた時背後から、何者かに受け止められた。
「誰だ!!俺の邪魔を…する…奴は」
腕を掴む龍二の姿に、男の声が段々と弱々しくなった。龍二は笑みを浮かべていたが、雰囲気からして明らかに怒っていた。
「あ……ああ……」
「よぉ……何やってんだ?お前等」
「い、いや……そのぉ」
「あ、兄貴!こいつ、鈴海高校の生徒会長ですよ!」
「何ぃ!?」
「お、おまけに……後ろには書記と会計の野郎がいます!」
「ウ……嘘だろ」
「俺はな……
早い朝が嫌いなら、朝陽は嫌いだし、朝に鳴く鳥の鳴き声はもっと嫌いだ……けどな、一番何が嫌いかって」
「あ…ああ…」
「それはな……
大事な妹を、傷付けられることだ!!」
「ヒィイイイイ!!」
「覚悟できてんだろうな?テメェ等!!」
拳を鳴らし、三人に殴りかかる龍二……
そんな彼を見ながら、広は麗華の元へと行き耳に口を当て小声で質問した。
「なぁ、龍二さんってそんなに有名なのか?」
「ここいらの高校じゃ、名は通ってるよ?知らぬ者はいないっていうほどね……だよね?真二兄さん」
「ま、そうだな」
「写真、ブチ撒いてやろうかしら」
「止めとけ!いらん事するな!」
「麗華、お兄さんまだ居たの?」
「まさかの四人兄妹?」
「違う。この人達は」
「俺等は、こいつの兄貴・龍二の幼馴染なんだ。
俺は滝沢真二(タキザワシンジ)。一応イタコの家系に生まれたんだけど、男だからあんまり関係ない。そんで、こいつは彼女の日野崎緋音(ヒノザキアカネ)。カメラマンなんだけど、霊体質でしょっちゅう心霊写真が写っちまう。それから、ストーカー行為が玉に瑕」
「いいもん!私は麗華ちゃん担当のカメラマンだから」
「好きに言ってろ」
「アハハハ……」
(麗華と龍二さんの周りの人って、個性的な人ばかり……)