地獄先生と陰陽師少女 作:花札
宿直室で、テレビゲームをする広達……
「あのなぁ、ゲームなら家でやれ家で」
「家でやると、お母さんがうるさいんだもん」
「そうそう。宿題は大丈夫なの?とか言っちゃってさぁ。
まだ始まったばかりなのに、しつこいのよねぇ!」
「僕も、家にいるといつも怒られるのだ!」
「だからって、宿直室に来てゲームする奴があるか!!」
「だってぇ、ここだとクーラー効いてるしぃ!」
「うるさいお母さんいないし!」
「好き放題なのだぁ!」
「あのなぁ!」
「おい、アホ教師!」
突然宿直室の戸が開いた。ぬ~べ~は、開いたとに目を向けると、そこにいたのは汗だくになり走ってきたであろう、息を切らした龍二だった。
「龍二?どうかしたか」
「こっちに、麗華来なかったか?」
「麗華?来てないけど」
「そうか…」
「お兄さん、どうかしたんですか?」
「さっきちょっと言い争っちまってさ……そしたら麗華の奴家飛び出しちまって」
「麗華が行きそうなところ、捜したんですか?」
「捜したんだけど……どっこにも居なくてよぉ」
「何を言い合ったんだ?お前達の事だから、そう滅多に喧嘩なんてしなさそうなのに」
「ちょ、ちょっと依頼内容でな……」
「依頼内容?」
「実は」
「龍!見つけたぞ!」
外から聞こえてきた渚の声に、龍二は話の途中にも関わらず、渚の声の方へと行ってしまった。そんな彼の後を追いかけようと、郷子達はゲーム機を置き宿直室を出ようとした時だった。
「火術火竜弾!」
龍二が走り去っていった方角から、炎の龍が宿直室の前を横切った。その炎を避けた狼姿の渚は、龍二を乗せながら水の竜を口から吹いた。
「コラぁ!!焔!!
姉であるこの私に、よくも攻撃を!!」
「こっちは主の為にやってんだ!!姉であろうと知ったことか!!」
「コラコラ、兄妹喧嘩は余所でやれ!」
止めに入ろうと、ぬ~べ~は二匹の間に立った。すると二匹は、真ん中にぬ~べ~がいるのにも関わらず、炎と水を口から発射した。両者の攻撃は、見事ぬ~べ~に当たった。
「ギャァアアア!!」
「ぬ~べ~!」
「げ…」
「やっちまった……」
「知~らない」
「お前等!!そこに座れぃ!!」
依頼内容
頭にコブを作って、宿直室の中で、ぬ~べ~の前に座る麗華と龍二……
「で?
一体、何があったんだ?お前等二人に」
「……」
「……」
「そういえば、さっき依頼内容で喧嘩したって言ってたわよね?」
「そうそう」
「麗華、その依頼内容ってなんだ?」
「兄貴に聞けば。私は行かないから」
「麗華!」
「何で行かなきゃいけないんだよ!!あんな所に!!」
「仕方ねぇだろ!!依頼なんだから」
「依頼だからって、何で私まで行かなきゃいけないのよ!!行くなら兄貴一人で行けばいいでしょ!!」
「そうもいかねぇんだよ!!」
「止めんかぁ!!」
二人の喧嘩を、ぬ~べ~は怒鳴り慌てて止めた。
落ち着きを取り戻した龍二は、事の成り行きを話し出した。話している間、麗華は広達とゲームで遊び出した。
「実は、以前麗華が住んでた所から、依頼が来たんだ。
夏休みに入ってから、子供が頻繁にいなくなるらしいんだ。島の人達は神隠しじゃないかって言うんだけど……島の町長さんが妖怪の仕業じゃないかって言うんで、俺達にその原因を突き止めてほしいのと、その原因を作る出した妖怪を退治してほしいっていう依頼なんだ」
「なるほどなぁ」
「けど、何で麗華を連れてくの?麗華、嫌だって言ってるじゃない」
「依頼の手紙と一緒に、麗華を世話してくれた親戚から手紙が入ってて、その内容に麗華も一緒に連れてくるようにって書いてあったんだ」
「私は行かないから。あんな所二度とごめんだ」
「あんな所っていうけど、麗華って以前どこに住んでたんだ?」
「そういえば、聞いてなかったわね。どこなの?」
「こっから船で四時間かかる小さな島。
名前は鬼の馬と書いて『鬼驎島』」
「鬼驎島?何でそんな名前なの?」
「昔、島に雷と風を使う馬の神様がいたんだ。
その馬の姿は、鬼のような角を持ち、強靭な黒い体を持っていたそうだ」
「フ~ン」
「おまけに、その島には妖怪が多くて、よく怪奇現象が起きてたっけ。
ま、その現象も、主に私のせいにされてたけどね」
「……」
「二人の話を聞いて、大体の喧嘩原因が分かった。
要するに、龍二は麗華を連れてその鬼驎島へ行きたいと。けど麗華はそれを頑として行きたくないと……」
「そりゃあ、喧嘩にもなるわねぇ」
「だから鵺野頼む!
麗華を説得してくれ!」
「せ、説得と言ってもなぁ」
「鵺野に説得しようがしまいが、私は絶対に行かないから」
「麗華!」
「龍、今回は見逃してくれよ!この俺からも」
「焔まで……」
「この調子なんだよ。話してから……だから頼む!」
「そんな風に頼まれてもなぁ……」
「そうだ!
なぁ、俺達もその島に行こうぜ!もちろん、ぬ~べ~も!」
「はぁ!?」
「お!それいいなぁ!」
「だろ?」
「わーい!海に行けるのだぁ!」
「おいおい、そんな勝手に」
「俺はいいぜ、鵺野」
「い、いいのか?」
「一応、島には宿もあるし、別にお前等が良ければついて行ってもいいぜ」
「やったぁ!!」
「麗華、一緒に行こう!それならいいでしょ?」
「……
あっち行っても、あの家にはいないからな」
「よし!そうと決まれば、明日出発するぞ!」
「えぇ?!明日?!」
「船の時間が、明日の朝の九時なんだよ」
「じゃあ集合場所は、港近くでいいか?」
「あぁ。
行くとなれば、麗華家に帰るぞ」
「……あんまり気が進まないなぁ」
「文句言うな。もう決まったことだろ?」
なかなか立ち上がらない麗華を、龍二は持ち上げ抱え宿直室を出て行った。その二人を、渚と焔は慌てて追いかけて行った。
「全く、勝手に決めて……」
「いいじゃない!」
「どうせ、ぬ~べ~も暇なんだろ?」
「……」
「早速家に帰って、支度しなきゃ!」
「そうだな!」
「じゃあ、ぬ~べ~!また明日!」
「明日なぁ!」
そう言いながら、広達は学校を後にした。