地獄先生と陰陽師少女   作:花札

41 / 174
暗い夜道を歩く一人の女子大生……


周りには彼女を囲う様にして、歩く猫達……


角を曲がると、暗い道に佇む一つの影……その暗闇に光る目は、彼女を襲いかかった。


「キャァアアア!!」


気ままな猫達

「猫の仕業?」

 

 

帰路を歩く郷子達……

 

 

今朝方、女性が体中に斬られた傷を負いながら、交番へ駈け込んでいったのだと……

 

女性が言うには、化け猫に襲われたと言うのだ。

 

 

「そうなのよ!

 

その女性が言うには、巨大な猫が二足方向で、立ってたんだって!しかも、普通の猫たちを従わせてるらしいよ!」

 

「何か、嘘くさぁ」

 

「本当なんだってば!!

 

丁度、現場近くよ!行きましょ!!」

 

「ちょっと、美樹!」

 

 

先行く美樹に呆れながら、郷子達は仕方なく彼女について行った。

 

 

現場へ着いた美樹達……

 

現場は、襲われた女性の血であろう跡が残っており、所々に猫の毛が残っていた。

 

 

「うわぁ……酷ぇなこれ」

 

「本当ね…」

 

 

すると、現場に置かれている段ボールから飛び出てきた一匹の黒猫……突然現れた黒猫に、驚いた郷子達は叫びながら互いに抱き合った。

 

しばらくして、現れた黒猫を見て、郷子達はホッとした。

 

 

「何だぁ、ただの猫じゃない」

 

「黒猫だなぁ。こいつ」

 

「見りゃあ分かるよ。

 

ほら、おいでおいで」

 

 

手を差し延ばす広……黒猫は広の伸ばしてきた手を警戒し、唸り声を上げながら、毛を逆立たせた。

 

 

「げ、こいつスゲェ警戒してるぞ?」

 

「広の事、嫌いなんじゃないか?」

 

「じゃあ克也はどうなんだよ!」

 

「俺か?俺は懐かれてるだろ!」

 

 

得意気に話す克也は、広に代わって手を差し伸べたが、黒猫は広と同様毛を逆立たせた。

 

 

「ありゃ?」

 

「何だよ、オメェだって一緒じゃないか!」

 

「う、うるせぇ!」

 

 

二人の隙を狙って、黒猫は走り出し塀へと昇り、郷子達を見下ろした。

 

 

「エラそうな奴だなぁ、こいつ」

 

「ニャーン」

 

「今日は家に来るのか?」

 

「へ?」

 

「ニャーン」

 

 

麗華の質問に答えるかのように鳴き声を発すると、どこかへ行ってしまった。

 

 

「あの黒猫、麗華が飼ってんの?」

 

「違うよ。

 

あいつ、時々家に仲間連れてきて、餌貰いに来るんだ」

 

「何だ?餌付けしてんのか?」

 

「何でそうなんのよ」

 

「じゃああの黒猫、名前あるの?」

 

「一応ね。

 

猫の大将だから、ショウって呼んでる」

 

「ショウかぁ……」

 

「麗華が名付ける名前って、単純だな」

 

「っるっさい!!」

 

 

 

郷子達と別れた麗華は、家の階段を上っていた。彼女に釣られてか、野良猫が次々に階段を上って行った。

 

 

登り切ると、境内に集まる無数の野良猫たち……

 

 

「随分と集まったなぁ……」

 

「いつも世話になるな。姉御」

 

 

いつの間にか隣に立つ、猫耳を立て黒い髪を生やした青年……

 

 

「ショウ」

 

 

麗華は隣に立つショウの頭を撫で、家の中へ入り着替え境内に集まる、猫達の元へ餌の乗った皿を置いた。猫達は一斉に食いついた。

 

 

「相変らず、私達以外の人間は、好かない様だね」

 

「当り前だ。

 

あんな事されて、今頃人を好きになれっかよ」

 

「そう言うなって」

 

 

本殿の階段に腰掛ける麗華は、少々困った表情を浮かべながら、人間姿になっているショウの顔を覗き込んだ。ショウは顔を顰めて、口に小枝を銜えながら腕を組み舌打ちした。

 

 

「ショウ、一つ聞いて良いか?」

 

「?」

 

「人が襲われたっていう現場……あそこで何かあったのか?」

 

「人を食らう化け猫だ……

 

最近になって、この地に現れてきた」

 

「そう……」

 

「けど、あいつ元は飼い猫だ。俺と一緒で」

 

「助けたい?」

 

「助けるさ」

 

「はいはい」

 

 

皿に盛られた餌を食いつく猫達の中で、弾け出されたのか一匹の子猫がシガンに釣られて、麗華とショウの元へと寄ってきた。

 

 

「あ~らら、弱肉強食ってか?」

 

「姉御、頼む」

 

「は~い。

 

おいで、アンタには別の物食わせてやるよ」

 

 

寄ってきた子猫を抱き上げる麗華に、シガンは彼女の肩に飛び乗った。

 

 

「そういや、姉御。

 

その鼠、どうしたんだ?」

 

「鼠じゃないよ。フェレット。

 

ちょっとした訳で、飼い始めたんだ」

 

「フゥ~ン……」

 

「アンタも飼ってあげようか?」

 

「俺は自由気ままに生きるのがいいんだ!」

 

 

顔を赤くしながら、ショウは叫んだ。そんなショウを、麗華は笑いながらからかった。

 

 

 

 

翌朝……

 

 

学校に向かう麗華……彼女を追うかのようにして、黒猫姿のショウが塀を歩いていた。

 

 

「麗華ぁ!おはようぉ!」

 

 

前を歩いていた麗華に、郷子は美樹と共に挨拶しながら走り寄ってきた。

 

 

「おはようぉ!麗華!」

 

「よぉ、お前等」

 

「今日は、しっかり起きたんだね!」

 

「兄貴が今日朝練だって言って、無理矢理叩き起こされたんだ」

 

「あぁ、それで」

 

「ニャーン」

 

「?」

 

 

鳴き声を発しながら、塀に登っていたショウは麗華の肩へと飛び降りた。彼女の肩に乗っていたシガンは、場所を奪われたと思い頭の上へと移動した。

 

 

「あ!昨日の黒猫!」

 

「本当に懐いてるわねぇ。麗華」

 

「でもシガンが、何か場所盗られたみたいにしょ気てるわよ?」

 

「ショウ、どうした?」

 

「フウウウウ!!」

 

「?……!」

 

 

威嚇するショウを見た麗華は、ふとショウが見ている方に目を向けた。そこにいたのは、白い布を頭から被った一人の者……

 

 

「あれ?あの人、いつからあそこに?」

 

「さぁ……?

 

ねぇ、やけにこの辺り野良猫多くない?」

 

 

美樹の言葉に、三人は道に目を向けた。三人を横切る多数の野良猫達……すると白い布を被った者が、彼女達に近付いてきた。

 

 

「な、何?」

 

「人……許さない!!」

 

 

白い布を取り、その姿を現した。灰色の毛に身を包み人間と同様に、二本足で立ち二本の尾を持った猫……

 

 

「な、何こいつぅ!?」

 

「二人は早く、学校に行って鵺野に知らせろ!!

 

雷光!」

 

 

ポーチから出した紙を投げ、麗華は雷光を出した。出てきた雷光は、刀を抜き構えた。

 

 

「こ、この者は?!」

 

「説明は後。風を起こして、この二人が逃げれる道を造れ!!」

 

「承知!

 

 

風術風神掌!!」

 

 

風を起こし、三人を囲っていた野良猫たちを、吹き飛ばした。その隙を狙い、麗華は今だと声を出し、彼女の声を合図に美樹と郷子は無我夢中で走りだした。

 

 

「許さない……許さない!許さない!!」

 

「何が許さないんだ?

 

人間か?」

 

「そうだ……

 

私を、塵の様に捨てて行ったあの女だ!!」

 

「女って……私狙われてる?」

 

「っ……」

 

「麗殿……

 

 

焔、風を起こし此奴の目を晦ませる!その隙に、麗殿を!」

 

「了解!麗、乗れ!」

 

「分かった……って、ショウ?!」

 

 

肩に乗っていたショウは、飛び降り人の姿へと変わった。ショウが降りると、麗華の頭に乗っていたシガンは、降り肩へと移動した。

 

 

「し、ショウ?」

 

「こいつの相手は、この俺だ。

 

姉御、早く逃げてください。

 

 

ニャ――――ゴ!!」

 

 

天に向かって呼び叫ぶショウ……その声に町中にいた野良猫達が、集まってきた。それを見た麗華は、雷光を紙に戻し焔に飛び乗り、一目散にその場を離れて行った。

 

 

「さぁて、こっからは猫又と猫ショウの戦いだ!!」

 

「貴様も同じ様な境遇を送っているのに、なぜそこまでして人間の味方をする!?」

 

「ちょっとした出来事があったんでな!

 

野郎ども、掛かれ!!」

 

「お前達、行けぇ!!」

 

 

両側の野良猫達は一斉に襲い掛かり、ショウと猫又も野良猫と共に戦い始めた。




学校へ着いた郷子達は、すぐさまぬ~べ~に先程の事を知らせた。彼女達の話を聞いたぬ~べ~は、麗華を助けに行こうと職員室を出て行った時、丁度そこへ麗華が着き、ぬ~べ~の元に向かって走って来ていた。


「麗華!無事だったのね!」

「ちょっとした助っ人が来て、そいつに任せた」

「助っ人?」

「あぁ。(ショウ……負けるなよ)」

「麗華が無事なら良かった。

あとは俺が何とかするから、お前達は早く教室へ行け」

「うん!

麗華、行こう!」

「あぁ!」


郷子達と共に、麗華は廊下を歩き教室へと向かっていった。


「アンタは、いい教師だよ」


ぬ~べ~の元へ姿を現した焔は、独り言のように呟き姿を再び消した。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。