地獄先生と陰陽師少女   作:花札

35 / 174
学校の屋上へ降り立つ焔と渚……

校舎の上に立つ棒の先に鎌鬼は鎌を持って立っていた。彼は二人の気配に気付いたかのように、ゆっくりと振り向き、微笑んだ。


渚と焔から降りた龍二と麗華は、懐から一枚の紙を取り出し、自分達の血をそれぞれの紙に触れさせ薙刀と剣を取り出した。


「?

君達は、僕を倒そうとしているのかい?」

「これ以上、人を殺されちゃ困るんでね」

「アンタに殺られる前に、私がアンタを殺る」

「無意味な反抗だね……

でもいいよ。付き合ってあげる。」


目の色を変え、鎌鬼は棒の上から飛び降り、二人に向かって笑みを向けた。


「さぁ、始めよう……


この地が、君達二人の墓場となる」


“ドーン”

雷の合図と共に、二人は鎌鬼に薙刀と剣を振りがざし、同時に鎌鬼も二人に鎌を振りかざした。


対決

黒い雲が広がる午後……

 

 

「凄かったよなぁ、今朝の学校」

 

 

学校へ行った広達だったが、校舎の屋上が滅茶苦茶になっており、学校は急遽休みとなった。休みになった広達は、学校へ忘れ物を取りに行こうと通学路を歩きながら、今朝の校舎の様子を話し合っていた。

 

 

「滅茶苦茶だったもんねぇ」

 

「誰がやったんだろうな?」

 

「そりゃあきっと、妖怪の仕業だぜ!」

 

「はいはい、いつものパターンね」

 

「全く、何で学校に忘れ物なんかするのよ!広は!」

 

「仕方ねぇだろ?持ち帰るの忘れてたんだから」

 

「あのねぇ!!」

 

「まぁまぁ!広が忘れ物してくれてたおかげで、今は立ち入り禁止の学校に忍び込めるんだから!良いじゃない!!」

 

 

喜ぶ美樹に、郷子は深くため息をついた。

 

 

 

 

“ガラガラ……ガラガラ”

 

 

アスファルトに何かを引きずる音が、後ろから聞こえてきた。

 

 

「?何の音だ」

 

 

気になり、広は後ろを振り返った。そこにいたのは、鎌を引き摺り傷だらけになった箇所を抑える、鎌鬼の姿だった。

 

 

「?!!」

 

「さ……殺…人鬼……」

 

 

広達に気付いたのか、鎌鬼はスっと顔を上げ彼らを観ると捜し物を見つけたかのような、微笑を向けた。

 

 

「やぁ…」

 

「ひっ…」

 

「君達は、麗華の友達かい?

 

なら嬉しいなぁ……

 

 

丁度、力を取り戻したかったところだったからね!!」

 

 

叫ぶと共に、鎌鬼は広達に鎌を振りかざしてきた。恐怖で動けなかった広達は、殺されると思い強く目を閉じた。

 

 

“キーン”

 

 

鉄と鉄がぶつかり合う音が響き、その音に郷子は恐る恐る目を開けた。

 

 

 

「龍二さん!!」

 

 

振り下ろしてきた鎌を剣で防ぐ龍二……

 

ズタズタに斬られた狩衣に破れた袖から見える傷だらけの腕……

 

 

「渚!!早くこいつ等を、学校の方へ!!」

 

「承知!!」

 

 

いつの間にかいた傷だらけになっていた狼姿の渚は、広達の返事も聞かず自分の背に乗せ、学校の方へと飛び立っていった。

 

 

「ようやく見つけたぜ。鎌鬼」

 

「鬼ごっこも、ここまでかな?」

 

「戦っている最中に逃げ出すとは、いい度胸じゃん……」

 

 

後ろから聞こえる声……

 

 

薙刀を手に持つ麗華の姿……

 

身に纏う水干は、左半分が破かれ見える肌には、痛々しい傷が幾つもあった。

 

 

「お揃いかい?」

 

「そうだね……

 

アンタを追いかけるだけで、どれだけ体力使ったか……」

 

「でも、君達には確か、致命傷を与えたはずだけど?」

 

「悪いなぁ。こっちには、回復担当の式神がいるもんでな」

 

「あぁ、なるほど。

 

そいつに、回復させて貰ったって訳か……」

 

「そういうこと」

 

 

二人は懐から札を取り出し、鎌鬼に投げつけた。札は稲妻を放ち鎌鬼を動けなくした。

 

 

「おや?動けなくなっちゃった……」

 

「アンタは、ここで」

 

「消えてもらう!麗華!!」

 

「承知済み!!」

 

 

印を結ぶ二人……二人の立つ場所から、地面から陣が光を放ちながら浮き出てきた。強力なのか、稲妻を放ち風を起こしながら、その陣は浮き出てきた。

 

 

(何だ?一体……)

 

「臨」

 

「兵」

 

「闘」

 

「者」

 

「皆」

 

 

二人が放つ言葉に、札から出ていた稲妻は徐々にその力を増し、鎌鬼を封じ込めようとしていた。二人の動かす口を交互に観た鎌鬼は、微笑みそして……

 

 

「君達は、僕の本当の力を知らないみたいだね……」

 

「?」

 

 

その言葉と共に、鎌鬼は札から出てきていた稲妻を振り解いた。解かれた光景を観た二人は驚きを隠せないでいた。驚いている二人を、鎌鬼は鎌を振り回した。

その瞬間、駆け付けた焔が素早く二人を背に乗せ、その場から逃げ出した。

 

 

そんな逃げ行く焔を観る鎌鬼……その目は、玩具で遊ぶ子供のように無邪気な光を放っていた。

 

 

 

 

その頃、学校へ逃げついていた広達……学校にいたぬ~べ~は彼等を校舎の中へと入れた。

 

しばらくした後、焔が傷だらけになった二人を乗せ、学校へ着いた。ぬ~べ~はすぐに二人を校舎へ入れ、保健室へと連れて行った。

 

 

二人を治療する、丙と雛菊……

 

 

「全く……

 

無茶ばかりしやがって」

 

「説教は、後にしてくれない?

 

こっちは死にかけなんだから……痛っ!」

 

「す、済まぬ!麗」

 

「学校の屋上を滅茶苦茶にして、挙句の果てにはそんな傷だらけになるまで、あの鎌鬼に戦っていたとはな…一言、俺に声をかけてさえくれれば、手伝ってやったのに」

 

「余計なことすんな。

 

これは俺達の問題だ。他人のアンタに口出す権利はねぇんだよ!」

 

「っ……」

 

「でも、学校で戦っていたなら、どうして鎌鬼はあんな所にいたの?」

 

「隙を狙って、アイツに結界を張って、封じ込めようとした……けど、動きを封じ込めようとした時、結界を破ってその場を逃げだしちゃって……」

 

「二手に分かれて、アイツを捜してたら……お前等がいたってわけさ」

 

「そういう事だったの……」

 

「これからどうするつもりだ?

 

また、再挑戦するのか?」

 

「そのつもりだ。

 

奴をこの学校に誘き出して、学校全体に結界を張る。そこで決着を付ける」

 

「なら、俺達も」

「命の保証、できないよ」

 

「?!」

 

「麗華を殺すまでは、奴はどんな事をするか分からねぇ。下手したら、お前等を殺して霊力を戻す、餌食になる可能性は高い」

 

「それでもいい!!」

 

「!?」

 

「友達が命の危機なのに、ただ指銜えて大人しくしてろ何てできるかよ!!」

 

「広の言う通りよ!!

 

麗華、手伝わせてよ!!私達、麗華の力になりたいの!!麗華を救いたいの!!」

 

「ま、麗華には貸があるし、私はそのお返しよ」

 

「お、俺だって、手伝うさ!!麗華は俺達、ぬ~べ~クラスの一員なんだからさ」

 

「麗華、お前にはこんなにもお前を助けたいという、仲間がいるんだぞ。

 

その仲間に、少しは甘えてはどうだ?」

 

 

呆気に取られていた麗華に、龍二は彼女の頭に手を乗せ雑に撫でた。麗華は撫でてきた彼の手の上に手を乗せながら振り向いた。

 

 

「ここは、いいところ見てぇだな。麗華」

 

「……」

 

 

記憶に蘇る、ぬ~べ~達と過ごした日々……

 

最初は嫌だった麗華だったが、次第にその気持ちは無くなり替わりに、無くてはならない感情へとなり、いつしか麗華にとって居心地のいい場所になっていた。

 

 

顔を下へ向かせた麗華は、深く息を吐くと顔を上げぬ~べ~達を見つめた。

 

 

「結界を張る。張る前にやらなきゃいけないことがある。

 

 

それを、手伝って」




そんな二人を見る焔と渚……


焔はどこか安心げな表情で、麗華を見ていた。


「安心してるの?焔」

「当り前だ。

こんな光景、以前の学校じゃありえなかった……


仲間か……」


焔の記憶に蘇る、幼い頃の麗華の姿……

いつも家に帰りたいと泣き喚ていた……いつしか、その顔から笑顔は無くなり無口になり、周りにいた人と係わろうとせず、当時そこにいた妖怪達としか話さなくなってしまった。


だが、今の麗華には、人間の友がしっかりいることを、焔の目には映っていた。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。