地獄先生と陰陽師少女 作:花札
「麗華、今日休みだったね……」
「無理もねぇぜ。昨日発作で倒れて、病院行ったんだからさ……」
「ねぇ、今日皆で麗華のお見舞い行こうよ!」
「それ、いいな!」
「賛成!」
「じゃあ、今日の放課後皆で行こう!」
目を覚ます焔……
寝ながら横を向くと、自分が寝ている布団の隣で寝る麗華の寝顔が目に入った。
(?!
び、ビックリしたぁ……)
眠る麗華……
そんな彼女に、焔は自分に掛かっていた掛布団の半分を掛け、また眠りに入った。
公園のベンチに座り、雲で覆われる空を眺める龍二……
しばらくすると風が吹き出し、何かの気配を感じた龍二は出入り口の方へ向いた。
そこに立っていたのは、あの黒マントの男だった。
「やぁ、龍二。
久しぶりだね」
「……鎌鬼」
「僕の名前、憶えてくれてたんだ。嬉しいなぁ……」
「何の用なの?龍に」
姿を現した渚は、龍を後ろへ隠すようにして前に立った。渚を前にした龍二は、ベンチから立ち上がり鎌鬼を睨んだ。
「二人共、そんな怖い顔しなくてもいいだろ?
今日は君達に、挨拶に来ただけだよ」
「挨拶?」
「君の妹……あと少ししたら、殺しに行くから。
その前に、君を懲らしめようと思ってね……あの時みたいに、邪魔されちゃ困るし」
「……渚」
「承知」
渚は姿を狼へと変え、龍二は一枚の紙を取り出し、自分の血を触れさせ剣を出した。
「剣の腕は上達しているのかい?」
「あれから、何年経ったと思ってんだ」
「……そうだね。
それじゃあ、始めるよ?」
“ドーン”
突然と童森町に鳴り響く雷……
その音と共に、雨が降り出してきた。
降りだしてきた雨を、学校の中から見る郷子達……
「あ~あ、せっかく晴れてたのによぉ……」
「よりによって、罰掃除何て最悪」
「美樹が昼間にあんなことするからでしょ?!」
「何よ!!自分だって、楽しんでたじゃない!!」
「まぁまぁ、二人共」
「おーい、終わったかぁ?」
教室へ入ってきたぬ~べ~は、戸を開けながら入ってきた。
「もう終わったから、早く帰らせてくれよぉ。
雨降ってきちまったじゃねぇか」
「それは自業自得だ。
もういいぞ、帰って」
「やったぁ!!」
「帰り道、気を付けるんだぞ!」
「はーい!」
雨が降る帰り道を歩く郷子達……ふと前を見ると、公園の前に人が集っておりその中に救急車が止まっていた。
「何があったんだ?あれ」
「さぁ……」
「ちょっと、見に行こうぜ」
「うん!!」
「ちょ、止めなよ!野次馬みたいなことは!!」
「良いじゃねぇか!ちょっとだけだ!」
止める郷子を無視して、広達は人混みの中をかき分け様子を見に行った。
人混みの隙間から見えた、担架に乗せられた制服を着た男性……その男性は、体から血を流し、意識がないように見えた。
公園を観ると、出入り口に黄色いテープが張られ、中には警察官や鑑識官が入り無茶苦茶になっている公園を、調べている様だった。
「また通り魔だってな」
「嫌ねぇ……今度は、高校生を狙ったんでしょ?」
「見た人の話からじゃ、あの高校生その通り魔と戦ってたみたいよ」
「戦ってたって……」
「あの傷じゃあ、ボロ負けだったみたいだな」
野次馬から聞こえる話し声……
広達は、人混みから抜け出し待っている郷子の元へと行った。
「何か、通り魔にやられたみたいだ」
「通り魔に?」
「公園見たけど、なんか普通の戦い方じゃなかったわよね……」
「誰が戦ったんだろう……」
「おい!そんな傷で、どこに行くんだ?!」
叫ぶ声に、郷子達は振り返った。そこには救急隊員に止められる、人の姿になり傷だらけになっている渚がいた。
「離せ!!アイツを、アイツを追いかけるんだ!!」
「何言ってんですか?!その傷で、いったいどうやって」
「黙れ!!」
突然吹き荒れる風……
その場にいた人達は皆、顔を腕で多い風から身を守った。自分から離れた人達の隙に、渚は狼姿へと変わりどこかへと行ってしまった。
止んだ風に、その場にいた人達は顔を上げ、渚を捜すようにして辺りを見回した。
「さ、さっきの人って」
「渚さん…だよね」
「ってことは、さっき救急車で運ばれた人って」
「……」
嫌な予感を感じた郷子達は、急いでどこかへと向かった。
家の縁側に座る麗華……柱に背凭れ、屋根から落ちてくる水滴を眺めながら、雨で濡れた庭を眺めていた。目を覚まし麗華と同じく縁側にいた焔は狼姿となり、座る彼女の傍で寝そべり、一緒に庭を眺めていた。
“ガラ”
突然と玄関の戸が開き、麗華は顔を上げた焔を見た。焔は姿を人間の姿へと変え、彼女と一緒に立ち上がり玄関へと行った。
玄関へ行くと、床に倒れる傷だらけの渚がいた。
「渚!!」
「姉者!!」
倒れる渚に駆け寄ろうとした時、突然と電話が鳴り渚を焔に任せた麗華は、受話器を取り耳に当てた。
「もしもし」
「麗華ちゃんかい!!良かった、家にいて」
「茂さん……どうしたんですか」
「落ち着いて聞いて。今龍二君がうちに運ばれてきたんだ!!」
「!!」
「傷だらけで意識不明なんだ!!急いで」
“ガタン”
「麗華ちゃん?!麗華ちゃん!!」
受話器が落ちる音が聞こえ、茂は彼女の名を呼び叫んだが応答がなかった。
「焔、渚を頼む!!」
「麗!!どこに行くんだ!!麗!!」
受話器の外から聞こえる、麗華と焔の声……
『傷だらけで意識不明』
その言葉を聞いた麗華は、居ても立っても居られず家を飛び出した。外へ出た麗華は氷鸞を呼び出し、既に巨鳥の姿になっていた彼の背に飛び乗り、病院へと向かった。
病院へ着いた麗華……
びしょ濡れになった彼女は、人の姿となった氷鸞と共に中へと駆け込んだ。
息を切らし、茂の姿を捜す麗華……
そんな彼女を不思議に思った看護婦は、彼女に声をかけた。
「あの、どうかされました?」
「今日、ここへ……ここへ運ばれた人は!!」
「失礼ですが、あなたは?」
「運ばれた学生の、家族です!!兄は…兄は!!」
「麗華ちゃん!!」
茂の声にハッと声の方向を向くと、彼が血相を掻いて走ってきた。
「茂さん……兄は…兄貴は?!」
「病室で寝ている。
もう大丈夫だ」
息を切らし、心配する麗華の頭に、手を置きながら茂はそう言った。彼の言葉に、麗華は緊張の緒が切れたのか、力が抜けたかのようにしてその場に倒れかけた。
そんな麗華を、慌てて傍にいた氷鸞と茂が支え近くにあった椅子へと座らせた。