地獄先生と陰陽師少女 作:花札
麗華は給水タンクから飛び降り、ぬ~べ~達を見つめた。
「麗華……」
「……」
「お前が俺を?」
「だったら?」
「……」
「……そうか。
その妖怪だったのか。お前の周りに漂っていた妖気の正体は」
麗華の後ろに立つ白い狼を見ながらぬ~べ~は彼女を見た。麗華は後ろに立つ狼の頬を撫でながら、ぬ~べ~を見て左手を指差しながら質問した。
「その手……
鬼でも封じてるの?」
「……
その通りだ」
「どうりで、アンタから嫌な妖気が感じたわけか」
「妖気?
お前、霊感があるのか?」
「なきゃ、アンタ達を救えないでしょ?」
「……」
「じゃ、じゃあさっきの妖怪、真っ二つにしたのは?」
「あぁ。雷光のこと」
そう言うと、麗華は腰に着けていたポーチから紙を出した。するとその紙は宙を舞い煙を出し中から、黒い侍風の着物を纏い、赤い髪を耳下で一つに結った青年が出てきた。
「何だ?ぬ~べ~、アイツ妖怪使いなのか?」
「いや、あれは式神だ」
「式神?」
「陰陽師が使っている鬼神の事だ」
「お、陰陽師?」
「それって確か、よく本とかテレビに出てくる、安倍晴明のこと?」
「そうだ。
その安倍晴明だ」
「お見事。
その通り、私は陰陽師の血を引いている」
「何か、スゲェ……」
「え?」
「だってよ、俺たちのクラスに霊能力先生のぬ~べ~と、陰陽師娘の麗華がいるんだぜ?
最強じゃねぇか?!
それに、もし強敵が現れても、麗華とぬ~べ~二人で戦えば」
「勝手なこと言わないで!!」
広の話に、麗華は大声を上げて阻止した。広は麗華の声に驚き話すのを止めて彼女を見た。
「何で?だって」
「誰とも組む気もないし、誰とも一緒に戦いたくない」
「でもよ」
「言っとくけど、私は先生なんて信用しない。それからアンタ達クラスメイトもね」
「え?」
「先生なんて、最悪な大人がやる仕事よ。
どんなに生徒が助けを求めても、助けようともしない……
挙句、自分の立場が悪くなると、責任を全部生徒に押し付けて……
クラスの奴等もそう。自分が犯人扱いされたくないがために、平気で嘘ついて裏切って……」
「そ、そんな……」
「ぬ~べ~はそんなことしない!するもんか!」
「そうよ!それに私達だって、そんなこと」
「今の内だけよ。そう言っていられるのも。
いつかは、裏切るに決まってる。もちろんアンタ達もね」
「なぜ、そう思うんだ?」
郷子と広に支えられて立っていたぬ~べ~は、二人から離れ麗華に近づこうと歩みを進めながら質問した。そんなぬ~べ~に後ろで座っていた狼は立ち上がり牙を向けながら威嚇の声を上げた。
「なぜって……
聞いてどうするの?」
「俺は、お前を何があっても守り通すつもりだ」
「助けは無用。私にはこいつ等がいる。アンタの助けなんて必要ない!」
「麗華……」
「これ以上の話は無用。
悪いけど、帰る。それから明日学校休むからそのつもりで」
麗華は、雷光を戻しポーチに入れると、狼に跨り屋上から飛び夜の暗い空へ消えて行った。
「ぬ~べ~……」
「とんでもない、転校生が来たもんだ」
「どうして、どうして、麗華あんなこと……」
「校長から聞いていたことは、どうやら本当だったみたいだな……」
「え?何か聞いているの?」
「今日はもう遅い。明日の放課後話すから、今日はもう帰るんだ」
「うん……」
二人と一緒に、ぬ~べ~は校内へ入り、荷物を持ちそのまま二人を家まで届け家へ帰った。