地獄先生と陰陽師少女   作:花札

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皐月丸との戦いから数日後……


桜巫女の帰還

学校が休みだった郷子と広はぬ~べ~を連れ、麗華の家へ見舞に来ていた。

 

 

着流しを着た麗華は縁側の柱に背凭れながら、一緒に縁側に座る郷子達と他愛のない話をしていた。

 

 

そんな様子を見るぬ~べ~に、龍二は茶を出しながら話した。

 

 

「安心したって顔だな?鵺野」

 

「そうか?

 

まぁ、三日も休んでいたからな」

 

「二日前までは、ずっと寝込んでたけど……昨日やっと起き上がれるようになって今日までの調子さ。

 

 

明後日辺りには、たぶん学校には行けると思うぜ?」

 

「それを聞いてホッとした」

 

 

そう言いながら、ぬ~べ~は三人の方へ顔を向け眺めた。

 

 

楽しそうに話す広達……

 

 

「ねぇねぇ、麗華」

 

「ん?」

 

「あの皐月丸と桜雅は?」

 

「あぁ、二人なら昨日出て行ったよ」

 

「え?!」

 

「桜雅は、また遊びに来るって言ってたけど、たぶん皐月丸はもう来ないよ」

 

「何で?!だって」

 

「皐月丸は、あるものを守らなきゃいけなくなったからね」

 

「でも、遊びに来ることくらい

 

「それの傍から離れたくないんだとさ」

 

「……」

 

「まぁ、いつか私の方から、遊びに行くつもりさ。

 

あいつの霊気を捜して、いつかね……

 

 

あの桜が満開に咲く頃に」

 

 

そう言いながら、麗華は庭に植えていた桜の木を見た。

 

 

「その時は、私達も呼んでね!」

 

「気が向いたらね」

 

「何よそれ!」

 

 

「麗!!」

 

 

そこへ血相を掻いて、駆け寄ってくる渚……

 

 

その様子に、部屋にいた龍二とぬ~べ~も縁側へ出て行き渚の元へと行った。

 

 

「渚、どうかしたか?」

 

「麗、早く止めろ!

 

焔と氷鸞が、喧嘩をしている!」

 

「あのバカ犬とバカ鳥……

 

主を休ませるってことを知らないのか」

 

「そう言うなって。

 

二人もだけど、雷光も寝込んでたお前からず――っと、離れようとしなかったんだぜ?今は、ちょっと離れてるけどさ」

 

「だったら、大人しく私の傍にいればいいのに……」

 

 

「火術!火炎玉!」

「水術!水鉄砲!」

 

 

その声と共に、庭の向こうから見える火の玉と水の鉄砲……

 

それを観た麗華はため息を吐き、立ち上がり玄関へ行き下駄を履き靴箱に立てかけられていた木刀を手に持ち、外へ出た。

 

 

外では狼の姿をした焔と、巨鳥の姿をした氷鸞が技を出し合いながら、攻撃を繰り返していた。

 

 

「お前等、いい加減」

「水術!水鉄砲!」

 

 

氷鸞が放った水が見事、麗華に当たり彼女はびしょ濡れになってしまった。麗華の後を追いかけてきていた龍二は、間一髪その水を避け濡れずに済んでいた。

 

 

「れ、麗様!?」

 

「ハッハッハッハッハ!!

 

ざまぁみろ!!氷鸞!!」

 

「貴様ぁ!!」

 

「お前等、いい加減にしろ!!」

 

 

ブチ切れた麗華は、大声をあげながら焔と氷鸞の頭を木刀で叩いた。二匹は痛みからか、獣から人へと姿を変え、その場に尻を着き叩かれた個所を手で押さえた。

 

 

「テメェ等……喧嘩すんのはまだしも、主であるこの私によくも、攻撃を……」

 

「ま、待て!!攻撃したのは、氷鸞の」

 

「問答無用!!雷光!!」

 

「あ、はいぃ!!」

 

「二人に雷落せ!!」

 

「し、しかし」

 

「私の言うことが、聞けないのか?」

 

「し、承知……

 

二人共、済まぬ!

 

 

雷術!雷柱!」

 

 

頭を深々と下げた雷光は、二人に向かって雷を放った。雷を受けた二人は体から煙を上げ、そのまま倒れてしまった。

 

 

「ったく」

 

「相変わらず、容赦ねぇな…お前」

 

 

言いながら、龍二は後ろから自分が来ていた羽織を麗華の肩に掛けてやった。

 

 

「躾は厳しく……でしょ?」

 

「そうだけどよ……」

 

「本当、容赦ないんだから麗華は」

 

「全くだぜ!」

 

「それ以上からかうなら、アンタ達二人の頭もこの木刀で叩くよ?」

 

「す、すいません……」

「す、すいません……」

 

「……?」

 

 

麗華に擦り寄る、いつの間にか馬の姿になった雷光……

 

その雷光に釣られてか、氷鸞と焔も巨鳥と狼の姿へと変わり、麗華に擦り寄った。

 

 

「ちょ、何だよ!?

 

よ、寄るなって!!コラ!!うわっ!!」

 

 

三匹に擦り寄られた麗華は、その場に倒れてしまった。

 

 

そんな麗華の姿を観た龍二と広達は、吹き出し笑い上げた。

 

 

山桜神社の境内に、そんな楽しそうな笑い声が響き渡った。




どこかの森……


小さな池の傍に生える小さな木の苗……


風が吹き苗の葉が揺れると、木々の隙間から差し込む日差しに照らされ苗を覆う一つの影……


苗はまるで、その人を待っていたかのように葉を揺らし、喜んでいるようにも見えた。

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