地獄先生と陰陽師少女 作:花札
麗華と闘っていた桜雅は、放ってくる矢を切り避けながら彼女に対抗していた。
矢を放ってくる麗華の隙を狙い、桜雅は刀を振り下ろした。振り下ろしてきた刀を、彼女は弓で受け止め防いだ。
(目を覚ませ!桜巫女!)
「……テ」
「?」
何かを呟いた麗華……
すると、操られているはずの彼女の目から、涙が流れ出てきた。
「さ、桜巫女……」
「……メテ……ルヲ……」
「桜巫女、あなた」
「ウ……グゥウウウ!!」
突然頭を抱え、膝を着き苦しむ麗華……
その様子を見ていた龍二は、相手にしていた皐月丸を叩き斬り、麗華のもとへと駆けて行った。
「麗華!!」
「ウゥ!!」
「突然苦しみだした。
恐らく、彼女自身の意思で、催眠術を解こうとしているのだろう……」
苦しむ麗華は、何かを探るようにして手を動かし始めた。その手を龍二は握りろうとしたが、彼の手は彼女の手をすり抜けてしまった。
「神主、今の桜巫女には無理だ。
魂は人の手では触れる事は出来ぬ」
「麗華……」
探る麗華の手……
“ドーン”
何かが爆発する音が聞こえ、後ろを振り返った。そこにいた氷鸞と雷光が吹っ飛ばされ壁に激突していた。
「氷鸞!!雷光!!」
「グアァア!!」
血塗れになり、鬼の手を押えながらその場に倒れる鵺野……
「鵺野!!」
「拙僧に適うはずがない。
全てを消し、桜巫女は拙僧のものにする」
「皐月丸、まさか!!」
笠と服を脱ぎ捨て、皐月丸は地震の体に掛かれている、封印文字に自分の血を付けた。
「そのようなことをすれば、皐月丸!!お主、もう人として生まれ変わることは」
「黙れ!!
約束も果たせず、逝ったお前に何が分かる!?
拙僧……私の腕の中で、死んでいった姫の……姫の気持ちが!!」
「だから俺は、姫が生前愛していた桜を守り続けているのだ!!
姫と交わした約束は果たすことはできなかった……だが、俺は妖となり、桜を守る神として、この世に留まった。
だがお前は、俺に対する恨みの念で、この世に留まり人の魂を食らい、桜を枯らしている。それで姫が喜ぶとでも思うか?!」
「黙れ!!全てを消す!!全てを!!」
叫び声と共に、皐月丸の体が徐々に化け物へと変わっていった。
化け物の姿になった皐月丸……彼は声を荒げ、雄叫びをあげた。
その声を、洞窟の外で待っていた郷子達は聞こえ心配そうな表情で、洞窟の方を観た。
「な、何?今の声」
「龍……」
「大丈夫よね?ぬ~べ~達」
「だ、大丈夫だろ!
ぬ~べ~は何度も、俺達を助けてきたんだ!絶対負けはしないさ!」
郷子を励ます広……
すると、雛菊と渚は何かの気配を察し、雛菊二人の頭を地面へ叩き付け二人を隠すようにして、上に倒れた。三人を隠すようにして、渚は前に立ち辺りを見回しながら、警戒した。
「な、何」
「静かに!!」
声を出そうとした二人の口を手で塞ぎ、辺りを警戒する雛菊……
しばらくして、風が吹き自分達を覆う様にして、空に影が通り去り、洞窟の中へと入っていくのが見えた。その陰に驚いた雛菊は立ち上がり、渚と共に洞窟の方を観た。
「(まさか……しかし、まだ動けぬはずなのに)
……雛菊、ここを頼む!」
「分かった!」
渚は影に釣られる様にして、素早く洞窟の中へと入っていった。
化け物へとなった皐月丸は、容赦なく龍二達に攻撃してきた。龍二はぬ~べ~と共に馬へと姿を変えた雷光に跨り、その攻撃を避けていった。
「龍二、皐月丸に近づくことはできないか?!」
「あいつの攻撃が止めない限り無理だ!止められれば、なんとか行けることも……!
氷鸞!!奴を上から攻撃しろ!!」
「承知!!」
巨鳥の姿へとなった氷鸞は、飛び上がり攻撃した。だが皐月丸は、その攻撃を取り込むかのようにして、体を巨大化し走り回っていた龍二達を攻撃した。攻撃された雷光は、壁に激突し同時に、振り落された龍二達も地面へ落ち倒れた。
「バカめ!!その様な攻撃、拙僧には通じぬ!!
神主!まずは貴様から、殺してやる!」
「?!」
ぬ~べ~達が動こうとした途端、地面から木の根が生え三人の体を縛り、動きを封じさせた。
「これで邪魔者はいない。
さぁ、潔く死ぬがいい」
「……」
刃を向ける皐月丸……それに抵抗するかのように、龍二は手に持っていた剣を手に取り、ふら付きながら立ち上がり構えた。
「まだ刃向うか?なら、一撃であの世へ逝かせてやろう」
「……」
「死ね!!」
「火術!!火炎玉!!」
何処からか火の玉が飛んできて、皐月丸を攻撃した。皐月丸が怯んだ隙を狙ってか、龍二を何者かが連れその場から離れた。火の玉を放った者が桜雅と麗華が居る所へと着地した。
「な、渚?!」
「間一髪ってところね」
「な、何でお前が」
「説明は後。それより麗の所へ行くよ!」
龍二を抱いたまま、渚は麗華と桜雅が居る所へと行った。
二人の所へ行くと、そこには意識のない麗華を抱えた焔がいた。
「ほ、焔?!それに」
「龍、悪い。
麗が、麗がどうしても……ここへ行きたいって……」
「桜雅、麗華の魂は?」
「これだ」
桜雅は、手に持っていた青白く光る玉龍二に見せた。そこへやってきた、傷だらけのぬ~べ~が駆け付けてきた。
「鵺野……」
「龍二、俺が麗華の体に戻す」
「あ、あぁ……頼む。
桜雅」
「任せたぞ。鬼の主」
鬼の手へ麗華の魂を渡されたぬ~べ~は、寝かされている麗華の体へ魂を戻した。魂が戻されていくのを遠くから見ていた氷鸞は、雷光を連れ麗華のもとへと駆け寄ってきた。
戻された麗華の顔色は徐々に、元通りになっていき、意識が取り戻したのか目をゆっくりと開けた。
「麗華」
「麗」
「麗殿」
「……兄貴?」
龍二を呼んだ麗華は、起き上がり周りにいる渚達を見回した。
「麗、大丈夫か?」
「あぁ。ありがとな、焔。
兄貴達も……皆…ありがとう」