地獄先生と陰陽師少女   作:花札

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ぬ~べ~の手伝いをしていた、広と郷子……


段ボールをぬ~べ~の近くに置いた広に、郷子は話しかけた。


「ねぇ、広」

「?」

「麗華、大丈夫かな……」

「大丈夫って……何が?」

「だって、転校して来て早々に、早退だなんて……

それに……


皆に、質問攻めされてた時、顔色悪くして教室飛び出したから……

何か悪い事でも……」

「気にし過ぎだよ。郷子は」

「でも…」

「ただ体調崩しただけだろ?」

「なら、良いんだけど……」


「あの……」


その声が聞こえ、広と郷子は後ろを振り返った。そこには長く黒い髪を伸ばした女性が立っていた。


(メッチャ綺麗な人…)

(誰のお母さんだろ…)

「あなたに、ちょっと一緒に来てほしいのだけれど……よろしいですか?」

「え?」

「お、俺にですか?」

「そう」

「喜んで!」

「ちょっと広!」

「大丈夫だって、もう仕事終わったんだろ?」

「そうだけど」

「じゃ、あとよろしくな!

お姉さん、行きましょう」

「えぇ」


鼻の下を伸ばしながら、広は女性の手を引っ張りどこかへ行ってしまった。郷子はそんな広にキレながら、ぬ~べ~のところ職員室へ戻った。


「ぬ~べ~、仕事終わったわよ」

「そうか…ご苦労……!?」


何かを察したのか、ぬ~べ~は顔色を変え郷子に近づいた。郷子は何が何だが分からなくなり、近づいてきたぬ~べ~の目を見ながら質問した。


「ど、どうしたの?

そんな怖い顔して」

「ここへ来る途中、誰かに会ったか?」

「誰かって……!」


ぬ~べ~の言葉に、郷子は先程広とどこかへ行ってしまったあの女性を思い出した。


「女の人……」

「?女の人?」

「さっき誰かのお母さんが、私達のところに来て、広と……」

「ちょっと待て。誰なんだ、その女の人は」

「え?ぬ~べ~が通したんじゃないの?」

「俺はそんな人、見た覚えもないし通した覚えもない」

「!!」

「その女の人は、おそらく妖怪だ」

「え?!」

「お前から、プンプン妖気が漂ってるんだ!」

「じゃ、じゃあ広は?!」

「案内しろ郷子!!今ならまだ間に合うかもしれない!」


そう言いながら、ぬ~べ~は職員室を飛び出し、その後を郷子は追いかけて行った。


もう一人の霊能力者

その頃、広は女性と共に学校の屋上へ来ていた。外はすっかり暗くなっており、空は黒い雲で覆われており、雲の隙間から月が上がっていた。

 

 

「うへぇ!もう、夜なのか。全然気づかなかったぜ……」

 

「とても綺麗な月ですね……」

 

「そうですか?全然見えないですけど……」

 

「今夜の晩御飯に、ピッタリだ…」

 

「え?

 

今何…!」

 

 

聞き覚えのない声が聞こえ、気になった広は後ろを振り返ると女性の体が二つに割れ、中から巨大な顔だけの妖怪が姿を現した。

 

 

「な!何だ?!」

 

「ようやく、晩飯にありつけるぞ」

 

 

「待て!!」

 

 

その声が聞こえ、ドアの方に顔を向けるとそこに息を切らした郷子とぬ~べ~がいた。

 

 

「ぬ~べ~!!郷子!!」

 

「あの妖怪何?!」

 

「あれは画皮という妖怪だ。」

 

「画皮?」

 

「皮をかぶって、女性になり男を誘き寄せ喰らう妖怪だ」

 

「けっ!邪魔が入った」

 

「俺の生徒に手を出すな!!」

 

「この俺に、勝てると思っているのか?馬鹿な人間が」

 

「南無大慈大悲救苦救難広大霊感……

 

我が左手に封じられし鬼よ。今こそその力を示せ」

 

 

経を唱えながら、左手にはめていた手袋を外し、隠されていた鬼の手が露わになった。鬼の手を使いぬ~べ~は画皮を切り裂こうとしたが、画皮はその攻撃を難なく避け、代わりにぬ~べ~に圧し掛かり攻撃した。

 

 

「ぐはぁ!」

 

「ぬ~べ~!!」

「ぬ~べ~!!」

 

「ガハハハハ!!

 

弱い弱い!この俺様に勝てるとでも思ったのか!」

 

「くそぉ……」

 

「さてと、俺は晩飯の途中なんだ。」

 

 

そう言いながら、画皮は広の方へ顔を向けた。広はビクつき辺りを見回すと、一目散に駆け出し扉の方へ向かったが、その目の前に画皮が降り立ち道を封じた。落ちてきた反動で、広はその場に尻餅をつき、恐怖のあまり震えながら画皮を見上げた。

 

 

「逃げられるとでも思ったか?!」

 

「生徒に、手を出すな!!」

 

「な~に、こいつを食ったら今度はお前だ」

 

「くっ……」

 

「ぬ~べ~!!広!!」

 

「それでは、いただきまーす!」

 

 

画皮は大口を開き、広を食べようとした。洋は食べられると思い目を閉じ死を覚悟し、見ていた郷子は手で顔を覆い隠し泣き叫び、そんな二人の様子を見ていたぬ~べ~は自分の未熟さに悔しさを感じていた……

 

 

その時……

 

 

 

 

「雷術雷刀斬!」

 

 

その声と共に、雷を纏った刀が画皮の顔を真っ二つに切り裂いた。画皮は黒い煙と共に、消滅してしまった。

 

何が起きたのかが理解できなかった広と郷子は目を開け、動けなくなったぬ~べ~のもとへ駆け寄った。広達が彼のもとへ駆け寄ると同時に、画皮を切った者は刀を腰に掛けていた鞘へしまい、屋上に設置されていた給水タンクの上へ登っていった。

 

その者の後を追うように、ぬ~べ~達は給水タンクの上を見上げた。

 

 

その上には大きい獣のような黒い影があり、先程登って行ったものはいつの間にか姿を消していた。

すると、先程まで雲に隠れていた月が姿を現した。

 

 

「!?

 

れ、麗華?!」

 

 

そこにいたのは、白い毛並で覆われた大きい狼に寄りかかる様に立っていた麗華の姿があった。


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