地獄先生と陰陽師少女 作:花札
「へへ……やっぱり、俺がいないとお前等ダメじゃん」
北館の最上階の書斎へ着いた広達……中は、大きな天体望遠鏡を中心に壁一面に本が並んでいた。
「ここが妖怪博士の書斎か……」
「呪文は金庫の中に、隠してあるって言ってましたね」
「金庫はどこよ?」
「あ!」
「あった?!」
「見ろよ!妖怪博士の本棚にこんな本が」
「スゲェ!大エロコレクターだぜ!」
「見てよ!ヘソクリよヘソクリ!」
「アハハ!『妻と私のラブラブ日記』だって」
「ラブラブ……」
「ったく、妖怪博士のプライベートなんか、どうでもいいのよ……ん?」
ふと書棚を見ると、そこに金庫が置いてあった。鍵がかかっているのか、扉が開かず郷子は石の力を借りて、金庫の扉を開けた。
金庫の中には、一冊のファイルが置いてあった。
「あったわ。このファイルに、大蛇を倒す善の究極妖怪の名前が。
ここだわ!
悪の究極妖怪大蛇、それを対抗する善の究極妖怪……その名前は……」
中を読んだ時、全員驚き目を飛び出させた。麗華(司)は腰を抜かしたかのようにして、地面に座り込んだ。
「こ、コイツが……」
「これって……こんなの、私らもよーく知ってる言葉じゃない!!」
巨大な爆風と共に、壁を突き破り飛ばされるぬ~べ~(明)と玉藻(京太)……
「フハハハハ!!どうしたどうした!
お前達、もう首がつながってないぞ!」
その言葉通り、二人は首を失くして座っていた。しばらくすると、何とか首は再生した。
「くそ……悔しいけど、だいぶ気が飛び散って陽神の肉体が傷ついてきた。
再生が出来なくなってきたぞ」
「奴は大気中の妖気を吸収している……力は無尽蔵だ」
「ククク……やっと分かったか。
ならば、死ね!!」
弾を放ったと同時に、二人が座っていた床が抜け二人は真っ逆さまにその中へ落ちて行った。
「く…しまった。
奴等をうっかり、ここに案内してしまった」
「これは、巨大な妖怪発生装置!?」
「いや……ただの妖怪発生装置じゃない!」
「ククク……まぁ、見てしまったからには説明してやろう。
これは、悪の究極妖怪大蛇の発生装置なのだ」
「大蛇!?」
「超古代……気を操る文明が残した究極の兵器。現代の核兵器をも遥かに凌ぐ、破壊兵器だ。
私はこの装置で、大蛇を作り……全世界をこの手で破壊してやる!!」
「く……マッドな奴」
「陽神君、あれを」
「……!」
玉藻(京太)が指さす方に会ったのは、巨大な光の玉だった。
「あれは……子供達の魂を集めて作った巨大な魂だ!」
「下にあるメカは……おそらくその魂を集める装置」
「その通り!!あの魂は大蛇の核となる!
そして、あの装置は呪いのゲームと連動して子供達の魂を吸収しているのだ!!
説明は以上だ!!消えろ!!」
ぬ~べ~(明)と玉藻(京太)目掛けて、久作は攻撃した。二人は辛うじて、攻撃を防ぎその場に立っていた。
「そうかい……しかし、今の説明を聞いて少し希望が湧いたよ」
「とりあえず、あの装置を壊せば呪いは消えるわけだ……奥の手をやるよ」
玉藻(京太)とぬ~べ~(明)は手を合わせた。すると二人の体は無数の小人へとなり、久作に攻撃していった。
「どうだ!こんな細かいのに、くっ付かれたら攻撃できまい!」
「!!猪口才な!
しかしこれでは……お前達も私の攻撃できまい!!」
「そうかな?僕達は粘土の様な体。鎧のほんの隙間から……」
そう言いながら、玉藻(京太)は鎧の隙間へ体を入れ、彼の腕に攻撃した。
「中に入り込んで、攻撃できる!!
アンタ、鎧の中身はただの人間だからな!」
「ぐああああ!!」
玉藻(京太)に続いて、ぬ~べ~(明)も中へと入り攻撃した。久作は転がり口から血を吐き苦しんだ。
「そーれ、呪いの装置をぶっ壊せ!!
これで晶の命は助かる!」
ぬ~べ~(明)の言う通り、病院で寝ていた晶の足の石化は治って行った。同じ様にして、ぬ~べ~と玉藻の本体も戻って行き、高校に残っている緋音の前に置かれていた真二と龍二達の身体も徐々に戻って行っていた。
「く、くそ!!
貴様ら許さんぞ!!子供の悪ふざけにしては、度が過ぎたぞ!!」
「あきらめろ」
「ぐああああ!!」
久作は鎧を外し、何とか難を乗り越えた。二人はすぐに元に戻った。
「ち!もう少しだったのに……」
「妖気を瞬間放出させて、振り払った……」
「ヴェロザザザレノナムレ……」
「アイツ……また妖気を集めているのか」
「いや……今までと少し違いますよ……」
呪文に応えるかのようにして、館内に放浪していた妖怪達、外を放浪している妖怪達が次々に館内の地下へと集まって行った。
「アイツ……館中の妖怪を吸収しているぞ!?」
「馬鹿な……あんなに妖気を吸収したら中の人間は耐えられない!!」
「大蛇製造計画の邪魔は、誰にもさせん!!
例え、この身が滅びようよな!!」
「ヤバいパワーだ」
「最後の手段というわけか」
その頃、広達は克也の石の力を借りて、どこかへ向かっていく妖怪達の後をついて行った。
「一体、何が起こってるんだ!?」
「妖怪達が、吸い寄せこられていくのだ!!」
「まさか……大蛇発生装置が?!」
「可能性大です!(凄い妖気……京都で闘った時と同じだ)」
「とにかく、後を追ってみよう!!」
「おう!!」
場所は変わり、妻・恵子がいる場所では、彼女は目から涙を流し訴えた。
『あなた……やめて。
こんな装置…不毛よ』
「妖怪を吸収してやがる!!」
次々によって来る妖怪を、久作はどんどん吸収していった。
「よすんだ!!博士!」
「それ以上、妖気を吸いこんだら、鎧の中の人間は体が持たない!!」
「ぐうぅぅ!!……ガハ!!」
口から血を吐き出し、久作は力なくそのまま倒れてしまった。
「フッ!愚かな……妖気を吸収し過ぎて、強くなるどころか自滅したぞ!」
「このままでは、死んでしまう……
鎧を脱がしてやろう」
「ク…ク…ク……自滅など、して……ない……ぞ……」
「!!」
「少しパワーが入り過ぎて、目眩がしただけだ……」
「よせ、動くな!!死ぬぞ!
鎧を取れ!!」
「構わんさ、死んでも……
大蛇が……完成するまで貴様等を……足止めできればいいのさ!」
キーボードを打つと、光の玉が光りだした。
「フフ……核となる魂は、まだ小さいが……十分、大蛇は作れるぞ」
「やめろ!!」
「やめろ!!」
「邪魔をするな!!」
止めようと飛び掛かってきた玉藻(京太)とぬ~べ~(明)を、久作は振り払うようにして投げ飛ばした。
「……大蛇、発生装置の起動方法は……
まず、装置の中央に立ち……己の心を全ての憎しみを、解き放ち……名を呼ぶ。
願わくば、わが愛する者を返したまえ……願わくば世界に、死を……」
ふと思い出すたのしいひと時……彼の傍にはいつも、愛する妻・恵子がいた。
「神よ!!私はあなたを許さない!!
大蛇!!」
その叫び声に応えるかのように、装置が起動しタイマーがセットされた。
《大蛇製造開始…誕生まであと三十分……あと三十分》
「き、貴様ぁ!!」
「邪魔はさせん!!」
すると、体内に吸収した妖気を全開し、久作の体を覆っていた鎧は変形した。その容姿は、鱗を纏った竜の様な姿だった。
久作は変身を終えると、すぐに飛び上がり二人を拘束すると、そのまま壁に突進した。
「く、くそ!!」
「痛ってぇ!!何て攻撃だ!!
コイツ、思考力が殆どなくなっている」
「まるっきり獣だ!」
二人は武器を構え攻撃した。だが久作は二人の攻撃を、予知しているかのようにして腕に刃を生やし攻撃した。
「うわあああ!!」
「思考力が無くなって、本能だけで戦っている!!奴は今、狂戦士(バーサーカー)状態だ!!」
久作は玉藻(京太)達を玩具の様に投げ飛ばしたり、地面に叩き付けたりした。
「だ、ダメだ!!このスピードとパワーでは……反撃できない!!」
「気の飛び散りが激しい!!陽神の体が保てない!!」
久作は、突然動きを止めた……そして手から細い触手を出し二人に絡ませた。
「こ、こいつ!!気を吸っている……
馬鹿な……こんな人間如きに」
「ダメだ……やられる……
すまん……広……郷子……皆」
《大蛇誕生まで、後に十分……後に十分》
「このままでは、童守町が……」
「これで、終わりなのか」
終わりかと思った時、突如何者かが久作の背中を叩き斬った。久作は苦しみ、拘束していた二人を離した。二人はすぐに顔を上げ、攻撃した方に目を向けた。
「全く……あなた方が死んで、どうすんですか!」
「神原!!」
「神原さん!!」
二人の前に立っていたのは、薙刀を持った麗華(司)だった。彼女は二人にまだいるとでも言う様に、振り向いた。
現れたのは、石の装備をした広達だった。
「戦士、広!!」
「守護の女神、郷子!!」
「最強破壊的超絶巨乳美女魔法使い、美樹!」
「妖怪使い、まこと!」
「飛翔戦士、克也!」
「童守少年妖撃団、参上!!」
「童守少年妖撃団、参上!!」
「童守少年妖撃団、参上!!」
「童守少年妖撃団、参上!!」
「童守少年妖撃団、参上!!」
彼等の予想外の登場に、麗華は呆れたように固まり、ぬ~べ~(明)達も顔を引き攣り、久作は額から汗を掻きそれを見ていた。