地獄先生と陰陽師少女 作:花札
「これは超古代の兵器よ。
持ち主の強い気持ちを感じ取って変形するのよ。凄い武器だわ!」
「そうかしら?
解せないわね!じゃ、何で私のが変形しないのよ!!郷子や広のが変形して!!
本来なら、史上初Fカップ小学生アイドル、美樹ちゃんのが一番変形するのが筋ってもんでしょうが!!えぇ!!」
「まーまー」
「フッ……神様は正しいわ」
「あれですね。きっと心のきれいな人のだけ、変形するんですね」
「何ですって!!」
広達の会話を、克也は立ち聞きし自身が持っていた勾玉を手に見た。
「……俺の何か、絶対変形しないだろうな。
怖くなって、逃げ出した……俺は卑怯者だ」
廊下を進む広達……すると、目の前に階段が見えてきた。
「見て階段よ。これで、階段が上がれるわ」
「よし!あの渡り廊下を渡れば、北館だ」
階段を駆け登り、渡り廊下を渡ろうとした時、渡り廊下の床は腐り板には所々に穴が開いていた。
「ここを渡るの?」
「落ちたら下は、尖った岩よ!死ぬわ」
(こういう時に、焔が使えれば……)
(こういう時に、俺がこんな体じゃなければ……)
「へ!何だい、ケンケンパーの要領で行けばわけねぇよ」
片足でぴょんぴょん跳ねながら移動する広だったが、一歩踏み入れた瞬間床が抜けた。それを見た郷子と麗華(司)は慌てて彼の手を掴み引き揚げた。
「バカ!!」
「腐ってるんですから、悪ふざけはやめてください!」
広を上げた郷子達は、壁にへばり付く様にゆっくりと歩いた。
「いい?慎重にね」
「あ!鼠さんなのだ!
子供がたくさんいるのだ!」
「ほっときなさいよ、そんなもん」
「おい、そこの床腐ってるぞ」
「ひ!」
「司ちゃん、絶対俺の服を離すんじゃねぇぞ!」
「は、はぁ……(お前に掴まって歩くのが、一番怖いんだけど……)」
その時、廊下の奥から電気に身を包んだ妖怪が現れた。
「うわぁ!」
「くそ……こんな所で」
「この床じゃ、闘えないわ!」
「光れ!光れ!」
「早く向こうに渡るんだ!」
広を先頭に廊下を渡り切ろうとした時、まことは足を止めた。
「まこと!何やってんのよ!」
「鼠さんが……
鼠さんをほっとけないのだ!どんな小さな命も大切なのだ!」
「まこと!!」
鼠家族の元へ駆け寄り、守る様にしてまことは妖怪に背を向けた。妖怪は彼を容赦なく襲い掛かろうとした。
『優しさ』
その時、まことが持っていた勾玉が光り彼の頭に兜が装備された。
「やめるのだ!
小さい子をいじめるな!!皆友達なのだ!!」
その言葉に反応するかのようにして、兜は光った。すると妖怪は、正気になり涙を流しその場に立ちまことを舐めた。
「へぇ……まことのは妖怪を懐かせる力があるのか」
「まことらしい、平和な武器ね」
「わあー!動物の言葉も分かるのだ!」
「私のは?」
「仲良く暮らすのだ」
「これじゃ、どんな強い妖怪も形無しだな」
「私の~」
「美樹ちゃんには、石を発動するような強い感情が無いのだ」
「そうねぇ……勇気とか友情とか優しさとか、何か飛び抜けたものを持ってないのよね」
「何だと、このチビ~!」
「よし、この螺旋階段を登れば」
「北館の最上階ね」
広を先頭に郷子達は、階段を駆け上って行った。その時、壁から巨大な岩が転がり落ちてきた。
「い!?」
「わー!」
「こ、こんな所にも仕掛けが!」
走り逃げる郷子達……その中、美樹は立ち止り前を向いた。
「美樹!何やってんの!」
「何って?フフ……
次は当然私の石が、光る番でしょ。
行きなさい!!ここは私の出番よ!」
「美樹!」
「な、何言ってんだ!?」
「さあ、光りなさい!私の石!
真打登場!ヒロイン誕生、救世主降臨よ!びかー!」
石を持ちそう叫ぶが、石は光らなかった。
「どうしたのよ!ここで光る場面でしょ!
私のだから、一番強くカッコ良くて、派手なはずでしょ!!
さあ光るのよ!光れ!光れよ!おい光れっちゅーに!」
「美樹ぃ!」
「嫌ー!潰される!」
「細川さん!!」
迫りくる岩……麗華(司)が薙刀を構え、飛び出そうとした時だった。
『虚栄心』
美樹の石は光り出し、彼女の体に鎧と杖が装備された。そんな彼女の姿を見た広達は、引き攣った顔になり飛び出した麗華(司)は、思わず転び倒れた。
「オーホホホ!!」
高笑いをしながら、杖から稲妻を放ち岩を破壊した。
「ど、どうやらあの石は、特に正しい心じゃなくても光るみたいだね……」
「スゲェ派手だ……」
「小林〇子か……」
「美樹の石も光った」
後ろからついてきていた克也は、彼女の様子を見ながらそう呟いた。その時破壊した岩の破片が、壁を壊した。
「壁を壊しやがった……何チュー無茶苦茶な攻撃……!
外の木を伝って、逃げられそうだ……俺だけ、この場から脱出できる」
壊された壁と階段を見た郷子は、美樹に怒鳴っていた。
「馬鹿ぁ!!階段がボロボロになったじゃない!!」
「いや~、悪い悪い。溜まってたもんで!
あ~、スッキリした~」
「お前、それって派手なだけで、力の制御できないんだろ」
「……仕方ありません。
登りましょう」
麗華(司)の意見に賛成し、広は先に壊れた手摺に手を掛けた。
「気を付けてね」
「おう」
「……?」
「フウウウウ!!」
郷子が何かに気付いたのか、上を見上げた。彼女と同じ様にして、焔は毛を逆立たせ唸り声を上げ、麗華(司)も上を見上げた。すると上から、無数の妖怪達が雨のように降ってきた。
「うわああ!!」
広達は慌てて、石の武器を装備し対処しようとしたが、数が多く対処しきれなかった。
「こ、こんな数闘えるかよ!!」
「ガードしきれない!!」
「友達になれないのだ!!」
「私のまた、光んない!!ぐわー!!」
「ハァ……ハァ……(ヤバい、霊力も体力も尽き掛けてる……)」
その頃、克也は木を伝い館を抜け出ていた。
「ま、頑張ってくれよな、皆!」
「ぎゃー!!」
「わー!!」
「な、何だ?やられてるのか?
し、知るかよ!俺には関係ねぇ!!」
駆け出し館を去ろうとする克也……だが、その足は止まった。
(皆……
アイツ等……こんな卑怯な俺でもずっとずっと仲間でいてくれたんだ……
そして……ぬ~べ~……晶……麗華……
く、くそ……足が動かねぇ!何かが俺を……引き留めるんだ……)
克也が自分と葛藤している中、広達は郷子が作ったバリアの中で何とか持ち応えていた。麗華(司)は咳き込み息を切らし、座り込んでいた。そんな彼女を守る様にして広は、麗華(司)の傍に寄りバリアの外を見た。
「ダメよ……バリアが持たない!!」
「これでは、ピラニアの池に落ちた鼠よ!」
「くそ……ここまでか…」
「嫌ぁ!!死にたくなーい!!」
(こんな体じゃなければ……私が)
その時、壁が壊され外から、ジェットスキーの形をした石に乗った克也が現れた。
『責任感』
「悪い、遅くなっちまって!」
「克也!!」
「カッコよ過ぎだよ―!!」
「あ、アンタのそれ、私のより目立ってる……後で交換しろよな」
「行くぜ!しっかり掴まってろよ!」
「一気に最上階だ!!」
「妖怪博士の書斎で、究極妖怪の呪文を見つけるんだ!」