地獄先生と陰陽師少女   作:花札

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潜入!!呪いの百刻館

広達の前に現れたぬ~べ~(明)……

 

 

「君等にこの事件を解決するのは、無理だ!」

 

「何だと!?」

 

(陽神君……

 

ピンチになると、いつも来てくれる……不思議な人)

 

(チ!郷子の奴、またボーっとなってやがる……)

 

(キャー!陽神君。また会えるなんて、何かラッキー!

 

でも……本当に、人間かしら?正体は何者?)

 

(あーコイツの言う通りだ……ヤバい事に首突っ込むのはやめよう)

 

(手伝ってくれないかな?陽神君なら、頼りになるのだ)

 

「ま、事件の事は警察に任せて、君等は家で宿題でもやって待ってるんだな」

 

 

言い放った瞬間、彼の背後から何者かが頭を思いっきり殴った。そしてそれに続くようにして、広がぬ~べ~(明)の頬を殴った。

 

 

「え?誰?!」

 

「君は……」

 

 

ぬ~べ~(明)を殴ったのは、紺色の長い髪を一つに結い、青い袴に身を包み方に子ぎつねを乗せた少女だった。

 

 

「ったく、何偉そうに言ってるのよ。陽神」

 

「……」

 

「そうだ!

 

お前に何が分かる!!警察や大人は、呪いのゲームの事何か、信じてくれないんだ!!

 

ぬ~べ~や晶を助けられるのは、俺達しかいないんだ!!

 

お前に分かるか!!俺達にとって友達や先生がどれだけ大事か……お前に!!

 

 

ちっ!!行こうぜ。

 

こんな奴に構っているだけ時間の無駄だ!」

 

(広……)

 

 

広達が去って行くと、郷子がぬ~べ~(明)にハンカチを差し出し殴られた頬を拭った。

 

 

「ごめんね……私分かってるわ。

 

きっとあなたは、また一人で解決するつもりだったんでしょ?

アナタが何者かは知らないけど、それこそ無謀よ。

 

 

出来るなら、協力して欲しいわ……」

 

 

病院へ戻った広達は、ぬ~べ~達がいる病室に入った。

 

 

「完全に石化してる……本当に馬鹿教師だな」

 

「う……」

 

「とりあえず、石化したぬ~べ~達はどこかに隠しておこう」

 

「そうね……知らない人が見つけて粗大ゴミに出しちゃうかもしれないし」

 

(あの時……俺は咄嗟に陽神の術で、肉体を脱出したが……玉藻は助けられなかった。

 

玉藻はともかく、コイツは……)

 

 

そう思いながら、ぬ~べ~(明)は隣にいる少女に目を向けた。

 

 

石化したぬ~べ~達を郷子達は、ロッカーの中へ無理矢理入れ、ベッドに寝ている晶に必ず助けると言い病院を後にした。

 

 

しばらく歩き、煙草屋の前の公衆電話から雪女に電話した……だが、雪女は仕事の関係で北海道に行っていた。

 

 

「どうする?

 

本当に私等だけでやるの?」

 

「今更後に退けるか。

 

そう言えば、さっきから気になったんだけど……お前、何者だ?」

 

 

広は後ろにいるぬ~べ~(明)と一緒にいた少女に問いかけた。

 

 

「神原司(カンバラツカサ)、小学四年生です。それから、この子狐は私が飼っている焔です。

 

陽神君に用があって、童守病院に来たんですが、どうやら一大事みたいですし……

 

 

私も手伝うことがあるなら手伝います。これでも一応、霊媒師の血を引いてる身なんで」

 

「本当か!」

 

「それは助かるわ!

 

あ、そうだ。自己紹介まだだったわね……私、稲葉郷子!」

 

「俺は立野広」

 

「俺、木村克也」

 

「僕は、栗田まことなのだ。

 

これでも、小学五年生なのだ」

 

「私、細川美樹よ。美樹お姉様と呼びなさい!」

 

「呼びません。

 

 

それより皆さん、丘に行く前に私の古い友人の家にいきません?

 

武器も持たずに行くなんて、死に行くようなものですし」

 

「それもそうだな……よし、行くか!」

 

 

そう言われ、郷子達は司について行った。前を歩く司に、ぬ~べ~(明)は話しかけた。

 

 

「お前がいて助かった……麗華」

 

「やっぱり、アンタには分かったか」

 

「当たり前だ。

 

まさか、お前が札で脱出したとはな……」

 

「見縊らないでよ。

 

言っとくけど、陽神の術と違って霊力は普段と変わらないから」

 

「……」

 

「全く、咄嗟だったから姿が狐になっちまった……」

 

「いいじゃない。その姿も可愛いよ、焔」

 

「……」

 

 

頬を赤くし、焔はそっぽを向いた。

 

 

しばらく歩いて行き、郷子達が付いた場所は麗華(司)の家だった。

 

 

家に着いた麗華(司)は、山の中にある蔵へと行き、鍵を開け中に入った。

 

 

「すっげー!麗華ん家、蔵もあるんだ……って、お前麗華と知り合いなのか?司ちゃん」

 

「はい。以前除霊の時に、助けてもらったことがあって……それ以来、文通しながら連絡しているんです。

 

私、東北の方に住んでいるんで」

 

「え?じゃあ、何で今」

 

「持病があって……寒い東北より、設備が整った都会の方が良いだろうってことで、一人こっちの病院へ来てたんです」

 

「寂しくないの?親と離れて暮らして」

 

「大丈夫です。

 

父も母も、仕事で家にいませんし……

 

 

それに今は退院して、親戚の家に住んでますし」

 

「そうなの……」

 

「けど、何で陽神に用があったんだ?」

 

「彼も文通相手の一人で、童守町で起きてる事件を調査するのに手伝ってもらいたくて……待ち合わせ場所を病院して、待ってたんです。

 

 

あ!ありました!」

 

 

一つの木箱を見つけた麗華(司)は、蔵から出て来た。木箱の蓋を開けると、中には五つの短剣が入っていた。

 

 

「霊力の弱いあなた達でも、使える短剣です」

 

「短剣かよ~。

 

どうせなら、麗華や龍二さんが使ってるような薙刀や剣がいいなぁ」

 

「……持ってみます?」

 

「え?」

 

「麗華さんと同じ薙刀を持っているんで、よかったらどうです?」

 

 

そう言いながら、麗華(司)は自身の薙刀を出しそれを彼に向かって投げ渡した。受け取った広だったが、貰った瞬間その薙刀はとても重く彼は一緒に床に倒れてしまった。

 

 

「お、重い……」

 

「大丈夫ですか?」

 

「こ、こんな重いもの……お前も麗華もいつも持ってたのか?」

 

「まぁ、そうですね」

 

 

麗華(司)は薙刀を拾い、軽々と振りながら広に答えた。

 

 

「陽神には、これ貸すよ」

 

 

そう言いながら、麗華はぬ~べ~(明)にヨーヨーを渡した。

 

 

「これは、霊殺石」

 

「麗華さんの家に生まれて始めに扱う武器だそうです。

 

霊力の低い、あなたなら丁度いいでしょ?」

 

 

悪戯笑みを浮かべながら、麗華はぬ~べ~(明)を見た。

 

 

「つーか、お前も行くのかよ」

 

「陽神君は何かといて、便利ですから。

 

いればいるだけで、案外頼りになりますよ」

 

「まぁ……司ちゃんがそう言うなら」

 

 

気が進まない広だったが、武器も整ったところで、彼等は明が書いた地図を頼りに歩いて行った。

 

 

「麗華、悪いな」

 

「別にいいって。

 

アイツ等が何か仕出かすのを感ずいて、アンタ陽神の術を使ったんでしょ?」

 

「まぁな」

 

「私もそうだし。

 

さっきも言ったけど、霊力はアンタより私の方があるから、そこん所はよろしく」

 

「この不良娘が」

 

 

丘を歩いて行く広達……以前言ったオーパーツを見つけた童守遺跡のすぐ傍に、古い館が建っていた。

 

 

「この洋館が、ここにあの呪いのゲームを作った奴がいるのかも……」

 

(やばいぞ……まるで、刺すような妖気を感じる)

 

 

ぬ~べ~(明)が感じる様に、麗華(司)と彼女の肩に乗っている焔は毛を逆立たせて、威嚇の声を上げた。

 

 

(結構、ヤバいか……)

 

 

そんな彼等を、洋館の窓から黒い帽子とマントを被った物が眺めていた。

 

 

「ヴェロキラフユラヌラトトニラ……

 

ロロトヌラアユヌフラ……」

 

 

眺めていた者は呪文を唱えた……すると、庭に置いていた岩が光り出し空からつるべ落としが降ってきた。

 

 

「キャー!!」

 

「そ、空から妖怪が!?」

 

「これはつるべ落とし!」

 

「つるべ落としって、確か樹上から人を襲い、生気を喫ってミイラにする妖怪よね?」

 

「そのはずだが……何で、こんな所に!?」

 

「外は危険だ!

 

屋敷の中へ入れ!!広君、頼む!」

 

「お、おう!」

 

 

広は克也と共に、扉を体当たりし中へと入った。全員が中へ入った瞬間、扉は締まりビクとも動かなくなった。

 

 

「あ、開かない」

 

「窓も鉄格子が」

 

「どうやら……この主人は俺達を、大歓迎で招き入れてくれるようだ」

 

「とにかく、ゲームの呪いを解くカギはこの館の主が握ってるはずだ。

 

探し出して、話を聞こうじゃないか」

 

 

そう言い、広達はぬ~べ~を先頭に廊下を歩いて行った。絵画が飾られた廊下を歩く広達……彼等を絵画の目から覗く黒服の者は、再び呪文を唱えた。その瞬間通り過ぎた絵から庭に会った石が浮き出て光り出した。

 

その瞬間、広は背後から異様な気配を感じ後ろを振り向いた。そこにはしょうけらが唸り声をあげていた。

 

 

「キャァアアア!!」

 

「しょうけら……こんな妖怪がなぜ、突然……」

 

「よっしゃぁ!闘うぞ!」

 

 

そう言いながら、広達は短剣を構え一斉に飛び掛かった。だがしょうけらは、そんな彼等の攻撃を防ぐかのようにして、腕を思いっ切り振り短剣を吹っ飛ばした。

 

 

「剣が!!」

 

「危ない!!」

 

 

しょうけらの攻撃に当たり掛けた広を、ぬ~べ~(明)が助けた。二人の前に麗華(司)は立ち、持っていた薙刀を構え攻撃しようと、振りかざした。

 

だがその瞬間、しょうけらの背後から何者かが飛び出てくるなり、持っていた武器を振り下ろした。しょうけらは力無く倒れ、それと共に武器を持った者が広達の前に立った。

 

 

「霊能力もロクに使えないくせに、無茶はよしたまえ……陽神君」

 

(この妖気……)

 

(まさか……)

 

 

ハンチング帽を被り、首さすまたを手にした少年は、麗華(司)とぬ~べ~(明)を見て微笑した。

 

 

「そんなことより、僕と陽神君、それから神原さん以外は、早くこの館を脱出した方がいい。

 

 

僕なりに調べて分かった。

 

ここは妖怪を自在に操る、妖怪博士の館だ」


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