地獄先生と陰陽師少女   作:花札

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童守公園、午前零時……

その日かつてない危機が、童守町に降り立った。



ゴミ箱を探り野良犬……その時、回転ジャングルジムに電気が走り、次第にジャングルジムは激しく回転した。


異様な気配に、童守町にいるぬ~べ~、玉藻、いずな、雪女(ユキメ)が感知し作業していた手を止めた。
同じ様にして、異様な気配に焔と渚は気づき、唸り声を出し警戒し麗華の肩に乗っていたシガンも毛を逆たせ警戒した。彼等の反応に、麗華と龍二もすぐに気配を感知し、外へ出て空を見上げた。


回転ジャングルジムは、粉々に壊れそこから鬼のような影が現れた。


「ここか……

鬼を封じた人間がいるというのは」


史上最大の激戦・絶鬼襲来

一夜明けた翌日……

 

 

雨が降る中、郷子は広と相合傘をしながら歩いていた。相合傘をする二人を、後ろを歩いていた美樹が話し掛けた。

 

 

「あ~らお二人さん、お熱いのね~朝から相合傘なんて!」

 

「な、何言ってんだよ!!郷子が」

「退いた退いた退いたぁ!!」

 

 

声を発しながら、誰かが走ってきたが足を滑らせそのまま転び、着いた先に郷子達がおり彼女たちは転んだ人物を見て驚いた。

 

 

「い、いずなお姉様……」

 

「お、おはようございます」

 

「気をつけなよ」

 

「それはいずなさんじゃ」

 

「(その通りだけど)違う!

 

いいか。昨日童守町にとてつもなく、邪悪な妖気が感じられたんだ。あれ程の妖気を持つ者は……?」

 

 

その時、校門前に一台の車が止まり、中から玉藻が姿を現した。

 

 

「強力な妖気!

 

さては、昨日の!」

 

 

いずなは自身の能力である、自然発火し玉藻を睨んだ。玉藻は傘を差しながら、郷子達の声を掛けた。

 

 

「皆さん、鵺野先生を知りませんか?」

 

「やい妖怪!命は貰ったよ!

 

霊力!自然発火!」

 

「何です?この小娘は」

 

 

いずなが放った火を、玉藻は難なく弾き返しいずなに浴びさせた。丸焦げになった彼女の横を、玉藻は通り過ぎ校舎の中へ入った。

 

 

「大丈夫?いずなお姉様」

 

 

煙を口から吐きながら、いずなはその場に倒れた。

 

 

「あぁ!もう!

 

兄貴は早く、学校に行け!!自分の!」

 

 

怒鳴り声が聞こえ、校門に目を向けるとそこに言い合う麗華と龍二がいた。

 

 

「あれって……」

 

「麗華だな。けど何で龍二さんが」

 

「昨日の妖気、感じ取っただろ!!お前一人で行かせられるか!」

 

「一人じゃありません!焔と雷光、氷鸞もいるし、シガンもいます!」

 

「そういう問題じゃねぇ!

 

とにかく、あの妖気の持ち主倒してから、俺は学校に行く」

 

「ちょっと兄貴!!渚!止めなさい!」

 

「ああなると、手におえん」

 

「……もう!兄貴、待って!」

 

 

先行く龍二の後を麗華は追いかけて行き、二人は郷子達の間を通り過ぎて校舎の中へ入った。

 

その時、倒れたいずなは何かに気付き、立ち上がり空を見上げた。

 

 

「妖気!

 

出たな!悪霊め!!」

 

 

自然発火しかけた時、空から雪の雪崩が落ちいずなはカチンコチンに凍ってしまった。彼女の横に雪女が降りてきた。

 

 

「誰が悪霊ですって!

 

こう見えても私は、由緒正しき雪女なんですから!全く!」

 

「アハハ……

 

そういえば今日、皆大集合ねぇ」

 

「そうだなぁ」

 

 

笑いながら、郷子達はいずなを置きそのまま校舎の中へ入って行った。

 

 

職員室では、ぬ~べ~は霊水晶を見ていた。その時、窓から雪女が、職員室のドアから玉藻が現れた。

二人は目が合った瞬間、雪女は氷を玉藻は火を放った。二人の間にぬ~べ~が割って入り、片方に凍傷もう片方に火傷を負った。

そこへ、いずなと麗華達が駆け付けた。

 

 

「そう言えば、皆初対面だったね」

 

「私は玉藻といずなにはあってるけど、この雪女には会ったことない」

 

「俺は狐野郎には会ったが、そこにいる霊力ゼロの女と雪女には会ったことない」

 

 

そう言いながら、麗華は保健室にあった救急箱から、冷えぴたと包帯を取り、やけどを覆った片方を治療した。もう片方の凍傷を負った体を龍二は保健室から借りた湯たんぽを置き温めた。

 

 

「というより、何で龍二がここにいるんだ」

 

「兄からストーカー」

「コラ!!兄をストーカー呼びするな!!

 

 

昨日の夜、ヤバい妖気がここに来て……ってか、全員分かっててここに来たんだろ?」

 

 

龍二の言葉に、皆が頷いた。

 

 

「昨夜、何かとてつもない妖気を持つ何者かがこの町にやって来た」

 

「やっぱり……先生も感じたんですね」

 

「私も感じた」

 

「俺達もだ。というより、最悪な妖気だ」

 

「おや?君達兄妹は分かっているみたいですね。

 

しかし、しょうがない二人(いずなと雪女)ですね。妖気を感じただけか……正体を気付いていないとは」

 

「え?」

 

「教えてやろう。あの妖気は」

「いや待て。俺から言おう。

 

あの妖気……俺の左手と同じレベルの鬼だ」

 

「!!」

 

「鬼の手を持つ俺が感じたんだ……間違いない」

 

「そ、その鬼ってどれくらい強いの?」

 

「そうだな……出現した時の妖気から推定して、ざっと鵺野先生の霊力の五百倍」

 

「ハハ……じゃ、私の霊力だったら?」

 

「五千倍。

 

ちなみに、麗華君とお兄さん、二人の霊力を合わせても鬼の霊力は百倍」

 

「嘘……」

 

「そこまであるのかよ……」

 

「この鬼の力を抑えていられるのは、美奈子先生が自分を犠牲にして内から封じてくれているからだ。

 

真面に闘ったら……俺は虫けらのように潰されていただろう」

 

「で、どうすんの?」

 

「あの鬼はこの鬼の手の鬼と何か関係がある……そんな気がるする…いや感じるんだ。

 

皆に迷惑はかけられない」

 

「せ、先生!」

 

「奴は俺がいるからここに来た。俺一人で何とかしないと」

 

「そんな……一人で何ができるの!?」

 

「ま、せいぜいこの町の人間を傷付けないよう誰もいないところで鬼の殺される……それぐらいか」

 

「そんな!」

 

「とにかく、我々が束になって掛かったところでどうしようもない相手なんだ。来てくれてのはありがたいが俺の問題だ。帰ってくれ」

 

「勝手な事ばかり云うな」

 

「?」

 

「アンタ、散々私達に手を貸したでしょ。

 

借りっぱなしは嫌いなの」

 

「だから今回の件、俺等も協力する」

 

「龍二……」

 

「それに、もしかしたらアンタの手に封印されてる鬼とそのここに来た鬼……こっちにも少しばかし用はあるし」

 

「どういう事だ?」

 

「追々説明する」

 

「私も残ります!先生が何と言おうと」

 

「バカを言うな!」

 

「こんな形でライバルを失うとは……

 

だが万に一つ、何か方法があるかもしれない。考えてくるとしましょう」

 

「わ、私まだ修行中だしぃ?半人前だしぃ?ハハハ」

 

 

そう言いながら、いずなは玉藻に続いて帰って行った。麗華と龍二は呆れ顔をしながら彼女に対してため息を吐いた。

その時、肩にいたシガンが唸り声を上げ、毛を逆立たせながら上を見上げていた。

 

 

「シガン、どうした?」

 

「フウウ」

 

「シガン?」

 

 

学校を出たいずなは、道を歩き自身の学校へと向かっていた。

 

 

「冗談じゃないよ。

 

力が数百倍の敵と戦って、勝てるわけないじゃん。あの先生終ったね。

 

あーあ、いい喧嘩相手だったのに……

 

 

ま、いずなちゃんはまだまだこれからだしぃ。霊力建て今は小さいけど、この先何百倍も成長するしぃ。いい男と結婚してお金持ちになって」

「ねぇ、君」

 

 

後ろから声を掛けられ、いずなは振り向いた。そこにいたのは白い学ランに身を包み青い髪を生やした美少年だった。

 

 

「今、どこから帰ってきたの?」

 

 

そう質問すると、少年は鼻を動かしいずなの体の匂いを嗅いだ。

 

 

「な、何よ…ナンパ?(わ!サラサラの髪の毛……わりと好みかも)」

 

「鬼の匂いがする……鬼を封じた者の仲間だね」

 

「え(妖…気)」

 

「まずは、仲間を血祭りにあげて、戦いの序曲に添えるとしよう」

 

「お、鬼の手!?」

 

「死んでご覧」

 

 

つかさずいずなは、数珠を取り出し抵抗しようとしたが、彼は鬼の手から波動を出しいずなを攻撃した。いずなは傷を負い、そのまま倒れてしまった。

 

 

「一撃だったね……無言の死もまた美しい」

 

 

するとたまたま通りかかった子供が、持っていた玩具を落としおじけ突き立っていた。子供に気付いた少年は、後ろを振り返り鬼の手を翳した。

 

 

「人間の子供か……見ていたんだね。僕のアート(殺し)を。

 

見物料は命だよ」

 

 

子供を襲うとした時、背後から炎の渦が放たれ、少年はその攻撃を受けたが拭くが焦げた程度で済み、後ろを振り返った。そこには少年が倒したはずのいずなが、息を切らして立っていた。

 

 

「驚いたな。普通の人間なら十人は消し飛ぶぐらいの妖力波だったはずだよ」

 

「その子の傍から離れろ!!

 

アンタ、人間より何百倍も強いんだろ?弱い者殺したって、面白くないはずだろ!?」

 

「そうかな?それは人間の道徳観だろ?

 

僕は鬼……だから、十分面白いよ。君達人間が虫けらのように、もがき苦しんであげる断末魔の叫びがメロディとなって、僕の心を安らぎを与えてくれるのさ」

 

「何してんだ!早く逃げろったら!」

 

「さぁ……聴かせておくれ。

 

君の……断末魔の歌声を!」

 

 

鬼の手に妖気を溜め、少年はいずなの顔を殴り飛ばした。いずなは殴られた勢いで、コンクリートの塀に激突した。彼女の姿を見た少年は、腰を抜かし座り込んでいる子供の方を向いた。

 

 

「わ…わ…わああ!」

 

「待たせたね…君の番だ」

 

 

殺そうと手を振り下ろした時、倒したはずのいずなが少年を抱きかかえ、その攻撃を背中に喰らい地面に転がり、口から血を吐き咳き込んだ。

 

 

「お、お姉さん!」

 

「不思議だ……どうしてあの女の子は生きているんだろう?

 

リフレインは一度でいいよ。もう君の声は聞き飽きた……ほら」

 

 

鬼の手から妖気波を放ち、いずなを攻撃した。いずなは自身の霊気で体を覆い攻撃を防いだ。

 

 

「アハハ、なるほどね。そういう事か。

 

 

君は無意識のうちに、霊気のバリアを作っていたんだね。それでダメージを抑えていたんだ。君の低い霊力でよくまあ……きっと、火事場の馬鹿力って奴だね。

 

面白い手品を見せて貰ったよ……でも、ネタが分かったらもういいや。今度はさっきより、ちょっと強めに攻撃してあげる……これでコーダ(最終楽章)だよ」

 

「畜生……好き勝手やりやがって。

 

イタコのサラブレッドいずなを舐めんなよ。お前なんかにこの子を傷付けさせない!弱い者を甚振って、喜んでるお前なんかに……絶対負けない!!」

 

「ヤダナァ…力んじゃって。君に何ができ」

 

 

ふといずなを見ると、彼女の霊気が上がっていき、いつの間にか霊気玉が出来ていた。

 

 

「へぇ……炎の温度をさらに上げて、光球現象を起こすなんて。

 

こんなことは人間界では、かなりの霊力を持った者しかできないはず。他人を守ろうとすることで、そんな力が出せるのか?」

 

「そうだ!!霊能力者は、人を救うために命をかけるもの!!そう……あいつが教えてくれたんだ!!

 

くたばれ、鬼め!!」

 

 

出来上がった光球をいずなは、少年目掛けて投げ飛ばした。光球は少年に当たり激しい爆発音を出し、辺りに煙を漂わせた。

 

 

「やった!!命中した!!」

 

「凄い!お姉さん強い!」

 

「当然って感じ?あはは……やっ…」

 

 

喜びに浸っていたのもつかの間だった……いずなの胸を刀が貫いた。目を凝らすと目の前に、少年が笑みを浮かべて、残念そうに彼女を見ていた。

 

 

「あああああ!!」

 

「あぁ…美しいよ。そのメロディ(断末魔)。

 

君は最高の楽器だねぇ……」

 

「ち……畜生……」

 

 

口から血を吐きながら、いずなは力が抜けその場に倒れてしまった。少年は刀の形になっていた手を元に戻した。

 

 

「他人を守ろうとすると、力が上がるなんて……以前にも聞いた言葉だね。

 

面白い女の子だった。誰かに教わったとか言ってたが……?」

 

 

向こうから、人のざわめく声とパトカーのサイレンが響いてきた。

 

 

「人が集まって来たね。

 

奴に合う前に、騒ぎはごめんだ」

 

 

そういうと、少年は煙の様にして姿を消した。残された子供は、血塗れで倒れたいずなに泣き付き、そこへ警察官が駆け寄った。




「いずな!!」


数分後、玉藻から連絡を受けたぬ~べ~達は、慌てて童守病院へ駆けつけた。玉藻に案内され、彼らはいずなが眠っている病室へ入った。いずなは体中に包帯を巻き、酸素マスクを着け心電図モニターを着け、油断できない状態だった。


「瀕死の重傷だ。普通の先生なら、諦めていただろう……

私が気を送り込んで、何とか傷は塞いだが」

「畜生!!なぜ……なぜいずなを!!

狙いは俺のはずだ!」

「アンタだけじゃないんでしょ……目的」

「麗華君の言う通り……

奴の目的はまだ分からないが、一つだけハッキリした事がある」

「何だ?それは」

「奴がとてつもなく、凶悪だという事です。

奴は目撃者の子供まで殺そうとした。もはや、アナタだけの問題ではない……我々と共に戦わせていただく」

「しかし!」

「そうです先生!一人で戦っても殺されるだけです!!」

「とりあえず、私と鵺野先生、麗華君とお兄さん、それにその雪女が戦闘力が高い……万一の場合、この五人で闘う事にしましょう」

「五人じゃない……焔達もいる。合わせれば十一人になる」

「そうですね……」

「すまん……皆」


申し訳なさそうにして、、ぬ~べ~は皆に礼を言った。すると麗華の肩に乗っていたシガンが、またしても毛を逆立て声を荒げながら、攻撃態勢に入った。シガンの直後、彼らは何かに気付きカーテンを開け窓の外を見た。


外にはあの少年が立っていた。

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