前世も現世も、人外に囲まれた人生。   作:緑餅 +上新粉

44 / 58
一月に終わってほしくない...あぁ、俺の平穏が崩されていく...。所詮は砂上の楼閣だったんだ。

とまぁおふざけはここまでにしておきまして。この話は戦闘前の約束をアザゼルに果たして貰う回です。


File/41. 疑審案起

 ────────ある白髪神父は言う。

 

 

『はぁ?カミサマ?そんなの本当にいると思ってるんスか旦那。...こんな状態の世界を知った上で神様が居るなんて、社畜のオッサンが突然サンタクロースを信仰し始めるのと同じくらいオカシイ話っスよ。そんな事よりミリーちゃんの攻略法を教え』

 

 

 ────────ある聖剣所持者は言う。

 

 

『おい、もう一度言ってみろ。神がおらんだと?幾らお前でもそれは聞き捨てならん。我らは天上の神の膝元でしか生きられないのだ。仮に消失したとしたら、それは我らの存在意義が失われたことを意味する。だからこんな訳の分からない質問は止めてくれ。これをイリナに言ったらお前エクスカリバーで刺されるぞ?』

 

 

 ────────ある龍神は言う。

 

 

「神?...確かに、そう呼ばれる大きな存在が最近消えた。同時に、今まで世の条理を担っていた基盤の一つが消失。結構危ない状態だった。我には関係ないけど。...でも、抜けた穴はすぐに元に戻された。問題ない。たぶん」

 

 

 そして─────ある堕天使幹部は、こう言った。

 

 

『かまわん。あの聖剣使いが聖と魔を一つに混じり合わせた剣を創り上げていた光景を見て、神の死に気付きつつあったからな。いずれはこうなる運命だったのだ』

 

 

 ──────神の死。

 

 あの時は考えているヒマがなかったから、違和感を感じつつも思考の隅に追いやっていた。しかし、もし俺が教会に属する人間や、天使、堕天使だったのなら、己の命など一切顧みず、その場で血相を変えて問い詰めていたはずだ。

 だが、少し待ってほしい。さる龍神が言っていた通り、聖書の神が担っていたシステムが抜け、神器の異常が見られた。並行して信仰の乱れという事態も発生しているようではあるが、やはりその『異常』がイマイチ実感しきれていない。なので、本当に神が死んでいるのかどうか疑問に思っていた。

 

 しかし、ようやく。...ようやく、その真実を知るだろう人物から、確実な答えを貰える状況を作り出せた。

 

 

「じゃあ、アザゼル。事前の約束通り、質問には答えてもらうぞ」

「おうおう。何でもいいぜ?好きな食いモノ、好きなゲーム、好きなタイプの女、好きな女のオとし方。全部聞かれりゃ真実と本音を言ってやるから、メモ用意しとけよな!」

 

 

 早速冗談をかます緊張感のないアザゼルに思わず溜息が出る。取りあえずこの空気を断ち切るため、好きな女のオとし方というセリフに過剰反応して、メモ用紙を黙々と用意し始めたイッセーの頭を叩き、アザゼルを戦闘時と同等の眼光で射抜く。それで俺の言わんとすることが伝わったか、彼は腕を組みながら深く呼吸をし、座っていた部室のソファへ更に体重をかけた。若干つまらなそうな態度を端々に見せているのが気に喰わないが、できる限りこの男の言を嘘と勘繰ってしまうような雰囲気は作りたくない。

 

 

「聖書の神が死んでいるというのは本当か?」

 

「──────」

 

 

 その言葉が終わったと同時、アザゼルは今まで浮かべていた笑顔から一転し、色濃い疑問と微量の驚きが混じった表情へと変わった。そんな彼からはプレッシャーの類こそ感じられないものの、ここまで取り乱すということは相当なタブーなのだろう。

 実際、俺の背後に控えていたオカ研部員たちは、動揺を隠せずにはいられなかったようだ。

 

 

「ちょっとコウタ!?いきなり何を言って────」

「コカビエルか、ツユリ」

 

 

 声を荒げるグレモリー先輩を遮るようにして俺に質問を飛ばすアザゼル。それに対して頷きを返し、コカビエル戦にて見聞きしたことをほぼそのまま彼に語った。無論その内容には木場の聖魔剣発現のことが入るので、グレモリーの騎士は思わぬタイミングで話の中心に上げられて驚きつつも、どこか納得したような表情をしていた。

 そう。神の設定したシステムでは、聖と魔は交わることのない独立した属性でなければならない。そして過去、神に対する強い信仰心を持っていたはずの木場が認めてしまうということは、この法則が崩れているのはやはり異常だというのか。

 

 

「ったく、コカビエルの野郎も口が軽い。やっぱこういう輩が居る内輪で情報統制なんて無理な話か」

「...否定しないということは、やっぱり」

「ああ、そうだ。もうここまでネタばらししちまったし、俺個人の勝手な口上ではあったが、約束は約束だ。この際はっきりと言わせてもらう。聖書の神は大戦時の混乱で死んじまった。これは紛れもない真実だ。...あぁーあ、俺もコカビエルの事を馬鹿だアホだと言えねぇな」

「そ、そんな。.....そんなの...嘘」

「ッ?!アーシア!」

 

 

 イッセーの切羽詰まった声で、アーシアさんが床に座り込んでしまったことに気付く。彼女の顔は一目で分かるほどに青ざめ、手足は小刻みに震えていた。

そうか。アーシアさんはその道の信徒ですら感心するほどの信仰心の持ち主だ。悪魔となったことで祈りを捧げられないことを心から悔やんでいるあたり、この話題は彼女に対しあまりにもダメージが大きかったか。

 これ以上アーシアさんにここで話を聞かせるのは酷だろう。俺はそう判断すると、最も気心の知れた相手であるイッセーに頼み、保健室に寝かせて彼女が回復するまでの間付き添ってくれるようお願いした。

 

 

「なんだ。悪魔になってでも未だに信仰をしてる子がいたか。これは悪い事しちまったな」

「いや、俺が言う前に気付いてればよかったんだ。配慮が足りなさすぎた」

 

 

 アザゼルはバツが悪そうに頬を掻き、俺は己の迂闊さを呪った。いずれ知らさねばならない事ではあるが、場所と言葉を選び、もう少し緩衝材に包んだ伝え方も出来たのだ。...しかし、今更悔やんでも後の祭り。今は目的を達成することに念頭を置こう。

 

 ───さて。もし、本当に神が死んでいるのなら、何故この世は存在していられるのか。世界を席巻している神のシステムが機能していないのなら、宇宙規模ではないにせよ世界の法則が乱れ、国の秩序や理性は消失し、文明は滅んでしまう。それくらいは起きていてもおかしくはないはずだ。

 

 

「...アザゼル。神が居ないんだとしたら、今天界の最上位に就いているのは誰?」

「ミカエルさ。アイツは元々誰より神の近くにいたから、そういうことにゃ一番に聡い。名前くらいは知ってんだろ?」

「ええ。彼が天使として大きな力と地位を持っていたことは知っているわ。...でも」

 

 

 言葉の途中で声を切り、グレモリー先輩は木場の方へちらりと目を向ける。いや、正しくは木場の力を再確認した、か。そして、彼女は俺と同じ疑問を持ったようだ。

 しかし、グレモリー先輩が疑問として口に出す前にアザゼルが先手を打った。

 

 

「神様が居なくなってんのに、何でこの世の中は普通に動いてんのか、だろ?でもなリアス・グレモリー、そんなことを幾ら必死になって考えたって仕方ねぇんだよ。平気なら平気でいいじゃねぇか。ワザワザ大問題としてガンガン騒ぎ立てて、今だって戦争後の山積みな問題を増やしたかねぇよ」

「...っていっても、絶対無駄だろうな」

「なんだ、よくわかってんな。ツユリ」

 

 

 無駄だ。そんなことを知ったら騒がない方がおかしい。天界に住む天使たちは、先の聖剣所持者のように神の存在が在ってこそ世に生を受けた意味を実感できる、などと本気で思っている輩が五万といるはず。無論、彼らと同じではないにせよ、他の派閥にも深刻な動揺が広がってしまうだろう。

 今はまだ、三すくみの戦争から完全にほとぼりが冷め切っていない状態だ。そこに神の死などという最悪の起爆剤を投下すれば、確実に天界もろとも全世界が傾く。

 

 

「いいか?この事実がひた隠しにされ続けている理由は混乱と動揺の抑止、これに尽きる。今はひたすら各勢力共に自陣の修復に専念してりゃいい。...ぶっちゃけ、神の死以前に現魔王に対して不満たらたらな旧魔王支持の奴等が、最近『禍の団(カオス・ブリゲード)』って最悪なテロリストどもへ肩入れしようとしてる動きがある。これに神様親衛隊なんて過激派組織に出てこられた日にゃ、いよいよ世界の終わりよ」

「ということはアザゼル、神の死を公表することは今後もないのね」

「ああ、何とか誤魔化してやっていくしかない。だが、俺たち上位の輩から情報が洩れる可能性は低くねぇ。お前たちも知っちまったものは仕方ないが、統制はしっかりとってくれ」

 

 

 俺たちはことの深刻さを受け止め、神妙な顔で頷く。しかし、皆のその表情には色濃い動揺が見られていた。

 

 俺は今も昔もほぼ無宗教で、仮に関わるとしても、何かに困ったときや初年度のお参りにだけ神社へ行き、名前もろくに知らない御神体へ向けて願掛けをする程度のものだ。そもそも、奉られている神様仏様が実際に存在するのかという疑問を抱いたことすら少なく、信仰心は無いに等しい。つまり、俺を含めた日本人のほとんどは、神とは自分にとって都合のいい依存対象でしかなかったのだ。

 そんな俺でも、天界にいるという聖書の神についてグレイフィアさんから聞いたとき、今あるこの世が神の創ったシステムの下に成り立っているのだと思い知り、神の偉大さを痛感した。...それでも信仰心はないが。

 

 アザゼルは疲れたような溜息を吐くと、テーブルの上に置いてあったティーカップを掴み、優雅さなど欠片もない所作で一気に中身を煽ってから、足を組み直してソファに頭を預けた。

 

 

「んで、質問はこれだけでいいのか?確かに神の死についてはご法度な案件だが、事のヤバさを言理解した上で静観を決め込めるお前らなら、軽率な言動はしないだろ。ま、仮にも命張ったんだ。お節介かもしれんが、割に合わねぇと思うぜ?」

「.....そうだな。じゃあもう一つ」

「おうおう、いいぜ。最初ので十分驚かせられたからな、ちょっとやそっとじゃ動じねぇぞ」

 

 

 さて、どんな質問をしようか。どうせならこの場限りの好奇心ではなく、今後に役立つ知識を得たいところだ。

 

 個人的に昔から興味を抱いていたのは、この世界の魔法、魔術の成り立ちだ。過去Fateの魔術論理に組み込んだらどんな化学反応を起こすのか、グレイフィアさんからそのことを教わるのを楽しみにしていたのだが...俺の体内には()()()()()()()()()が無かった。いやもう皆無。端数なしのゼロ。

 体内に『魔力』が一定量なければ、この世界の魔法、魔術の類は一切行えないらしく、結局グレイフィアさんの魔術講座は絶望的となってしまった。何とか食い下がろうと疑似魔術回路に聖杯の魔力を流しても、何故か感知して貰えなかったこともあり、あのときは本気で自分に魔術の才能がないのではと疑ったものだ。しかし、それに反してコッソリ読み漁った魔術に関する書物の通りに結界を敷設したら、やはり陣は起動し、目論見通りの力が行使された。コカビエルのときといい、俺の聖杯はそこまで厳重に秘匿されているのだろうか。

 とまぁ、そんなこんなで知りたくても知れなかった魔術についての知識を聖書に記されるほどの大物堕天使から聞けるチャンスが、今まさにココではあるのだが...。問題は、どうやって自身に魔力があると証明するかだ。普通に聞いたら、またグレイフィアさんと同じ結果になりかねない。まずは遠まわしに...

 

 

「アザゼル。俺に魔術の才能はあるか?」

「ん?ねぇぞ」

 

 

 見事に一刀両断され、俺は思わず前のめりに倒れそうになった。てか、アザゼルの言った魔術の才能/zeroが本気だったら、魔力/zeroとも断言される可能性が激高じゃねぇか!

 そんな俺の反応を見たアザゼルは満足そうに笑うと、「安心しな」と前置きを挟んでから言葉を続ける。

 

 

「お前は魔力がからっきしだが、あれだけの技を全て神器で賄ってるんだ。正直気になって仕方ねぇが、長年それを扱って来た俺でも全く機構が理解できねぇ」

「ちょ、ちょっと待ってくれ!俺には神器なんてものはないぞ?」

「.....なに?」

「そうよ、アザゼル。コウタに神器はない。これは本人から聞いたことだし、使用者の意図なくして発動する神器なんて、そうそう存在しないでしょう」

「じゃあ何だ。俺が神器だと思ってみてたモンが、実は違うってことなのか?」

 

 

 アザゼルは訝し気に顎へ手を当て、部室の白い天井を見ながら考えに耽る。時折俺の方を見て目を細めるが、やはり無理だったようで「駄目だ、分からん」とぶっきらぼうに答えると、膝を叩いて勢いよく立ち上がった。

 分からないというからにはこれで終わりなのだと思っていた俺だったが、アザゼルはポケットの辺りをゴソゴソやりながらコッチへ近づいてきて、引き抜いた手に何かを握ったところで立ち止まった。

 

 

「仕方ねぇから秘密兵器の登場だぜ。これぞ俺の発明した汎用型神器の一つ、『蛇の牙(スネイク・バイト)』だ!」

 

「おお────って何だこりゃ」

 

 

 アザゼルの手に収まっていたのは、緑色が基調の小さい機械だった。いや、それだけならまだいい。正直にいうと、オカルトデザイン過多の魔術礼装的なモノを想像していたのは否定しないが、この際別にカガクな機械でも文句は言うまい。

 しかしだ。何で、何でそいつの形が...

 

 

「これまんま体温計じゃねぇか!」

「?タイオン・ケイってヤツは知らねぇが、コイツの名前は蛇の牙だ。で、気になる能力は使用者の潜在能力を数値化することだぜ」

「潜在能力?魔力ではないの?」

 

 

 グレモリー先輩の疑問は尤もではあるが、俺は断固として『蛇の牙』の形について言及したい。もし測定方法が脇に挟んだり口に咥えたりだったら、いよいよ黙っていられなくなるぞ。

 

 

「ああ。計測するのは魔力単体じゃなく、力と呼べるもののほぼ全てを総合して数値化する。だから、表示されるのは被験者の強さそのものと言っていいぜ」

「なるほど。それなら、彼の説明のつかない力の一端を知る事ができますわね」

「うーん、自分の強さを具体的な数値で表されるっていうのは、何か妙な気分になりそうだ」

「コウタさん、やるんですか?」

 

 

 姫島先輩は結構肯定的な捉え方だが、木場の方はイマイチ感触が悪いようだ。確かに、自分の実力を数字などで決めつけられることに良い気分を覚える者は少ないだろう。かくいう俺も、正直こんな体温計みたいなもので能力を測られるのは、イマイチ緊張感が湧かなくて嫌だ。

 俺は小猫ちゃんの疑問にほぼ間断なく頷くと、アザゼルの持つ『蛇の牙』を取る。...嫌でも、それが己にとって少しでもプラスに働きうる可能性を内包するならば、喜んで受け取ろう。

 

 

「お、使う気になったか」

「まぁな。...で、どうやって使うんだ?」

「簡単だ。起動は既に俺がさせてあるから、後は脇に挟むだけだぜ」

「尚更体温計じゃねぇかよ!」

 

 

 もう突っ込み始めるとキリがなさそうなので、それしき積もる文句は無理矢理呑み込み、黙って脇に『蛇の牙』を差し込んだ。それから間もなく、まるで全身を何かが這いまわるような感触が一瞬割り込み、見えない拘束具で縛られるかのように四肢が硬直してしまった。

 そんな状態が少し続いた後、今まで身体の表層にあった得体の知れない感触は、更に身体の奥に入り込もうとして─────

 

 

「?このアラーム音は...」

「お。そりゃ計測が終わったことを知らせる音よ。よっしゃツユリ、出してみろ」

「あ、ああ」

 

 

 妙な感触は電子音が鳴ってからすぐに消えてなくなり、後遺症なども全くないようだった。しかし、もう少し測定時の感覚を気分の良いものに出来なかったのだろうか?さながら蛇に全身を舐め回されているようなおぞましいものだったのだが...まさか、それでコイツにこんな名前をつけたのだろうか。

 憮然とした態度のまま脇の辺りをまさぐり、体温計...もとい『蛇の牙』を取り出し、小さい画面を覗き見る。っと、そういえば一般的な数値とか教えてもらってなかったな。これじゃ比較対象がないじゃないか。

 

 

『∞』

 

 

 俺は一度画面から目を離す。

 

 何だ?今のは数字だったか?いや、アレは明らか数字じゃなかった。じゃあ一体何だと言うんだ。アザゼルは数値で表示されると言っていたはずだろう?もしアレがその通りの表示だったのなら、俺の個人的な願望が事実を歪曲させたに違いない。

 さっきのは見間違いと判断をつけて一つ頷き、結果発表を待つ全員の視線を浴びながら、俺はもう一度画面へ目を落とす。

 

 

『∞』

 

 

「待て待て!?早速誤作動起こしてんじゃねぇか!」

「お、おいツユリ!結果は一体どうだったんだよ!?」

 

 

 あまりの取り乱し様だったらしく、背後から焦ったようなアザゼルの声が聞こえ、素早く『蛇の牙』を持つ俺の腕を掴むと無理矢理にその画面を確認した。途端、一瞬目を見開いたあとに動揺を隠すかのような所作で口元へ手を当てるアザゼル。それにどうも怪しい予想を立てた俺を含めるオカ研部員たちは、黙って彼の二言目を待つことにした。

 

 やがてようやく動いたアザゼルは、まず()()一番に手に持った『蛇の牙』を乱暴にポケットへ突っ込み、それから俺たちへ背中を向けて部室のドアへ歩を進める。脈絡のないその行動にまさかと思い、俺は慌てて制止を叫んだ。

 

 

「ちょ、アザゼル!結果は――――――――」

「やっぱ誤作動みたいだったわ。このままじゃ収まらねぇから直しにいく。日を改めてまた顔合わせようぜ」

 

 

 それに対し俺が何か言う前にドアをぴしゃりと閉められ、部室にいる全員が完全に置いてけぼりを喰らった。...いや、これじゃ収まらねぇのは俺の方だ。自分の持つ力について一部でも更に理解できるチャンスをこのままみすみす逃すなんて勿体ない。

 それと、旨いところだけの持ち逃げは許せない主義なんでな!

 

 

「コウタ?!無駄よ、今から追っても──────!」

 

 

 グレモリー先輩の声を無視し、納得のいかない俺はアザゼルの消えて言った部室のドアへ飛び込んで開け、もしかしたら追いつくかもしれないという希望を持って廊下へ躍り出ると、すぐに視線を全方位へ向ける。

 

 

「.....クソッ!」

 

 

 しかし、そこには夕焼けの斜光を鈍く反射する無人の廊下が続く光景しかなかった。魔力を探知して所在を掴もうと試みても、アザゼルは堕天使。その身に内包するのは正反対の属性である聖なる力だ。追いつく手立てはもう無いに等しい。

 

 

 ――――あの神器は、使用者の総合的な力量を測るものだと言った。ならば、あれが俺の中にある聖杯の実測値だというのか?

 しかし、そもそも聖杯とはそういうもので()()()か分からない。魔法の領域にあるものを観測、見聞できるのは魔法に精通している者のみだろうし、あの体温計がFateでいう奇跡を一つの方法として具現させた魔法の産物とは思えない。もしそうだとしても、カレイドステッキのあのぶっ飛びようを見習ったほうがいい。

 

 

 それとも、また別の...聖杯ではない『別の何か』を測っていたのだとしたら。

 

 一体、俺の中にある『それ』は何だというのか。

 

 

 明確な答えは─────未だ、観測()えない。

 

 




はい。アザゼルにした質問は神の生死についてでした。これやっとかないと後々面倒なんですよね。

この章の後半辺りで、そろそろオリ主覚醒回入る...といいなぁ。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。