前世も現世も、人外に囲まれた人生。   作:緑餅 +上新粉

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コカビエル「俺たちの『根城』へ来たのでな~

根〝城〟⇒城....城か!

はい。城っぽくなりました。


File/30.アウトブレイク

「たーだいま戻りましたよっと」

 

 一時的に住処としている、駒王町から少し離れた小山に建つ館。フリードはその扉を壁に激突するほど勢いよく開けると、我が物顔で踏み込んでいく。

 む、確かこの国には靴を脱いで上がるという面倒なしきたりがあるのだったな。

 そう思いつつも土足のまま玄関を通過する。やろうと思っても、履きかえる靴や収納する場所など存在しないのだ。....っと、そうだ忘れていた。

 

 

「フリード、聖剣の力を仕舞え。ここ辺りをうろつく悪魔などいないだろうが、張って置いた結界の意味を失わせてしまうのは勿体ない」

「おおう。そうですたそうですた」

 

 

 全く、コカビエルのやつめ。実験をうまく運ぶためには、その時まで姿を隠すのが一番だというのに...フリードを野放しにするとは一体どういう了見だ。そのお蔭で神父を殺戮し、グレモリー眷属にまで斬りかかるなどという奇行を許してしまったではないか。

 ...数日間この少年エクソシストと共にいて分かったが、コイツは素で緊張感の欠片も無い言動をどんな時でも取り続け、私のペースをこの上なく乱してくる厄介者だ。

 正直こんな訳の分からない輩にエクスカリバーを三本も預けたくはなかったが、私の実験へ全面的に協力してくれるコカビエルの言葉には逆らえなかった。

 とはいえ、彼の目に狂いは無かったようで、フリードは他の者たちを差し置いて聖剣の因子を取り込むことに成功し、今回の戦闘では聖剣の強化も問題なく出来るようになっている。

 

 

「フリード、バルパー。激しい力の乱れを感じたぞ?何かあったな」

 

 

 大きなアンティークテーブルがあるダイニングへ戻ると、豪奢な一人掛けソファへ腰かけ、優雅にワインを楽しむコカビエルがいた。その声は多量の喜悦を含んでおり、純粋に闘争を愉しまんとする危うい狂気が垣間見える。

 それに対し、どういうわけか彼の考えへ強い共感を示すフリードが、緊張感の欠片もない態度で答えた。

 

 

「それが驚いたことに、教会の手先とグレモリーの悪魔さんたちが、仲良こよしの共同戦線張ってたんすよ!」

「ほう。それは本当か?バルパー」

「うむ、間違いはない。教会の動向を伺っていた時に掴んだ情報にあった、二名の聖剣使いと同じ女がグレモリー眷属と手を結んでいた」

 

 

 それを聞いたコカビエルは突然笑いだし、ソファから立ち上がると此方を向いて両手を広げた。

 瞬間、背中からも同じように十の黒翼が展開し、黒い羽が辺りに舞う。

 

 

「面白い!サーゼクスの妹がそのような行動に出るとは!...だが足りん。この程度の焦燥では、緊迫では!足りんのだ!」

「じゃあどうするんすか?!コカビエルの旦那!」

 

 

 フリードの興奮したような問いかけに口元を歪ませると、彼は玄関の方へ視線を移動させながら言う。

 

 

「当初の計画通り、グレモリーの庭で実験を開始する。.....だが、その前に逸った無粋な客の出迎えをしなければならんな」

 

『?』

 

 

 私とフリードがそろって首を傾げた時、扉が破られる破砕音が此処まで響いてきた。

 

 

          ***

 

 

 俺はハデスの隠れ兜を消すと、木場と共にここらではまず場違いな洋館の前に立つ。

 まさか、駒王町から大きく外れた小高い山の中に、こんなデカい家を建てて潜伏していたとは思わなかった。これでは街中を探して全く見つからないのも納得できる。...ってか、これは潜伏って言わないな。

 

 

「コウタ君、急ごう。僕達に気付いて逃げてるかもしれないよ?」

「いや、それはない。...いま調べて分かったことだが、結界が緩いんだ。これじゃあ、張っていても張っていなくてもほとんど結果は同じだ」

「?...論点がズレてないかい?」

「要は、だ。ここに住む輩は姿を隠す気なんてほとんどないんだよ。まぁ、この館を見れば一目瞭然だろうけどな。幾ら見つけ難い所だとはいえ、些か自己主張が過ぎる。....恐らく、黒幕の性格は分かりやすいほど傲岸な奴だろうよ。だから逃げるどころか、むしろ挑みかかってくる可能性の方が高い」

 

 

 それで納得したらしく、木場はなるほどね。と呟いてから瞳を瞑り、魔剣を一本握ってから見開く。やる気があるのは良い事なのだが、部室のときみたいに空転する可能性もある。何かあった時はフォローへ回れるようにしなければ。

 戦闘前から心配事は絶えないが、一番の悩みどころは目の前の屋敷だ。潜伏する気が見られないのなら、何故こんな場所に居を置くのか。....見つかればそれまでということか?

 『取りあえず』みたいな体で張られた結界と合わせ、随分一貫性に欠く行動だ。───これは、家を建てた奴と結界を張る案を出した奴が同一人物とは考え難いな。

 首を捻りながら、魔力を隠すにはかなり稚拙な結界の分析と合わせ、侵入者の迎撃能力を持つ結界がないか探る。しかし、どうやらそれらしいものは一切無いようで、前述の結界一枚しか張られていないみたいだった。

 いっそ好都合ではあるが、何か締まらないモノを感じつつ木場を促し、扉を蹴破って真正面から侵入する。途端に視界へ飛び込んで来たのは、西洋の館らしい豪華な景観だった。これは紅○館もびっくりだな。

 

 

「ぬお!こりゃ中の景色も豪華絢爛だなオイ」

「...どうやら、内装もコカビエルが好みの空間に変えているみたいだね」

「力の無駄遣いも甚だしいな」

 

 

 先を走って行った木場の後に続いて正面玄関を通り、突き当りにある部屋から回ろうと意見を交わした直後、『その』扉が勢いよく開き、聖剣を持ったフリードが奇声を上げて飛び込んで来た。

 木場はそれに反応して剣を振り上げるが、只の魔剣一本では砕かれた上に刃が自身の身へ及ぶだろう。

 なので、俺は咄嗟に木場の目前へ五本の剣を精製(フォーム)し、フリードの振るった聖剣の凶刃を受け止めさせる。結果、うち四本を砕かれながらも背後の騎士様を守り抜いた。

 

 

「ちぃ!シブトイッつってんだろがァ!!」

 

 

 怒号を上げながら再度振るった剣は、素早く横へ跳んだ木場に回避され、銀閃が空を斬る。俺はその瞬間を狙い、魔力を足裏からブーストさせて赤絨毯が敷かれた地面を蹴ると、瞬きの間にフリードの懐へ潜り込む。

 そこから間髪入れずにアッパーの要領で掌底を操り出し、奴の顎を勢いよく打ち上げた。

 

 

「ハッ!」

 

 

 軽いスタン状態となっている隙に、俺は素早く身を捻って回転、続けて放った鋭い回し蹴りでフリードの横腹を打ち、ダイニングへ強制送還させる。豪華な木椅子を巻き込んで派手に転がった白髪神父は、一度身体を大きく痙攣させてから動かなくなった。

 木場はその光景を見て何故か苦笑いしていたが、奥の方から男の嗤い声が聞こえて来ると表情を改めた。直後に視線で合図し、警戒しながらダイニングへ足を踏み入れる。

 ─────そこには、十の黒い翼を拡げる黒衣の男が立っていた。

 

 

「人間とはいえ、中々素質のある聖剣使いをこうも容易く破るとは。侵入者というには見どころのあり過ぎる者たちだな.....む?」

 

 

 コカビエルの視線が俺を捉える。その瞬間、紅い瞳が限界近くまで見開かれ、得体の知れないようなものを見るような、心底訝しげな意を込めた視線に変わった。

 

 

「魔力も、聖剣の因子も碌に持たぬ人間、だと?...貴様、俺たちがどういう存在で、これが一体どういう状況か理解した上でこの場に立っているのだろうな?」

「ああ、勿論だ。堕天使の幹部、コカビエルさんよ」

「...く、くくくく」

 

 

 コカビエルは顔を片手で覆うと、最早堪えられないとばかりに笑声を喉から漏らし、それでも抑えようと腰を折って顔を下に向ける。だが、結局それは徒労に終わったらしく、ついに天を仰ぎ盛大な笑い声を迸らせる。

 

 

「何だ!一体何を考えているリアス・グレモリー!出来損ないの神器使いに合わせ、悪魔の喰いモノに等しき下等な人間を寄越すだと?!ハハ、ハハハハハハハ!─────ふざけるなよ」

 

 

 一転して笑みを殺し、俺を無表情で見下ろすコカビエル。流石堕天使幹部という肩書きをもっているだけであって、視線を介して伝わってくる重圧は中々のものだ。

 奴はそれに眉一つ動かない俺を見て、多少感心したような表情になる。ちなみに、隣の木場は目に見えて精神的に押されていた。

 

 

「ほう...少しは見込みがあるようだな。─────よかろう」

 

 

 彼は頷くと、出していた殺気を幾分か抑える。そして、背中にあった黒翼も全て仕舞った。...何をするつもりだ?

 俺たちの疑念の眼差しを受けたコカビエルは、胸の前で腕を組みながら両目を閉じた。

 

 

「貴様らは悪魔や堕天使、天使の間で停滞した戦争を再開させるための重要な贄だ。出来る限り大きな舞台でその命を刈り取ってこそ、平和ボケした阿呆どもの目を覚ますことが出来るというものだ」

「な...まさか、もう一度あの戦争を起こそうとしてるのか?!」

「いかにも」

 

 

 木場の驚いた声に答えるコカビエル。薄く開かれたその瞳には、隠し切れないほどの悦びが宿っている。

 

 三すくみの戦争...それは、まだ完全な終息を迎えた訳ではない。

 諍い自体は各勢力が極限まで疲弊したために終局を迎えたが、終わってみると酷い有様だった。

 悪魔陣営は四大魔王全員を喪い、純血悪魔のほとんどが死に絶えた。天使側は神の設定したシステムを大きく狂わされ、世に蔓延る信仰に乱れが生じている。

 その中へ新たに戦いの火種をブチ込もうと言ってるのか。遠まわしに冥界と天界の破滅を目論んでるんじゃないかと疑える考えだ。

 

 

「そういった理由から、今は見逃してやる。だが、今日の深夜にリアス・グレモリーの根城を破壊しに行く。アレはシトリー家次期当主も通う学校だ。両家の魔王どちらかは確実にこちらへ上がってくる。...グレモリー眷属である貴様らも、当然その場に集うだろう?ほれ見ろ、最高の舞台が出来上がりだ」

 

 

 そう言って笑みを零すと、テーブルに置いてあったグラスを持って真紅のワインを煽るコカビエル。

 うわー、随分とこっちを舐めきってるな。こりゃちょっと痛い目見て貰わないとダメですね。

 俺は軽く周りを見渡し、掴みやすいものを探す。...っと、この椅子でいいかな。コカビエルの力で作ってあるとはいえ、自分の意志で消さない限りは実体があるんだし、『当たったら十分痛いだろ』。

 

 

(─────身体強化(エンハンス:フィジカル))

 

 

 強化を終えると背もたれを引っ掴み、コカビエルに向かって全力投球する。...目にも留まらぬ速さで。

 

 

「ッ?!なに...がふゥ!」

 

 

 顔面目掛けて投合したので、防御するには顔を覆い隠す必要がある。その視界が消え失せた一瞬を狙い、コカビエルに向かってフリードを迎撃したのと同じ要領で跳び、腹部へボディブローをめり込ませた。

 思い切り油断していたこともあり、碌な防御も取れなかった堕天使幹部は凄まじい勢いで背後の壁へ激突し、厚い壁面を人型にくり抜いて瓦解させる。これで気絶することはないだろうが、かなり手応えはあった。

 俺は両手に干将莫耶を持ち、まずは先方の反応を伺うことにした。

 

 

「がッあ...バ、バルパー!聞こえているだろうッ!今すぐエクスカリバーをまとめて持ってこい!目測を誤った、コイツらは我々の計画を脅かす存在だ!」

 

 

 腹部を抑えて粉塵を撒き上げながら立ち上がり、黒い翼を再度展開させたコカビエル。その紅い瞳には先ほどまでの慢心は無く、俺を自身の敵と認識した貌となっていた。

 俺は放心している木場に向かって、館のどこかにいるバルパーを探すように言う。が、突如地面から強い光が迸り、周囲が白に飲み込まれていく。全く予期していなかった俺もそれの餌食となり、視界が少しの間ホワイトアウトしてしまった。

 やがて光は収まり、周りの空間が色を取り戻す。...そして、周囲の風景は以前とは全く違うものとなっていた。

 

 

「館を消したのか。でも、消すんじゃなくて壊せば、俺たちをまとめて生き埋めに出来たんじゃないか?」

「フン。少しでも力を還元しておきたかったまでよ。貴様は正体不明が過ぎるからな。今ここで舞台から降りて貰おう!...バルパー、フリード!」

「ここに」

「オイっす!今さっき復活しましたぁ!」

「本当は駒王学園の敷地内で行う予定だったが、ここで聖剣の統合を行う」

「な!それでは完成する聖剣があまりに不完全だ!当初の予定では、教会が派遣した聖剣使い二人から一本は奪取する手はずだっただろう!」

 

 

 聖剣の統合?何のことか分からなかったが、この決定はバルパーの心中を大きく掻き乱すものだったらしく、酷く狼狽したような声でコカビエルに意見した。

 しかし、コカビエルはそれを聞き入れることなく、手に眩い光を集めて地にかざす。すると、彼を中心に陣らしきものが展開し、フリードの持っていた聖剣三本が陣に描かれた円形の部分に突き立つ。

 それを見た木場は、悪魔の持つ危機察知能力が警鐘を鳴らしたか、光をまとう堕天使総督に問いかける。

 

 

「何をするつもりだ!コカビエル!」

「聖剣の統合だ。『天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)』、『夢幻の聖剣(エクスカリバー・ナイトメア)』、『透明の聖剣(エクスカリバー・トランスペアレンシー)』、この三つのエクスカリバーをこれから一つにする。本当はその時に発生する莫大なエネルギーを利用し、駒王町を丸ごと消滅させるつもりだったのだがな。この場からでは力の流れが町全体へ行き渡らないだろう」

 

 

 なんともまぁ危険なことを考えていたようだ。しかし、それだけの事をすれば魔王諸侯たちの不安感をこの上なく煽れるだろう。

 只でさえ純血悪魔の不足を補うために転生悪魔を増やそうと模索しているのだ。堕天使が人間界を狙っているという憶測が波及すれば、結果は確実に彼の望む方向へ行く。

 コカビエルの言葉に続き、強い光を放ち続けるエクスカリバーの一本に手を置きながら、バルパーが口を開く。

 

 

「だが、私の目的は達成される!本当はこの街に集まった五本全てのエクスカリバーを統合させたかったが.....見ろ!魔方陣から溢れ出る聖なる力を!これなら出来損ないの因子持ちに持たせたエクスカリバーの出力を大きく上回る結果が出るだろう!ハハハハハハ!」

 

 

 昏くなりつつある空を仰ぎ見ながら哄笑を上げるバルパー・ガリレイ。...なるほど、コカビエルの目的は三すくみの戦争再開で、バルパーの目的は聖剣の統合か。奴がエクスカリバーを盗んだのも、天使連中をけしかけるためだったのだろう。

 無事に統合が成功すれば、コカビエルが戦争でその聖剣を使い、かつてバルパーの研究成果を異端とだけ評し罰した天使へ、その威力を存分に知らしめることが出来る。これならば、どちらの目的も達成が可能だ。

 こいつは野放しにするのは不味いか...?そう思った俺は、聖剣の統合をどう止めるべきか意見を仰ごうと隣の相棒へ視線を移すが、そこには怒りに震える木場の姿があった。

 

 

「バルパー・ガリレイッ!聖剣計画で殺された皆をこれ以上愚弄するな!!」

「聖剣計画だと...貴様、まさかアレの生き残りか?」

「ああ、そうだとも!僕はお前の犯した罪を贖わせるために、今まで生きて来たんだ!」

 

 

 それを聞いた瞬間、バルパーは先ほどよりも更に大きな大声で笑い出した。悪党はよく笑うって本当だったんだな。

 

 

「何と数奇な運命よ!このような所でかつての実験を顧みる事になろうとは。くく....ああ、丁度いい。貴様がそこまであの計画で死んだ者どもと再会したいのなら、私がさせてやろうではないか」

「.....何?」

 

 

 言ってることは良い内容である筈なのだが、目前の男は正真正銘の悪漢だ。確実に碌でもないことを仕出かすだろう。

 バルパーは下卑た笑みを浮かべながら、懐から青く輝く結晶のようなモノを取り出した。

 

 

「これは、取り込んだ者に聖剣の因子を与える結晶だ。...貴様が知っての通り、私の研究は聖剣を扱える者を生み出すためだった。だが、そのために集めた奴らは誰も彼も聖剣を扱えるほどの因子を宿していなくてな。私はそこで考えを変えた。被験者から因子を抜き出し、結晶化させるというものへな」

「じゃあ、その結晶は.....ッ」

「ああ。これはあの実験で精製した結晶の一つだ。他はフリードたちに使ってしまったがな」

「ち・な・み・に、俺以外に因子突っ込まれた奴はみーんな扱いきれなく死んじゃいました!生き残ったのは俺っちだけなのよ!」

 

 

 くるくる回りながらステップを踏むフリードをよそに、バルパーは結晶を木場に向かって投げて寄越した。彼は足元に転がったそれを跪いてから持ち上げ、涙を浮かべながら胸に抱く。

 

 

「それはもう私たちにとって必要の無いゴミだ。だが、貴様にとっては大事なものらしいからな、後生大事に持っておくがいい」

「───ゴミ、だと?あれは因子を発現させるために必要なモンなんじゃないのかよ」

「フン。今では更に高い純度で結晶を精製できるようになっている。それと比べれば、アレは不良品のようなモノだ」

「ッ!テメェ...」

「待ってくれ、コウタ君」

 

 

 好き放題に汚い言葉を吐くバルパーへ、いい加減堪忍袋の緒が切れた俺だったが、一歩踏み出そうとしたところで木場が腕を掴んで制止させた。しかし、本当に我慢ならなかったので、その手を振り払ってでも先に進もうと考えたが...木場の背後に幾つも並ぶ魔力の渦に目を見開いた。

 いや、あれは只の魔力の渦じゃない。微弱ではあるが人の気配がする。ならば、あの浮遊する人型は...!

 

 

「話は終わったよ。...彼らは赦してくれた。僕が、僕だけが安穏に生きるということを」

「木場、お前」

「大丈夫だよ、コウタ君。もう、復讐なんて過去ばかりを見る事は止める」

 

 

 彼は澄んだ瞳をしていた。重くのしかかっていたものを、背中から降ろした...そんな表情だ。

 立ち上がると、全身から迸る強力な魔力を手に集め、木場は聖剣に負けないくらいの光を放つ一本の黒き長剣を持った。あれは...なるほど、随分先に進んだじゃないか。

 

 

「君たちがくれたこの力で、僕は聖剣を超える!前を見て、生きるッ!」

「む?貴様、何故その剣には聖なる力と魔力が混在している?!そんな事が有り得るわけが....!」

 

 

 バルパーが狼狽したように後ずさる。そう。彼の言った通り、木場の剣は聖と魔が入り混じった力を宿していた。

 分かる。これはエクスカリバーを完璧に超えた力だ。恐らく、俺の干将莫耶と打ち合えるくらいにまで達しているだろう。

 しかし─────────

 

 

「フハハハハハハ!面白い見世物だ!お前を出来損ないと言ったのを詫びよう。その力、間違いなく本物だ」

 

 

 コカビエルは驚くどころか心底愉快そうに笑い、木場が昇華させた神器の力を称賛する。

 言葉を聞く分だと馬鹿にしているような感じが拭いきれないが、きっと違う。これは、木場を強敵と認めた発言だ。

 何故なら、笑みを収めた彼の表情は、余裕などどこにもない本気の顔立ちだったからだ。

 

 

「さぁ、聖剣の統合まであと僅かだ。...全力で足掻くがいい」

 




バルパーはもっとカッコイイ爺さんだと思ってたら、アニメで裏切られましたね。

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