かれこれ更新しない日々が続きおよそ三か月。何の音沙汰もなくすいません。ですが、これからは少しずつですが、今までの更新ペースに戻していく予定です。
今一度ですが、待ってくださった読者様には大変お待たせしました。
「やあ、待っていたよ、君を。≪レンクス≫……いや、レン君」
その声を耳にした瞬間、彼の胸中に去来したのは、畏れでも怒りでも、これは彼自身も驚いたことだが、ただ一つの憎悪でもなかった。ただ、何故?と。このおよそ二年近く、すべてが終わり、そして始まったあの日から今に至るこの時までただの一度としてその存在を現さなかったソイツが、どうして俺の眼下に現れたのか。
「君が驚くのも、まぁ無理はないがね」
まるで、全てを見抜いているような声。そう、ソレはかつての光景の焼き増しのようだった。無機質だった“白”を蹂躙し、塗り替える“赤”のシステムウィンドウも。それらからあふれ出し、やがて空中にて形を成していく、血のように紅くて、泥のようにドロリとした液体も。現れた真紅のローブも。そのフードからのぞかせる恐ろしい空洞も。その声を、姿を、形を、レンは目にしたことがある。
「初めまして、と言うのも少々おかしいかな?」
ただ一つ、“かつて目にした光景”と違ったのは、その大きさだけだ。化け物じみた
「しかし、私がこうして君と直に話すのは初めてだ」
「どうし……て……」
紡ぎだした声が震える。思考が、“ナゼ”で埋め尽くされていく。だがそれでも、現れたソイツは意に介すことなく続けた。
「ならば、もう一度ここで自己紹介をするのも悪くはあるまい。私がこの世界ただ一人の≪GM≫である、茅場昌彦だ」
かつての何時かのように、現れたソイツ――茅場は――ただ静かに宣言した。
***
「茅場……昌彦だと……?」
「そう。よもや忘れたわけでもないだろう?」
やはり抑揚の欠片も見せないある意味独特な声で、茅場はレンのソレを肯定した。忘れるわけがない。正にあの日、レンの目の前にいる存在が、文字通りこの
「どうしてこんな処にアンタがいる?そもそも、ここはどこだ?何を企んでいる?」
「ここはどこか、ときたか。さて、それは私が答えるまでもないと思うが……」
「ふざけるな。真面目に俺の質問に答えろ」
「ソレを拒否したら?」
印象の薄かったその声に、少々ではあるが挑発的な色が見えた。
「その時は……」
間合いを静かに見図る。二人の間に開いた距離はおおよそ五メートル弱。高低差に至っては三メートルにも満たない。
“十分に、俺の範囲内だ”
「アンタの首を貰う」
次の瞬間、レンは手にしたB-ナイフをそのまま、≪活歩≫を発動し瞬間移動じみた迅さで茅場の前へと移動。一ミリたりとも動かないそのがら空きの胸元へ、振り上げたB-ナイフを走らせた。――
「無駄だよ」
「っ!!」
ハズだった。
タイミングも、角度も、速さも、全てが完璧だったハズの必中の一撃は、“実態を持たぬ影”の如き茅場の体をすり抜けて、
「がはっ!!」
逆にレンは、どういうわけか地面へと吹き飛ばされていた。
「やれやれ、最初から挨拶だね」
「くそ……どうなってる?」
「君がいくら攻撃してこようとしても、私にはダメージの一ミリも与えられないよ。このアバターは、あくまでも私の“仮初”の姿――いわゆるホログラムにも近い存在だからね」
「ちっ、随分と用意がいいんだな」
叩きつけられたことによる不快感をどうにか無視して、レンは体を起き上げると、視界にある自身のHPバーを確認する。だが、不思議なことに、そのHPバーは一ミリたりとも減ってはいなかった。
「……もう一度だけ聞く。何を企んでいる?ここに閉じ込めて、俺を始末する気か?」
ますます不可解なまま、レンはその紺碧の瞳で茅場を睨む。すると、彼は空中から地上へと降り立つと、ゆっくりとローブに覆われた首を横に振った。
「まさか、そんな野蛮なことはしないさ。私はただ、君を“見極める”ために姿を現しただけさ」
「“見極める”だと?いったい何を?」
「君が、真に私が見込んだプレイヤーであるかどうかをね。だから、今から君をどうこうしようという気はないよ」
「……アンタが俺を見込んだ……だと?」
「そう。君がかつて、≪A-ナイファー≫を獲得した、その時からね」
「!?」
その時、レンが受けた驚愕は、とうてい言葉で言い表せるものではなかった。彼が≪A-ナイファー≫を手にしたその時、つまり、この世界に閉じ込められてから間もないころ。大量のMobに襲われていたキリトとレナに出会い、そしてぎりぎりまで追い詰められてなお相棒であるカズと共にMobを退け、運ばれた宿のベットの上で気づけば手に入れていたこのスキル。あの時、すでに――
「ああ。あの時、私は君に興味を抱いたんだ」
「なっ………………」
「いいや、この言い方には少し語弊があるかな。正確には、君があの時抱いた“死にたくない”という強い“意思”に、“カーディナルシステム”が反応を見せたときにね」
と、どこか楽しそうに、そう告げた茅場昌彦に、気づけばレンは一歩後ろに引いていた。何故、というよりも、もはや言いようの知れない感情のほうが強かった。次に発したその声は、自分でも分かるほどに掠れていた。
「カーディナルシステム?」
「この世界をコントロールする、全ての基盤となるシステムのことだ。このSAOに出現するありとあらゆるMobも、クエストも、そしてプレイヤーに与えられる全リソースも、全てはこの“カーディナルシステム”によって決められている」
この期に及んでもまだ、抑揚のないその声は、レンの抱いた感情を煽り立てるには十分すぎるものだった。これから口にする質問は、どれだけ大きな意味を持っているのかを熟知していて。それでもなお、レンはそう聞かずにはいられなかった。
「じゃあこのスキルは……」
「そう、君の推測は当たっているよ。カーディナルシステムが、なぜか君に、存在するハズのない
「…………」
「初めてソレを知ったときは、私自身も驚いたよ。何せ、私が設定した計11のスキルに、≪A-ナイファー≫なんてスキルは存在しなかったのだからね。にもかかわらず、カーディナルシステムはどういうわけか独断でこの特異なスキルを作り上げ、そして君に与えた。こんなこと、初めてだったよ」
「何故?」
「さて、詳しいことは私にもわからない。ただ確かなのは、君の強い感情、“死にたくない”という強い想いが、システムを突き動かした」
それが、他でもないこの世界の創造者たる彼自身の出した、一つの明確な仮定にして“答え”たっだ。しかし、その答えに、レンはどうしても賛成できない。あの日から今に至るこの時まで、その過程に程度の差はあれど、死んでいったプレイヤーは数多く居たことだろう。そして、そんな彼らにも、“死にたくない”という感情は確かに存在したはずだ。なのに、そんな彼らには“力”は与えられず、ただ一人、自分だけがこのスキルを与えられた……ソレは彼にとって、とてつもなく重く伸し掛かった。
自分だけだ
自分だけが、生き残るだけの“力”を得た
自分だけが…………………
すると、茅場はそんなレンの心情を察したのか、彼はふっと息を吐いた。
「そう自分を卑下することもあるまい。カーディナルシステムが、数あるプレイヤーの中から君を選んだだけなのだから」
「……気休めは十分だ。そろそろ本題に入れ」
そうバッサリと切り捨てると、茅場はそれもそうだねとフードをかすかに揺らすと、まとっていた雰囲気を一変させた。
「この話にはもう一つ裏があってね。今君が手にしているその≪A-ナイファー≫は、元々カーディナルシステムが作り上げた本来の仕様ではないんだ」
「けどアンタは……」
「それが、今回の本題だ。たしかにカーディナルシステムはユニークスキルを作り上げた。しかし、それに気が付いた私は、カーディナルシステムが君に干渉するその一歩手前で、そのスキルに修正を加えた」
「理解できないな。どうしてわざわざそんなことをする?いっそのこと消してしまえばいいだろう」
「先ほども述べたが、前例のないことでね。私個人としても大いに興味があった。とにかく、元々作られたスキルから、私は主に二つの項目を削除した。≪もう一つのユニークスキル≫と≪ある機能≫だ」
「はい?」
至って真面目なままの茅場の言いように、レンは思わずそんな声を上げた。茅場がこの≪A-ナイファー≫に手を付けていたのもそうだが、何よりも予想外だったのは、このスキルに、“もう一つのユニークスキル”が存在するというその事実だった。
「“もう一つのユニークスキル”だって?じゃあ何だ?元々この≪A-ナイファー≫の原型は二つで一つのモノだったとでも?」
「そう、≪A-ナイファー≫には対となるもう一つのユニークスキルがあった。もとは、この二つをひっくるめて一つのスキルだったのだ。」
「そうか……で?それとこれがどうつながる?」
努めて冷静に、レンは目の前のローブへと質問を繰り返す。
「レン君、私と一つ賭けをしないか?君が勝てば私が消去した≪もう一つのユニークスキル≫と≪ある機能≫を与えよう。しかし、君が負ければ……」
そこで言葉を区切り、茅場はより重圧の増した声でレンへと告げた。
「君は死ぬことになる」
「っ!!」
その、最早別人とも呼べるであろう彼の放つ存在感に、レンは息をのむ。しかし、ソレを拒むという選択肢は、不思議と彼の思考には思い浮かばなかった。勝てば“力”が手に入る。それは…………
“嫌だ、死にたくない!!”
“ありがと、ね”
“僕が……キミを守るから”
今までなら救えなかった命を、今度こそは救えるようになるのではないか。ならば、例えその先に死が待ち構えていようとも、“レン”という人間はソレを手にしなくては“ならない”のだから。
「……いいぜ、だが一つ聞かせろ。俺に興味が沸くのはいい。けど、アンタは如何してそこまでする?メリットなんて……」
「あるとも。君が、このユニークスキルの担い手に相応しいかどうか。私の考える器に、果たして君が値するのかどうかを、この賭けで見極めさせてもらおう」
言って、茅場は徐に空中へと浮かび上がると、その左手を空に振りかざし、システムメニューらしきウィンドウを立ち上げると、何やら操作を始めた。軽快なシステム音があたりに木霊し、そしてそれがやがてやんだ。と同時に、その異変は起こった。
「ぐッ!!」
まず始めにレンが感じたのは、体中に走る鋭い違和感だった。そして、レンの全身からゴォッ!!とナニカが飛び出す。それが、果たして一体何であるのかはレンには解らない。ただそれは、とても冷たく、どこまでも黒く、粘りっこくて、そして何より、吐き気を覚えるほどに不気味な液体だった。それが、どんどんレンの目の前に堆積してゆくと、やがてその溜まっていった“黒い液体”が、みるみる内に一つのカタマリとして集まってゆき、蠢きながら何かのカタチを成してゆく。そして、瞬きをしたその瞬間、
「な……に……」
レンの目の前に現れたのは、
「…………俺?」
その存在が黒い靄にうすら包まれたまま、ぼやけていながらもレンと全く同じの格好、体格、そして何より同じ瞳である紺碧色の双眸をたたえる、レンとそのすべてを共有した人型の影だった。
***
「何だ…………コレ……」
突如として現れたその“影”は、それこそレンと何ら変わりのない仕草でB-ナイフを取り出すと、そのままそれを胸元の前まで持っていった。とにかく情報を得ようとレンが目を凝らせば、その影の頭上に黄色いカーソルと緑のHPバーが表示される。Lvは読み取れない。ただ、カーソルの真横に表示されたその名前だけは、レンにもはっきりと読み取ることができた。与えられたその名前は、“The Doppelganger of Renxs”直訳して、≪レンのドッペルゲンガー≫。詳しい実力は不明だが、名前に“The”の定冠詞が設けられていることから、少なくともフロアボス級であることは確か。
「私が今まで収集してきた君のデータを基に、独自のチューンナップを施した高度戦闘用AI。ステータス値の全ては今のレン君と同じ値だ」
「へぇ、つまりは、俺と全くの同一人物ってわけか」
「そう思ってくれていい」
「驚いたな」
「これが今回の賭けの内容。君はこのドッペルゲンガーと一対一で戦ってもらう」
「なるほど……そういうワケね」
思わず、真一文字に結ばれていた口元が吊り上がるのを、レンは抑えきれなかった。相手はただのAIに過ぎない。今までは≪A-ナイファー≫がその真価を最も発揮する対人戦において、その全てをさらけ出すことはなかった。が、今はその縛りもない。レンはこのスキルを手にしてから初めて、何の躊躇も迷いもなく全てを出すことができる。気分が高揚してしまうのも、仕方のないことなのかもしれない。
「いいぜ、興が乗った」
構えたB-ナイフを手のひらでくるくると転がしてから、レンは影がとるまったく同一の構えをとってから、目の前に対峙する影へと笑いかけた。
「ならばここで――ひと踊り興じようか」
私が今まで何をしていたかは、この話と同じタイミングで上げる活動報告に記したいとおもいますので、興味がある(←誰もいるか駄作者byカズ&レン)方はそちらをご覧ください。
今、FPS界隈は大いににぎわってますね。CoD新シリーズ≪Call of Duty:Infinite Warfare≫とあの名作≪CoD4:MW≫のリマスターの発表。そしてBFシリーズ新作≪BattleField 1≫ の発表。
片や宇宙戦、もう一方は第一次世界大戦が舞台ということで、アナウンストレーラーが発表されてから話題に事欠きませんね。特にCoDは、再びの未来ということでYoutube歴代四位に食い込むDislikeの多さだとか。アクティCEOの前向きな発言は自信の表れなんだと信じたいです。
個人的には、Ghost2を期待してました。何やかんや言われつつもキャンペーンは楽しくローガン達のその後が気になりますから。とにかく、私も一介のFPS民として、発表がとにかく待ち遠しいです。皆さんはどうですか?
それでIWさん、IWにはもちろんメインデュアル復活しますよね?(願望)
CoD4リマスターでということは、再びマクミラン先生の雄姿が見れるじゃないですか\(^_^)/
皆さんさんご一緒に!!
「ステンバーイ」
「ビューティフォ」