SAO:Assaulted Field   作:夢見草

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お久しぶりです。おおよそ一ヶ月ぶりですね。
ホントに申し訳ないです。

Metal Gear Solid V : The Phantom Pain & Online III
Need For Speed 2015
Assassin's Creed : Syndicate
Call of Duty : Black Ops 3
GRAN TURISMO SPORT

ゲーム界隈はこれでもかってくらいに沸き立っているのに、手放しにそれを喜べない今日この頃です。

今回は前編後編の二部構成となっています。一回に纏めるのに一万六千字は多すぎたので......

それではドゾ!!


Ep38: Wedding day - Dawn the Catastrophe 1 -

盲目的な愛国心のせいで、現実を直視できないようになってはいけない。どんな人物がやろうとも、どんな人物が語ろうとも、間違ったものは間違っている。

 

ーーマルコムX

 

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《Interlude

Avenger(XXXX) :

Yet, It's a just beginning. And Oath》

 

ーーそうして、全てが終わりを告げた。

 

ーーそうして、次々と零れ落ちていった。

 

ーーそうして、全てが散っていった。

 

ーー彼は全てを失い、

 

ーーそうして、大切な憧れ(理想)すら喪った。

 

ーーその先に得たのは深い絶望と、

 

ーー決して消えることのない喪失と、

 

ーー底の見えぬ............身を焦がすまでの強い憎しみだけ。

 

「俺は............」

 

そうして......

 

「俺はッ!!!」

 

彼は......

 

()()()をこの手で..................殺す」

 

自身からその全てを奪ったかのプレイヤーに、

 

「この............無限槍(チカラ)で!!!」

 

仇打ち(復讐)を誓う。

 

 

偽りの正義と、その救済は終わりを告げるだろう。全てを精算し、そして決着をつける。その為ならば、ああそうだ。この手が幾ら............血と罪科に穢れようとも............

 

構いはしない。なぜならば既に、この身体()はーー

 

既に、憎しみ(喪失)で染まり切っているのだから。

 

 

ーーさぁ、時は満ちた。

 

「さぁBro、Party()の時間だぜ!!」

「ああ、存分に愉しもう」

 

ーー今こそ、あの日の罪の断罪を下す時だーー

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

軽やかな足取りとともに表れた訪問者は、シェリーやアルゴ同様に支給されたドレスに身を固め、彼女たちに勝らぬとも劣る事のない、それこそまるで美の女神然としたこの世とも思えぬ美しさをたたえたアスナと、一体何の因果やら聖書を片手にガッチリとした浅黒の身を古風ながら、どこかシックさを感じさせるカソックに身を包んだ、どこからどう見ても見間違うことなく彼らの知る牧師の恰好をしたエギルだった。体格も背格好も、果ては身にまとう衣服の色合いすら対照的な二人は、入ってくるなりその目に飛び込んできた、何故かシェリーに満面の笑みをたたえつつ頬ずりしているレナと、それを何をするわけでもなく眺めているキリトとレン、そして笑いこけているアルゴ三人という光景に、しばし固まったまま状況を理解できないでいた。訪れる沈黙。しかしその状態も長くは続かない。この世全ての事象に等しく終わりがあるように、コレにも明確な終わりが訪れるのだ。

 

「ぷっ………クククッ……」

 

思わずもれてしまった、噴き出す寸前の笑い声を押し殺した、レンの声。それが終わりだ。それが終わり。そんな彼の発した音を皮切りに、保たれていた静寂は決壊し、其れに取って代わるように瀑布の如き大爆笑がこの場を湧かした。

 

「「ハハハッ!!ヤバイって、笑わせるなよ!!」」

「エ、エギル似合いすぎ」

「ああ、笑いすぎてお腹痛いよぉ……」

「ニャハハッ!!流石はエギっち、オレっちの期待を裏切らないなァ!!」

 

上から、こりゃ滑稽と笑いこけるキリトとレン、そんな二人に及ぶまでは無いにしろ、腹を抱えて笑い悶えるレナとシェリー、そしてあろうことか記録結晶を片手に清々しいまでに大笑いするアルゴ。同じ笑うにしてもこうも違うものかとへんな感想を抱きつつ、ただパチパチと何事かと驚き目を瞬かせているアスナを尻目に、エギルは至って当然のことを口にした。

 

「お前ら、人で笑うのもいい加減にしてくれ」

 

***

 

何故エギルがスーツでもなければタキシードでもなく、一体どうして牧師なんて恰好をしているのだろうか。事の始まりと言えば、レンが言峰神父に頼まれた、クエストクリア条件としての牧師役をエギルに持ちかけたことから始まった。そして、エギルはその役を引き受けてくれたのだ。と言えば聞こえはいいものの、その実エギルは渋りに渋りまくっていた。そんな彼を否が応でも頷かせるために、レンは色々と手を尽くした。具体的手段にはエギルの名誉のためにも言及を避けるが、頑ななほどまでにエギルも牧師になりたくなかったのか、存外にしぶとかった彼を最後には頷かせることに成功した。ではなぜそこまでしてまでレンがエギルにこだわったのか……というと、まず単純に自分がなりたくなかったというのが六割、次いでただ単にエギルなら一番似合うだろうとレンが考えたからだ。理由づけとしてはまぁ、割合つまらないモノもある。だから、エギルもこの役割を買って出たくはなかったのだ。それでも、他ならぬレンの頼みであるし、それがキリトとレナ二人の幸せならなおさらのこと。そう踏ん切りをつけて牧師役を受け入れたのだが……

 

「ヤ、ヤベー。エギルが適任すぎて」

「キング牧師ダ」

 

結果はこれである。まだどうにか笑いをこらえようとしているシェリーとレナの二人はいいが、レンとアルゴ二人に至ってはもう言葉もない。因みに、エギルの隣に立つアスナも、いまは笑ってはいないものの、先程エギルと合流した時は少なからず噴き出していた。それでも、度合いで言えばアスナの方が数千倍マシである。

 

「いやー、悪い悪い。想像以上に似合ってるぜ、エギル」

 

全く悪びれる様子なくにっこりと笑いながら話すレンに、エギルはその体格に似つかない大きなため息を吐いた。

 

「やっぱり、こんな役買って出るんじゃなかったぜ……」

「元気だしなヨ、エギっち!!タメ息ばかりついてるト幸せが逃げちゃうゾ?」

「……とりあえず、アルゴはその記録結晶のデータ全部消せよな」

 

そう言ったエギルだったが、アルゴはコケティッシュに小さく口元を上げ、右手に持っていた記録結晶を目にもとまらぬ早業でストレージへとしまった。つまりは、その記録データは消さないといった意思の表れ。ネタに即座に反応するのは情報屋の基本にして、そのあたりをしっかりちゃっかりしてるあたりアルゴが腕の立つ情報屋の証拠なのだろうが、今のエギルの立場からしてみればそれは頭痛の種でしかない。

 

「ハァ……もういい……」

 

今日何度目かも判らぬ溜息と共に、エギルはがっくりと肩を落とした。そこでようやく、今まで黙って傍観していたアスナが切り出す。

 

「こんにちは、キリトくん、レナ。今日はおめでとう。二人とも、とっても綺麗だよ」

「そうだよな、キリトもまぁ成長したもんだ」

「うっせ、エギル」

「ありがとーアスナ。来てくれてとっても嬉しいよ!」

 

コツンと互いのこぶしを合わせる男性陣二人とは対照的に、レナとアスナは旧来の友人として親愛のこもった雰囲気で抱き合っていた。とにかくも、これですべての役者はそろったことになる。時刻もそろそろころ合いだろう。そうレンが思い至ったところで、再び重々しい音と共に部屋のドアが開いた。

 

「そろそろ準備はいいかね?出来たのなら、すぐに始めるが」

「あ、大丈夫です」

「ふむ、では早くしたまえ」

「分かってるから。そっちこそ、精々ミスるなよ?エセ神父」

「君は神父をなんだと思っているのやら」

 

ヤレヤレと首を振ってから、言峰神父は部屋を後にする。やはり重苦しい雰囲気は変わらずに。

 

「じゃ、私達行くね?二人の晴れ姿、バッチリと見てるから」

「記録結晶はタップリあル。次のアルゴ本のトップはこれで決まりだナ」

「おいおい」

「はは、お手柔らかにね?」

 

そう言って、シェリーとアルゴ二人も部屋を出る。恐らくは、招待席へと向かったのだろう。それも見届けたエギルも、

 

「じゃあ、俺も行くか。Good luck and have a happy wedding(末長くお幸せに)お二人さん」

 

実に様になったサムアップをキリトとレナに向け、言峰神父の後を追う。ここに残ったのは、今日の主役たるキリトとレナ。そしてそんな二人の親友であるレンとアスナのみだった。四人は改めて顔を合わせると、誰からともなく静かに立ちあがった。

 

「それにしても……まさかレナとキリト二人が結婚するなんてな」

「本当、あの頃は思ってもいなかったなー」

「四人とも、あの頃は互いのことなんて全く知らなかったしな」

「事実は小説より奇なり、とも言うけどね」

 

それぞれが思い出していたのは、まだ何も知らなかった頃の、自分たちの姿そのものだった。始めて皆が顔を合わせたのは、以外にも少し遅く、第一層攻略会議の頃だ。今になっては、もうずいぶんと昔のように感じてしまう。あの頃は互いが互いに知らない人だったし、何よりまだ自分自身のことで精一杯だった。それが、まさかこのような関係性になるとは、果たして誰が想像し得ただろうか。だからこそ、キリトはそれをより一層深く感じていた。

 

「あの頃は、カズもいたんだよな……」

「キリトッ!!」

「あっ」

 

ピシャリとたしなめるレナの声で、キリトはすぐさま自分の失言に気が付いた。

 

「わ、わるい……」

 

申しかけなさに、小さく目を伏せてからキリトは短く謝った。うっかりしていた、なんて言葉では済まされない。決して軽々しく口にしてはならない事。そう、それは皆にとっての重い“記憶”だ。かつての仲間であり――今はもういない彼、カズ。キリトにレナ、そしてアスナにとってもそれは悲しい記憶に変わりはない。それでも、その誰よりも一番深い悲しみをたたえるのは、間違いなくレンだ。小さい頃よりの友人であり、この世界での唯一無二のパートナーだったカズの死が、レンにとってつらくないわけが無い。キリト自身ですら、かつて自分が見殺しにしたも同然だった“月夜の黒猫団”皆の優しくも暖かい笑顔、そしてこのデスゲームが怖いと夜一人で涙を流していたサチの願いで、冷たく静かな夜を共に過ごしたあの時の記憶は、今でもキリトの心の中に決して浅くない陰影を刻むのだから。それはレンも同じだろう。キリトは二人のきずなの深さを知っているがために、誰よりも自身の軽率な発言に深い後悔を覚えていた。しばらく、あたりを静けさだけが漂う。それを破ったのは、困ったように苦笑いを浮かべるレンだった。

 

「そこまで気に病む事もないって。アイツもきっとどこかで見てるさ、今日の二人の晴れ舞台をな。むしろ、キリトが何時までもアイツの事を覚えてくれていることが、オレ嬉しいんだぜ?」

「レン……」

「だからそんなシケた顔すんなって。ホラ、暗い雰囲気はこれで終わりだ。主役はしゃんと胸張れよ」

 

いつもの飄々としたもの言いで、レンはキリトの肩を叩いた。そんな気遣いにキリトは小さく感謝してから、気合を入れようと自身の両頬を軽くたたく。

 

「よし、じゃあ行こうか。レナ」

「うん」

 

そうして、キリトは自信にとって他の何にも変えることのできないかけがえのない存在であるレナへと手を伸ばすと、レナも薄く笑い返してその腕に自身のをからませた。その両サイドにレンとアスナが続きながら、聖堂へと延びるヴァージンロードの上をゆっくりと歩く。ここからが、本当の意味での、キリトとレナの二人が共に歩み始める最初の道。そうして、四人は割れんばかりの祝福の拍手織りなす中へと歩を進めた。

 

『あの頃は、カズもいたよな……』

 

レンの心の内に、僅かばかりのしこりを残して。

 

***

 

「それでは、これよりキリトとレナ両名の式を執り行う」

 

厳かかつ重々しい言峰神父の宣言と共に、結婚式はスタートした。さて、結婚式と言えば人生に二度とない晴れ舞台であり、神の前で永遠の愛を誓い合う場所でもある。さて、ここで語っておかなければならない事がある。今回のこの式、主役であるキリト自身の強い希望もあり、呼ばれているのはごくごく身内や知り合いのプレイヤーのみだ。そのため、自然とそのメンバーは攻略組の割合が高くなってゆく。大御所で言えば、血盟騎士団長ヒースクリフ、青竜連合リンドウ、DDAシンカー、他にも風林火山やレーヴユニティアなどなど。そして攻略組はこのデスゲームたるSAOに於いて、常に危険の伴う最前線で常に戦い続けるプレイヤーの事。その精神力の強さは、生半可なものではない。そう言ったプレイヤー達が集まれば、まぁまずロクな事が無い。何が?と問われたならば、答えは一つ。

 

「では、結婚リングの交換を……」

「勿体ぶんなよーー!!」

「似合ってるぜ!!エギ......いや、キング牧師!!」

「うるさい、少しは静かにしろッ!!」

「キリの字よぅ、そこ変わろうぜ」

「断るっ!!」

 

最早この場に、秩序などない。始まりはヒースクリフ団長自らが仲人役としてあいさつしたことで皆が目を点にしたことから、各人その図太い神経でそれぞれが様々な楽しみ方でキリトとレナを祝って――少なくとも彼らにとっては――いた。まあ、現実にはないこのフリーダムさも、ここSAOならではなのではなかろうか。そして、宴もたけなわと言ったところ、滞りなく式は進み今から誓いのキスがかわされようとしていた。

 

「汝、この先に待つ数多の困難に対峙せん時、その旅路を二人で乗り越える覚悟はありや」

 

バイブルと思しきぶ厚い本を片手に、言峰神父は目の前に立つ二人に告げる。流石に、今の状況で下手なヤジという名の祝福を飛ばす者はいない。教会内はステンドグラスから刺す日の光のみが照らす。その光景は、正に神の前の神聖な場所。そんな宣言を前に、キリトとレナは互いをチラリ目配せすると、そのまま言峰神父へと静かに頷いた。その返しを、言峰神父はさも当然と軽く頷くと、

 

「では、神の前にて誓いのキスを交わすがいい」

 

右手を二人の前に厳かに掲げた。さて、これから先に、二人はその運命を、その生涯に於いて共にすることになる。それが結婚というものだ。そんなこと、キリトも最初から理解している。だから、それが当たり前だとも判っている。しかしそれでも、いざそれが目前となるとどうしても思い淀んでしまう。過去、彼はその大切なものを目の前で失ったことがある。その出来事、始まりから終わりに至るその瞬間まで、キリトの記憶に鮮明に刻まれている。だからこそ、彼は思い淀んでしまうのだ。再び、かけがえのない者(レナ)を失ってしまえば……自分はどうなってしまうのだろうかと。サチを失ったあの時も、その心は後悔と贖罪とに震えていたのだ。はたして自分は、彼女を守る事が出来るのか?嘗てビーターと呼ばれ、ただ己の可愛さだけに進んできた自分が、その幸せを享受してもいいのだろうか。そんな影が、ずっとキリトの中を駆け回り、それがみっともないくらい怖かったのだ。

 

――そんなキリトの頬に、仄かな暖かさが伝わる。見れば、レナはいつかの時と全く変わる事のない真っ直ぐで優しいその瞳を向けて、微かに笑っていた。そうして、キリトの記憶から、再び声が灯る。

 

「貴方だけは、私にとってかけがえのないものだよ」

 

ああそうだ。そんなの、前から分かっていたことではないか。レナだって、キリトを失うのは怖くないはずが無い。しかしそれでも、彼女は背負う覚悟を決めて、そんなキリトをずっとずっと支えてきた。

 

かつてーー彼は他のβプレイヤーの為とそれを免罪符として、“ビーター”と呼ばれる蔑称と引き換えに、利己的な“強さ”を求めた。

 

かつて――彼は自分で守ろうと躍起になって、そして大切な人(サチ)を、ギルドメンバー(仲間達)を失った。

 

しかし今は違う。レナは彼に“支えられる”という事を教えてくれた。ならば、自分も支えよう。そんな今さらな事が、深くキリトの心に巣食う陰影を振り払った。

 

「ああ、誓うよ」

「私も、誓います」

 

そして、キリトは彼女の細い体に手をまわした。そのまま、ゆっくりと、レナに近づく。それを、レナな両目をつぶったまま、甘んじてそれを受け入れていた。永遠にも思える時間が流れ――そうして、二人は神の前にて真に結ばれた。それが、キリトにとってはとてもうれしい事だった。これで、レナと共に歩むのだから。僅かに会場がざわめくのが聞こえる。が、ただ――

 

「アルゴ!!シャッターチャンスだ!!今今!!」

「分かってるヨレ―坊。オレっちに任せなさイ!!」

 

唯気になることと言えば、キリトの聞き耳スキルが可能にしたのか、はたまたこの瞬間に“第六感(ハイパーセンス)”でも開放したかは定かではないが、そうやってほとんど囁くような小言ながらに聞こえてくる相棒とその情報屋の会話……具体的にはその不穏な内容だった。

 

 




後編に続きます!!!

それでは、コレが更新されてからまた30分後に


オ)ま た 会 お う!!!(σ・∀・)σ

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