SAO:Assaulted Field   作:夢見草

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去る10月6日には遂に待望のMGOIIIが稼働を開始しましたね。ようつべでも色んな実況者さんがオンラインの動画を上げてるみたいです。

フルトンパーンチッ!!!

それよりも、ユニークキャラのオセロットがイケメン過ぎた。Tornado-6リボルバー二丁持ちのデュアラーとかアキンボ大好き人間としては堪らないっす。マークした敵を跳弾で倒せるとか流石オセロット!!!渋すぎるぜっ!!!

ああ〜2丁拳銃使いが主人公の小説が書きたいよーー!!

いいセンスだ(σ・∀・)σ


Ep38: Wedding day - Thank you -

いい宵だ、とキリトは移ろいゆく夜空を眺めながら思った。もちろん、彼がいま目にしているのは人の手によって成されたVRの、0と1の集合体でしかない偽物……模造の空だが、それでも光り輝く星と月、そして流れゆく雲が美しい事に変わりはない。手摺にかけていた右手を空へと伸ばし、めいいっぱい手のひらでその完全な満月を捉え……されど虚空をつかむ。

 

「何してるの?」

 

まるでハープのように優しく、澄み渡る声がして、同時に背中から自分以外の温もりを感じる。腰に手が回され、その頭が背中に預けられる感触。

 

「別に、唯月がきれいだなってさ」

「フフッ、キリトってやっぱり不思議」

 

可笑しそうに、されど優しげなレナの言葉に、キリトもつられて笑ってしまう。ちょうど、彼自身も可笑しいなと考えていた所だ。

 

「明日……か……」

「うん…………」

 

ちょうど、キリトの知り合い……いや、相棒としてのレンから、益体なくまるで彼そのもののようにふざけた文体のメールが届いたのは、丁度今から三時間前。よほど面倒だったのかはキリトには判り兼ねるが、メールにはここぞとばかりに祝辞が述べられていたが、最後の文末に、簡潔ながらこう書かれていた。

 

“「とにかく、《開放クエ》は無事終わった。本当に、おめでとうキリト。二人とも、幸せにな」”

 

彼らしいと言えば彼らしく、キリトにとってもその言葉は大変嬉しかった。

 

“サンキューな、レン”

 

そっと目を閉じ、その口元には僅かな笑みを湛えたまま、キリトは相棒に感謝を送る。

 

「ねぇ、キリト」

「ん?」

「私ね、最初はこのデスゲームに囚われているのはとても嫌だったんだ」

「…………」

「HPが0になったら死んじゃうなんて、私には到底信じられなかった。これが実は唯の夢で……気付いたらいつものベットの上、変わらない日常を繰り返すんだって思ってた。実はね、私キリトやアスナの知らないところで、一人泣いてた事もあるんだ」

 

懐かしいな、そう懐かしげに口にするレナ。しかしキリトは、そんな彼女がその時に抱いてたであろう悲しみが、おのずと推し量られる。

 

「でもね、いまわそれでも良かったのかなって思える自分が居るんだ」

「……どうして?」

「だって、キリトと出会えたし。こうして一緒に過ごして、一緒に笑って……悲しんで……コレもアレも、このSAOのお陰でもあるんだって思う」

「……そうかもしれないな。うん、俺もそうかも。こうして、レナに出会えて本当に良かった」

 

悲しい事は沢山あった。失った物は決して少なくなく、それは今でもしこりのように、キリトの心の奥底に棲みついている。それでも、SAOはキリトから奪うだけでなく、未来への福音も齎してくれた。そんな彼の背負った傷を、長い時間をかけて癒してくれたのは紛れもなくレナだ。出会い、そして今こうして彼女を愛することが出来るのも、SAOのおかげかもしれないと。自分の醜い利己心だけで失った仲間の、そして助けてやれなかったサチの死を、忘れることはないだろうがそれでも前向きに償いの道を歩もうと思えるようになったのだから。

 

「レナ……俺、君が大好きだ」

「うん……私もだよ。貴方だけは、私にとってかけがえようもない大切な人だから」

 

彼女にとっては広く、されど見慣れた彼の背中に、いっそう深く顔をうずめる。キリトがくれる温もりを、逃さないために。明日――イチョウの月二十日は、キリトとレナ、二人のゆく道が一つと混じり合う日だ。

 

***

 

あれから、一年と半月が経った。忘れてはならないものが、記憶から薄れてゆき、忘れなければならないものほど、鮮明に思い出してゆく。それが、はたして正しく、或いは人間として間違っているのかは、レンには判らない。しかし、例えそうだとしても、レンはこの光景を、たとえどんな事が起きようとも、忘れることはないのだろう。

 

あの時に、レンは死を受け入れていた。自分は此処で死ぬんだと。なのに、死んだのはレンではなく………決して死ぬはずのなかったカズだった。正にレンが死に行こうとするそのさなかで、彼はその身を呈してレンを守った。そう、だから彼を殺したのは、他でもないレン自身なのだ。犯したその過ちが、大切な友人を殺してしまったのだ。

 

“死にゆくだれかを救う”

 

彼の掲げた理想は、たとえどんなものでも犯し難い尊き理想だった。そんな尊いモノを、何の理由もなく自己保身のカタマリであったレンがその想いごと藻屑にしてしまった。その死は……あっけなかった。とうてい、人が死んでしまうなんて思えないほどに。いや、そもそもこのSAOでは、“死”という定義が可笑しいまでに希薄すぎるのだ。しかし、それでも残された者にとって“死”とは悲しく、冷たいものであるのには変わりない。カズの死は、自らの過ちと愚行が起こした業そのもの。なればどうして、レンがそれを忘却することが出来ようか。

 

そうだ……だから俺は……

 

その先にあるモノを、レンが思い出すことはないのだろう。何故なら、それは――

 

“僕が――――”

 

唐突に、砂嵐にも似たノイズが、レンの記憶を焼き尽くした。

 

「………………っ」

 

ウィンドウからけたましく鳴り響く忌々しいアラームを解除して、レンはひどく散漫的にその体をベッドから引き起こした。視界がとらえたのは、なにも特筆することのない彼のアパートの一室。備え付けのテーブルには、レッグホルスターとドロップホルスターが無造作に置かれ、何本か換えの刃が地面に転がっている。どうやら、昨日はかなり眠かったらしい。どこか他人事のようにそう考えてから、レンは時計に目をやった。昨日ダンジョンから帰ってきてから、まだ三時間しか経っていない。

 

「……寝てたのは一時間チョイってところかな」

 

簡素なルームウェアから配布されているタキシードに着替え、床に落ちた刃を拾い集めてドロップホルスターを身につける。

 

「武装は……まぁこれくらいでいいだろ」

 

刃をホルスターにしまって、そのままテーブルの上に放置する。

 

「さて、行くか」

 

首を回し、レンはドアノブにその手を掛けた。

 

***

 

約束通り、レンがシェリーの店にまで迎えに来てみれば、何故かアルゴがすでに来ていた。

 

「はい?」

「おはよウ、レ―坊」

「おはよ、レン」

「ああ…………おはよう」

 

思わず、流されるままレンも挨拶を返してしまった。しかし、それを聞いても満足しないのか、二人の表情はどこかムスッとしたままだった。ドレスにそれぞれ身を包んだ二人は、そりゃぁ言葉で言い表せないくらいの綺麗さだった。シェリーは淡いスカイブルーのドレスに、艶やかなブロンドヘアーをサイドテールにふわっとまとめて、アクセントに刺してあるユリの花が全体をキュッと引き締める。言うなれば、銀幕のライトを引きつける令嬢といったところ。それと対照に、アルゴの方は淡いレモンイエローのドレスに黒色の帽子。無論のことフードもトレードマークのおヒゲのペイントもないため、帽子で若干素顔を隠しているのかもしれないが元々が可愛らしい顔立ちなので、いい意味で目立っている。彼女をアルゴだと見抜けるプレイヤーはいないだろう。レンでこそ彼女の素顔は目にした事があるが、そんな彼でも一瞬見分けがつかなかったのだから。あちらが令嬢なら、こちらはおとぎ話に出てくるお姫様。

 

「いや、えーっと、その………二人とも、よく似合ってるよ」

「あ……アリガト///」

「フフッ、レ―坊ってば素直でよろしイ」

「っつ」

 

頬をあからめつつ笑うシェリーと、アルゴの綺麗な瞳に見つめられ、レンはなんだか気恥かしくなって顔を逸らしてしまった。どこか調子がくるってしまう。

 

「ほら、レンもネクタイしっかりしないと」

「襟もちゃんとするんダ」

「お、おい」

 

だいぶ適当に着こなしていただけあって、レンのスーツ姿は少々乱れていた。それに気づいた二人が、つかつかとレンに歩み寄ってそれぞれが彼の姿を正してゆく。他意などなく、彼女たちはただ純粋にレンの姿を正してくれているのだろうが、今のレンには逆効果もいいところだ。が、それでも楽しそうな彼女たちのそんな笑顔を見ていると、なんだか安心できるような気もした。

 

「よし、これでオッケー。レンもよく似合ってるじゃん」

「うん、いつもよりカッコいいヨ」

「どーも」

「ほら、早くいこ?」

「ちゃーんト、オネーサン達をエスコートするようニ」

 

シェリーとアルゴが、レンの両サイドに回ってから腕を差し出してくる。ここまでされれば、流石のレンももう何をしなければならないのか、そして二人が何を求めているのかは判りきっている。小さくため息をひとつ、そして肩をすくめてから、レンは苦笑した。

 

「ま、しゃーないよな。じゃあ、行きますか?お嬢様方」

 

自身の腕をからめて、レンは見た目麗しいレディー二人と共にゆっくりと歩み出した。

 

***

 

誠に不本意ではあるが、ここ三日ばかりレンが足繁く通ったこの湖畔の教会は、今までに類を見ないにぎわいを見せていた。教会の庭、或いは土地であろう草原の広場にはテーブルがいくつもセットしてあり、花や何やらで飾り付けられている。特に何の飾り気もなかった教会も、どちらかと言えば不気味だったにもかかわらず、これらの中でどこか厳かに佇んていた。正直に言って、レンの想像を遥かに超えてそれは立派だった。まさか、あのエセ神父が管理するこの教会が、ちゃんとしているのも以外ではあった。

 

「オォ!!レンじゃねえかよぉ!!久しぶりだな!!」

「どちら様ですか?」

「おいおい、そりゃないぜ」

「ジョーダンだ。ジョーダン」

 

野太い声と共に、訪れたばかりのレンへと歩み寄ってきたのは、黒地のフォーマルなスーツに身を包んだクラインだった。いつもは野武士然としたサムライのような格好であるため、少しばかり物珍しい物がある。が悲しいかな。スーツに身を包んだクラインは、紳士というより社会の波にもまれるサラリーマンといったところだった。彼のトレードマークたるその無精ひげが、何とも哀愁漂わせている。駆け寄ってきたクラインではあったが、やがてレンの隣にいる二人に気付くと、気障っぽく前髪を掻き上げたかと思うと、丁寧な物腰で頭を下げた。

 

「私、風林火山のリーダーやってます、クラインです。失礼ですが、そちらのお嬢さんは?」

 

その問いの向かう先は、シェリーではなくアルゴだった。シェリーは名の知れたブラックスミスであるし、当然クラインとも面識はあるのだろうが、その声色の真剣さからどうやら本気で目の前の麗人がアルゴであるとは判っていないようだった。そんなクラインが可笑しかったのか、アルゴは少しだけ艶っぽく笑うと、これまた優雅さを漂わせるたたずまいで同様に一礼してから、

 

「わざわざご丁寧にどうも。私、オルガといいます」

 

まるで息を吐くかのように、平然とその嘘をついた。しかも、いっそすがすがしいまでの猫かぶりで。

 

“というかよく頭が回るな、コイツ”

 

と思いながら、レンは内心舌を巻いていた。あらかじめ用意していた可能性もあるだろうが、オルガというのは恐らくアルゴのアナグラムに違いないだろう。さすがは情報屋を営んでいるだけあって、自分の身分を偽るのは巧いらしい。そんなアルゴのウソを、どうやらクラインは信じてしまったようだ。

 

「オルガさん!いやぁお会いできて光栄です」

「いえいえ、こちらこそ」

 

というよりも、アルゴが巧すぎるだけなのかもしれない。仕草、表情、言葉使い。そのどれをとっても普段のアルゴとは比べるべくもない。そもそも、フードとおヒゲが無ければよもやこのお姫様然とした優雅な女性があの謎めいたアルゴだとは認識できまい。それほどまでに、彼女の仕草は板についていて、堂々としていた。女性は怖い、そうレンがしっかりと認識した瞬間でもある。

 

「どうですか?一緒に…………」

「あ、悪いなクライン。俺達用事があっから、また今度にしてくれ」

「あっ!おいまてよぅ!!」

 

引きとめようとするクラインを無視して、レンは二人を連れて教会内部へと飛び込んだ。完璧な演じ方だったとはいえ、あのままだといつかポロっとボロを出してしまうかもしれないし、そうなってしまっては色々とマズイ事情が彼女にはある。情報屋“鼠のアルゴ”として、素性が露見してしまえばいろいろと不便なはずだと、レンが判断したからだ。心の中でクラインに謝りつつ、レンは静まり返っている教会内をゆっくりと歩いてゆく。すると、アルゴがレンの右腕にギュッとより一層腕をからませてきた。

 

「ありがとう、凄く助かった」

「気にすんな。今日はオレがエスコートするってなっている手前、これくらいはしないとな」

 

いつもの如くレンが不敵に笑ってみせると、アルゴも小さく笑って

 

「ありがとう」

 

といつもの調子で返した。

 

「レナ達はどこだろう?」

 

キョロキョロとシェリーがあたりを見渡す。外ではあれだけの賑わいを見せていながらも、教会内はまるで隔離されたかのように恐ろしく静かだ。まぁ、今回の式は外で行われるため、それも当り前なのだが。レンが教会内へと訪れたのは、クラインから逃げることは勿論だが、何にもましてキリトとレナに会うためである。今回、レンはキリトの付添人として他でもないキリト自身から選ばれており、合流ついでに先にあいさつの一言でも述べておこうと考えたのだ。さらに、レナのためにシェリーが丹精込めて作った短剣《テアーオブイージス》もプレゼントしなくてはならない。

 

「あ、あそこの神父さんに聞いてみようよ」

「げっ」

 

シェリーが指差したのは、レンが今最も合いたくない人物、言峰神父その人だった。しかも更に運の悪い事に、アチラもレン達のことに気が付いたようで、こちらへと相変わらず重苦しい雰囲気もまとったまま歩んできた。これでは、無視することも出来まい。

 

「どうした少年。私に何か用かな?」

「ああ、ホントに不本意だけどな」

「さて、君が私を頼るとは珍しいものだな。恋の悩みか?」

「ちげえよ、バーカ」

 

シェリーとアルゴをみてさも愉快そうに顔をゆえつに染める神父を見、やはりこいつだけは苦手だと改めてレンは思った。どことなく、人の弱みに付け込んでくるそのもの言いがどうにもレンは馴染めない。とにかく、早く用件を伝えてさっさと事を済まそうとレンは口を動かす。

 

「キリトとレナはどこだ?ココにいるだろ?」

「ああいるとも。二人とも、礼拝堂横の小通路から入れる個室にて待機しているが。新郎新婦に何か用かね?」

「そうか、じゃあなエセ神父」

「やれやれ、ヒドイ扱われようだ」

 

肩をすくめる言峰神父だが、別段そこまで気にしているそぶりはない。レンの嫌味にもどこか涼しげだ。

 

「今度一緒に、麻婆豆腐でもどうかな?少年」

「死んでもお断りだ」

 

あんな麻婆豆腐は、たとえ地獄に落ちようとも食べたくはない。それだけ言って、レンは言峰神父の言われたままにキリトとレナが待つであろう個室へと向かった。礼拝堂のアーチをくぐり、さっぱりとした石造りの小通路をぬけると、以外にも中庭へとでた。中世然とした建築様式に、日の明かりが目一杯差し込んでいる。そんな光景が、レンの瞳にはひどく叙事詩的に映り込んだ。

 

「やっぱり、ここってとっても綺麗な場所だね」

「かもな」

「こんな場所ナラ、いつでも来てもいいくらいだヨ」

「いや、俺は勘弁かな」

「ア、ここがキ―坊達の控室じゃないカイ?」

「……みたいだな」

 

木目張りのドアの前に立ち、レンはそのままノックした。すると程なくして、中からキリトの声が聞こえてくる。ガチャリとドアノブを回し、明るく優しい色合いの部屋に入る。

 

「よぉ、キリト」

「レン、わざわざ悪いな」

「おっはよー、レン」

「おお」

「アルゴとシェリーも」

「うん」

「お邪魔するヨ」

 

軽い挨拶をかわして、レン達はキリト達の座る向かいのソファーへと腰掛けた。そして、式のための準備にドレスアップをしているキリト夫妻……――いや、未だ挙式は終了していないので婚約者ではあるのだが――を眺めた。レナはとても綺麗で、思わず目に引かれるものがある。いつものポニーテールの鮮やかな髪はおろしてあり、純白のドレスと対になるようなグラデーションとなっている。その陶磁器のようにきめ細かな肌にも薄化粧が施されているのか、それはより一層くっきりと、それでいて小さっぱりと垢ぬけている。瀟洒という言葉は、正に彼女のような美人女性の事を刺すのかもしれない。キリトもそんなレナに負けることなく、体にぴったりと合ったダークスーツを良く着こなしている。が、レンのイメージではてっきり新郎の正装とは新婦が純粋さを象徴する純白とは対照的に、グレーともダークシルバーともとれるような色合いを基調とした、襟の部分が黒色のモノと思い込んでいたので、キリトのその格好は予想外でもあった。

 

「なあ、キリトはどうしてダークスーツなんだ?コレは俺の勝手なイメージだけど、新郎ってグレーっぽい奴じゃなかったっけ?」

 

そんな彼の素朴な疑問は、どうやら存外にすんなりと理解されたようで、バツの悪そうなキリトの代わりにレナが笑いながら答えた。

 

「あのね、一応一度試着してみたんだけど、ホラ、キリトって黒のイメージが強いでしょ?だから変に可笑しくって」

「「「ああ/ア、なるほどな/ね/ネ」」」

 

大層嫌がったであろうキリトの姿が安易に想像できて、三人とも思わず吹き出してしまった。

 

「別にいいだろ?個人の好みの問題だ」

「ああ分かった。ほら、少し遅くなったけど、キリトとレナの結婚祝いだ」

「これは?」

「開けてみたらわかるよ」

 

シェリーにそう言われ、レナは興味つきなさげな表情を浮かべると、そのまま差し出された箱の蓋に手を掛ける。そうして彼女の目の前に現れたのは、まるでレナの髪をそのまま映したかのような、それでいて深い海を思わせる鮮やかながらに美しい短剣《テアーオブイージス》だった。こちらを覗きこんでくるキリトの息をのむ声が聞こえる。それもそのはずで、今レナの目の前に鎮座するその短剣は、だれが一目みてもとてつもないほどの業物であるかは明白。それこそ、キリトが最近手に入れた魔剣《エリシュデータ》に及ぶとも劣らないだろう。あっけにとられたまま、レナが顔を上げると、この送り主たるレンとこの制作者たるシェリーが得意げに笑っていた。

 

「気に入ってくれたか?」

「もちろん!ありがとう、レン」

 

偽りざる心からの感謝を述べてから、そしてレナはシェリーへと抱きついた。

 

「わっ!!」

「シェリーも!私すっごく嬉しい!!」

「分かった、分かったから離れて!!」

「ぷ……く……ハハハハ」

「ちょっとキリト!笑ってないでレナを止めてよ!!」

 

天真爛漫、という言葉がとても似合う言動のまま抱きついてくるレナにシェリーはもはや恥ずかしさでその白い肌を湯で蛸のように赤らめている。そんな二人がとてもほほえましく、なんだか本当の姉妹のようにも映って……気付くとキリトは自然と笑っていたのだ。

 

「レンッ!?」

「悪いけどパスで」

「オレっちもな」

 

レンとアルゴは、我関せずといった態度。それが果して悪戯心からくるのか唯めんどくさかっただけなのかは、いまのシェリーの状態ではとてもではないが判らない。

 

「何、コレ?」

「なんだなんだ?」

 

そんなやり取りは、張りのあるバリトンと麗らかなソプラノの声と共に軽やかに訪れた訪問者二人が表れるまで続いた。

 




小ネタ解説

本編にてアルゴが“オルガ”と身分を偽って(殴
いましたが、レンによればこれは全く関係がないわけではなく彼女のプレイヤー名のアナグラムだとか。

確か前に私が見たアルゴのスペルは《Algo》、本編ではこれを設定として使ってます。(もし本当は違ったりしていたらすいません)
なのでこのスペルを入れ替えて......
《Algo》→《Olga》
なんということでしょう、謎のお姫様へと変身したではないですか!!!

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