そして何よりも、こんな作品を読んでくださる読者の皆様がとても嬉しいです。
今回は後書きにちょっとしたアンケートがあるので、ぜひ気軽にみてください。
死とは何か。定義は人によって様々だろう。息が止まった瞬間。心臓の鼓動が止まった瞬間。脳が機能を停止した瞬間。体の機能面からみた“死”というのは、それこそ、誰もが“死”と認識しているものだろう。
では、見方を変えて、人の精神面から見てみるとどうだろう。たとえ心臓は活発に鼓動し、脳が正常に機能していたとしても、心がなければどうだろう。ほとんどの人は、何かしらの目標、楽しみ、喜びなどを人生に見出し、日々を生きているのだ。ただ、大抵の人は理解できていないだけ。
しかし、もしそれが無ければ?器は機能するのに、中身が満たされてなければ?
生きる意味をなくす。それは、生き物としては成り立っていたとしても、“人”としては死んでいるのではないだろうか?人が最も恐れるのは死だという。それは何故なのか。
今の彼ならば、その答えを自分なりに得ているだろう。何故なら、彼もまた、一度心が死んでしまったのだから。
一度壊れてしまった物を、完全に修復するのは難しい。例えば、バラバラに砕けたガラス。これを元の形に戻し、継いだとしても、ガラスに入った亀裂だけはどうしようもない。
彼の心も同じだった。一度砕け、修復はしたが、その心はどこかいびつだった。そんな彼だからこそ、死とゆう物の恐ろしさを理解したのだ。
死とはつまり自身の意思が底で潰えてしまうこと。“自分は確かに存在する”という証明ができなくなってしまう。すると、世界から少しずつ、“自分”という存在が消えていく。それが恐ろしいのだ。
だからこそ、人々は必死に自分が生きたことの“証”を残す。それが生きるということであり、死ぬということなのだ。
それが、彼の得た答え。とこかいびつになってしまった彼の奥底、本能に近いものが導き出した答え。
しかし、当の彼は自覚していなかった。自分がどれだけ、壊れてしまったのか、を。
***
「ったく、どこもかしこもカップルだらけか……」
レンは、四十九層主街区の一角にあるベンチに座り、行き交う人々や景色を楽しみながら、何処にでもある何の変哲もないパンを切って、とりあえずいろんな食材を詰め込んで作った自前のサンドイッチを咀嚼していた。
ゲーム開始から、もう一年がたち、季節は冬になっていた。肌を刺すような寒さと、しんしんと降り続ける雪が、街の明かりに照らされて、とても幻想的。
「あー、俺もあったかいもの食べたいな―」
サンドイッチは冷たいため、レンがあったかい食べのを食べたくなるのも当然だろう。加えて、クリスマスが近いということもあり、あたりがカップルだらけで、街全体がどこか浮ついているところも原因の一つ。
レンは、一人黙々と物寂しくサンドイッチを食べ続けた。
***
「待たせたナ、レ―坊」
レンがちょうど食べ終えたところで、その背後からアルゴの声がした。
「わざわざ呼び出して悪いな」
「気にしなくていいヨ。それにしてモ、こんな時に私を呼び出すなんテ、デートのお誘いかナ?」
「違うさ、俺はアルゴから情報が買いたいんだ」
「なーんダ。オネーサン残念」
ヤレヤレと肩を上下させるアルゴに苦笑しながらも、レンは続ける
「今、キリトはどうしてる?」
「相変わらずだナ、もうずっと狩り場にこもってレベル上げしてるヨ」
「そうか……」
予想してたとはいえ、レンはため息を吐いた。
「なら、キリトに関する情報は誰が買った?」
「それハ…そうだナ…」
不意に言葉を区切り、アルゴがレンの座っているベンチの空いたスペースへと腰掛け、レンの肩へと体を預けながら、
「先の情報を含めテ、25000コルダナ」
と、可愛らしい笑みを浮かべながらも、予想外の発言をした。
「はい?」
アルゴのあまりに吹っ飛んだ回答に、レンは思わず素っ頓狂な声を上げた。25000コルといえば、レンの武装を十二分に補充させて、少し高めのレストランであったかい食事を摂ることができるくらいの大金である。
少なくとも、レンにとっては。
「いや、流石に高すぎだろ。もっと安くしてくれ」
懇願にも近い形でレンが頼むと、アルゴは悪戯を思いついた子供のような笑みを浮かべて、
「じゃア、オネーサンとデートするこト。それでいいヨ」
と、とんでもない爆弾を投下した。
「いや待て、どーしてそーなる?」
あまりの突拍子の無いアルゴの発言に、レンは頭に疑問符を浮かべる。
「どうもこうも言った通りだヨ。それが嫌なラ、25000コルダナ」
「く………」
足元見やがって………
何故こんな寒い日にレンが自家製の冷たいサンドイッチを食べているのか、一言で表そう。レンは金欠なのだ。
というよりも、金欠じゃなかった時が片手で数えるほどしかない。やれ換えの刃や、やれC-アックスだ、やれトマホークだとか買っていると、面白いくらいに金がなくなっていく。というワケで、レンの財テクは常に火車だったりする。
アルゴの提案した条件、一見YesかNoのニ択に見えるが、ことレンに限り、選択肢がYesかハイかに変化する。
とてもではないが、アルゴに25000コルなんて大金を払った日には、レンは食事どころか、宿にも泊まれず、野宿確定である。
野宿はセキュリティーなど皆無だし、何よりも凍えるほどの外気の中で野宿など、話にならない。
あれ?俺積んでね?
レンは、目頭に何か熱いものが込み上げてくるような感じがした。悩みに悩んだ挙句、レンは苦渋の決断を下した。
「分かった。だから教えてくれ」
「まいドー!」
うれしそうに声をあげ、笑いながら続ける。
「今のところハ、その情報を買ったのはクラインだけだナ」
「そうか、サンキュー」
「じゃア、オネーサン楽しみにしてるヨ」
「ああ、また今度な」
スタッと立ち上がり、アルゴはそんな言葉を残してこの場から去っていった。
「あー、厄介事が増えたな……」
レンはガックリと肩を落とした。そこまでして何故レンがその情報を欲したのか?というと、ここ最近噂されるようになったクリスマス限定フラグMobの噂に起因する。
曰く、ヒイラギの月、つまり、十二月の二十四日夜二十四時ちょうど、どこかに存在するモミの巨木の元に現れる《背教者ニコラス》なる伝説の怪物が出現する。もし倒せることができれば、怪物が背中に担いだ巨大な大袋の中にたっぷりと詰まった財宝が手に入るだろう、と。その中には、蘇生アイテムを匂わせるものまであるのだ。
レン自身は、そこまで必死に探す気はなかった。勿論、カズのことを忘れたわけではない。しかし、死者を再び蘇らせる奇跡は存在しない。だから、背負い続けるしかないのだ。と割り切っていたから。
だが、相棒と呼べるまでに中を深めたキリトは違った。キリトは、まるで憑つかれたかのように、連日無理なレベリングを行っていた。
「あれからもう半年…いや、アイツにとってはまだ半年、か………」
そんなレンの言葉は、粉のようにこんこんと雪が降る漆黒の夜空にかき消された。
レ&カ「「後書きコーナ〜」」
夢「おおーー!!」
レ「もうすぐクリスマスか....早いなあ」
カ「うっせえ。黙ってろこのリア充!!」
夢見「そうだそうだ!爆ぜろ!!」
レ「いつにもまして荒れてんのな。お前ら」
カ「だってなあ」
夢「ああ」
レ「ま、いつかお似合いの人が見つかるって」
カ「むかつくわー」
レ「そういや、アンケートの内容ってのは???」
夢「ズバリ、[レンとアルゴのデートをtea breakとして書いて欲しいか?]活動報告のところにアンケートを作るので気軽に意見をください!!」
レ「ハア?聞いてねえよ!!」
夢「お前の意見は却下で」