それでは、《SAO:AF》第十七話をお楽しみください。
「キリト!!六秒後にスイッチ!!」
「ああ、任せろ!」
曲線的な軌道を描きながら、迫る巨大なハサミを、レンは身を翻してかわし、むなしく空をきったハサミへと飛び移る。
そのままスコーピオンの胴体へと駆け寄り、ソードスキル《マニューバ・ロンド》を発動。大きく上方へと飛翔し、そのまま手にしたダガ―《シンシア+6》を叩きつけ、更に二閃、最後に体を反転して突きを放つ。
「いいよ!キリト!!」
「ハアァァァッ!!」
レナの強烈な四連撃にひるむスコーピオンの頭めがけ、キリトは剣を一閃。
……まだだ、まだいける!!
手を止めることなく、キリトはさらに斬撃を加速させていく。放たれたテールによる突きに、キリトは剣を使ってズラし、そのまま滑り込むようにかいくぐる。
「これで……二本目だ!!」
かいくぐった先に現れた、黒光りする頭部へと、キリトはソードスキルを叩きこむ。ランダムに三撃、体術を一発はさんで、最後に大きく斬り払う。五連撃+一打からなる《スラント・フェイタル》は、鮮紅の火花を散らしながら、スコーピオンの二段目のHPバーを消滅させた。
攻略組がスコーピオンと交戦を開始してから、一時間と二十二分。攻略組は、今の今まで一人も欠けることなく、スコーピオンのHPバーを二本削り取っていた。
理由として、レン達の独立パーティーによるところが多いだろう。レン、カズ、キリト、レナで組まれたこのパーティーは、攻略組内でも有数の高火力ダメージディーラーパーティーであり、特に連携に関しては、アインクラッド随一の正確さと素早さを誇る。
加えて、《ホワイト・カイザー》たるカズによる、正確な情報分析は、たちどころにモンスターの行動パターンを把握し、最も安全な攻撃手段、或いはタイミングを割り出す。曰く
「いくらあの茅場でも、その場の状況に応じて行動させるなんていう高度なスクリプトは組めない。ひとえにシステムの限界なんだよ」
とか。そのおかげで、スコーピオンは攻略組に有効な一撃すら加えることができず、流れは完全にレン達攻略組のものだった。
***
よし、このままいけば大丈夫だ!!
レンはポーションを口に含み、減ったHPを回復させる。
「今回もいい感じだな」
「まあ、今のところはな」
同じく、ポーションを口に含んでいるカズに尋ねると、カズは肩を上下させて頷く。はたしてレンのにらんだ通り、タンク部隊がスコーピオンの猛攻を凌いだ後、
「今だ!!アタッカー隊!攻撃しろ!!」
そんなリンドの掛け声と共に、本隊の三段階攻撃が全てクリーンヒットし、スコーピオンは空しい悲鳴と共に、三本目のHPバーを消滅させた。
「よし、行くぞ!レン!!」
「オーケー」
HPをフルに回復させたレンとカズは、再び前線へと突っ込んでいく。
唸りを上げて接近してくるハサミを、レンがパリィではじき、そのままカズが烈火の如き鋭さでスキル《ダブラ・ティエンポ》を放つ。
一呼吸も置かず、ディレイがかかったカズと、レンは阿吽の呼吸で一言もかわすことなく、スキル《クレッセント》で更に追撃してゆく。
「ウオォォォッ!!」
「ハアァァァァッ!!」
二人は、ディレイタイムの少ないソードスキルで、お互いをカバーし合いながら、次々とスコーピオンへと攻め立てる。
加えて、キリトとレナによる連携攻撃も加わり、スコーピオンに反撃するスキすら与えることなく四本目のHPバーの残り数ドットというところまで削り取る。
このまま押し切れ!!手を休めるな!!
レンの放つ斬撃が、目に見えて苛烈さを増し、4本目のHPバーが消え去ったのと同時に大技を解放させる。ネーブル色のライトエフェクトが描く軌道が混じり合い、一つの巨大な円を紡いでいく。
九つの斬撃によって描かれた円の軌道は、やがて過大な運動量をもってスコーピオンへと牙をむく。レンの化け物じみた敏捷力の高さが可能にした片手直剣九連撃スキル《ナインライブズ・ブレード》。
もらった!!
レンがそう思ったその刹那、スコーピオンは耳をつんざく咆哮を上げながら、その巨大な体躯に似つかわないほどの速度で、上空に反転しながらジャンプした。
しまっ……
マズイッと思い、レンはスキルをキャンセルさせようと全身に力を込めるも、システムはそれを嘲笑うかのように攻撃が繰り出されていく。
《ナインライブズ・ブレード》は、平面上においては敵なしと言ってもいいほどにめっぽう強いスキルでありながら、立体的、特に上方向においては、その弱点が露見する。対象を逃すことを許さない巨大な斬撃の円も、上方向には展開されないので、術者であるレンが無防備になるのだ。
その弱点を読んでいたとばかりに、スコーピオンは上空から鈍青色に光るテールをレンへと放つ。
「クソッ!!」
マズッたな………
そう思って、目をつぶったレンだったが、いつまでたっても体に衝撃が走ることはなかった。不思議に思い、レンがゆっくりと眼を開けた、そこには……………………………..
「ぐ………………はァ………」
右胸にスコーピオンのテールが深々と突き刺さり、ダメージエフェクトを撒き散らしながら、弱弱しくうめき声を上げる……..
カズの姿があった………………………
***
やがて、突き刺さったテールの部分から、鮮やかな藍色のエフェクトが、カズの体を駆け巡る。
「う、く……がああァァァァ!!」
カズは残った最後の力すべてを振りしぼり、胸からテールを引き抜くと、ありったけの力を込めて八連撃スキル《シエロ・ムエルテ》を叩きつける。
水平三連撃、更に縦横に三連撃放って、最後にクロスさせるように二連撃。その攻撃は、華々しく新緑のライトエフェクトと共に放たれるが、ソレは、カズにとっての最後の輝きのようだった。
そのまま、カズはまるで事切れた人形のように、力なくその場に崩れ落ちた。
「カズッ!!」
レンはわき目も振らず、カズのもとへと駆けつけ、ぐったりとしているカズの体を抱き起こす。
「う……レンか………….」
ヒューヒューと息をしながら、カズはレンへと言葉を紡ぐ。
「もういい!何もしゃべるな!!カズ!!」
「もう………ム…リだ……諦め……ろ……」
レンの手にしたポーションを力なく拒みながら、カズは自身のHPバーへと眼を落した。
「毒……だ…….。今までに…なかった…新しい……..異常…ステータスだろ……う。クソォ…しくったぜ……」
カズのHPバーが緩やかにゼロへと近づいていく。今まで存在しなかった異常ステータスを回復させるアイテムは持ち合わせていない。
レンは、ゆっくりと死へと近づいていくカズを、ただ見つめることしかできなかった。
「泣くな……よ……。お前の所為なんか…じゃ…ないさ……」
「でも…でも………」
涙が止まらない。俺は何をしたんだ?そして、何故俺じゃなくカズがこんな目にあってるんだ………
思考がグチャグチャにかき混ぜられ、レンはもう何を考えればいいのか分からなくなっていた。
「心配…すんな。オ…レな…ら......大丈…夫だから……さ。後の…ことは…」
頼んだ…………
ふわりッと、今までにない微笑みを浮かべ、カズの体がはかなく消えていった。
「そんな…ウソ……だろ…カズ…カズ…カズ…カズゥーーーーーーー!!!!」
残されたレンの、悲しみに満ちた叫びが、ボスの部屋に木霊した。
レズノフ「Victory cannot be achieved without sacrifice, Mason ...
We Russian know this better than anyone」
訳) 勝利は犠牲なくして得られない。メイソン、俺たちロシア人は他の誰よりもそれをよく理解している。
作者はこのセリフ後のypaaaaaaaa!!と、胸熱展開が好きでした。
From: CoD:Black ops
夢「....さて、後書きコーナーか」
カ「ああ、そうだな」
夢「ファッ!?」
カ「どうした?そんなに驚いて」
夢「いや、お前は死んだんじゃ....」
カ「そうっぽいが、ここじゃ何故か存在出来るんだよ」
夢「んなバカな」
カ「俺の最後あっけねー。うん」
夢「まあ、最初からカズは死んでしまう設定だったが、改めて見ると俺もそう思う」
カ「他にも没案が有るんだろ?」
夢「うん、ジャジャン!!」
ホワイトボード出現
・カズ生存。そのままALO,GGOともレンと共に大暴れしてML編にて《絶剣》ことユウキさんと結ばれる。
カ「............おい(シャキン)」(←剣を構える音
夢「ななな、なんでしょう(汗」
カ「なんでこっち没にした?」
夢「そりゃ、だって...」
カ「巫山戯るな!どう考えたってこっちの方が美味しいだろ!!」
夢「は??」
カ「レンばっかりモテやがって............羨ましいんだよ(血涙」
夢「そっちかい」
カ「だってさ、俺も彼女欲しかった............」
夢「そんなにか...」
カ「でも、このお陰で、物語はやっと動き出すんだろ?」
夢「ああ」
カ「ならしゃーないか」
夢「理解してくれて助かるよ」
カ「ああ、じゃあ俺は戻るわ」
シュンッ!
夢「突然ですが、カズが死にました。これは、最初から決めてたんです。読者の皆さんは薄々感じてたかもしれませんがね。
タグにあるFPSは、出てくる武器の事だけじゃなく、この話の構成自体もFPSのキャンペーンみたいな展開を目指しています。
有名なFPSであるCoDシリーズやBFシリーズでは、キャンペーンでいきなり今まで戦って来た戦友が亡くなることが多かったりします(まあ、その後何食わぬ顔でまた登場したりしますが(笑)。
ゴーストでは主人公達の父イライアス、BF4の最後のシーンや最初などなどですね。そして、これらでは主人公のその後に大きな変化をもたらします。この物語でも、カズの死が今後大きくレンに影響します。
賛否両論あると思いますが、これからもずっと応援し続けくれれば幸いです。
そして、もっとこんな風にしたら良いよ、などの感想、批判やアドバイスも待っています。