さて、今回は、主人公レンではなく、そのパートナーであるカズにスポットを当てた話です。それでは《SAO:AF》第十四話をお楽しみ下さい。
デスゲームと化し、フィールドに出れば常に死と隣り合わせになるこのアインクラッドにおいて、危険だと理解しながらもフィールドに出続け、解放のために働くプレイヤー達。間違いなくこのアインクラッド内で一番ハイレベルなプレイヤー達だろう。
そんな彼らのことを、他のプレイヤー達は、“攻略組”と呼んだ。
カズの一日はとても早い。まだ日が昇っていない時間に起きて、隣のベッドで健やかに眠っているレンを起こさないように、静かに身支度を済ませていく。
白を基調としたコートタイプのプレートメイルに、つま先とかかとの最低限の部分にしか強化を施されていないスチールブーツを身にまとい、純白に透き通る刀身が印象的な、《セイヴァーズ・ソウル+5》を、背中にある鞘に納めてから、カズの身支度が完了した。
第一層の頃、元βテスターである利点を生かして、レンをサポートしながらも効率よくレベリングを行ってきたカズだったが、レンがSAOでの戦闘に慣れ、一人でも心配はいらないほどに成長した頃から、カズはレンと別行動をとることが多くなった。
その理由は、どうしてもレンに知られたくなかったからだ。
カズが、別行動をとってまで行っていたのは、レベリングでも、クエストクリアのためでもない。己の実力と、知識を生かして、フィールドなどで危機に晒されているプレイヤー達の救助、および、支援。
更には、安全にレベリングができるようマップデータの更新や、モンスターの攻撃パターンなどの情報収集などが、カズが第一層から続けてきたことだった。
やがて日が少しずつ昇り始め、窓のブラインドから弱弱しく光が漏れるようになった頃、カズは最近道具屋を始めたエギルの営む店へと向かった。
***
二十三層主街区である“マララッカ”は、砂漠地帯であるために気候が暑いのは当然だが、それ以上に、NPCやプレイヤー達の活気であふれる街としても有名である。
個性豊かなNPC達が、露天のようなものを多く出店し、防具や鍛冶屋は勿論、食べ所などからなるバザールが毎日開かれる。更に、戦闘系スキルの一切を排除し、生産スキルを装備した、一般に、“職人プレイヤー”と呼ばれるプレイヤー達も多く出店し、マララッカ全体が巨大なコミュニティーとなっているのだ。
しかし、今は少し時間が早いためか、街全体はいたって静かである。
カズは、まだ目覚めきれていない街のストリートを歩きながら、エギルの店へと向かった。コツコツとカズのブーツが鳴り響くほど静まり返っていても、どこかエジプティックな雰囲気を漂わせているメインストリートから外れ、東南アジアあたりを思わせるエスニック風の雰囲気で満たされているサブストリートに、エギルの経営する店がある。
ちなみに、この店の物件自体をエギルが購入したのではなく、貸し出されていたものを借りているという形となっている。ガチャリッ、とカズはドアノブをひねり、まだ薄暗い店内へと踏み入れた。
「エギルーー、おきてるかー」
カズの声がこぢんまりとした店内に木霊する。
流石にまだ早かったか……さて、どこで時間をつぶそうか………
とりあえず外に出ようとカズがドアノブに再び手を掛けると、
「おおー。起きてるぞー」
奥から、眠たそうなバリトンの声がした。カズが振り返ると、がっしりとした体格に、浅黒い肌がとてもマッチングしているエギルが、カウンターに現れていた。
「おお、おはよう」
「ああ、それにしても、ずいぶんと早いな」
言いながら、エギルはさっと取り出したポットに水を入れ、コンロの上に乗せて火を掛ける。すると、ものの数分とたたないうちに、お湯がわきあがる。
ここら辺の非現実感が、ゲームの中なんだなと思ってしまうところではある。棚から取り出した二つのカップにフィルターを設置し、コーヒー豆のような黒い物体を入れてお湯を注ぐと、インスタントなんて目じゃないくらいの速さでコーヒーもどきが出来上がる。
そのまま、エギルは一方のカップをカズへと差し出す。
「サンキュー」
カズはカップを持ち、まだ温かいコーヒーもどきを一口すする。少しの苦みと、結う見豊かな香りが、まだ覚醒しきれていなかったカズの体にしみわたって行く。
「旨い、現実ではカフェでも営んでいたのか?」
「あながち間違ってないぞ、それ」
「マジか…あれ?ディアベルは?」
「ああ、あいつなら……」
うわさをすれば何とやら、エギルが言い終わる前に店のドアが開き、青髪の爽やかなプレイヤーディアベルが表れた。
「お、来た来た」
「おはようカズ、それにしても少し早くないかな?」
「いいって、善は急げってな」
「たしかにね」
ディアベルもカズの隣に座り、エギルからカップを受け取っていた。
「さてと、それじゃあ始めるか」
落ち着いたころ合いを見計らったカズの声と共に、三人は会議を始めた。
***
「じゃあ計二十七人か?」
「ああ」
「内、十九名はそれぞれパーティーを組んでいたそうだ。全滅らしい」
最初、カズ一人だけだったこの活動も、今ではエギルやディアベルも加わっている。ティアベルは、第一層のあの出来事の後に、カズが声をかけたのだ。
そうして、こうやって定期的に集まっては、彼らのコネクションなどをフルに活用して、死者やフィールドの危険な場所、どの層が一番、被害が大きいかなどの情報交換を行っているのだ。
「くそ!まだそんなにか」
カズは己のこぶしを握りしめ、テーブルを思いっきりたたく。全てのプレイヤーを一人で助けることは、たとえどんな奇跡があろうともかなわない。
そんなことは頭で理解していても、カズは、救えなかった自分の無力さを呪った。
「まあ、そんなに気を落とすな」
「そうだね。割り切ることも大切さ」
対して、ディアベルやエギルなどの大人組は、極めて冷静に事を見ていた。気を落とすなと言わんばかりに、エギルがカズの肩をたたく。
冷めて冷たくなったコーヒーもどきをカズはあおり、胸の内にうずくまる気持ちを落ち着かせた。外は日が昇り、ドア越しからは陽気な声が聞こえ始めている。
「もうこんな時間か…………」
そんな音を聞いて、エギルがつぶやく。
「エギルはいつも通りだろ?ディアベルはどうするんだ?」
「俺は、最近プレイヤーが多い十六層のフィールドあたりに行ってみるよ」
第十六層は、アクティベートされてからおよそ五日でボス部屋までたどり着き、一人の犠牲者を出すことなく攻略されたのだが、今では、中層プレイヤー達のボリュームゾーンとなっているのだ。なので、自然と危険も増えてしまう。ディアベルは、その状況把握と、死者が出ないようにパトロールに行くのだろう。
「じゃあ、俺はマッピングを続けるかな」
カズは、二十三層のマップデータを更新し続けることにした。カズは残っているコーヒーもどきを飲み干し、
「サンキュー、エギル。旨かった」
「ああ、気をつけろよ」
「無茶だけはしないでくれ」
「分かってるさ」
とだけ呟いて、カズはエギルの店を後にし、フィールドへと向かった。
***
砂煙を巻き上げながら、地面スレスレを、しなるムチのように迫ってくるテール攻撃を、カズは迷うことなく上に跳んで回避する。そのまま上方から、《セイヴァーズ・ソウル+5》で一突きして、ひるんだサラマンダ―を踏み越えて、後方の離れた場所にいるもう一体のサラマンダ―へと肉薄する。
後方にいたサラマンダ―が、カズを攻撃対象と認識し、繰り出してくるサラマンダ―特有の噛み付き攻撃に対して、カズはライトエフェクトと共に剣を好きい上げるように斬りつけ、そのまま足を切り返して一回転し、その勢いそのままに、サラマンダ―へ水色のライトエフェクトが水平に走った。
時間差で二連撃目が飛んでくるトリッキーなソードスキル《ダブラ・ティエンポ》。その変則連撃に、サラマンダ―の体が派手なガラスエフェクトと共に消滅した。更に迫ってくる一匹目のサラマンダ―に対し、カズはディレイが解けるやいなや、高速の連撃を浴びせてゆく。
左上から斬りつけ、そのまま斬り上げ、迫るテールをスウェーでかわし、開いたサラマンダ―の側面へと鋭い突きを放つ。まるで一種のソードスキルのようなソレは、サラマンダ―のHPを、目に見えてグングン削って行き、十三連撃目となる斬り払いがヒットしたころには、サラマンダ―は跡形もなく消滅していた。
「ふう………」
カズはセイヴァーズ・ソウル+5を投げ上げ、戻ったところを右手でキャッチし、背中にある鞘へと収める。
「近くに反応は無い、か………」
索敵スキルで周囲の状況を確認したカズは、そのままマッピングを再開させた。
レ「さあ、あとがきコーナの時k...モゴモゴォ!!」
カズがレンに猿轡をはめた。
カ「しゃあ!改めてあとがきコーナの時間だ!!」
夢「いや、あのー、どったの?」
カ「今回は俺が主人公だから、とーぜんだろ」
夢「いや、許可してねーし」
レ「モゴオ! モゴモゴゴ!!」(←そうだ!ふざけんな!!」
カ「聞こえないなあ〜」(←勝ち誇った笑み
夢「ハア、ダメだこいつら」
カ「やっと予告通り俺の活躍回か。待ちくたびれたぜw」
夢「まあ、そうかもね」
カ「俺の活躍見たいって思っていた人もさぞかし多かったんだろう」
夢「どこ見てもそんなことない件について」
カ「マジ?」
夢「大マジっす」
カ「くそ!これもお前の文才のNASAののせいか!」
夢「はあ?出してやったんだから感謝しろ!」
カ「うっせえよ!悔しかったらそのダメな文章力をなんとかしろよ。このサボり魔」
夢「ああもう、どうしてこいつらは揃いも揃って性格最悪なんだよ!誰だよこんなやつ考えたの(すっとぼけ」
カ「まあ、哀れな阿呆の成れの果てだ。みんな、気にしなくていいぞ」
カ「それじゃあ、感想やアドバイス、優しい批判(作者が豆腐メンタルだから)待ってるぜ!」
ー追記ー
もう今更感が半端じゃないんですが、夢見草の書くあとがきコーナーは十二割がたキャラ崩壊を起こすので悪しからず。