トイレから店内に戻ったオビトだが、店内には酔いつぶれた忍が多数いることを除けば、未菜とダンゾウがいないことしか、違いがない。
「ダンゾウは?」
まだ酔いつぶれてない忍の一人に尋ねるが、顔を逸らすだけだった。
「ダンゾウは?」
別のやつに問い詰めると、そいつも目を逸らし、ポツリと呟いた。
「ダンゾウ様の件は、残念でした」
オビトはそれだけですべてを察した。
店員に領収書は火影に回すように指示してから、ダンゾウを追うべく、というより救うべく、店を飛び出した。
「ダンゾウーーー!!俺が付くまで死ぬなよーー!お前は骨が粉になるまで俺がこき使うって決めてんだからなーー!!」
オビトそういって時空間へと消えていった。
しばらく里内を探し回り、林の中にダンゾウを見つける。
「ダンゾウ!生きてるか?」
「お、オビトか。助かった。本当に助かった」
ダンゾウは多くの切り傷を負い、目も血走っていた。
ダンゾウほどの手練であれば、未菜がいかに強いといっても逃げ切ることは不可能ではない。しかし、それは逃走にのみ力を注ぎ、一切の反撃はできない。もし、下手に反撃して、未菜が死んでしまったとしたら、今度はオビトに命を狙われる。そして、神威を持つオビトを相手にするとなれば逃げることすらかなわないのである。
「ダンゾウ、とりあえず、時空間に引っ込んでろ」
オビトはそういうとダンゾウをつかみ、神威で時空間に取り込む。未菜もそのうち酔いが覚めて、家路に着くだろう。
しかし、今回のことで実感したが、やはり、仙術の習得は必須である。
お手軽に仙術を使うための手段は既に完成しているとはいえ、やはり、できれば使いたくないのも本当だ。
両腕は既に呪印だらけだし、胸部には柱間細胞あるし、背中からわき腹に至っても色々仕込んであるし、これ以上入れる場所がない。となれば仙術を入れるにはいくつか抜かなければならない。
やはり、真っ当な手段で習得すべきかとも考えたが、時間はないし。第一真っ当な方法を知らない。何だ。一日中黙想でもしてればいいのか?
ちなみにオビトの中に蛙の里での修行は既にない。あそこは既に立ち入り禁止されている。
そもそも探知能力が問題だ。基本的にオビトの探知の術は攻撃+感知だ。理由としては当然、味方を探すことより敵を探すことのほうが多いからである。そういったことを抜きにしても今まではカカシがいたというのも理由の一つだ。
基本的にそれに適した人間がいるならその人に丸投げするのがオビトのやり方だ。雇用を生んでいるともいえるが。
ふらふらと帳の本部への道を歩いているとカカシとリンを発見する。なぜか、無意識のうちに物陰へと隠れてしまう。二人は友人だから邪魔してはいけないと思っての行動だ。決して、面白くなりそうだなんて、考えてはいない。
ちなみに物陰にはアスマとアンコがいた。
「なにしてんの?」
「いや、なんとなく。面白くなりそうだな、とは思ってない。な」
「ええ、思ってないわよ」
思っていないのであれば仕方がない。三人仲良く除き見ることにしよう。
「あいつら、なーんですぐにでも引っ付かないんだろうな」
「見てて腹立つわよね」
オビトはちらりとアスマを見てから言う。
「本当にな、多少強引な手を使ってもいいかもしれん」
それはそれとして、アスマの兄に当たるオトマも恋人ができたらしい。
全く将来が楽しみで仕方がない。
いつまで見ていても意味がないので、そうそうにアスマ達と別れ、一人、町並みを眺めながら歩く。
やはり、この日常を守るためには国力の増加は必須だ。いっそのこと小国をいくつか巻き込んで風の国と合併するのはありかもしれない。大名を排するか、取り込めばそう難しい話でもないだろう。
シカクあたりを使って計画を練る部隊も作っておこう。いずれ役に立つときが来るかもしれないし。
そこまで行くなら鉄の国も入れて大陸を二分するのは視野に入れておくべきか。などと考えながら家に着く。よく考えれば家に帰るのは三ヶ月ぶりである。基本的に帳の仮眠室で寝てるし。
家の中に入ると違和感を感じ取る。三ヶ月ぶりの帰宅だというのに、明らかに部屋が綺麗過ぎる。窓のふちに指を走らせるが、ホコリ一つない。
そして、机の上には一つ、巻物がある。中を開くと特殊暗号が記されている。ミナトが作った、オビトを始め、替えの効きずらい特殊かつ有効な血継限界や技術を持った忍、一人一人に作られた暗号で。火影勅命の極秘任務が書かれるときに使われるものだ。
出産のときは近い。