うちはオビト憑依忍伝   作:asd

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忍だ

父と母が任務に出る寸前。オビトは玄関へと付き、ともに砂との戦いに赴く夫婦へと声をかけた。

 

「いってらっしゃい」

 

父は驚いた様にオビトを見ると、口元をゆがめた。

 

「オビトは早起きだな~」

 

「それはどうでもいいけど、いつごろ帰ってくるの?」

 

まさしくオビトにとってはどうでもいいことであった。オビトはいつも八時には寝て四時にはおきるのでこの時間帯は別に早くはない。むしろ、六時ごろに目覚める両親が今日に限っては早起きなのだ。

 

「さあな?戦争だからな。三日で帰ってくるかもしれないし、一月かかるかもしれないし。もしかしたら帰ってこれないかもしれない」

 

父はそういってオビトの頭をなでた。

 

「だが、そう心配するな。これでも上忍だ。そうそうに遅れはとらんさ」

 

「そう……気をつけてね」

 

ああ、そう微笑むと父は軽く台所のほうへと指差した。

 

「母さんがカレーを作ってくれてるから食べなさい。食べ終わったらキチンと片付けて、そこからは自炊しなさい。お金は台所においてあるし、必要なら身代わりようのウサギを食べてもいいし」

 

「わかった」

 

「オビト。さびしくなったら、友達でも誘って焼肉を食べにいくといい。辛いときは肉を食べろ。父さんも母さんに振られたときはいつもそうして強くなった」

 

「両親のそんな話聞きたくもねー」

 

「ははっ、そうか。なら、帰ってきたらゆっくりと聞かせてやる」

 

父は軽く手を振りながら去っていった。その後に母もまた微笑みながら去ったいった。

 

 

 

 

 

 

一人暮らしは決して問題はなかった。前世を足せばおっさんと呼ばれ始める年齢だし、何より父がおいていってくれたお金は毎食外食をしても一月持つほどの額だった。それにオビト自身、どこにお金があるのか知っているのだから、最悪そこから引けばいい。

 

カカシにウサギをさばかせて盛大にバーベキューもしたのだが、それはどうでもいいので割愛しよう。

 

 

 

 

そんな平和な日常だったからオビトにとって父が毒で死に掛けているというのは寝耳に水だった。

 

 

 

 

 

オビトは走った限界まで走った。限界を超えたかも知れないと思うほどに、足が悲鳴を上げるほどに走った。

 

オビトは父をあまり好きではなかった。その理由はいうまでもなく父が人殺しだからだ。仕事だから、殺さなければ殺されるから。理由を挙げればいくつでも敵を殺す動機は出てくる。しかし、それでも日本人的思考の抜けないオビトにとって、それは明らかにマイナスポイントだ。

 

にもかかわらず。

 

 

 

 

 

オビトは走った。

 

 

 

 

 

ドアの開いた病室に着いたとき、オビトは頭を斜めに振り続けられるような気持ち悪い感覚に襲われていた。

 

 

床は既に崩れているように見えた。否、厳密に言えば父へのベットへと続く四角の升目以外は黒く、闇色に見えた。

 

見えるのは一部の床と母と父とベット、そして顔と服の認識ができない人のような何か。

 

ふらり、ふらりと夢遊病者の如く父へと近づく。

 

 

父の枕元へと呆然と立ち尽くす。

 

 

母の泣き声は遠く

 

 

言葉を発しているであろう人らしき物体の声は認識できない。

 

 

ただ、今にも死にそうな顔をした父がこちらを見て発する声だけは何を言っているのかわかった。

 

わかりたくもなかったが、わかった。

 

 

「オビト。俺を殺してくれ。そして、お前が木の葉を守るんだ」

 

 

「さあ、台の上にある刀で俺の首を刎ねろ」

 

「さあ!」

 

今まで認識すらできなかった。台と刀を見つける。己が体ではないかの様に自然と刀を手にする。

 

しかし、その重さに切っ先はいとも容易く床へと接する。

 

はて、かつて持ったときこの刀はこれほど重かっただろうか。

 

自然とそんなことを思った。

 

自然と腰で刀を支え、腕と背中で切っ先を天井へと向ける。オビトの顔は死にかけた、父の顔へと向けられる。オビトの黒い眼を父の赤い眼が交わる。

 

 

 

母の叫びは遠く。消えていった。

 

 

その刹那

 

オビトの刀は

 

断頭台へと変化した

 

 

 

 

 

あああ゛

 

 

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛

 

 

見開かれた眼がただ、こちらをのぞいていた。

 

 

オビトの眼は変質を遂げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

未菜を押さえつけながらダンゾウはうなる。

 

これほどの忍は大戦時である今でもなかなかにいない。

 

愛する我が子に幻術をかけ、自分の首を刎ねさせることで己が子に、力を与えた。

 

そして、ダンゾウの眼は捉えていた。自らが押さえつけている美菜もまた新たな力を得たことを。

 

これまで、戦場で死ぬことが忍らしさだとダンゾウは思っていた。しかし、どうだ?目の前の男はベットの上で同僚に見送られ、家族に囲まれ、それでもなお、忍らしく死んでいったではないか!?

 

人のあり方ではない。そう人ではない! 忍だ!

 

オビトの父の死に様はかつてないほどの感動をダンゾウへと与えていた。

 

 

 

 

うちはハンケイ。

 

その名をダンゾウは生涯忘れることはないだろう。




感想ほしいな。ちょっと無理やり締めくくったから反応が気になってしまう。

良い、悪いの二択でいいだが。

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