オビトとカカシが修練に勤しんだ次の日。木の葉は慌ただしく動いた。
早い話が霧が波の国を落としたのである。
「火影様、波の国が落とされたと聞きましたが」
「ん、それについてはこれから方針を話すからみんなが揃うまでは待っていてくれ」
この時、オビトだけがその場にはおらず、戦線へと赴いていた。厳密には波と火の国境に。オビトは神威があるから火影の次に機動力のある忍だ。時空間にいた老紫は既に殺され、尾獣はツボへと封印されていた。早い話が輪廻眼に目覚めたので不必要になったのだ。人柱力になることのリスクを考えれば尾獣の力など、輪廻眼を手にしたオビトには必要ない。
オビトは帳を引き連れ、国境に赴き、陣をひいていた。ミナトにより先に話を聞かされ、霧を境界として、火の国への進行を遅らせるように支持されていたのだ。また、波の国を取り戻さないのはそれが不可能であるからである。
皆が揃ったところでミナトは説明に入る。
「皆、知っているとは思うが、波の国が落とされた。駐在していた忍も全て壊走している。霧の里は波の国を落とすために人柱力である水影を先頭として戦闘に攻め入り、今現在は水影が巨大な霧隠れを発生させているために波の国では完全な無視界状態だ」
ミナトはそういうとヒルゼンに頷き、巨大な紙を広げさせる。
「今回、波の国の奪還のために、部隊を再編成する。小隊は四人一組ではなく五人一組で作り、全部隊に日向、油女、山中、犬塚を代表とする探知タイプを組み込むこととなる。また、忍同士のハンドシグナルは使用できないので、音によるモールス信号で交信し、絶対、通常の声には反応しないように」
つまり、普通に助けてくれと言われても、それは仲間ではないので見捨てろということだ。
「今作戦は水影の波の国からの撤退、或いは水影の殺害をもって成功とする。ただ、水影は人柱力であり、極めて強い。はっきり言って僕をはじめとする一部の忍でしか太刀打ちできないだろう。故に、水影を見つけた際はすぐに発煙弾を上げてくれ。いいね」
「大蛇丸さんは根の暗部衆を率いて、雷の国への警戒をしてください。油女シビ、秋道チョウザ、日向ヒザシは僕と四人一組を組んでもらう。じゃ、各自、準備が整ったら部隊ごとに集合して、国境に向かってくれ。散!!」
各々が動き出した。そして、それは霧隠れの忍も同じだ。
水影自ら趣いた波の国では民が集められ、今後の方針が発表されていた。
「今回、水の国がこの波の国を制圧したが、我々はここを属国として扱うつもりはない。波の国と火の国の国境に砦を作り、そして、その時、波の国は水の国に吸収合併することとなる。そしてその際、大名が住まう首都は波の国と水の国の国境に移され、その恩恵は波の国にも渡り、皆の生活も楽なものになるだろう!!」
波の国の各地で演説が行われ、波の民をそれを歓迎していた。この大戦の後爪が残る中、生活が楽になるのならばそれを拒絶する理由はないのだから。
口寄せ・並列羅生門
30を超える羅生門がズラリと横に並ぶ。
「取り敢えず、これを擬似的な砦にしよう」
かなりの消費チャクラではあったが、すっからかんになるほどではない。オビトはカリカリと兵糧丸をかじりながら、テントへと戻る。
「ダンゾウ、今回の件、どう思う?」
「さて、な。おそらく波の国を取り込むつもりだろうが、言っては悪いが策がずさんだ。おそらく、他にも何か手を打ってあるのだろう」
ダンゾウは引退こそしたが、この業界から完全に消えたわけではない。所謂、相談役として木の葉に残っていた。
相談役とは補佐とも違う形であり、火影の相談役がコハルとホムラ、根の相談役が火影を引退したヒルゼン、そして、帳の相談役がダンゾウだ。今回、オビトはダンゾウも連れてきていた。というより、ダンゾウを相談役に任命したのがオビトなのだ。ダンゾウの木の葉を思う気持ちは本物であり、それをもったいないと思ったのだ。
「火影様はどう手を打つつもりなのか・・・。どちらにせいよ、俺たちは勝手に動くことを許されないだろうな」
「オビト、お前ならどう動く」
「俺なら、帳を引き連れ霧の里に乗り込んで、女子供を殺すな。現在の戦力を削ぐことにはつながらないが、10年、20年先につながる」
オビトがそう言うとダンゾウは喉を鳴らして笑う。
「やはり、おまえは似ておるよ。カガミに、そして儂にな」
嬉しくねーと呟くと、テントにトドキを始めとする数名の忍が入ってくる。中には拘束された、霧の額あてをした忍もいる。
「海からこちらを探ってる忍がいたんで捉えました」
簡素な報告に頷くと、コツりコツりと歩み寄る。
「霧の忍だな。功を焦ったか?」
男二人と女一人の三人一組。三人ともがオビトと同年代に見える。
忍刀を振って、男二人の首を落とす。水影への報告は必要だろうと女を生かせておいたのだ。
「男の首は晒しておけ、ないとは思うが霧から何人か出てくるかもしれん。・・・・・・さて、お前は水影への伝令として生かしておいてやろう。命の代わりに名を名乗れ」
女はこちらをにらみ殺さんとするほど睨んでいたが、諦めたように俯き、小さな声で名乗った。
照美メイ、と。
思ったよりも指が走って書き上げてしまった。
ただ、予定が変わったわけではないので、次は遅いと思います。