人柱力戦、オビトが取った作戦は実に単純。奇襲で戦闘力を下げてから、敵に堂々と打ち勝つというものだった。
これが水影やビーならば話は別だが、相手は尾獣と和解できていない老紫だ。そこまで綿密に策を練る必要はない。
それに綿密に策を練るとは同時に僅かなミスで作戦が一気に崩れるということでもあり、余計なリスクはおうべきではない。
故にオビトは老紫を先回りして、起爆札を伏せて、地面へと隠れ潜んだ。
老紫が来たことを見計らい、起爆札を起動させるが、老紫はそれを跳んで避けた。
オビトは地面から出て、老紫に向かって豪火球の術を放ち、自身も豪火球の影ならぬ光に隠れて老紫に向かって飛ぶ。老紫はそれを空中のまま、口から土遁・剛隷式の術を出して防いだ。しかし、オビトは神威で剛隷式と豪火球をすり抜け、老紫に近づいた。オビトが左手にクナイを持っているのを見て、老紫は首と心臓、それと脳を両腕でかばうが、オビトは右手で老紫の腹に手を叩き込んだ。
五行封印の術。
尾獣のチャクラを一気に使えなくなる様にした。これは大蛇丸がナルトに対して使用した方法だ。
更にオビトはクナイを振って、それについていた鎖を老紫へと巻きつけた。
秘術・石針の術。
本来は相手に針を刺し、それにチャクラを流して動けなくする術だが、オビトでは単純に出力が足りず、鎖で縛り、そこからチャクラを流すことでそれを可能とした。
二人は地面に着地した。だが、老紫は雄叫びを上げ、持ち前の腕力だけで、鎖を引きちぎった。
「まじか!?」
なり立ての上忍くらいなら身じろぎ一つできなくなるはずなのだが、流石は人柱力というべきか。いや、おっさんになってから人柱力として選ばれた老紫をここでは褒めるべきだろう。基本的に人柱力は子供が選ばれるものなのだから。
老紫は、そしてオビトも印を組む。両者は共に寅の印を最後に組む。
うちは一族として、火遁の打ち合いは望むところであり、オビトは神威で相手の無駄打ちを狙うのではなく、術合戦に持ち込むことにした。
火遁・豪火球の術
熔遁・岩熔弾の術
オビトの豪火球は熔遁の圧倒的な質量に押され、僅かに熔遁の速度を落とすにとどめ、豪炎をまとった火山岩はオビトへと向かってきた。
オビトは背中の団扇でそれを受け止めた。団扇はチャクラで構成された火山岩を吸収し、風の性質へと変化させる。オビトはそれに火遁をたして、老紫へと返した。
うちは火炎返し
風の性質、つまり風遁を足されたオビトの豪火球はマダラの豪火滅却に匹敵する威力で老紫へと飛んでいく。老紫は地動核の術で、自身がいるところを沈め、豪火球を躱した。
しかし、厄介な相手だ。鎖を引きちぎる腕力に本来うずくまるほどの痛みが伴う封印を受けて耐える精神力、そして、封印をされても尚感じる尾獣のチャクラ。おそらく、尾獣のチャクラを自らに還元できるような封印式を使っているのだろう。熔遁を使えるのも、その封印式を利用してのことだろう。
脳内での相手の実力をあげる。三忍とは言わないがビンゴブックでいえばA級だろう。アスマで言えば20歳くらいで3500万両、オビトで言えば7000万両、大蛇丸なら1億2000万両、四代目なら二億万両だ。無論、実力だけでなくその地位や一族の貴重性も含めた賞金額だが。それで言うな5、6千万両くらいだろう。
和解はしてないとは言え、人柱力だ。四尾の気まぐれで幻術をかけても無力化されるかもしれない。気絶させてから縛るべきだろう。
にしても、熔遁の印は寅だということが、オビトにとって驚きだった。てっきり土遁の巳だと思っていたのだが。
火遁でクナイに刃を纏わせて構える。今度は両手に、だ。両足と両手を斬り落とせば少しはおとなしくなるだろう。
両手のクナイをクロスさせる様に斬りつけるが、老紫はゴーレムで防いだ。それに対しオビトは裾から毒煙玉地面に落とした。煙が二人を覆い隠したが、オビトと老紫は共に後ろへと跳び相対する。
しかし、老紫の足首の健がいきなり斬られる。老紫のすぐそばの足場には地面からオビトが手首だけを出して健を斬ったのだ。
相対していたオビトは鎖を投げつけ左手に巻きつける。地面に潜んでいたオビトもまた地面から飛び出して右手を鎖で縛り、反対側へと跳ぶ。
そして、神威で団扇を背負った本体が地面からスルっと老紫の目の前に現れて団扇で老紫の腹を叩いて気絶させた。
倒れた老紫の両腕を後ろに回し、縛り、封印札で封じる。
その状態にしてから神威で吸い込んだ。可能ならばこの場で人柱力になってしまいたいところではあるが、準備が必要だ。少なくとも写輪眼の移植はしなければならない。
それに鍵の無い状態で封印術を特にはそれなりな規模の術が必要になる。オビトは自らも時空間に飛んで、俯けだった老紫をひっくり返す。そして、封印式を調べようとしたところで、いきなりボンっと煙を立てて、老紫はゴム人形へと変貌した。
「え?」
「E?」
二回ほど疑問符を上げてからようやく正気に戻る。
「熔遁・分身だと!?いつの間に」
ゴムの足には斬られた跡がある。つまり、タイミング的には毒煙の時か、あるいは地動核の術の時ということだろう。
分身にも関わらず斬られても消えなかったのはおそらくゴムだからだろう。本来、影分身などには実体はあっても肉体はない。それ故に傷つくと消える。しかし、これにはゴムという肉体がある。故に簡単には消えないということだ。
「ち、ちくしょーーーーー!!!!」
つまり、オビトはまんまと老紫に逃げられたということだ。オビトは八つ当たりにゴムを焼くと、しばらく膝をついて落ち込んだ。
指摘されて気づいたのですが、老紫の年齢を測り間違えていました。
ですが、このままで行きます。
また、サスケは粘土分身を見抜けませんでしたので、同じ血継限界であるゴム分身も見抜きづらいということにしました。