Who reached Infinite-Stratos ? 作:卯月ゆう
本っっっっ当にありがとうございます!
紆余曲折あったものの、なんとか迎えた文化祭当日。メイド喫茶改め、ご奉仕喫茶、1年1組は一夏の存在もあってかなりの盛況ぶりだった
「いらっしゃいませ、お嬢様。ご案内いたします」
シャルロットはどこか上機嫌で接客に従事ていた。教室を見渡せばほかに燕尾服を着た一夏、メイド服のラウラ、セシリア、意外や意外、箒もメイド服だ。その他数人も接客担当として教室内をゆっくり急いでいた
櫻はもちろんメイド服のサイズがないから接客なんて無理だ。かと言って執事服を着るのも憚られる(というか、着せようと言ったら発言者が何をされるかわからない)為に総合プロデューサーというわけのわからない役職をあてがわれ、裏方に徹していた。
「ドリンクの残量は?」
「まだ想定内だよ。追加の買い出しは予定通りで良さそう」
「おっけい。他になにかある?」
「調理は問題なし。お菓子も計算通りに売れてるよ」
「よっし。この調子で1日乗り切ろう!」
「「「「おぉ~っ!!」」」」
相変わらずのカリスマだ。
ホール担当はドタバタだが、裏はカップにドリンクを注いでお菓子や調理済みの一品物と一緒にプレートへ乗せるだけのカンタン作業。意外と余裕がある
それもそのはず、ホール担当のメイドや執事の胸元をささやかに彩るバラのブローチ。中にはマイクと送信機が内蔵されており、それで裏方のつけるヘッドセットに音声を飛ばす為、オーダーを取ったら裏では即準備、ホール担当が裏に来たら手渡すだけという効率主義。
これを作らされた数人は徹夜だったそうだが……
「櫻、そろそろ」
「そうだね」
携帯を取り出すとおもむろにダイヤル。「時間だよ、予定通りに」と短い会話を済ませると
「あと30分で追加分が来る。それまで持たせろっ!」
「了解っ!」
各々の仕事にも慣れて回転が上がってきたところでホールが何やら騒がしい。
「ちょっと見てくる」と一言残してホールに飛び出すと新聞部の腕章を付けた生徒と……メイド服の楯無。そしてチャイナドレスの鈴。
「いったい何事ですか? あぁ、楯無先輩ですか……。オイ」
ボス(ラスボスはもちろん……)の登場に気づいた者は櫻に目を向けるが、楯無は一夏を隣に据えて新聞部員に写真を撮られている。
後ろからそっと近づき、新聞部員と楯無の肩に手を置くと
「先輩。後で虚先輩にこのことはご報告させていただきます。それと新聞部の方。ちゃんとアポイントメントを取ってからの取材をお願い致します。でないとどうなるか解るよな」
現れた櫻に笑みが引きつる一夏と鈴。そして冷や汗を流す新聞部の娘。
楯無は「万事休す!」と書かれた扇子を広げ……殴られた
「いい加減にしてくださいね? 私も天使じゃありませんから。いまとっても忙しいのがわからないとは言わせませんよ? オイ、なにか言ってみろよ楯無」
「さ、櫻ちゃん? キャラがぶれてるから……」
「そうですかね? いつもどおりですよ。ね、一夏くん?」
「あ、ああ。そうだな。うん」
赤べこの如く頷く一夏。あの(堕)天使スマイルで同意を求められれば頷かざるを得ない
「えっと、じゃぁ専用機持ちの娘をお借りして退散するわ……」
「じゃ、じゃあ、私もコレで失礼しま~っす」
「もう二度と来なくて結構ですよ。それと、新聞部には先生を通じて抗議を入れさせていただきますので」
一瞬足が止まった新聞部員だったが、そこからダッシュで教室を飛び出した
「さ、櫻ちゃん。シャルロット達がいなくなると回らないよ!」
「私が前に出るから。執事服はまだあったよね?」
「う、うん。でも、あと3人が……」
「それはちょっと――「いらっしゃいませ、お嬢様」
ちょうど入ってきたのはスーツを着た女性3人。2人は20代と見え、もう一人は同年代にしか見えない。
「さくちん! 来たよ~!」
そう、紫苑始め、フュルステンベルクの一行だ。
櫻はニヤリと笑うと
「クロエ、ちょっと」
「はい、何でしょうか?」
「コレ来て接客。はい、裏行って着替える!」
「え、ちょっと。櫻さまっ?」
クロエを拉致すると裏に押し込み、メイド服に着替えさせる。そして何事もなかったかのように「ご主人様、ご案内!」とホールに叫んだ
櫻も裏に飛び込んでさっさと燕尾服に着替えるとクロエとともにホールに出た
「いらっしゃいませ、ご主人様。ご注文はお決まりでしょうか?」
「あらあら、櫻はメイドじゃないのね」
「本当は裏方だよ……。さっき一夏くんが連れて行かれちゃったからさ」
「いっくんも災難だね」
「ホント、それで。ご注文はお決まりでしょうか?」
「そうね、私はケーキセット、アイスティーでね」
「私も同じでいいよ」
「かしこまりました。ケーキセット、アイスティーでお2つ、お間違い無いでしょうか?」
「ええ」
「では、暫しお待ちを」
去っていく櫻は長い銀髪と漆黒の燕尾服とのコントラストで普段の2割増しでかっこ良く見えたのは気のせいでは無いだろう。
廊下や教室で「お姉さま……」とつぶやかれるのを紫苑は聞き逃さなかった
――女の子にモテそうだとは思ったけど……まさかねぇ
母の心配を他所に、娘はさらにファンを増やしていくのであった