Who reached Infinite-Stratos ? 作:卯月ゆう
夏休みも終盤、全国各地で夏祭りや花火大会が相次いで開催される中でドイツはミュンヘン。ローゼンタール本社の社長室、そこの隠し部屋にタスクフォースの面々は招集されていた。
「いきなり集めちゃってごめんね。特に櫻とラウラちゃんはこの前日本に戻ったばかりなのに」
「いえ、コレも仕事です。問題ありません」
「あら、ラウラちゃんはお仕事モードね。じゃ、私もそうしましょう」
手元のリモコンをいじると正面のスクリーンにある映像が映し出される。
どこかの軍基地のようなところで、画面右から8本足のISらしきものがやってくると周囲を蹂躙していく。それぞれの足に独立した制御系を持つようだ。さらに、実弾系の武器が内蔵されているためハイパーセンサーと合わさって、攻撃に死角はないように見える。
「これは先週の水曜日にイギリスのバッキンガムシャー、ハイ・ウィッカム空軍基地で起こったISの強奪事件の映像よ。あの8本足はアメリカの第二世代、アラクネと呼ばれるモデルね。これも7月に強奪されてるわ。それで、今回盗まれたのは第3世代、BT実証機『サイレント・ゼフィルス』」
一区切り付けて、櫻、ルイーゼ、ラウラの3人を見回すと、ここからが本題ね。と再びスクリーンを指した
「世界で起こるIS強奪事件の主犯と考えられているのは
そう言ってスクリーンの片隅に映しだされたのは長いブロンドの髪の上品そうな女性。真っ赤なドレスに身を包んでホテルから出てくるところを撮られている。
「スコール・ミューゼル。亡国機業のスコール派を束ねているわ。そして実行役は確認されているだけで2人。アラクネに乗るコードネーム『オータム』と、サイレントゼフィルスに乗る女。彼女の情報は殆ど無いわ。黒いロングヘアーがカメラに写ってたけど、切られたらわからないしね」
私達の長期的ミッションを通達します。と告げると
「私と束ちゃんで情報収集。ルイーゼはヨーロッパ圏での実働、櫻とラウラはアジア圏での実働とIS学園の警備を命じます。なお、本作戦は日本の暗部にも活動協力を依頼してあるわ。学園で落ち合ってね。来月には学園祭、再来月にはキャノンボールファストとイベントが続いて学園の警備は手薄になると思うから、間違いなく仕掛けてくるでしょうね。こちらの指揮は私が、副官にはクロエが着くわ。アジア圏の指揮は櫻に一任。副官にラウラと日本の暗部から1名着く予定よ。名前はなんと言ったかしら……。まぁいいわ、以上、作戦伝達を終了。質問は?」
櫻が手を挙げ、発言許可を求める
「はい、櫻」
「亡国機業の現時点で確認されている戦力は?」
「言ってなかったわね。現時点でわかっているのはアラクネとサイレントゼフィルスの2機のみ。残念だけど、公式ルートではスペックや武装のデータは見せてもらえなかったわ。いま束ちゃんが非正規ルートで情報収集中よ。分かり次第送るわ」
「私からも、いいでしょうか?」
次に手を上げたのはルイーゼ。彼女はいつもは口数少なく、クールな印象を持つが、仕事になると急におしゃべりになる娘だ。
紫苑が頷いて促すと
「活動拠点、具体的な組織の人数などはわかっていないのですか?」
「ええ、残念ながら。ただ、さっき言ったとおり、内部の派閥構造から派閥同士のいざこざややり方の違いもあるみたいね。スコール派のような武闘派もあれば交渉に長けた派閥もあると思われるわ。もちろん、同盟関係にあるようなところもあると思うの。推測ばかりで申し訳ないけど、本当に情報がないのよ」
「了解。以後なにかあればその都度聞く」
「ええ、そうしてちょうだい。ラウラは何もないの?」
「なら一つ。現場での指揮権だが、どこまで櫻に譲渡されるんだ?」
「私と同等の権限を臨時的に与えると考えて頂戴。だから櫻が作戦行動を宣言した時からあなたは櫻の指揮下に入る。いいわね?」
「了解した」
「以後、櫻は日本時間金曜日2200に定時レポートを提出するように。 では、解散!」
部屋の明かりが戻り、各々のデスクに座るとふぅ、と一息。引き出しから袋入りの
「櫻、私にも少しくれないか?」
「ん。いいよ」
袋を向かいの机のラウラに渡すと適当に手に取り、そのままルイーゼに回る。
「いいの?」と表情で伺うが、櫻は頷いて返した。
「にしても来週から新学期だっていうのに呼び出しとはねぇ」
「まぁ、仕方ないだろう。これも仕事だからな」
「2人はまた日本にとんぼ返り? 大変だ」
「そうだね~。帰りに空港の免税店でお酒いっぱい買って帰ろ」
「はぁ……。少しは歳相応の生活をしたらどうだ?」
「だって~。社長業だって疲れるんだもん! 先週はオーメル行ってGAアメリカ行ってさ。それぞれレポートをPCで送ってくれれば済むのに!」
「あーあー、分かった分かった。帰りの飛行機で飲んで寝ろ。向こうでは織斑先生に付き合ってもらえばいいだろう」
日本の空に花火が上がり、乙女の恋がひとつ弾けたのと同じ頃、遠く独逸の地では若社長が自らの宿命を嘆いていた。