Who reached Infinite-Stratos ?   作:卯月ゆう

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カプリッチョは奇想曲という意味。自由な発想から生まれる(型にはまらない)音楽を指す言葉です


2匹の子猫のカプリッチョ

気持ち悪い

 

ラウラが感じ取ったのは不快感、というより何か座りが悪い感覚。

明るんでいる方を見れば、光源は壁に掛けられた残りの短いろうそく。石が積み上げられた壁はかなりの年月を感じさせる

 

――お目覚め?

 

脳が認識したのはどこか聞き覚えのあるような、スッと染みこむような声

とっさに身構えようにも腕や足は動かない

 

――うん、よろしい。さて、ラウラ・ボーデヴィッヒ。君に幾つか質問をさせてもらうわ

 

――残念だが私は拷問に対する訓練も積んでいる。そう簡単に吐きはしないぞ

 

――そうでしょうね。だから軍がやりそうにない手段で答えざるを得ない状況に仕立てるだけよ

 

そう言って声の主は首筋を撫でる

触れるか振れないかの微妙な加減で少しくすぐったい程度。これからどうつながるのか

 

ピン、と音を立てて取り出されたのは短いナイフ。それでラウラの衣服を切り裂いていく

刃は身体に一切触れず、布だけを裂いて床に落ちた

 

――さぁ、これからどうなるか、解るかしら?

 

そう言いながら露わになった腹に手を当て、筋をなぞっていく

 

――きれいな身体ね。もっと見せて頂戴?

 

その手はゆっくりと上に上にと向かい、小ぶりな乳房をくるりとなぞると首筋を撫でて唇に触れる

手が離れた次の瞬間には

 

――んっ!? 

 

――ん~、ハァ。初めてだったかしら? どうだった?

 

唇で塞がれていた。それに何かが口の中に残っている

 

――ファーストキスで薬を盛られるとはな。もっといいムードでするものだと思っていたぞ

 

――あら、ごめんね。でも、その分楽しませてあげるから

 

脇腹をなぞられる。だが、今までとは全く違う感覚がラウラを襲う

 

――ふふっ。どう? だんだん身体が熱くなるでしょ?

 

再び胸をなぞられた時に思わず声を上げてしまう

 

――少し刺激的過ぎたかしら? でも、可愛いわ。もっと鳴いて見せて

 

ゆっくり舐るように全身を撫で回され、息も荒く、頭のなかもふわふわとしてきた

身体を駆け巡る熱い感覚に思わず「気持ちいい」などと考えてしまう

もっと私を悦ばせてくれ、もっと私を気持ちよくしてくれ、と口走りそうになるのをなけなしの理性で抑えこむ

 

だが、身体は正直だったようだ

 

――そろそろ、いいかしら?

 

手を伸ばした先は、もちろん――――

 

 

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「そこは駄目だっ!」

 

ガバッ、と跳ね起きると目の前には見慣れた白い壁とテーブル。もちろん自分はベッドに居る

とある部分が少し気持ち悪いが……

 

 

「ら、ラウラ? 大丈夫?」

 

聞き慣れた声に振り返るともちろんシャルロットがいた

やっと状況を把握してきたラウラはアレは夢だと言い聞かせる

 

 

「あ、うむ、問題ない。少し悪い夢を見たようだ」

 

「すごい息が荒かったよ。――ちょっと色っぽい感じで」

 

「いや、拷問じみた事をされる夢を見てしまってな。それで……」

 

ベッドに腰掛けると寝汗で張り付いた黒猫のパジャマが鬱陶しい。さらにシーツまで悲惨な状況だ

 

 

「コレは酷いな……シャワーを浴びてくる。あっ……」

 

立ち上がろうとしたところでふらついたラウラをシャルロットが抱きとめた

だが、あの夢で散々な目にあったラウラがらしくない声を上げる

 

「ひゃぅっ!」

 

「あっ、ご、ごめんね」

 

「い、いや、大丈夫だ、すまないな」

 

「本当に大丈夫? もし何かあったら言ってよ?」

 

「少し夢の嫌な気分が残っているだけだ。気にしないでくれ」

 

「そう? ならいいけど」

 

バスルームに入っていったラウラを見て少し顔を紅くするシャルロット

 

 

「やっぱり色っぽくて、かわいいなぁ……そうだ、シーツ変えないと」

 

見事に人型に濡れたシーツを剥がし、洗濯機に叩き込……まなかった

なぜかシーツに顔を埋めて恍惚の表情を浮かべている

 

――汗の匂いの中にちょっとエッチな匂いが混ざってる……やっぱりそういう夢でも見たのかな……

 

少し危ない方向にシャルロットが暴走する中、バスルームから声が掛かる

 

 

「シャルロット。悪いがボディソープを取ってくれないか?」

 

「えっ、あっ、はいっ!」

 

慌ててシーツを洗濯機に押し込んで洗面台の下からボディソープの詰替えを取り出してバスルームのラウラに手渡す

 

 

「用でもあったなら悪かったな。助かった」

 

「いや、そんなことは無いから。うん」

 

「らしくないな。どうかしたのか?」

 

「なんにもないよ? ほら、本当に風邪引いちゃうからっ!」

 

怪訝な表情のラウラに内心を悟られる前にさっさとドアを閉めて洗濯機のスイッチを押す。

またベッドに飛び込むと掛ふとんを抱きしめてパタパタと暴れた

 

――あぁ、駄目だよシャルロット。ルームメイトでそんなことを考えちゃうなんて……!! 僕は普通、僕はノーマルだよ!! あぁ、ダメだダメだァァァ!!

 

いつもとはまた違う雰囲気のルームメイトに不信感を覚えつつ、シャワーを浴びてバスタオル姿で戻ったラウラが目にしたのはベッドでうねうねと悶えるシャルロット

 

 

「私の心配をしている場合なのか? シャルロット」

 

「はっ! だ、大丈夫だよ! ちょっと色々と心のなかで葛藤が……」

 

「ん……? まぁ、なんだ、私で良ければ力になるぞ?」

 

先ほどの言葉をそっくりそのまま返すとシャルロットはゆっくり頷いてありがと、と言った

 

 

「それにしても暇だな。課題も終えて試験スケジュールも2学期が始まるまでは空白。本当にコレでいいのか?」

 

「まぁ、みんな一気に休みを取るらしいから仕方ないんじゃないかな?」

 

「そうだ、街に行こう」

 

「いきなりだね。じゃ、駅前とかそこら辺をぶらぶらする?」

 

「そうだな。櫻に『すこしは女の子っぽいこともしないとつまんないよ。まぁ、シャルロットに任せればなんとかなるさ』と言われているからな」

 

「櫻ぁ……僕に丸投げしないでよ~」

 

隣の部屋で熟睡しているであろう上司(親友)にぼやく

ぐぅ~。と音を立てたのはラウラのようで

 

 

「まずは腹ごしらえだな」

 

「ふふっ、そうだね」

 

 

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「それは何だ……?」

 

朝の食堂はこれから部活やISのテストや整備が入る生徒がちらほらいる程度でガラガラだった。

2人は揃ってモーニングセットをつまんでいる

 

 

「マカロニサラダだよ? ラウラも同じもの頼んだじゃん」

 

「いや、それはわかっている。どうしてマカロニをフォークに通しているんだ?」

 

「あぁ、これね。ん~、なんとなく。だよねぇ」

 

ラウラもやってみれば? と促されてラウラも挑戦してみる

マヨネーズを纏ったマカロニはなかなか強敵で、上手く刺そうにも逃げていってしまう

 

 

「これはなかなか難しいな。集中力と多面的視野が鍛えられそうだ」

 

「そうなの? 小さいころにはなんとなく楽しそ~とかでやったなぁ」

 

「シャルロットの視野が広いのはコレがルーツか」

 

「まさかぁ」

 

「冗談だ。お、全部通ったぞ」

 

それを一口で食べると「時間はどうする?」と聞いてきた

 

 

「そうだね、10時15分のバスに乗れば11時前にはつくから、少し服でも見てからお昼に出来そうだよね」

 

「なるほどな。まだ時間はあるし、櫻でも誘うか」

 

「いいんじゃないかな? 少しは仕事してもらわないと」

 

「まぁ、そう言うな。それだけ信用されているということだ」

 

そう言って携帯を取り出しダイヤルする

 

 

「出ないな。まだ寝てるのか」

 

「なら無理に起こして怒られるのも嫌だし、2人でいこうか」

 

「だな。本人が気づいたなら後で合流するとか言い出すだろう」

 

朝食を平らげ、部屋に戻るとうだうだとしつつも時間には部屋を出た

 

 

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駅前の複合ビル

バスから降りた2人はまっすぐと館内に入り、館内ガイドを取ると歩きながらルートを練った

 

 

「じゃ、まずは上から行こうか。ラウラは夏物はあるんでしょ?」

 

「ああ、この前少し買ったからな」

 

そういうラウラは黒のタンクトップに白いシャツ、下は7分丈ジーンズで、まぁ、言ってみれば無難な着こなしだった。

同室になったばかりの頃は私服なんて一着も持っておらず、何故かクローゼットにスニーキングスーツが入っていたのだ。その頃と比べれば大きな進歩である

 

 

「じゃ、上は軽く見るだけでいいかな。そしたら下に降りて行って秋物、小物の順番だね」

 

「よくわからん、任せる」

 

「はぁ……、行くよ」

 

そう言って自然にラウラの手を引くシャルロット。

ラウラもされるがままだ

 

目的のフロアにつくと迷うこと無く進んでいく。そして入ったのは若い女性に人気のショップ。

案の定夏休みの学生であふれている

 

 

「ん~。少し混んでるし、特に目的もないから一周するだけでいいか」

 

「ああ」

 

ゆっくりと店内を見て回ると腕を引っ張られた

振り返ればラウラがじっと1着のワンピースを見ている

 

 

「なにか気に入ったものでも見つ――」

 

「お客様、なにかお探しでしょうか?」

 

ちょうど店員が割り込んできた。ちょっと気まずそうな顔をしているところからタイミングをミスった自覚はあるらしい

 

 

「ん、いや。ただかわいいな。と」

 

「でしたらご試着してはいかがでしょうか? 試着室はあちらにございます」

 

そう言われたラウラが手にとっているのは黒いワンピース。どことなく先日ラウラが着ていたドレスと似たデザインで、派手すぎず、それでもしっかりと存在感がある。いわば影のようなものだった

 

 

「シャルロット、見てくれないか?」

 

「もちろん。それに合う小物も揃えよう」

 

「頼む」

 

そう言って試着室に入ったラウラを他所に、店内を回って合いそうなものを集める。

黒いミュール、シルバーのクロスネックレス。やり過ぎるとゴスロリっぽくなりかねないので程々に抑える

 

 

「シャルロット。どうかな?」

 

小さい子が少し背伸びをしたような雰囲気があるものの、ラウラの容姿と相まってそれすらもチャームポイントの一つにしていた。

そこにシャルロットの用意したアイテムを合わると

 

 

「かわいい……」

 

店員が思わずつぶやくほどに上手くマッチした。

シャルロットは満足そうだ

 

 

「どうかな?」

 

「うん、上手くハマってるんじゃないか? あまり派手じゃないから普段使いもできそうだな。よし、買っていこう」

 

また試着室に入っていくラウラに「着て行ってもいいよ」と言うが、別の場面で着る。と断られてしまった

 

店を出たのは昼前、そろそろ飲食店が混み始める時間だ。

ふとラウラが携帯を取り出すと

 

 

「櫻が今から行ってもいいか。って。更識と布仏もいっしょだそうだ」

 

「いいんじゃない? でも今からになるとお昼すぎだなぁ」

 

「そうだな。先に食事を取るか?」

 

「だね、お店だけ教えて後で合流すればいいよ」

 

「そう伝えておく」

 

「よろしく。お昼はどうする?」

 

「適当に――」

 

「適当、じゃなくてこのなかから選んでよ」

 

そう言ってガイドマップを手渡され、レストランの一覧からラウラはそば店を選んだ

理由はもちろん「ここ最近和食を食べた記憶が無いから」シャルロットは少し苦い顔をしていたが、ラウラのチョイスだから、とエスカレーターを登った

 

店に入り、ざる2つを頼んだ2人はこの後のルートを考えていた

 

 

「このあとは小物って言ったけど、僕は時計が見たいんだよね」

 

「いいんじゃないか? 私は特になにも――」

 

「何も無いとかいわない。ラウラは何か無いの? 僕は日本製の工業製品ってどこか憧れがあったから時計かな~って思ったんだけど」

 

「日本の工業製品か……この前ライフルを買ったしなぁ……」

 

「なんでよりによってライフル……」

 

「プラモデルなんてどうだ?」

 

「なんでプラモデル? もうちょっと女の子的な何かは……」

 

「女性的なものか……、すこしずれるがカメラなんてどうだ? キヤノンやニコンはドイツでも有名だな」

 

「いいんじゃない? それならずっと楽しめるし、最近は写真趣味の女の子も多いよ」

 

「そうか。ならカメラ屋……は無いな。電気屋に行ってみるか」

 

「決まりだね。櫻にも言っておいてくれる?」

 

「うん? 櫻からメールが来てた。『今から出る』だそうだ」

 

「そっか、ちょうどいいからデザートでも食べながら待とうか?」

 

「そうだな」

 

そう言って席を立つとふと隣の席の女性が気になった。ガクリとうなだれ、目の前のたぬきそばは伸びている

 

 

「シャルロット、お人好しが過ぎるのも考えものだぞ」

 

とラウラが言う前に「どうかされましたか?」とその女性に声をかけていた

すると「ねぇ、今日だけウチでバイトしてくれない?」と頭を下げられていた




はい。原作を手に入れたから勢いで書いたら最長の話になりました。
分割で明日に続きます


2015/01/05追記

と、あの時の自分を羨みたくなるような超速執筆ができていたこの頃、今はスランプです

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