Who reached Infinite-Stratos ? 作:卯月ゆう
「じゃ、賑やかなお客さんもそっちで2次会に入ったみたいだし、私達も飲みましょうか」
マナー講座と言う名のお食事会が終わり、大人の二次会をやると一方的に宣言した紫苑は子どもたちの退室を確認すると瓶の栓を抜いた
それにつられてリリウムや千冬も栓を抜いていく
「じゃ、かんぱ~い」
「「「「乾杯!」」」」
先ほどとは打って変わって賑やかな雰囲気で始まった大人の2次会。
もちろん話す内容は……
「千冬ちゃん、今回はいろいろ迷惑をかけてごめんね。そっちも大変だったでしょ?」
「ええ、まぁ、簡単な仕事だったとは言えませんね。ですが、これも生徒のためですから」
「いつの間にか千冬ちゃんも先生ねぇ。束ちゃんも真面目にお仕事してるし、変わっていくものなのね。お母さん嬉しいやら悲しいやら……」
紫苑の狙っていってるのか素で言っているのかわからない言葉に千冬も苦笑いしかない
「織斑先生、こちらからもお礼申し上げるわ。ありがとう。ロロットも今までの何か枷のある環境から離れて大分楽になったんじゃないかしら。これも櫻ちゃんや先生のおかげだわ」
「いえ、私は櫻とウォルコット……シャルロットの言うとおりにしただけですから。それに教師である以上は生徒のために全力を尽くすべきだと考えてますので」
「あら、いいお言葉。先生、これからも娘をよろしくお願いしますね」
「はい、責任持ってお預かり致します」
「さっきからちーちゃんばっかりずるいよ~。私も褒めてくれたっていいじゃん!」
「束ちゃん、先月の事を忘れたとは言わせないわよ? あれでクビにならなかっただけマシだと思ってくれないかしら」
「うぅ、反省はしてるよ~。まさか制御不能になるなんて思っても見なかったから次から気をつける」
「覚えていろって言ったよな、束」
「ひっ……。つ、次はなさそうだな~」
視線を泳がせながらビールを煽る、そんな束の頭を瓶の底で軽く打ってから千冬も大きく一口飲んだ
「ん? これは初めて飲むものだな。紫苑さん、これは何処のビールですか?」
「地元のものよ。気に入ったかしら?」
「ええ、前に頂いたものより深みのある味と言うか、ゆっくり飲むには最適ですね」
「でしょ? こうやっておしゃべりしながら飲むんだからキツめのより懐深い方がいいと思って」
「紫苑、後で店を教えてくれ、買って帰ろう」
「覚えてたらね。千冬ちゃんにも送るわ」
「ありがとうございます」
「織斑先生は夏休みをとって来たのかしら?」
「ええ。2週間ほどしっかりと取ってきました」
「やっぱり日本にあると労働環境も日本の気質なのかしら? お休みとかは取りづらいでしょ?」
「そうですね。あとはやはり職業柄、こういった長期休暇以外に休みは取れませんね。まぁ、休む暇など無いんですが」
「千冬ちゃんも大変ねぇ、ウチに転職しない?」
「あら、ブリュンヒルデが転職するならウチでもいいのよ?」
「ご冗談を。教師を辞めた時は自力で仕事を探しますよ」
教師もやりがいはあるし、満足してるが何れ今の仕事が満足にできない瞬間が来ることもわかっていた。特に実技に依り気味な千冬の指導スタイルでは自身の身体が持たなくなったらダメになってしまう
「ちーちゃんなら束さんが個人で雇っちゃいたいよ。ずっと一緒にいられ――」
「断固拒否する。私にだって仕事を選ぶ権利はある」
「あら、フラれちゃったわねぇ」
「こうして見てると織斑先生って結構子供っぽい所あるのね。私とあんまり年は変わらないと思ってたんだけど」
「あなたの見た目は10代だから……、あとで千冬ちゃんに年齢でも当ててもらったら?」
「面白そうね。これで30とか言われたらどうしよう」
「それはそれで笑えるわ、肴になりそうね」
テーブルの反対側でいちゃつく2人をたしなめ、リリウムが思い切って聞いてみた
「ねぇ、織斑先生。私の年齢どのくらいに見えるかしら?」
「え、え~っと。初見の印象だと私と同じくらいか少し下かと思いましたけど、立ち振舞や立場から考えると私より3~5つ上ですかね?」
「20後半くらい?」
「ええ、そのくらいの方かなぁ、と。ハズレてたらすみません」
「紫苑、この読みの良さはあなた譲りかしら? 一発正解よ。私は今27ね」
「はぁ、さすがに今日出会った方に失礼な真似をしたらどうしようかと」
「織斑先生は束さんと同い年なのよね? 彼氏とかはいないのかしら?」
「残念ながらいませんねぇ、そもそも縁がない上、肩書ばかりが先に行ってしまうので……」
「
「ママさんの言い方だと何かアブナイ感じがするねぇ」
束に拳を振り下ろして「まぁ、家事一般は一夏任せですねぇ……」と悲しそうにつぶやいた
千冬の意外な面にリリウムも驚いている
「前にちーちゃんの部屋を覗いた時はすごかったよ。まるで――」
「学園の自室も散々たるありさまでして……」
突然口を塞がれ、モゴモゴ言う束をひと睨みして黙らせると手を放してハンカチで拭った
「自覚あるなら掃除すればいいじゃん!」
「出来るならやってる。だが、整理整頓がどうしても苦手で……」
「織斑先生の意外な一面ね。前からこうなの?」
「さぁ? 千冬ちゃんは家に来るだけだったからよくわからないわ。束ちゃんは片付け下手とかそれ以前よ」
「まぁ、解る気がする」
そしてまだまだ大人たちの夜は明けなかった
遅れました、サーセン!